川 ゚ -゚) 「…む」
そこは、シロツメクサの花が一面に広がる野原だった。
川 ゚ -゚) 「…安っぽい花畑だな」
私はつま先でその白い花をつつきながら悪態を吐く。
しかし、耳を澄ますと心地よい風の音が聞こえ、
それは私の髪の毛を揺らして走り去っていく。
川 ゚ -゚) 「…悪くないな」
('A`)「クー様!」
突然の呼びかけに驚いて振り向くと、
そこには貧相な男が一人、立っていた。
その手には何故かシロツメクサの花冠が握られている。
川 ゚ -゚) 「…えーと」
誰だ。こいつ…。
絶対に見た事あるんだが…。
('A`)「ドクオです!クー様、今日我が家にいらっしゃったじゃないですか!」
川 ゚ -゚) 「ああ、そうだ。ドクオだドクオ。どうした?」
('A`)「クー様好きです!」
川 ゚ -゚) 「そうか。頑張れ」
('A`)「はい!それで、クー様にこれを!」
ドクオはそう言って私にシロツメクサの花冠を差し出す。
何をしているのだこいつは?
川 ゚ -゚) 「それは?」
('A`)「カンムリです!」
川 ゚ -゚) 「それで?」
('A`)「クー様は、これが欲しくてここにいらっしゃってるんですよ?」
川 ゚ -゚) 「は?どういう事だ?」
('A`)「恐れながら。クー様。ここが何処だかわかりますか?」
川 ゚ -゚) 「花畑。」
('A`)「いいえ。ここは夢の中です」
川 ゚ -゚) 「夢?」
あたりを見渡す。
咲き誇るシロツメクサ。
それを引き立てる鮮やかな緑。
川 ゚ -゚) 「違う。ここは夢ではない。野原だろう?」
('A`)「クー様…」
次の瞬間。
そこは殺風景な古ぼけた狭い部屋の中だった。
川 ゚ -゚) 「ここは…?」
('A`)「わかりませんか?」
川 ゚ -゚) 「いや…」
そこは、今日訪れた内藤が住んでいたというアパートの一室だった。
('A`)「クー様。これは夢です」
川 ゚ -゚) 「なるほど。おかしな夢だな」
('A`)「俺が、作りました。この夢は、俺の意思で動いています」
川 ゚ -゚) 「お前の?」
('A`)「だから、俺は、クー様が、何を望むか、知っています」
川 ゚ -゚) 「それが、その花カンムリか?」
('A`)「はい。でも、駄目でした。やっぱり、クー様は彼からこれが欲しいんですね?」
川 ゚ -゚) 「彼?」
('A`)「教えてあげません。そして会わせてもあげません。
俺は、初めて俺のために夢を作ります。
クー様好きです。そしてどうか目覚めるまでこの虚ろな夢を楽しんで下さい」
川 ;゚ -゚) 「おい!」
私の質問に答えぬまま、ドクオはその場から、文字通り消えてしまった。
取り残された私はその場に立ち尽くす。
足元を見ると土足だった。また、杉浦に怒られるかもしれない。
川 ゚ -゚) 「なんなんだ。一体…」
ドクオの言葉を思い出す。
「彼」。
ドクオは彼に会わせない、と言った。
会わせない。つまり、ここでドクオが望めば会うことが出来るという前提条件があるわけだ。
こことは?この夢の中?つまり、この夢の中にドクオと、私と、その彼は少なくとも存在している事になる。
川 ゚ー゚) 「…ふふ」
何を真面目に考えているのだ。馬鹿馬鹿しい。
所詮は、夢じゃないか。
私は踏み出す。とりあえずこの陰気な部屋から外に出て、夢の中を探索しよう。
もしかしたら、くだんの彼とも運良く接触出来るかもしれない。
