ミセ*゚ー゚)リ「抱っこ!」

( ;^ω^)「えっ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ミセリをね、抱っこして高い高いーってして♪」

( ;^ω^)「そ、そんなのでいいのかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん♪」

ブーンはミセリの両脇に手を添えて抱え上げ、頭の上まで一気に持ちあげる。

( ^ω^)「たかいたかーい」

ミセ*゚ー゚)リ「わーい!もっと高くー!」

( ^ω^)「任せるおー!空高くー!」

ミセ*゚ー゚)リ「わーい!」

( ^ω^)「スカイハーイ!」

ミセ*゚ー゚)リ「楽しー!」

ミセリが束の間の疑似飛行を楽しんだ後、ミザリービジネスが呟いた。

[Φ皿Φ]「…取引成立、過去ハ変ワッタ。」

その瞬間、ブーンの体のダルさが一瞬で消え去る。

( ^ω^)「! おぉー!全然しんどくないお!ありがとだおー!」

ミセ*゚ー゚)リ「こちらこそ♪」

( ^ω^)「ほんと凄いスタンドだお!ミザリービジネスなんてとんでもないお!
      ハッピービジネスに改名したほうがいいくらいだお!」

[Φ皿Φ]「みざりーびじねすダ。」

( ;^ω^)「いやそうじゃなくて…まぁいいお。ミセリちゃんほんとありがとだお!」

ミセ*゚ー゚)リ「おにーちゃん遊ぼうよー」

( ;^ω^)「うー、ごめんだお。今日はちょっとドクオと用事があるんだお。」

ミセ*゚ー゚)リ「そっかぁ、わかった…じゃあミセリ、公園で遊ぼっと!またね!」

( ^ω^)「うん!まただお!」

ミセリに別れを告げブーンは軽快な足取りでドクオの元へと向かった。

(;'A`)「お、おいブーンお前ついに犯罪者予備軍を卒業でもしたのか…?」

( ^ω^)「その下りはさっきやったお!さぁ映画行くお映画ー!」

('A`)「映画たってお前その体調じゃあ…」

( ^ω^)「完治!」

('A`)「……」

( ^ω^)「キリッ」

('A`)「元気そうだな…おし、映画行くか!」

( ^ω^)「やっほーう!」



…映画鑑賞中。



映画館の扉が開き、客が一斉に外へと雪崩れ出てくる。
その中にブーンとドクオもいた。

( ^ω^)「あー、おもしろかったおー」

('A`)「ダークの中にあるピンク加減が絶妙だったな」

( ^ω^)「あの躍動感とストーリーは、さすが作者自らが制作指揮をとっただけあるお!」

('A`)「だなー作者の完璧主義加減が遺憾なく発揮されてたわ。」

映画館を出て横断歩道が青に変わるのを待ちながらも二人の映画談議は続く。

('A`)「しかしまぁよくあんな展開思いつくよなぁ」

( ^ω^)「ほんと溜め息出っぱなしだったお」

('A`)「全くだ」

信号が青に変わり、ドクオが一歩道路へと足を進めた。

キキキキィィィーーッ!

けたたましいブレーキ音と共に周囲がヘッドライトの明かりで一瞬で真っ白に変わる。




('A`)「え」




( ; ゚ω゚)「ドク―――」

ドゴォォーンッ!

金属が衝撃によって破壊される音が辺りに響き渡り、ドクオが宙を舞う。
まるで子供が悪戯に投げた人形のように力無く、宙をくるくると回りながら、ベシャリと落ちた。



     「ちょ!ええ!?」    「マジかよ!」

「事故だッ!男の子が一人轢かれたぞ!」  「見た今の!?」

   「おい!動かすな!」  「きゃー!」 「超飛んだ!飛んだよ!」

「救急車ー!」  ( ; ゚ω゚)「ドク…オ…」     「うわー…」

 「誰か119番!」   「急げ!」    「死んだなアレ…」

     「吐きそう…」   「うわああ!」



ドクオは動かない。
冷たい地面に横たわったままピクリとも動こうとしない。

( ; ゚ω゚)「ドクオ…?」

( A )

( ; ゚ω゚)「ドクオ…」

( A )

( ; ゚ω゚)「ドクオ!」

( A )

