( ゚∀゚)ジョルジュと麦わら帽子のようです 五日目



( ・∀・)「雨の日はやっぱこんなもんですかねー」

(`・ω・´)「そうだな。海に入りゃ結局濡れるんだから、関係ないと言えばないんだろうが……寂しいなぁ」

( ・∀・)「ですよねぇ」

(`・ω・´)「心に穴が空いたみたいだ」

( ・∀・)「俺は視力落ちそうで困るなぁ」

( ゚∀゚)「……」

ピンク成人が二人並んで、がらがらのビーチを見ながら意味不明な憂鬱に耽っている。

一応、俺もピンク星人の仲間ではあるが、こいつ等はもう末期だ。

頼むから仕事してくれ。





(`・ω・´)「雨はうざったいだけだよなぁ……」

マスターが小さく呟く。

それにつられて、空に目を向ける。

( ゚∀゚)「……太陽の光は身体にいい、か」

モララーさんが昨日言ったとおり、今日は朝早くから雨が降っていた。

気まぐれに強くなったり弱くなったりしながら、いっこうに止む気配はない。

おかげでビーチにはほとんど人影がなく、元気なサーファー達が沖に漂っているのが見える程度。

そんな状況で仕事しろなんて言ってみても、実際、やることはほとんど無い。

今朝から数えて、五回、グラス磨きラリーを往復してしまった。

つまり激暇だ。

誰か仕事をくれ。





(`・ω・´)「一号、将棋させるか?」

( ・∀・)「あ、いいっすね」

(`・ω・´)「俺に勝ったら晩飯を奢ってやるぞ」

( ・∀・)「マジっすか? 強気ですねー」

(`・ω・´)「海の男に敗北の二文字はない」

( ゚∀゚)「……ウドの大木」

(`・ω・´)「二号、何か言ったか?」

( ・∀・)「皆目見当もつかない……なんちって」

(`・ω・´)「一号」

( ・∀・)「はいはーい」

( ゚∀゚)「……」

なんだこの店は。





――…


時計の針が午後一時をまわっても、ビーチは閑散とした状態のままだった。

昼過ぎ、腹を減らしたサーファーが集団で来店したが、彼らが帰って以来、客は来てない。

シェフのドクオさんはそれぞれのメニューに五食ずつの在庫を作って、もう帰ってしまった。

モララーさんは今、客席で小説を読んでいる。

マスターは財布とにらめっこしている。

そして俺は、スポーツ新聞を読んでいた。

( ゚∀゚)「……夏だね」

広いとは言えない紙面に、派手な見出しが踊る。





やはりスポーツをするなら夏ってことなのだろう。

ウィンタースポーツもマイナーというわけではないが、野球やサッカーと比べたら、どうしても認知度が落ちる。

スケートの世界大会よりもプロ野球選手の契約更改の方が一面になる時代だ。

ウィンタースポーツに従事する方々は、さぞや悔恨の極みにあることだろう……なんて、そんなことはないか。

( ゚∀゚)「ホント、この時期はありとあらゆるスポーツやってるよな」

紙面の一部にサマージャンプ大会という文字を見つけて、思わずそう呟く。

夏に行われるスポーツは、そのジャンルを問わず。
 
参加するものを拒むことなく。

誰もがその輪に加わることが出来る。

( ゚∀゚)「ま、それも……」

自ら勝負を捨てさえしなければ、の話だが。





(`・ω・´)「二号」

( ゚∀゚)「……あん?」

突然の呼びかけに、思わず返事がおざなりになった。

これはいかん。

( ゚∀゚)「なんでしょう、マスター」

(`・ω・´)「これ」

( ゚∀゚)「……」

マスターからビニール袋に入った何かを差し出された。

受け取り、中をのぞくと、お好み焼きが二つに、自販機の清涼飲料水が二本。

( ゚∀゚)「……昼飯なら、さっき焼きそば食いましたよ。しかもシーフードのヤツ」

ついさっきの出来事。

どうせ客なんて来ないから、今日は好きなもの食っていいぞと言われて選んだシーフード焼きそば。

いつもまかないで食わされてるのは、シーフード焼きそばのシーフードを抜いた部分だ。

つまり焼きそばだ。