川 ゚ -゚) 「これは…」
扉を開く。そこは、シロツメクサの花畑だった。
川 ゚ -゚) 「戻ったな…」
だが今度はドクオはいない。見渡す限り誰もいない。
確かに花畑は綺麗だが、探索しようにもこれでは面白みがない。
見渡す限りに人がいないんだったら、探しようもない。
川 ゚ -゚) 「つまらんなぁ…」
後ろを振り向く。いつの間にか出てきた筈の内藤の部屋はなくなっていた。
風が吹いてシロツメクサの波が走る。
心地よい葉摺れの音。緑の匂い。
川 ゚ -゚) 「東京に来ているのになぁ」
これではまるで自宅の近くの野っ原だ。
私はつくづく家から離れ難いらしい。因果な事だ。
その場に座る。一瞬、服が汚れるのが気になったが、どうせ夢だ。構いやしない。
目線がいくらか低くなったが、何も変わらない。
戯れにシロツメクサの花を一本、摘み取る。
そう言えばあのドクオのカンムリもこうやって一本一本摘み取って作ったのだろうか。
私は、二本三本とどんどん花を摘み取って行く。
その懐かしい感触に思わず、
思わず、昔の事を思い出した。
あの時も、こんな花畑で、遊んでいたんだ。
私と、ツンと、無理やりくっついて来た杉浦と、ツンに連れられてきた内藤と、
そして、たまたまうちに遊びに来ていたモナー君。
「お嬢様ー!走ると転びますよー!」
「お前だって走ってるじゃないか」
「ツン様!ツン様!お花のカンムリ作るお!!かぶせてあげるお!!」
「モナもカンムリ作るモナー!」
「じゃあ、私はブーンのおちんちん作るー!」
「ツン様!?」
「お前は作らんのか」
「我輩は作らなくてもついてます故」
「そうか…」
………。
冷静に考えるとロクな思い出じゃないな。
思い出した。あの後ツンが内藤の下半身を丸出しにして花畑を駆けずり回ったんだ。
「ツン様ー!ツン様ー!パンツ返しておー」
「駄目ー!私の作ったおちんちん入れるんだからー!」
「おーん!おーん!」
「出来たモナー!早速被るモナー!」
「お嬢様!虫を無差別に殺しちゃいけません!」
「無差別じゃない。殺したい虫を殺してるんだ。」
「お嬢様ー!」
「おーんおーん!!ブーンのパンツー!!」
なんだか、考えれば考える程地獄絵図じゃないか。
川 ゚ -゚) 「ん…」
体が急に重くなった。
酷い喉の乾きを感じる。
薄暗い。おぼろげに見える見覚えの無い天井。
いや、違う。知っている。
そうだ。ホテルだった…。
カーテンの隙間から光が差し込んでこないところを見ると夜になったらしい。
川 ゚ -゚) 「何時だ…」
枕元の時計を確認する。
夜と言うよりは、早朝と言った方が差し支えの無い時刻だった。
川 ゚ -゚) 「あれから何時間寝たのだ…」
そう言えば杉浦はモナー君に連絡をとってくれただろうか。
今日は彼に会いに行くんだ。きちんと、しなくては。
ああ、それにしても腹が減ったなぁ…。
あとで杉浦に頼んで何かさっぱりしたものを買って来て貰おう。
『…ね!死ね!』
その時。女の声が聞こえた。
『跪いて無様に死ね!足を舐めろ!どうした!そんな事も出来んのか負け犬!!』
『はははははは!!!醜いな!醜い姿だな!よくそんな姿で存在出来るな!よぉし私が殺してやろう!死ねぇ!』
なんだ?
私はベッドから飛び出す。声は向こうの部屋から聞こえた。
川 ゚ -゚) 「おい!!」
从 ゚∀从 『デフレスパイラルビーム!!
