(-@∀@)とある眼鏡の蔵書目録のようです・SF(すこしふしぎ)版 3話  [前のページへ]  戻る  [次のページへ





川 ゚ -゚)そもそも私達が、あなた方の世界を知ったのは一冊の目録からでした。
    図書館の最奥部に置かれていた、全蔵書を記録するデータベースに一切情報の無い、孤独なその目録には、
    あなた方の図書館が誕生した経緯と蔵書、そして図書館の日常が記載されていました。

川 ゚ -゚)さらに不思議な事に、その目録は定期的に頁数が増えていったのです。誰も触れなくとも独りでに

(-@∀@)フムン

川 ゚ -゚)その本がただの創作物ではないと確信した矢先にひとつの事件がおきました。私達の図書館に保管されている蔵書が、消失し始めたのです

(-@∀@)消失?

川 ゚ -゚)文字通りです。書架に収められている作品が、データベースから消え、やがて書架からも消えるのです


(´<_` )我々は、件の目録と関連が無いか調べようと最新の頁を開いて、愕然とした。頁は作品ではなく、意味不明な文字の羅列で埋め尽くされていた

(-@∀@)…それには、思い当たる節があるな

(´<_` )諦めずに何か書かれて無いかと探していた我々が文字の羅列の合間に見つけた文章には、シベリア各所へ宛てたと思しき休館のメッセージを見つけ、直後に絶望しました

(´<_` )あなた方の図書館と我々の図書館は共に滅びるのだと

(-@∀@)…繋がっていたのか?世界が


lw´‐_‐ノv私達が思うにね、あなた方の世界が私達の世界を生み出したんだと思うの。影響されたのは私達のほうだし、なによりこの図書館で見つけちゃったんだよね

なにを、言い掛けたアサピーに一冊の本が突き出される。

lw´‐_‐ノvこの作品にさ、出てくるんだよね。私達が。私達の世界で起きた事が、ほんの一部だけれど、書かれてる

アサピーが手に取った本のタイトルと分類番号を見、内容を思い出す。確かに図書館は登場した。

(-@∀@)本から生まれる世界、ね…

川 ゚ -゚)当初私達は勿論、ありえないと考えなおしました。認められる筈ないじゃありませんか

(-@∀@)それはそうだな


lw´‐_‐ノvでも認めざるをえなかったの。消失が止まった頃、件の目録に変化があったから

(´<_` )この図書館が廃墟と化していた時、こちら側からは件の目録に増え続ける文字を追うだけで、どうしようもできなかった。しかし

(´<_` )廃墟と化してもなお、物語を語る人が居た。踏みとどまり、詩をうたう人が居た。景観を良くしようと草を植える人が居た。留まる人達を見守る人達も居た。廃墟に集まり交流を果たす人達も居た。諦観をぬぐい去り、立ち上がる人達が居た

(´<_` )そうして、目録の図書館が復活し始めるにつれて、私達の図書館は安定を取り戻したのです

(-@∀@)そんな事…いやまさか

川 ゚ -゚)ありえないと言いたいのは私達も同じです。しかし理解できないだけの事象を起きるはずがない事象に貶めるのはやめましょう、いつまでも話が終わりません

(-@∀@)ああ…まあそれは良いとして、私が居なければ君達の世界は生まれてないかも、と言ったね

川 ゚ -゚)…実は、私達の世界にも訪れたのです、私達の世界でもあなた方の世界でもない世界の、ブーン系小説シベリア図書館の職員が

(-@∀@)なんとまあ、驚いたろう

川 ゚ -゚)それはもう派手に取り乱しました。しかし得た物も相応でしたよ

川 ゚ -゚)彼らの話と私達の経験からするに…あなたが目録として分類してくれたおかげで、私達の世界は留まり続ける事ができている。多分、私達以外も含めて、物語から生まれた世界は別の誰かに保たれているから連続して存在できるのです

(-@∀@)…私はしかし、作品を執筆したわけではない

川 ゚ -゚)おそらく、重要なのは書かれ読まれる点ではない。特徴付けが成される点です。彼らは、小さな差であれ個性が有るから複数の異世界が同時に存在できる、と言っていました

(-@∀@)確かに私は区別し続けて来たがね

アサピーは、ぐるり周囲を見渡す。所狭しと並ぶ、本という形の物語がもしも全て同じデザインならば、図書館の本棚はただの壁に見えるかもしれない。

(-@∀@)ふうむ

アサピーは、シュールから受け取った本を机に置くと、ため息をひとつ。

(-@∀@)私はね、私は思うのだけれどね…つまりは観測できない宇宙と同じ事なんだ。とある年代まで多くの学者は地面が平らで、空は巨大な天井が張り付いているだけだと信じていた。だが実際、地面は丸く空はどこまでも続くし、遙か彼方には星がある


(-@∀@)現実を自身の世界に基づいて構築する人間は、観測手段がないと勝手にシュレディンガーの猫を作り出す。猫が最初から死んでいても無理矢理こじつけて

(-@∀@)だいたい、昔からよく言われている事だ、我々の存在する宇宙は、別の存在によって作られた宇宙だという話と同じような物だ。森羅万象が既知の文法と未知の文法どちらで書かれているか、というだけのこと

(-@∀@)単純な話だな。素直に君達を認めれば良かった

川 ゚ -゚)では…

(-@∀@)今までの非礼をお許しねがいたい、ブーン系小説シベリア図書館の皆様…私は目録を書くよりもあなた方と話がしたい

アサピーは三人に、右手を差し出した。



***



「私にとって本とは、文字数、ページ数、分類番号の複合体です」

「君の人柄を知るには目録を見れば十分なわけだお、たしかに」


***







―――柱時計が鳴かなければ良いのに―――






(-@∀@)…あれ?