(`・ω・´)「いいから。これ持って埠頭に行ってこい」

( ゚∀゚)「はぁっ? ……もしかして職場イジメですか?」

(`・ω・´)「バカ野郎」

殴られた。

これは腹いせだろう。

モララーさんに将棋で負けたからって俺を殴るな。

(`・ω・´)「……見ろ」

言って、マスターが店の外……だいぶ離れた場所にある、港の埠頭を指さした。

そこは以前、入れ食いスポットというガセネタをもらって、二時間粘ったあげく朝食に海草食わされた悪魔的スポット。

塩味の水草は別段美味いわけでもなく……っていうかぶっちゃけ不味くて、もう二度と食いたくない。

そんな悪夢が蘇り、目を逸らそうとした俺の視界に、小さな傘が目に入った。

( ゚∀゚)「あれ……」

(`・ω・´)「わかるな?」

( ゚∀゚)「……はい」





(`・ω・´)「昨日は仲良さそうに歩いてたじゃねぇか」

( ゚∀゚)「……見てたんですか? 覗き魔」

(`・ω・´)「うるせぇ」

( ゚∀゚)「いてぇ」

殴られた。

(`・ω・´)「どれだけ気を張ったって、限界は来るもんだ」

( ゚∀゚)「……また哲学ですか?」

(`・ω・´)「黙れ。これでも結構悔しいんだ」

( ゚∀゚)「俺は……明後日には、この土地を出る人間ですよ」

(`・ω・´)「わかってる。でも……そんな人間じゃなきゃできねぇことがあるかもしれねぇ」

( ゚∀゚)「……」





(`・ω・´)「物理的な距離が関係ないことくらいわかってんだ」

そう言ってマスターは、憂いのこもった瞳で彼女を眺めた。

小さく……戯けるように。

俺があと三十若けりゃなぁ……なんて呟いていた。

彼女を見つめるその視線は、男としてのそれではなかった。

父親のようでもあり、兄のようでもあった。

それはつまり、隣に寄り添うには年を取りすぎたと言うことで、だから余計に辛いのだろうと、素直に思った。

( ゚∀゚)「……行って来ます」

ビニール袋を持って歩き出す。

( ・∀・)「上手くやれよー」

( ゚∀゚)「……」

モララーさんが顔も上げずに呟いた。





( ゚∀゚)「……ま、努力はします」

自信のない心境をそのまま言葉に出す。

モララーさんは軽く手をあげただけだった。

店の入口で、忘れ物の傘を一本手に取り、

( ゚∀゚)「……あ」

そこで一度、立ち止まる。

後ろを振り向き、

( ゚∀゚)「マスター」

(`・ω・´)「なんだ」

( ゚∀゚)「これって……」

(`・ω・´)「あん?」

( ゚∀゚)「有給ですよね?」





――…


ξ゚听)ξ「えっ……」

( ゚∀゚)「やほー。有給もらっちった」

傘を軽く持ち上げて挨拶する。

それから、すぐそこにある灯台を指さし、

( ゚∀゚)「そこ、座らない?」

ξ゚听)ξ「あ……」

( ゚∀゚)「階段の下。まだ濡れてないし」

ξ゚听)ξ「……」

彼女がうなずくのを待たず、その場所に腰を下ろす。

彼女はゆっくりと、僅かな距離をおいて、俺の隣に座った。





( ゚∀゚)「これ、マスターの差し入れ」

そう言いながら、お好み焼きとウーロン茶を取り出す。

( ゚∀゚)「昼飯って食った?」

ξ゚听)ξ「……ううん」

( ゚∀゚)「んじゃ、ちょうどいい」

俺はもう食ったが……まぁ、これは別腹ってことで。

ξ゚听)ξ「なんか……ごめんね、わざわざ」

( ゚∀゚)「いいって。ほら、雨の日って暇だし」

ξ゚听)ξ「うん……」

( ゚∀゚)「どうせ店にいても、時間もてあますだけだしね」

そう言って、店の方を振り向く。

シャッターが降りていた。





( ゚∀゚)「……これ、イジメだと思う人」

ξ゚听)ξ「残念ながら……」

彼女が挙手する。

やっぱりそうか……ちょっと泣きたくなってきた。

ξ゚听)ξ「サーフィンしてた人達が帰っちゃったからだよ」

楽しそうに微笑んで、彼女がそう言う。

確かに、さっきまで沖を浮游していたサーファーが見当たらない。
 
