【第十七話】


 聖なる夜に、洋風な造りをした二階建ての一軒家の二階から、ぱりんと、音。

 ピンクを主とした可愛い飾り付けのされた、一人の少女の部屋。
 忍び込む影が二つ。

 ぱちりと、何かを押す音がして、影が薄オレンジの光に照らされます。

ミ,,゚Д゚彡「また窓ガラス割っちゃった。電気つけちゃった」

 そこに、ガラスを踏む音を鳴らす、フサギコがいます。

lw´‐ _‐ノv「そうだね」

 がりがりと壁紙を剥ぎながら、首を動かすシューもいます。

ミ,,゚Д゚彡「えっなんでまた入ってんの?」

lw´‐ _‐ノv「だって――」






 シューが言わなかったのか、フサギコが聞かなかったのか、その言葉の先はありませんでした。

 そしてその傍に――

「何してるの?」

 ベッドから体を起こす、ピンク色のパジャマ姿の少女が一人。

ミ,,゚Д゚彡「サンタですこんばんは」

lw´‐ _‐ノv「トナカイですこんばんは」

 きちんと挨拶をするフサギコとシュー。

 そして少女は

「サンタさん? トナカイさん? プレゼントくれるの!?」

 嬉しそうな声をあげて。





ミ,,゚Д゚彡「うん、あげるよ」

「本当に? じゃあ私、ヒマワリの花が欲しい! 沢山! ヒマワリの花を、冬に見たい!」

ミ,,゚Д゚彡「えっ」

lw´‐ _‐ノv「えっ」

「え、やっぱり無理なのかな?」

ミ,,゚Д゚彡「いや、そうじゃなくてね。ちょっと待ってね」

 実は、初めてだったのです。
 長い間生きてきたフサギコは、ある日シューに出会って、袋の使い方を知って、プレゼントを配ろうとしてきました。
 しかし忘れてはいけません。
 フサギコは落ちこぼれサンタ。
 いつも失敗ばかり。
 プレゼントを届けた相手が、右足の無い誰かの様に、変な人ばかりだったのも原因ですが。
 シュー以外の誰かに、その袋からプレゼントを出したのは、それが初めてでした。





ミ,,゚Д゚彡「はい」

「わぁぁ! 凄い!」

 ヒマワリの花束を受け取った少女は、大喜び。

ミ,*゚Д゚彡

 フサギコはそれが嬉しかったのか


ミ,*゚Д゚彡「もっとあげる」

 袋からヒマワリの花束を、ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん。

 あっという間に、ピンクだった部屋は黄色に染まりました。

 少女はわぁっ! と声をあげて

「ありがとう! サンタさん! トナカイさん!」





 とびきりの笑顔と一緒に、お礼を言います。

ミ,,゚Д゚彡

lw´‐ _‐ノv

 フサギコは

ミ,*゚Д゚彡

 照れて――

 シューは

lw´  _ ノv

 なぜか俯いて――









 しゃんしゃん、しゃんしゃん。
 夜空を翔ける一人と一匹。

ミ,*゚Д゚彡「嬉しいもんだな」

lw´‐ _‐ノv「……そうだね」

 フサギコは、胸の奥が熱くなるのを感じていて。

ミ,*゚Д゚彡「嬉しいな」

lw´‐ _‐ノv「……そうだね」

 何度も、そう言います。
 しかし、返事するシューの足は遅く、声も心なしか暗く。

ミ,,゚Д゚彡「あれ、なんか機嫌悪い?」

lw´‐ _‐ノv「……気のせいだよ」





 やはり、暗い声。
 しゃんしゃん、しゃんしゃん。

ミ,,゚Д゚彡「んー?」

 それから少しの沈黙があって

lw´‐ _‐ノv「嬉しいよ、嬉しいけど、さ」

 シューが口を開きました。
 首だけで、ちらりとフサギコを見るシュー。

ミ,,゚Д゚彡「ん?」

 赤い帽子に、赤い服。
 大きな体に、白い髭。
 だけどシューが見ているのは、お腹の前で宝物を守るかの様に大事そうに大事そうに抱えられた、大きな袋。
 中身は空っぽ。

lw´‐ _‐ノv「その姿、すき」

ミ,,゚Д゚彡「えっ」

lw´‐ _‐ノv「その袋は、いつもわたしだけの願いを聞いてくれた」





ミ,,゚Д゚彡「うん」

lw´‐ _‐ノv「いままではずっと、わたしだけの袋だった。わたしにとっても、宝物だった。わたしだけの、失敗ばかりする落ちこぼれサンタだった」

ミ,,゚Д゚彡「うん」

lw´‐ _‐ノv「なのに今日初めて、わたし以外の、願いを聞いて」

――わたしだけのものじゃ……なくなって。

 最後は俯いて、少しだけ肩を震わせたシューの姿。
 シューが言ったそれは、とても、とても子供地味たヤキモチで。





ミ,,゚Д゚彡「シュシュ」

 頭の悪いフサギコでも、なんとなくは理解ができて――

lw´  _ ノv「ん?」

ミ,,゚Д゚彡「なんか欲しいものある?」

 袋の中に手を入れて、聞きました。

lw´‐ _‐ノv「落ちこぼれサンタ」

ミ,,゚Д゚彡「……あれ、出ない」

lw´‐ _‐ノv「何でも出るんじゃないの? 嘘つきサンタ」

 じゃあ、と言って

lw*‐ _‐ノv「ヒマワリの、花束。あの子にあげたより、もっと沢山の」

 シューは照れ顔で、子供地味た願いを言います。

ミ,*゚Д゚彡「シュシュはめんどくさいトナカイだなぁ」

 言いながらもフサギコは、ソリに乗りながらヒマワリの花束を出します。
 ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん。
 沢山沢山、出しました。




lw*‐ _‐ノv

 シューは少しだけ、満足そうな顔をします。



 しかしその顔に乗せた朱は、フッと、消え去りました。



ミ,,゚Д゚彡「ん? あれ? シュシュ! なんか低――」



 フサギコが叫んだと同時。



lw;‐ _‐ノv「あれ、あしがうごかな――」



 ゆっくりゆっくり、シューとフサギコは、真っ白な雪の地面に向かって、落ちて行きました。



 どしんっ! と音がして、遅れて、沢山のヒマワリの花が、その場に倒れた一人と一匹の上からゆっくりと落ちてきて――









 聖なる夜に、しんしんと降る雪がありました。

ミ,;゚Д゚彡「シュシュ!!! シュシュ!!!」

 大声を出すサンタが一人。

lw´  _ ノv「……ぐ……う」

 倒れたまま動かなくなった、ほんの僅かに苦しそうな息をするだけの真っ白なトナカイを、抱いています。

ミ,, Д 彡「ちくしょう、ちくしょう。なんで俺だけ――」

 どうして、サンタは無傷なのでしょう?
 トナカイは動かないのに、サンタは無傷。

 それは、同じ不思議な生き物である、サンタとトナカイの、決定的な違いを示しているようで――





 サンタは、ありったけの力を込めてトナカイを背負い、歩きます。

ミ,, Д 彡「ほらシュシュ、おうちへ、帰ろう。一緒にお昼寝しよう。なぁ? シュシュ」

 小さな声をその場に残して、のしのし、のしのし。
 ゆっくりゆっくり、響く足音。
 後ろを追う、音は無く。

 歩幅の広かった大きな足跡は、今は狭く――

 しんしんと降る雪だけが、その背をずっと、見送っていました。





 【第十七話:大好きなキミを背負って歩くその足跡は狭く】





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