(@∀@-)…

(-@∀@)…休憩室、か?ここは

( ^ω^)起きたかお

(-@∀@)館長?

アサピーは、休憩室のベッドの中に居た。

まるで、初めからそこに居たかのように。

(;-@∀@)あれ、さっきまで私は…ええ?

(;^ω^)どうかしたのかお?

(;-@∀@)いえあの…な、なんでもないです寝ぼけました

(;^ω^)珍しくてんぱってるから焦ったお…ところでアサピー

(;-@∀@)(落ち着け私)はい

(;´ω`)昨日の夜はごめんなさいだお、僕が勘違いしたせいで…

(-@∀@)いや、荒らされた特集の事はもう良いんです。それよりも私の方こそ館長を叩いてしまって…

( ^ω^)…えっ?

(-@∀@)えっ、て…館長?

( ^ω^)アサピー耳の穴かっぽじって良く聞くお

(-@∀@)はい



( ^ω^)荒らされた特集って、僕を叩いたって、いったい何のことだお



(-@∀@)



ノックが二回。
直後に休憩室の扉が開かれた。表れたのは長柄のモップを手にしたドクオ。

('A`)おっ、アサピーさんも起きたのか。さすがに昼前だものな

ベッドから飛び出したアサピーは、猛然とドクオの胸ぐらを掴んだ。
あまりに突然だったので、ブーンもドクオも戸惑うばかり。

(;^ω^)え、ちょ、おま、まてよ

(;'A`)苦しい…俺なんかしたの?

(#-@∀@)ドクオさんっ!!

(;'A`)はいぃっ!!

(#-@∀@)何処を掃除していましたか!?カウンター前の読書机に異常は!?図書館の出入り口は施錠されていましたかっ!?

(;'A`)サー!!自分はカウンター付近と読書机群の清掃を実行したのみであります、サー!!読書机群は目視において異常なし、出入り口は未確認であります、サー!!



思わず気を付けの姿勢で答えたドクオから手を放したアサピーは、たとえるならば名探偵と野次馬が密室のドアを破る時の勢いで、半開きになっている休憩室のドアへと突っ込んだ。





(;-@∀@)そんな…そんなっ!

廊下を疾走中のアサピーは、ふとツンを見つけ慌てて止まる。

ξ゚听)ξあらアサピーさん、おはようございます

(;-@∀@)おはようございます…ツンさん

ξ゚听)ξなんですか?

(;-@∀@)図書館の施錠、最後はいつされたか分かりますか?

ξ゚听)ξ最後?…なら、明け方にみんなでここに来た時じゃないかしら




答えを聞くなり再び走り出すアサピーの背中を、ツンは首を傾げながら見送った。

(;-@∀@)そんなバカな…さっきまで私は…

***

川 ゚ -゚)やっぱりギャグの王道は谷亮子ですよ

(´<_` )いや、俺はチ〇コだと思いますよ

lw´‐_‐ノv私は断然ガチムチを推すね!

川 ゚ -゚)あなたは?

(-@∀@)うむ、私は…やはり

(-@∀@)マ〇コかな

***


アサピーは走る。

(;-@∀@)あの三人と喋っていて…それで!



走りながら、先ほどまでしていたはずの会話を思い返す。


***

(´<_` )もう時間です

(-@∀@)お別れか

lw´‐_‐ノvそ。柱時計が鳴ったら、アっさんともグッバイさよならまた会えません

(-@∀@)柱時計…寄贈品のあれか

川 ゚ -゚)あの柱時計、ひょっとして館長あての文が刻まれていたりします?

(-@∀@)奇遇だな

川 ゚ -゚)おなじ文だと、良いですね

(-@∀@)ああ…本当にな

***


(;-@∀@)間違いなく握手を交わしたっ!

彼の記憶力が、一片の疑いを持つこともせずに叫んでいた。



話していた時間は決して長くない、また短くもない、しかし。
話していたのは紛れもない事実。

(;-@∀@)出会えたんだ、ここで!

走る勢いはそのままに目的の扉を開く。

(;-@∀@)はっ…はっ…

膝をつき、曇った眼鏡を外し、ひりつく喉を全開にしてアサピーは息を整えた。

(;-@∀@)ふうっ…よし
どうか、荒らされていてくれ。彼女達の痕跡があって欲しい。
アサピーは願い、『次世代に伝えるべきブーン系小説特集』だったはずのコーナーへ。



(;-@∀@)…嗚呼

果たして其処に並んでいたのは、『今月の新作一覧』であった。

立ち尽くすアサピーは、視界の端に小さな封筒を認める。

(;-@∀@)これは!



宛、ブーン系小説シベリア図書館殿。発、ブーン系小説シベリア図書館。

(;-@∀@)彼女達のか!

アサピーはすぐさま封を切り中身を取り出す。
しかし手紙は無い。写真も無い。入っていたのは、桜の花弁を押し花にした栞がひとつきり。

(-@∀@)…そうか…

(-@∀@)そっちのシベリアでも桜は咲くのだな…ありがとう



しばし栞を見つめていたアサピーは、ある事を思いついた。

***

3話終

***






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