だが、それが本当の理由だろうか。

ここ五日間を思い返してみると、イジメという言葉に該当する出来事がいくつかあるのだが……まぁ、いいか。

笑顔が見られたから。





( ゚∀゚)「これ、箸」

ξ゚听)ξ「あ、ありがと」

( ゚∀゚)「んじゃ、食おうか」

ξ゚听)ξ「うん」

彼女がうなずいたのを確かめて、お好み焼きに箸をのばす。

それは生ぬるくて決して特別美味しいわけではなかった。

けど、雨の埠頭で食べるお好み焼きには独特の風情があり、少しだけ青春の味がした。

ξ゚听)ξ「……ここで、なに考えてたと思う?」

食べ始めてしばらくした頃、そんなことを聞かれる。

ウーロン茶を一口飲んで、答える。

( ゚∀゚)「自由研究の課題」

ξ゚听)ξ「……わたし、小学生?」





( ゚∀゚)「外れた?」


ξ゚听)ξ「ううん……正解、かな」

彼女は儚げに微笑んだ。

ξ゚听)ξ「タイトルはこれからのわたし」

( ゚∀゚)「……はい?」

ξ゚听)ξ「自由研究っ」

( ゚∀゚)「あぁ……」

一瞬で忘れてた。

彼女は呆れたようにため息をこぼし……それから、少しうつむいて。

ξ゚听)ξ「時々ね……考えちゃうんだ。すっごく悪いこと」

( ゚∀゚)「俺が聞いてもいいこと?」

ξ゚听)ξ「聞いて欲しい。……ホントはずっと、誰かに聞いて欲しかった」

( ゚∀゚)「……」





その誰かに彼女が何を望むのか。

それを彼女の瞳から読みとろうとしたけれど、麦わら帽子にさえぎられ、見ることが出来なかった。

彼女はうつむいたまま、先を続ける。

ξ゚听)ξ「壊したくなるんだよね……このままずっと、望むだけの生活を続けるくらいなら
     ……いっそ、壊してしまえばって」

( ゚∀゚)「……壊、す?」

ξ゚听)ξ「そう。わかるでしょ? わたしの身体は、人よりずっと壊れやすいの。だから――」

( ゚∀゚)「――っ!」

ξ゚听)ξ「……ごめんなさいっ」

彼女の肩に手を伸ばしていた。

強制的にこっちを向いた彼女の膝から、勢い余ってペットボトルが転がり落ちる。

それはアスファルトの埠頭を転がり、海に消えていった。





ξ゚听)ξ「考える、だけだから……痛いから、離して」

( ゚∀゚)「……わるい」

一気に沸騰した頭が、それと同じ速度で冷えていく。

……怒ってどうする。

俺に怒る資格があるのか?

無いに決まってる。

俺はあの時、望む場所にたどり着けないなら、いっそ壊してしまえと……でも、それでも。

( ゚∀゚)「……やめて欲しい」

ξ゚听)ξ「わかってるよ……考えるだけだから」

彼女が困ったように微笑んだ。

その微笑みの理由は、俺にはよくわからなかった。





ξ゚听)ξ「でも……さ。自分でも最低って、わかってる……でも、考えちゃうよ。
     もう何年も、こんな生活が続いてる。……今年は、学校まで、行けなくなった」

そしてその理由は、決して病気のせいじゃなく。

ξ゚听)ξ「どうしていいかわからないの……これでもわたし、頑張ってきたつもりだから。
     元気になりたかったから……水着だって、着てみたかったから……」

( ゚∀゚)「……」

ξ゚听)ξ「だから……ジョルジュ君の言葉は、嬉しかった」

( ゚∀゚)「……えっ?」

てっきり責められているものだと思っていた俺は、その言葉で顔を上げる。

振り向いた俺と目のあった彼女は、少しだけ頬を赤く染め、

ξ゚听)ξ「ほ、ほら、言ってくれたでしょ?
     ……全力で求めたあとなら、望むことも、憧れることも……悪くないって」

( ゚∀゚)「あぁ」





思い出す。

同時に、それが自分に向けて発した言葉であったことも。

ξ゚听)ξ「わたしはさ……望んじゃいけなかったから。
     望んだり、憧れたりするってことは、今ある生活に満たされてないことを、自分で認めることだもんね。
     ……そんなの、優しくしてくれるみんなに、失礼だから」