( ; ゚ω゚)「ドクオォォォーーーッッ!」

ブーンの必死の呼びかけにも全く答えない。
このギリギリの状況で、ブーンは一つの事を思い出した。

( ; ゚ω゚)「そうだお!心臓マッサージだお!」

(;-@∀@)「君!勝手に近付いちゃダメだ!危ないよ!」

その場に居合わせた男がブーンの前に立ち塞がった。

( ; ゚ω゚)「ドクオは親友なんだお!どいてくださいお!」

男を押しのけブーンはドクオの元へと駆け寄る。
ワカッテマスとの戦いで行った心臓マッサージをもう一度…

そうすればドクオはきっと助かる。
そう思いブーンはビートルズを出し、ドクオの体の中へと腕を侵入させる。

( ; ゚ω゚)`0ω0´)「ドクオ…ドクオ…」

ビートルズの腕がドクオの中を探っていく。
しかし、無い。
どこにも、心臓が無い。

( ;ω;)「……グチャグチャだお…ドクオの中が…」

外見の綺麗さとは違い、中は事故の悲惨さを物語っていた。
骨折、その他内臓損傷による、即死。

( ;ω;)「嘘だお…そんな…ドクオ…」

授業中に眠るドクオをどれだけこうして揺すって起こしただろう。
しかし今はドクオをいくら揺すっても起きることはない。

( ;ω;)「なんでこんな事に……ドクオォーッ!」

永遠に起きる事は無いドクオ。

( ;ω;)「こんなの…無いお…なんでドクオが…」

とめどなく流れる涙がブーンの頬を伝う。

( ;ω;)「折角、風邪を治してもらって…それで、映画を…楽しく…」

…過去を変えてもらおう。

ブーンの頭をその言葉が貫いた。

( ; ゚ω゚)「過去を変えるんだお…」

ミセリに頼んでミザリービジネスに過去を変えてもらう。
ブーンが出来る事は、もはやそれしか残されてはいなかった。

( ; ゚ω゚)「ミセリちゃん、公園で遊ぶって言ってたお!まだいるかもしれないおッ!」

ブーンはドクオに再び視線を送る。
ドクオは変わることなくただ横たわっている。

( ;^ω^)「ドクオ…すぐに過去を変えてくるお!」

動かないドクオにそう言ってブーンは公園へと急いだ。
荒々しく呼吸しながら公園までノンストップで駆け抜ける。
肩で息をするようになり膝が笑いだした頃にはすっかり日も落ち
辺りは暗くなっていたが、ブーンはなんとか公園に辿り着いた。

( ;^ω^)「はぁ!はぁ!ミ、ミセリちゃん!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、おにーちゃんだー!」

誰もいなくなった公園でミセリは一人遊んでいた。
滑り台のてっぺんに立っていたミセリがブーンを見つけて滑り降りてきた。

ミセ*゚ー゚)リ「どーしたの!遊んでくれるの?」

嬉々としてブーンの元へと寄ってくるミセリ。

( ;^ω^)「ち、違うんだお…ミセリちゃんまた過去を変えてほしいんだお!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、うん!いいよ!」

( ;^ω^)「ほんとかお!ありがとだお!」

ミセ*゚ー゚)リ Φ皿Φ]「何を変えたいの?」

( ;^ω^)「ドクオを死なないようにしてほしいんだお…」

ミセ;゚ー゚)リ「だ、誰か死んじゃうの!?」

[Φ皿Φ]「みせり、代償ハ?」

ミセ;゚ー゚)リ「んー…」

( ;^ω^)「良かったお…これでドクオが助かるお…」






ミセ*゚ー゚)リ「命かな」




( ;^ω^)「え?」

ミセ*゚ー゚)リ「おにーちゃんの命!それかおにーちゃんが好きな子の命か、お母さんの命でもいいよ!」

( ; ゚ω゚)「え、ちょっと…」

[Φ皿Φ]「……」

ミセ*゚ー゚)リ「誰の命にする?」

( ; ゚ω゚)「で、でも…テストと風邪の時は…」

ミセ*゚ー゚)リ「んーとねぇ…」

ミセリは先程の楽しそうな雰囲気から一変し、静かに落ち着き払った声で話しだした。


ミセ*゚ー゚)リ「ミセリはね、そんなのって凄く小さくてどうでもいいことだと思うの。
      命に比べればテストも風邪も、飴みたいにどうでもいいと思うでしょ?」


