【第十六話】


 世界のどこかに、大きな大きな森がありました。
 季節は、夏。
 咲き乱れる花が風に揺れて、木漏れ日が降り注ぐ広場に、フサギコとシューの姿。

ミ,,゚Д゚彡「暑いなぁ」

 赤い帽子に、赤い服。
 蒸し暑い中、これでもかといわんばかりの、厚着。
 フサギコは広場の端に立つ大きな木の根元にもたれて座り足を伸ばし、澄み渡る青空を見上げて、暑いと、愚痴ります。

lw´‐ _‐ノv「暑いねぇ」

 フサギコの隣に座って、しかし頭だけはフサギコの肩に預ける、シューがいます。

ミ,,゚Д゚彡「重い、そして暑い。あとほっぺたが角でつんつんされてる」

lw*‐ _‐ノv「気のせいだよ」





ミ,,゚Д゚彡「なにこの子照れてる可愛い」

 フサギコは照れるシューの頭を、ごしごしっと撫でます。

ミ,,゚Д゚彡「水浴び行こうか」

lw´‐ _‐ノv「そうだね」

 フサギコが歩いて、その後ろをシュー。

ミ,,゚Д゚彡「えっ待ってなんかお尻をつんつんされてる内臓がキュッてなる痛みがある」

lw*‐ _‐ノv「気のせいだよ」

 やはりシューは照れています。
 つんつん、つんつん、つんつん。
 ゆっくり歩く、二人の姿がありました。









 ぱしゃぱしゃ、ぱしゃぱしゃ。
 森の中にある小さな湖、大きな水溜まり。
 そこではしゃぐ、一人と一匹。

ミ,,゚Д゚彡「気持ち良いなぁ」

 全裸のフサギコから、腰から下が水の中。

lw´  _ ノv「ぎもぢびぃね゙ぇ」

 そのすぐ隣、水に沈むシューの姿。

ミ,,゚Д゚彡「えっ沈んでる。ていうかなんで入ってんの? いつもは水辺でぱしゃぱしゃ遊んでるのに。角だけ出ててシュノーケルみたいになってる」

lw*‐ _‐ノv「えへへ」

ミ,,゚Д゚彡「シュシュったら、おちゃめな子っ」




 フサギコはシューを水から出して、水辺に座らせます。

ミ,,゚Д゚彡「あー気持ち良い」

 泳ぐフサギコに

lw´‐ _‐ノv「ねぇ」

 声をかけるシュー。

lw´‐ _‐ノv「こっちに……来て……」

ミ,,゚Д゚彡「うわなにその甘えた声可愛い。来たよ」

lw´‐ _‐ノv

ミ,,゚Д゚彡

lw´‐ _‐ノv

ミ,,゚Д゚彡「この間は、なに?」

lw*‐ _‐ノv「えいっ!」

 



 ぱしゃっと音がして、シューはフサギコの顔に水をかけます。

ミ,,゚Д゚彡「うわっなにこのカップルみたいなやりとり。やったなぁ! えいっ!」

 ぱしゃ。
 えいっ。
 ぱしゃ。
 えいっ。
 ぱしゃ。

lw*‐ _‐ノv

ミ,,゚Д゚彡

lw*‐ _‐ノv

ミ,,゚Д゚彡

lw* > _ <ノv「えいっ!」





ミ,,゚Д゚彡「なにその顔凄く可愛いあれシュシュが近――」

 ばっしゃーんっ! と音がして。
 フサギコは水の中、四本足に踏まれて、顔を角でつんつん、つつかれて。
 シューの左の後ろ足が、フサギコの股間のモンジャラから顔を出すマサラタウンの下、奇跡の袋に守られたハイパーボールを踏み潰していましたとさ。

 ゴポポポポッ!

 またもや物言わぬソレとなったフサギコは水の中、声にならない悲鳴をあげて――









ミ,,゚Д゚彡

 のしのし、のしのし。
 物言わぬソレから回復したフサギコは、森の中を歩きます。

lw*‐ _‐ノv

 とことこ、とことこ。
 後ろにはシューが。
 やはり妙に距離は近く、シューの角がフサギコのお尻をつんつん、つんつん、つんつん。

ミ,,゚Д゚彡「んー?」

 最近のシューは、少し変でした。
 ワカッテマスとの一件以来、離れない離れない。
 常に、フサギコの傍にいます。
 昔なら、一人で空を散歩したりもしてました。
 それが、今ではありません。





lw*‐ _‐ノv

 照れながらフサギコのお尻をつんつんするシューの姿。
 特に最近は、表情がコロコロ変わります。
 眠そうな目をさせながら、甘えたり、はしゃいだり。
 忙しい子になりました。

ミ,,゚Д゚彡

 フサギコはぴたりと足を止めます。

lw´‐ _‐ノv「どうしたの?」

ミ,,゚Д゚彡「隣、歩いて」

lw´‐ _‐ノv「え、うん」

 のしのし、のしのし。
 とことこ、とことこ。

 並んで歩く二人ですが、フサギコはちらりと地面を見て、思います。





 歩幅の狭い小さな足跡と、歩幅の広い大きな足跡。
 これが、綺麗に並ぶ事はないんだな、と。
 その足跡は、フサギコとシューが一人と一匹である事を証明しているかのようで――









 それは、冬が近付いてきたある日の事です。

ミ,,゚Д゚彡

 やはり広場の端に立つ大きな木の根元にもたれて座り足を伸ばす、フサギコの姿がありました。

lw´‐ _‐ノv

 隣に座って、やはり頭だけをフサギコの肩に預けるシューの姿もあります。

ミ,,゚Д゚彡「木の実、食べようか」

 立ち上がるフサギコ。
 フサギコの袋は、シューが望めばなんだって出てきます。
 でも、それがあってもフサギコは、木の実を食べるのです。
 それはただ、シューと一緒に木の実を探して、一緒に食べる。
 その時間が好きだったから。

 もしもこの時、フサギコが木の実探しをめんどくさいと感じて、袋から食べ物を出していたら。
 木の実を探しに、立ち上がる事がなかったら。
 きっとフサギコは――





lw´‐ _‐ノv「……眠い」

 そう呟いて妙にゆっくりとした動作で立ち上がる、シューの姿を知らないままでした。

ミ,,゚Д゚彡「また、眠いのか?」

lw´‐ _‐ノv「……うん」

ミ,,゚Д゚彡「そっ……か。眠り姫だなシュシュはほんと可愛い」

 そのシューの姿は、精一杯軽口を叩くフサギコの胸を、ほんの少しざわめかせて……。








 【第十六話:穏やかな、時間。穏やかだった、時間】





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