( ゚∀゚)「……」

その言葉は、間違ってはいないのかもしれない。

間違いではないのだろう。

正しいのかもしれない。

偽善者の理屈に乗っ取って考えれば、それは節操をわきまえたとても人間らしい理屈で、正しいに違いなかった。

……でも、そこまで聞き分けよくしなければならない理由が、どこにある?

一番悲鳴を上げたいのは……きっと、他の誰よりも、苦しみを知っているのは。






ξ゚听)ξ「これにて、愚痴は終了」

彼女が小さく呟いた。

灰色に滲んだ水平線を眺めながら、

ξ゚ー゚)ξ「ありがと。ホントに嬉しかったんだ、あの言葉。
     わたしはこのまま、ずっと変わらず……ううん、いつか、限界がきちゃうかもしれないけど。
     その時までは、憧れててもいいよね? 普通の人の普通の生活を、無条件で、ただ憧れるだけで――」

本当にいいのか?

それで。

ξ;゚听)ξ「えっ? ジョルジュ君?」

彼女の声が震えた。

それは驚きと戸惑いによるもの。

その感情の原因は、力一杯握りしめたせいで音をたてて潰れる、俺の右手にあるペットボトルだった。





ξ;゚听)ξ「どっ、どうしたの!? ねぇ――」

(#゚∀゚)「よくねぇよっ!」

叫んでいた。

あの時と同じように……戦う前から負けていたあいつらに、それを“求めた”時のように。

(#゚∀゚)「勝つことの何が悪い! 上を目指すことのどこが間違ってるっ! 今で勝手に満足するなよっ!
     なんのために自分を見つめ直したと思ってるんだっ……ただ、全力投球がしたかっただけじゃないかっ。
     劣っていることくらいわかってた。でも、納得のいく負け方を求めて何が悪いっ!」