( ; ゚ω゚)「そんな…」

ミセ*゚ー゚)リ「どうする?おにーちゃん。」

( ; ゚ω゚)「そんなの…選べないお…そうだ!
      今度クマのヌイグルミをプレゼントするお!だから!」

ミセ*゚ー゚)リ「んぅ…それは出来ないよぉ…」

( ;^ω^)「な、なんで…」

[Φ皿Φ]「みせりハ、純粋ナ価値観ヲ持ッテイル。ソレハ決シテ揺ルガナイ。
      ダカラコソ、ソレハ代償ニナリウル。」

( ;^ω^)「なんでだお…なんでミセリちゃん…幸せな能力じゃなかったのかお…」

ミセ*゚ー゚)リ「?」

[Φ皿Φ]「人生トハ…」

( ;^ω^)「?」

[Φ皿Φ]「幸セト不幸デ差引0ナノダ。
      不幸ナ事ガ続イテモ、ソノ分イツカキット幸セニナレル。トカ言ウダロウ。
      ソウイウ事ナノダ、ぷらすまいなす0ガ世界ノ基本。」

( ;^ω^)「……」

[Φ皿Φ]「シカシ、オ前ハ幸セヲ自ラ呼ビ寄セタ。
      オ前ノ人生ハ歪ナ幸福ヲ受ケ入レタ事デ、同時ニ歪ナ不幸モ招キ入レタ。」

[Φ皿Φ]「ソレガ、コノ結果ダ。」

( ; ゚ω゚)「そんなの…テストと風邪だけでドクオが死んでたまるかおッ!」

[Φ皿Φ]「オ前ガてすとノ点ヲ変エタ事デ世界ハ微カナガラモ確実ニ、ズレタ。
      元々一位ダッタ者ガ、オ前ガ一位ニナッタコトデ二位トナリ、
      オ前ノ同級生ノ人生ノ順位ガ一瞬ダガ狂ッタノダ。」

( ; ゚ω゚)「そんな大げさな…」

[Φ皿Φ]「本来一位ダッタ者ガコレデ自信ヲツケテ数学者ヲ目指シタカモシレナイ。
      モシクハ両親ト一位ニナレバげーむヲ買ッテモラウ約束ヲシテイタカモシレナイ。」

