【第三話】


 深夜、聖なる夜に賑わう街。
 しかしこちらは、静かな空間。
 およそ一般的な一軒家が、そこにありました。
 二階の一室、からから、と窓の開く音がして、真っ暗な部屋に、小さく聞こえる寝息の音。

 すぅ、すぅ。
 ベッドの布団から頭だけを出して、気持ち良く眠る一人の少年。
 その側に、影。

 壁に掛けられた赤い大きな靴下の中、長細い一つの紙。
 取り出すのは、影。

『サンタさん。ぼくはくるまのラジコンがほしいんだ』

 紙には、火をつけられたミミズがのたうちまわった様な文字で、そう書かれていました。





 真っ暗闇の中、どうしてそれを読めたのか、影から鼻で笑う様な音がします。

「ガキはこれだから困ります」

 小声で呟いた影は、中身の詰まった大きな袋から一冊の本を取り出し、乱暴に靴下の中に突っ込みました。

 風が吹き、靡いたカーテンから、ほんの少しの月明かり。
 それが部屋を照らして、影が影ではなくなります。

( <●><●>)「世の中は学歴が全てです。誰もそれに抗えないのはわかっています」

 小柄なギョロ目のサンタが、そこにいました。






 もう一度部屋を月明かりが照らした時、彼の姿は既に無く、そこに残るのは一人の少年と、大きな靴下に突っ込まれた、分厚い数学の参考書だけでした。


 朝、その部屋には泣きわめく一人の少年がいましたとさ。










 しゃんしゃん、しゃんしゃん。
 雪の降る夜空を翔ける、一人と一匹。

( <●><●>)「もっと足を動かしなさい。ビロード」

 ソリに乗るのは、ギョロ目のサンタ。

(;><)「も、もうこれ以上はッ!」

 雪の降る中、どうしてか額に汗を流す、首に黄色い鈴をつけた体の大きな真っ黒なトナカイ。

( <●><●>)「……これだから使えないトナカイは。急ぎなさい。じゃないと」

――捨ててしまいますよ?

(;><)「……ッ!」

 一度俯いて、ふっと顔を上げた、ビロードと呼ばれたトナカイ。
 既にちぎれそうな四本足は、ぷるぷると震えています。





( <●><●>)「まったく」

 言うと同時、ギョロ目のサンタの耳に残る声。

――や、やめて。

( <●><●>)「使えないトナカイばかりです」

 かつて、犯した罪。
 しかしそれは、彼にとっては些細なもので――





   【第三話:突然のシリアス。このギョロ目は絶対にモテない。絶対ニダ!】





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