【第四話】


 やはりこちらも聖なる夜。
 しゃんしゃん、しゃんしゃん。
 鈴の鳴る音と共に、空を翔ける一人と一匹。

ミ,,゚Д゚彡「あー、眠ぃ眠ぃ」

 今度はちゃんと赤い服を着た、フサギコの姿。

lw´‐ _‐ノv「疲れた。お米食べたい」

 そう愚痴る、シューの姿もありました。

ミ,,゚Д゚彡「お、じゃあ帰る? 子供とかほっといてさ、俺と真夜中のオリンピックを開催しよう。ね? 布団の中でにゃんにゃんしよ――」

 トナカイに何を言っているのか、頭のおかしいフサギコからは、どうしてもやる気というものが見えません。





lw´‐ _‐ノv「……」

 シューはちらりと首を動かし、ソリに座るフサギコの姿を見ます。

ミ,,゚Д゚彡

 ぽかんと口を開いた、やる気の無さそうな顔。
 しかしその手には、まるで宝物を守るかの様に、大事そうに大事そうに抱えられた、大きな袋。
 中身は空っぽ。

lw´‐ _‐ノv「……」

 シューは何も言わず前を向いて、足を動かします。

ミ,,゚Д゚彡「もっとゆっくりでもいいんじゃね? いや、プレゼント届けるのがめんどくさいとかじゃなくて、ほら、俺って奴はロマンチストだから。シュシュと一緒に夜空の星達を――」





 軽口を叩くフサギコの頭にシューは、どこから出したのか大量のお米を浴びせます。
 それはそれはえげつない量のお米。
 お米っていうか、これでもかとばかりに沸き立つ湯気でその美しさをアピールする、炊きたてのご飯です。
 ツヤっと輝くふわっふわな純白の粒に、噛めばじんわり口内に広がるその甘み、はふはふ、はふはふ、そう言って食べれば笑顔が生まれる魔法のお米。
それはおそらく、コシヒカリ。

ミ,,゚Д゚彡「えっ、なんか地の文うざ――」

 それを顔面で受け止めたフサギコ。





ミ※※※彡「ぶぁっはっは! まだまだだなシュシュ! 俺を黙らせるにはもっと大量の――」

 顔一面に炊きたてのコシヒカリを貼付けたフサギコ。
 口からコシヒカリを飛ばす飛ばす。
 コシヒカリ、雪、コシヒカリ、雪。
 その光景は、シューのどこかをぷちっといわせます。
 直後、やはりシューはどこから出したのかフサギコの頭目掛けて、大量の炊飯器を降らせます。
 中にはやっぱりコシヒカリ。

「ぐッ、き、貴様はッ! 金か? 金なら払うだからやめっぐあぁぁぁぁぁ!」

 蝶ネクタイをつけた体は子供、頭脳は大人(笑)特技はぶりっ子(笑)な少年が鼻息荒々大喜びで走ってきそうな、サスペンス的な悲鳴が、辺りに響きました。









lw´‐ _‐ノv「……」

 しゃんしゃん、しゃんしゃん。
 首の鈴を鳴らし空を翔けるシューはまた、ちらりと首を動かして、かつてはフサギコだった物言わぬソレを見つめます。

ミ*゚゚ρ゚゚*彡

 何が何やらえらい事になっていて、可愛いシューもさすがに理解に苦しみます。
 ほんのり朱を座らせた頬が、フサギコの性癖がえげつないぐらいにおかしい事をばっちりアピールしていましたが。





lw´‐ _‐ノv「……ばか」

 前を向いたシューは言って、ちょっぴり笑います。
 なぜなら、かつてはフサギコだった物言わぬソレは、えらい目に遭いながらもしっかりと袋を抱えていたから。
 何も入っていない、大きな袋を。

lw*‐ _‐ノv「あ、お米の形のお星様だ。食べたい」

 どうしてか踊ってしまう胸をごまかすように、シューはそう言います。
 いつもとは違う、照れ臭そうな表情で。

 それはまるで、自分は今幸せだ、そう言っているような――




  【第四話:シューはとっても可愛いねぇ。可愛いねぇ。フサギコが羨ましいねぇ。羨ましいねぇ】





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