右手に持っていたペットボトルが、さらに潰れる。

( ゚∀゚)「……そしていつか、勝って終われる日を夢みて……何が悪いんだよっ」

ξ゚听)ξ「ジョルジュ君……?」

( ゚∀゚)「可能性なんてどうでもよかった……自分がまだ、終わってないことを確かめたかった……。
     それだけなのに」





ξ゚听)ξ「あっ、あのっ! ジョルジュく――」

そこで、何かを言おうとしていた彼女の言葉が止まった。

振り向かなくても、彼女の視線が俺の顔に向けられていることはわかった。

まさか……と思ったが、あり得ない話じゃなかった。

数瞬後、

ξ゚听)ξ「――ニュー速高校野球部……一年生エース」

懐かしい言葉が耳に届いた。

去年の秋季大会。

野球の名門でもなんでもない高校の野球部が、都の代表まであと一歩のところまで上り詰めた。

新聞ではエース一人の力によるまぐれのような勝ち方と酷評され。

それでも、チームメイトに助けられてきたと必死に主張したエースで四番。

――――ジョルジュ長岡。





努力すれば報われる……それを純粋に信じて、その瞬間がすぐそこに迫っていると思っていた。

そして、そう思っていたのは俺だけだった。

ξ゚听)ξ「うそ……? テレビ、で……見た? えっ、でも……」

( ゚∀゚)「……たぶんそれ、当たってる」

ξ゚听)ξ「じゃあ、ジョルジュ長岡って――」

( ゚∀゚)「そう。関東大会出場がかかった試合で、暴力事件起こして降板させられた間抜けなエース――」

純粋に信じ続けて、そのせいでまわりが見えていなかった、愚かで哀れな……見せしめのスケープゴート。

( ゚∀゚)「――それが、俺だ」





――…


夜になると、分厚く空を覆っていた雲が晴れ、星空が望めた。

都会から少し離れた夏の夜空に瞬く星は力強く、そこに輝いているだけで価値があるように思えた。

この星空の下で、明日の試合に思いを馳せて眠る高校球児達のことを、想った。

( ゚∀゚)「……」

あの日――

試合は二対ゼロで負けていた。

下馬評を見ても、ほとんど勝つ見込みはなかった。

それでも、信じていた男がいた。

二点ビハインドのまま終盤にさしかかり、それでも捨ててない男が、一人だけ、いた。

そいつは、知らなかった。

『俺等のレベルで関東大会行ったって、恥かくだけじゃねぇ? 負けようぜ、この試合』

ベンチ裏で、そんな会話が交わされていたことを。

俺は九回表のマウンドに立つ直前まで、知らなかった。





( ・∀・)「おーい、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「……モララーさん」

部屋のドアがノックされたと思ったら、モララーさんが立っていた。

何やらにやけた顔で、

( ・∀・)「……で、どうよ?」

( ゚∀゚)「はい?」

( ・∀・)「首尾はどうだって聞いてんのっ!」

叫ぶように言って、モララーさんは俺の背中を叩く。

その痛みに苦笑する。

これがこの人なりの気遣いだとしたら……ごめんなさい。





( ゚∀゚)「たぶん……嫌われました」

( ・∀・)「はっ? お前、なにしたの?」

( ゚∀゚)「いや……何かをしたって言うか。俺って言う人間に愛想を尽かされたという感じで」

( ・∀・)「おーいおい、意味不明だぞ青春小僧」

大学生なんだからこれくらい理解してくれ。

( ・∀・)「ケンカしたのか?」

( ゚∀゚)「それとは、ちょっと違いますけど……」





――――…


彼女は驚きを顔に残したまま、尋ねた。

ξ゚听)ξ『どうしてここにいるの? ……甲子園は?』

なにも答えられなかった。
 
俺はその場に上がる権利を、自ら放棄したのだから。

理想という言葉と引き替えに。

ξ゚听)ξ『予選……やってるでしょ? 今の時期は……』

まるでそれが嘘であることを望むような口調。

そして、

ξ゚听)ξ『こんな所でバイトしてる場合じゃ無いじゃないっ!』

悲痛な叫び声は結構効いた。





――…


( ゚∀゚)「……昔から純粋に信じてたんですよね」

( ・∀・)「はぁ? それ、なんの話だよ?」

( ゚∀゚)「あ……すいません。感覚的な話になるんですけど……」

( ・∀・)「あー、はいはい。オッケーよ。俺、文系だしねー。わかる? 和服着てソーセキの真似したりする学部よ?」

そんな学部だと思ってるのはたぶんモララーさんだけだ。

( ・∀・)「ほらほら、人生の先輩に話してみ? 適切なアドバイスもらえるぜ?」

( ゚∀゚)「……じゃあ」

少し前のことを思い出す。

それほど辛いことではなかった。





( ゚∀゚)「俺……信じてたんですよ。努力すれば報われるって言葉……ホント、笑っちゃくらい純粋に」

( ・∀・)「あーそりゃ笑うわなぁ。ガキだ」

( ゚∀゚)「……で、ある日、その信じてたものが、消えたんです。