( ; ゚ω゚)「……」

[Φ皿Φ]「オ前ハ、ソレヲ歪メタノダ。」

[Φ皿Φ]「歪メタ幸福ノ分ダケ歪ンダ不幸ガノシカカル、”悲惨ナ取引”」


[Φ皿Φ]「ソレガ私、みざりーびじねすダ。」

( ; ゚ω゚)「だからってドクオがなんで死ななきゃならないんだおッ!」

[Φ皿Φ]「今不幸カ?」

( ; ゚ω゚)「当たり前だおッッ!」

[Φ皿Φ]「ナラバ、ソウイウ事ダ。」

( ; ゚ω゚)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「おにーちゃん、どうする?やめとく?」

( ; ゚ω゚)「ミセリちゃん…」

ミセリの問いかけには一片の悪意も感じられない。
ただ純粋に聴いているのだ、純粋な意思で純粋な代償を。

( ;^ω^)「ブーンか、ツンか、カーチャン…」

選べるわけがない。
そんな事は言葉に出す前からわかりきっていることだ。
そして選択肢があるとすれば一つしかない。

( ;^ω^)「(ブーンしか、ありえないお…)」

ミセ*゚ー゚)リ「決めた?」

( ;^ω^)「……」

死にたくない、死にたくない。
でもドクオはもっと死んでほしくない。

( ;^ω^)「……決めたお。」

[Φ皿Φ]「……」

( ;^ω^)「…ブーn」


そう言いかけてブーンは口を真一文字に閉じた。

( ; ゚ω゚)「(ちょ、ちょっと待つお…過去を戻せるなら…)」

( ; ゚ω゚)「(ミセリちゃんと会わなかったことにしてもらえばいいんだおッ!
     そうすれば、こんな事にはならずに済むお!)」

[Φ皿Φ]「……」

( ;^ω^)「ミザリービジネス…ミセリちゃんと会わなかった事に出来るかお…?」

ミセ ゚ー゚)リ「えー!なんでー!」

( ;^ω^)「うっ…」

[Φ皿Φ]「可能ダ、可能ダガ…」

( ;^ω^)「?」

[Φ皿Φ]「オ前ノ不幸ハ変ワラナイ。会ワナカッタ事ハ幸福デモ不幸デモナイカラダ。
      オ前ガ歪ナ幸福ヲ手ニシタ事ニハ変ワリハナイ。」

( ;^ω^)「そんな…」

ミセ*゚ー゚)リ「会わないことなんてヤダー!おにーちゃんはミセリと友達になるんだもん!」

( ;^ω^)「……」

( ;^ω^)「(会わなかっただけじゃ不幸は変わらない…
      でも誰かの命なんて差し出せるわけがないんだお。)」

( ;^ω^)「(不幸を、変えるしか…ッ!)」

ミセ*゚ー゚)リ「おにーちゃん、大丈夫?」

[Φ皿Φ]「……」

(   ω )「(今思えばテストで百点なんてほんと下らないお…皆自分で頑張ってるんだお…
       それに風邪だって…映画は我慢すればよかったんだお…)」

(   ω )「(そのせいで、ブーンのせいでドクオは事故に遭ったんだお…)」

(   ω )「(ブーンの歪んだ幸福のためにドクオが不幸に……)」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ、ミザリー。おにーちゃん固まってるけどどうしたのかな?」

