【第十三話】


 聖なる夜に、しんしんと降る雪。
 星々が照らす雪の大地に、影が四つ。

( <●><●>)「なんですか? 私はプレゼントを届けないといけないのです」

 冷たいギョロ目のサンタ、ワカッテマス。

ミ,,゚Д゚彡「少し腹割って話そうぜ。あと、トナカイを休ませてやれよ」

 頭は悪いが、陽気な落ちこぼれサンタ、フサギコ。

lw´‐ _‐ノv「大丈夫?」

 怖いものがあるのか、フサギコの後ろに隠れて頭だけを出す、赤い鈴を首につけた体の小さな真っ白なトナカイ、シュー。

(;><)「だ、大丈夫なんです!」

 長い四本足をぷるぷると震わせながらもワカッテマスの隣に立つ、黄色い鈴をつけた体の大きな真っ黒なトナカイ、ビロード。





ミ,,゚Д゚彡「聞かせろよ、お前の腹の中に溜め込んでるそれを」

( <●><●>)「なにが、ですか?」

ミ,,゚Д゚彡「わかってんだろ本当は。いつもわかってますわかってますって言ってたお前なんだから」

( <●><●>)「……」

 長い、長い沈黙があって。
 何かが倒れる音が、それを破りました。

(;><)「ぐッ……」

( <●><●>)「ビロード? やはりアナタも使えないトナカ――」





ミ,,゚Д゚彡「また捨てる気か?」

( <●><●>)「そうです。トナカイはただの道具です。使えなくなったらただのゴミでしかないです」

ミ,,゚Д゚彡「シューの後、何匹のトナカイを捨てた?」

( <●><●>)「数えていませんね、そんなの」

 淡々と、無表情で語るワカッテマス。

ミ,,゚Д゚彡「そこにいるトナカイ! ビロードって言ったか? 大丈夫か?」

(;><)「う……うぅ」

 ビロードは返事をしません。
 ビクビクと体が痙攣しています。
 ずっと前から限界を超えていたのです。





lw´‐ _‐ノv「あ、そうだ。ビロードにも鈴をつければいいよ」

( <●><●>)「ん?」

lw´‐ _‐ノv「きっとビロード、嫌なはずだよ。こんな人の傍にいて。願えばいいよ。助けてって。なんでも出る袋があるから。頭はわるいし落ちこぼれだけど、こっちは楽しいよ。何も怖くなくて、幸せだよ」

 少しだけ普段とは違う、暗さを孕んだ声で、シューは言いました。

ミ,,゚Д゚彡「幸せとか言われたやべぇ可愛い」

 空気を読まず、褒め言葉だけを抜き取って喜ぶフサギコがいます。

( <●><●>)「なんでも出る袋? 空っぽのそれが?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ。俺以外の誰かが願えばなんでも出るんだ。めんどくさい袋だよ。中身の詰まった袋が羨ましい」





( <●><●>)「願えば鈴も? なんでも出る?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ。人間の足だって出るぜ。くっつけらんないけど。まぁお前が鈴を願ったって、出してはやらないがな」

( <●><●>)「いや、それはどうもいいです。……人間の足、ですって?」

 少し、間があって。

( <●><●>)「なぜ、アナタだけなのでしょうね」

ミ,,゚Д゚彡「あ?」

( <●><●>)「この大きな袋。普通のサンタが持っている中身の詰まったこの袋は、お金で買えるものしか出てきませんよ? プレゼントですから、当然です」

ミ,,゚Д゚彡「は?」

( <●><●>)「そんな夢の様な力は、ありません。人間の足が出る? そんなのは」

――奇跡じゃないですか。





ミ,,゚Д゚彡「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

 一人と一匹は、黙ります。
 フサギコは、ただ驚いて。
 シューは、自分を救ったのは奇跡の力だと気付いて。
 あれはいつだったか自分が言った、とても卑怯な、奇跡の力。

ミ,,゚Д゚彡「凄い袋をずっと持ってたんだな俺。まだまだ知らない事だらけだ」

( <●><●>)「そうですね。私も初めて知りました。アナタは落ちこぼれというより、特別なのですね。頭はアレですがね」

 その会話は、二人のもの。
 気が遠くなるほどの長い長い時間を生きてきた、二人のサンタだけのものです。





lw´‐ _‐ノv「ねぇ、助けてって願えばいいよ。助けてもらえるよ」

 フサギコの後ろから、シューはビロードに声をかけます。

( <●><●>)「好きにすればいいですよビロード。私はもうアナタなんていりません」

 冷たい言葉を吐くワカッテマス。

(;><)「う……うぅぅ……」

 体が痙攣して、返事が出来ないビロードですが、その胸の中には、一つの思いしかありませんでした。

ミ,,゚Д゚彡「いや、そいつは願わないよ。絶対」

lw´‐ _‐ノv「え?」

( <●><●>)「え?」

 なぜかフサギコが、ビロードの思いを語ります。





ミ,,゚Д゚彡「なぁシュー?」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

ミ,,゚Д゚彡「俺がお前に鈴をつけたあの日、お前は何で空から落ちてきた?」

lw´‐ _‐ノv「足を動かすのに疲れて、もう嫌だって思って。止まったから」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあなんでこいつ、ビロードはここに降りてから倒れたと思う?。痙攣するまで足を動かしてさ。俺達の前に現れた頃から、いやおそらくずっと前から、足が震えてんのにさ」

lw´‐ _‐ノv「なんでって……わからない」

ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス?」

( <●><●>)「なんですか?」





ミ,,゚Д゚彡「お前がシューを捨てて、俺が鈴をつけたあの日から、何年経った?」

( <●><●>)「覚えていません」

ミ,,゚Д゚彡「そうだよな、俺も覚えてない。数えるのもめんどくさいぐらい長い時間を俺はシューと過ごしたから。じゃあもう一度聞くが、シューの後、何匹のトナカイを捨てた?」

( <●><●>)「だから数えていないと――」

ミ,,゚Д゚彡「シューを捨ててからも、長い長い時間を生きた。数え切れない程のトナカイを捨てた。それがお前だワカッテマス」

( <●><●>)「なにが、言いたいのですか? はっきり言ってください」

ミ,,゚Д゚彡「そんなお前はなんで、今になってもシューの名前をしっかり覚えてんだよ」

( <●><●>)「……ッ!」





ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス。俺の住む森にはトナカイがいないし、俺は頭悪いけどさ、一つだけ知ってる事があるんだ」

( <●><●>)「……なんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「森にいるトナカイ達に――」

――名前なんて、無いんだってな?




 【第十三話:会話が長いからひとやすみひとやすみ。フサギコがまともだとボケる人がいなくなるんだねぇ】





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