     しかも、同じこと信じてると思っていた仲間の手で、消されたんです」

( ・∀・)「んーんー、わかるよー。責任転嫁ねー。したくなるよなー。
     俺も本命の大学落ちたときは、試験官が男だったのを理由にしたしねー」

(;゚∀゚)「それは理由になんねーですよ」

( ・∀・)「なるっつーの。美人だったら、割合にして八割くらいモチベーション上がるしよ」

上がりすぎだろ。

……あぁ、何だかこの人に話すの、無駄に思えてきた。

( ・∀・)「おーい、ジョールージュー。続けろー」

(;゚∀゚)「あ……はい」

続けるのか……ま、いいか。

思い出したついでだ。





( ・∀・)「んー、大体わかった」

( ゚∀゚)「そうですか」

( ・∀・)「おう。つまりこーゆーことだろ?」

わざとらしく人差し指をピンと立てて、モララーさんは言った。

( ・∀・)「おめーは自分で勝手に信念貫いてよ、それで失敗したとき?
     それを他人のせいにしてー……んで、あろうことか、リソーを押しつけた、と」

( ゚∀゚)「……厳しいですね」

( ・∀・)「あったり前だろー? 社会をなめんなよー?」

モララーさんが俺に詰め寄ってくる。

ほとんど鼻の頭が触れそうな距離まで顔をよせ、

( ・∀・)「結局てめー、負けたときの言い訳が欲しかったんだろ?
     ハッパかけるって建前でよー、ホントはこう言いたかったんじゃねーの?」

それは、秋季大会のあの日以来、心のどこかで渦巻いていた思い。

( ・∀・)「負けても俺のせいじゃない」





( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「違うかー、ジョルジュー」

( ゚∀゚)「……厳しいっす」

( ・∀・)「そーだ。人生は厳しー」

( ゚∀゚)「それからモララーさん」

( ・∀・)「あーん? なんだ?」

( ゚∀゚)「酔ってるでしょ」

さっきから酒臭くてたまらない。

( ・∀・)「バーカ。ポン酒なんて酒のうちに入らねーよ」

( ゚∀゚)「それはどんなアンパイアでもストライクです」

( ・∀・)「うーるせー」

言うと同時に、モララーさんは倒れた。

仰向けに寝そべり、無意味に天井を指さしながら……それでも、その言葉は止まらない。






( ・∀・)「そんなんじゃおめー、女にもてねーよ? 俺みたいにねー、正直に生きなきゃ。
     恨み言だってなんだって、口に出しゃーいーのよ。一人じゃ寂しーから助けてくださいっておねだりすんの。
     そーすりゃねー、女はいちころよ? もうパクッと開いちゃってさー」

( ゚∀゚)「なんの話ですか、それ」

( ・∀・)「わかんねーの? 股よ、股」

うるせぇ黙れ。

( ・∀・)「彼女はさー、そりゃ辛いだろーよ。
     キボーも無いかもしんねーし、リソーなんて言ってらんねーかもしれねーけどさ。
     そーゆーの、誰かが言わなきゃダメじゃん? 甘ったれたコゾーの戯言でもさー」

モララーさんは息を吸い、言葉を放つ。

( ・∀・)「てめーだったらよー、一番弱音きーて欲しー相手は誰だ?
     責任とか怖がってんじゃねーよ」

( ゚∀゚)「あの……それ、どうして知ってるんですか?」

( ・∀・)「マスターがぺーらぺらしゃべってたぜ?」

( ゚∀゚)「……」





あの野郎。

俺の時は聞くまで答えなかったくせに。

( ・∀・)「どーよ? 俺のジンセーロンは?」

( ゚∀゚)「とても酒臭かったです」

( ・∀・)「だろー? やっぱ俺文系だろー?」

もうダメだな、この人。

部屋に運ぶか。

( ゚∀゚)「モララーさん……ちょっと、肩、失礼します」

言って、寝そべるモララーさんの肩を担いで立ち上がらせる。

完全に力の入っていない身体を引きずり、隣の部屋に移動する。

そして布団の上に寝かせ、その上にタオルケットをかける。





( ゚∀゚)「……それじゃ、お休みなさい」

電気を消して、泥酔状態のモララーさんに向かって言う。

返事はない。

短く息をついて、暗い部屋をあとにする。

( ・∀・)「ジョルジュー」

呼び止められた。

( ゚∀゚)「……なんですか?」

( ・∀・)「俺ってかっこいいべ?」

( ゚∀゚)「サイコーに」

( ・∀・)「だーよなー」

( ゚∀゚)「では」





今度こそ本当にモララーさんの部屋を出る。

音を立てないようにドアを閉め……、

( ゚∀゚)「……厳しいですよ」

きつかった。

ずっと気付かないふりをしていた場所に、まさかこんな形で向き合わされるとは……ホント、モララーさん。

あなたは最高だ。

( ゚∀゚)「……でも」

部屋に戻り、窓の外に目をやる。

うち寄せる波音を聞きながら、

( ゚∀゚)「遅すぎた……気がします」



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