[Φ皿Φ]「悩ンデイル。ソレガ正シイ生キ方ナンダ。」

ミセ*゚ー゚)リ「ふーん、難しいね!」

[Φ皿Φ]「アァ。トテモ難シイ。」

(   ω )「ミザリービジネス…」

[Φ皿Φ]「ナンダ」

(   ω )「不幸と幸福は釣り合っているんだお?」

[Φ皿Φ]「アァ。」

( ;^ω^)「だったら!ブーンを体が動かなくて入院しちゃうくらいの病気にしてくれお!」

ミセ*゚ー゚)リ「え!?」

[Φ皿Φ]「……」

( ;^ω^)「ブーンが招いたの歪な幸福が全て不幸に変われば、
      ドクオが死んじゃう歪な不幸も変わる…そうだお?」

[Φ皿Φ]「アァ」

( ;^ω^)「ミセリちゃん、ブーンが何日も何日も寝込んで死にそうなくらい
       苦しい風邪をひく代償は何だお…?」

ミセ ゚ー゚)リ「そ、そんなの何ももらえないよぉ!だっておにーちゃん幸せじゃないもん!」

[Φ皿Φ]「…みせり、代償ハ必要ダ。」

ミセ ゚ー゚)リ「うぅ…やだよぉ…」

( ;^ω^)「ミセリちゃん、お願いだお…」

ミセ ゚ー゚)リ「だってそんなの道端の石ころだってもらえないよ!」

[Φ皿Φ]「道端ノ石コロ、ソレデイイナ?」

ミセ ゚ー゚)リ「…うぅ、ぐすん…」

[Φ皿Φ]「みせり」

( ;^ω^)「ミセリちゃん、お願いだお…」

ミセ ゚ー゚)リ「…わかったよ!二人のバカァ!」

( ;^ω^)「あっ…」

ミセリは一人遠くのブランコの方へと走り去ってしまった。
ブーンが苦しむ事を容認しなければならない自分が嫌になったのだろう。

[Φ皿Φ]「ソノ風邪ハ、イツカラニスルンダ?」

( ;^ω^)「数学のテストの前日から…」

[Φ皿Φ]「…正解ダナ。」

( ;^ω^)「ごめんだお…友達になる約束守れなくて…」

[Φ皿Φ]「アノ子ハ優シイ。イズレみせりノ周リハ常ニ人ガ集マルヨウニナルダロウ。
      ソレガ少シ、遅レルダケダ。」

( ^ω^)「うん!それは絶対にそうだお!」

[Φ皿Φ]「コレデオ前ハ数日間学校ニモ行ケズ、数学ノテストモ受ケラレズ、
      当然、映画モ観ル事ハ出来ナカッタ事ニナルダロウ。」

[Φ皿Φ]「ソシテみせりハ、当然オ前ト出会ワナカッタ事ニナリ、オ前ノ事モ忘レル。」

( ;^ω^)「うん…それが一番つらいお…」

[Φ皿Φ]「実ニ不幸ダナ、ぶーん。」

( ;^ω^)「本当に…胸が張り裂けそうなくらいだお…」

[Φ皿Φ]「…代償ヲモラオウカ。」

ブーンは足元に落ちていた小石を一つ掴んでミザリービジネスに手渡した。

[Φ皿Φ]「……取引成立、過去ハ変ワッタ。」

その瞬間、ブーンの頭に金槌で殴られたかのような鈍い衝撃が走った。

( ; ゚ω゚)「はぁ…かっ…頭、が…!」

次第に手足は痺れ出し、体は小刻みに震え体内を熱湯が駆け巡っているような熱さを感じた。

( ; ゚ω゚)「う…ハァ…ハァ…」

視界も徐々にぼやけてきて、立つことすらままならない。

( ω )「ぁ……」

そしてブーンは意識を失った。

ミセ*゚ー゚)リ「…あれ?なんでミセリこんなところで泣いてるんだろう…」

ブランコに座り泣いていたミセリはブーンに関する全てを忘れていた。

[Φ皿Φ]「サァ、ソロソロ帰ロウカ。」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!あれ、ミザリー…あれって!」

[Φ皿Φ]「……」

ミセ;゚ー゚)リ「ひ、人が倒れてるよー!!」

真っ白な世界に佇むブーンに誰かが話しかけてくる。
いや、呼びかけてくる。それもよく知っている声で。
ブーンは徐々に鮮明になる声に耳を傾けた。

「――ン!ブーン!」

(  ω )「お…?」

「ブーン!ブーン!」

( ^ω^)「お…?」

ブーンが目を開けると目の前には白い天井、そしてそれを覆うようにして…

J( 'ー`)し「ブーン!!」

( ^ω^)「あ、カーチャン…ここ、どこ?」

J( 'ー`)し「病院よ!アンタあんな高熱のまま外出して…死んだらどうするの!バカ!」

そういって力一杯に抱きしめられる。
その温もりの中でブーンは今までの事を思い出していた。

ここは…病院かお…そっか、ミザリービジネスのおかげで…あれ、なんで覚えてるんだお…

会ワナカッタ事ハ幸福デモ不幸デモナイ

だから、かお…?
わからないことだらけだお…
ブーンはテストの前日で高熱で寝込んでいたことになって…
それなのに外出して倒れた…ってことになってるのかお…?
ミセリちゃん、友達になる約束守れなくてごめんだお…
ミザリービジネス、ありがとだお…優しいスタンドだったお…
映画も、あれ…内容覚えてないお…そっか、観てない事になったのかお…
それに、ドクオ…ドクオは……

( ; ゚ω゚)「ドクオはッ!?」

J(;'ー`)し「な、何よ急に!ドクオ君?ドクオ君なら…」

J( 'ー`)し「さっきお見舞いにバナナ持ってきてくれてたわよ、ツンさんと。」

( ; ゚ω゚)「ほんとに…?」

J( 'ー`)し「嘘ついてどうすんのよw ほら。」

そういってカーチャンはテーブルに置いてあったバナナを指差した。

(   ω )「良かった…」

(  ;ω;)「本当に良かったお…」

J(;'ー`)し「ど、どうしたのブーン!まだしんどいの!?」

―数日後。

ピンポーン。

( ;^ω^)「ふおー!遅刻するおー!」

そう言いながらブーンは朝食をがっつく。

J( 'ー`)し「アンタ病み上がりなんだからあんまり騒いじゃダメよ?」

ピンポーン。

( ;^ω^)「わかってるお!モグモグ!
      カーチャンのクネドリーキはほんと最高だお!何につけても合うお!」

J( 'ー`)し「はいはい、喉詰まらせないでよー」

ピンポーン。

( ;^ω^)「ごちそうさまでしたおォッ!いってきますおー!」

全ての皿を綺麗に平らげてブーンは制服の上着を羽織りながら
妙に大きく膨らんだカバンを持って家から飛び出した。

( ;^ω^)「遅くなってごめんだお!」

( A )「ったくよー」

('A`)「何度俺にチャイム鳴らせんだ、気付いてないのかと思ったじゃねーか。」

いつも通りのドクオがいる、それだけで今までの病床での苦しみの全てが救われた。

( ^ω^)「ごめんだお!」

('A`)「ったく毎度毎度…はぁ…」

( ;^ω^)「うー…」

('A`)「…おはよ。」

( ^ω^)「! おはようだお!」

こうして二人で学校へ向かうことも久しぶりのことだった。
自然と会話が弾んでいく。

('A`)「そういやお前昨日電話した時は元気だったじゃねーか。なんで昨日来なかったんだよ。」

( ^ω^)「あー、ちょっと用事があったんだお」

('A`)「ふーん、まぁお前はこれから追試地獄だけどな。テスト期間に風邪引くなんて運がねぇなぁ」

( ;^ω^)「おっおっおっ、仕方ないお…」

('A`)「ま、ツンが勉強教えてやるって言ってたぜ」

( *^ω^)「ほ、ほんとかお!やったー!」

('A`)「アイツ何点取ったと思う?」

( ^ω^)「え?91点だお?」

('A`)「あれ、なんで知ってんだ?あーツンに聞いたのか?」

( ; ゚ω゚)「(あ!ブーンはあの日も休んでる事になってるから知らないはずなんだお…)」

('A`)「?」

( ;^ω^)「そ、そうそう…ツンに電話で聞いたんだお!」

('A`)「なるほどな」

( ;^ω^)「ふー…(なるほど…幸福や不幸に繋がる事以外は覚えてるんだお…
      だからテストの内容が思いだせないのかお…)」

その時、いつぞやのように一人の少女がブーンの目の前に現れた。


ミセ*゚ー゚)リ


( ; ゚ω゚)「……」

少女はブーンには一切気付かずにただ歩いている。

(;'A`)「ど、どうしたお前…あんな小さい子を凝視して…」

少女はどんどんと離れていき、角を曲がって見えなくなってしまった。

( ;^ω^)「ドクオ!ちょっと先行っててくれお!」

(;'A`)「え、お前…まさかついに犯罪を…」

ブーンはドクオにそう言うとミセリの元へと一直線に駆けて行った。

(;'A`)「……」



( ;^ω^)「ミセリちゃん!」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

[Φ皿Φ]「何ノ用ダ。」

ミセ*゚ー゚)リ「え?ミザリー…この人ミザリーが見えてるの!?」

ミセリは完全にブーンに対する記憶を忘れている。
しかしミザリービジネスだけはブーンを覚えているようだ。

( ^ω^)「見えてるお、一緒だおミセリちゃん。」

( ^ω^)`0ω0´)ズズズ…

ミセ*゚ー゚)リ「あー!ほんとだー!一緒ー!」

[Φ皿Φ]「何ノタメニ、アレホド苦シイ思イヲシタト思ッテイル。」

( ;^ω^)「わかってるお、ミザリービジネス。」

ブーンはパンパンに膨らんだカバンのファスナーをなんとか降ろし、
中を漁って大きなクマのヌイグルミを取り出した。

[Φ皿Φ]「……」

ミセ*゚ー゚)リ「あー!可愛いー!」

( ^ω^)「大きなクマがどこにも無くて昨日一日探し回っちゃったおw」

[Φ皿Φ]「…マタ過去ヲ変エニ来タノカ?」

( ;^ω^)「もう過去を変えるのは懲り懲りだお!」

ミセ*゚ー゚)リ「いいなぁ…ヌイグルミ…」

ミセリはブーンが持っているヌイグルミに夢中でミザリービジネスとブーンの会話はおろか、
あらゆる町の雑踏すら耳に入っていない様子だった。

( ^ω^)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「可愛い…触ってもいい?」

( ^ω^)「もちろんだお、これはミセリちゃんへのプレゼントだお。」

ミセ*゚ー゚)リ「え!ほんと!?」

( ^ω^)「ほんとだお。そのかわりっていうのは変な話だけど…」

ミセ*゚ー゚)リ「え?何何?」

ミセリは手渡されたヌイグルミを体全部で嬉しそうに抱きしめている。


( ^ω^)「ブーンと、友達になってほしいお」


ミセ*゚ー゚)リ「え…」

[Φ皿Φ]「……」

( ^ω^)「ダメかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「ダメじゃない!ミセリね、クマのヌイグルミも欲しかったけど友達はもーっと欲しかったの!」

( ^ω^)「ほんとかお!じゃあお友達になってくれるかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!」

クマのヌイグルミを抱きしめながら、今までで一番の笑顔を浮かべるミセリ。
その表情はとても幸福に満ち溢れていた。

[Φ皿Φ]「…ドウシテダ?」

( ^ω^)「お?」

[Φ皿Φ]「ナゼ、コンナ事ヲスル。」

( ^ω^)「ブーンは風邪を引いて追試になって映画も行けなくて、とーっても不幸になったお。
      でもそれはブーンのせいで誰も責めようなんて思わないし、思えるわけないお。」

[Φ皿Φ]「……」

( ^ω^)「でも…幸福と不幸が釣り合ってるなら」


( ^ω^)「ブーンの代わりに誰かが幸せになってくれればブーンはとっても嬉しいお!」


[Φ皿Φ]「…ソウカ。」

( ^ω^)「それだけだお!」

キーンコーンカーンコーン

( ; ゚ω゚)「はっ!チャイム鳴っちゃったお!遅刻するおー!」

( ;^ω^)「ミセリちゃん!また今度一緒に遊ぶお!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!おにーちゃんありがとー!」

( ^ω^)「おっおっおっw じゃあ今日はこれでバイバイだお。」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!バイバイ!」

( ; ゚ω゚)「遅刻するー!」

ブーンが去った後もミセリは嬉しそうにヌイグルミを抱えていた。

ミセ*゚ー゚)リ「……」

[Φ皿Φ]「ドウシタ?みせり…」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

[Φ皿Φ]「みせり?」

ミセ*゚ー゚)リ「ヌイグルミを持ったまま学校に行っちゃうと先生に怒られちゃうし
      ヌイグルミを家に置いたら遅刻しちゃうかもしれないね…」

[Φ皿Φ]「……」

ミセ*゚ー゚)リ「うー、どうしよう!難しいね!」

[Φ皿Φ]「フフ、ソウダネ」

(;'A`)「おい急げよブーン!」

学校へと駆けていると閉まりかけの校門の前でドクオが叫んでいた。

( ;^ω^)「ドクオ!待っててくれたのかお!?」

(;'A`)「お前が犯罪に走るんじゃねーかと思うと心配で学校入られねーんだよ!」

( ;^ω^)「ブーンは永遠に予備軍だお!」

そんな事を言いながら、なんとか二人して校内へと滑りこむ。

( ;^ω^)「せ、セーフ…」

(;'A`)「ふぅ…」

( ;^ω^)「今日は一時限目から体育だからそのまま更衣室行っちゃうお!」

('A`)「だな」

再び今度は更衣室へと走り出す二人。
その途中、何かを思い出したようにドクオが話し出した。

('A`)「あ、そういえばよぉ…映画のタダ券、また手に入ったんだが行く?」

( ;^ω^)「ほんとかお!何何?」

('A`)「鉄塔男っていう映画なんだけど、どうよ」

( ;^ω^)「鉄塔で女の子救って掲示板でアドバイスもらって最後はイチャイチャするのかお?」

('A`)「いや、鉄塔に住みついてる男に密着したドキュメンタリー映画。」

( ;^ω^)「……」

('A`)「どうする?」

( ;^ω^)「行く!」

('A`)「おっしゃ、じゃあ放課後な。ほれ更衣室まで急ぐぞー」

( ;^ω^)「ふおー!」

第五話「幸福への条件」終わり。




[Φ皿Φ]ミザリービジネス(Misery Business)
スタンド:代償と引き換えに過去を変える能力。
     代償はミセリの純粋な価値観で測られ、
     歪めた幸福は歪んだ不幸を引き寄せる。
     そして命の代わりは命でしかない。

 アメリカ出身のエモ系ロックバンド「Paramore」のアルバム「Riot!」収録曲。
 女性ヴォーカル、ヘイリーの力強い声で歌われる攻撃的な一曲。

戻る


前のページへ] 戻る [次の話へ