とどめだぁ!!ビルト・イン・スタビライザァアアアアアアー!』
そこでは、赤い髪の女が理不尽な飛び道具をぶっ放しながら戦っていた。
そして、それを映し出すテレビに噛り付いている杉浦がいた。
川 ゚ -゚) 「………おい」
(;ФωФ)「お。お、お、お嬢様…。お目覚めで御座いますか」
川 ゚ -゚) 「おい!」
(;ФωФ)「………てへ」
川 ゚ -゚) 「てへじゃない。何をしているんだ」
(;ФωФ)「テレビ鑑賞…」
川 ゚ -゚) 「何だそれは?」
(;ФωФ)「『経済ヴィーナスハイン様』」
川 ゚ -゚) 「そうか…」
(;ФωФ)「ち、違うんですお嬢様これは…えっと…」
川 ゚ -゚) 「何が違うんだ」
(;ФωФ)「ハイン様は普通のアニメじゃないんですよぅ。
作画、音楽、声優含めてもう芸術の域で…。そう、総合芸術なんです!!
特にハイン様の中の人のさーたんが最高なんです!!
まだ新人なんですけどハイン様の力強さと可愛さと、どえすっぷりと
ほんの少しのツンデレを、それはもうこれでもかって言うくらい見事に表現してて!!
そ、そうだお嬢様もご覧になればきっと良さをわかられるはずです!!」
川 ゚ -゚) 「………」
(;ФωФ)「………」
从 ゚∀从 『ふぅはははー!ケツの穴広げるしか能の無い豚どもめー!』
川 ゚ -゚) 「モナー君に連絡は?」
(;ФωФ)「はい。今日の午後5時に新都大学の裏手のファミレス「ぱっくりモンキー」に来てくれとのことです」
川 ゚ -゚) 「ありがとう。ご苦労だったな。ところで腹が減ったんだ。
その番組が終わってからでいいから、何かあっさりしたもの用意してくれ」
(;ФωФ)「かしこまりました。あ、ゼリーとプリンと桃缶なら冷蔵庫に入っておりますよ」
川 ゚ -゚) 「む。買っといてくれたのか。気が利くな。ではお前はもう少し音量を絞れ」
(;ФωФ)「はい…」
私は冷蔵庫からスポーツドリンクとプリンを取り出し、ソファに座る。
杉浦は私の方を気にしながらも少し音量を下げたテレビから視線を外そうとはしない。
川 ゚ -゚) 「録ってくれば良かっただろうに」
(;ФωФ)「お嬢様が急に仰られるから余裕がなかったので御座いますよ…」
川 ゚ -゚) 「そうか。悪かったな…」
(;ФωФ)「いえ…」
私はプリンに口をつけながらテレビを観賞する杉浦の背中を鑑賞する。
休みでもあまり部屋から出ない無趣味な奴だと思っていたがこんな趣味があったのか。
…今度、どこか公園にでも弁当を作らせてピクニックに行くか。
川 ゚ -゚) 「あ、おい。杉浦」
( ФωФ)「何で御座いますか?」
川 ゚ -゚) 「お前、もしかして秋葉原とか興味あるのか?」
(;ФωФ)「に゛ゃっ!?」
川 ゚ -゚) 「………悪かった」
(;ФωФ)「………申し訳ありません」
ああ、プリンは美味しいなぁ。
流石東京のプリンは一味違うなぁ。
( ´∀`)「おー。クーちゃん久しぶりモナ。杉浦君もー。元気してたモナか?」
( ФωФ)「お久しぶりで御座いますモナー様。モナー様こそお元気そうで何よりです」
川 ゚ -゚) 「うむ。モナー君、修士論文の方は順調か?」
( ´∀`)「おかげさまで今年度中には完成させられそうモナ」
( ФωФ)「それはよう御座いましたね」
(´<_` )「ご注文お決まりですかにゃー?」
川 ゚ -゚) 「私はこの『これでもかと苺を乗せましたハンバーグセット』を頼む」
( ´∀`)「あ、じゃあモナは『餓死したくない気持ちで作ったハンバーグセット』を」
( ФωФ)「我輩は『チーズハンバーグセット』を」
(´<_` )「以上でよろしいですかにゃー?」
( ´∀`)「よろしいですもにゃー」
(*ФωФ)(もにゃー)
( ´∀`)「しかしクーちゃんが東京に来るなんて珍しいモナ。観光にでも来たモナ?」
川 ゚ -゚) 「いや。内藤を訪ねに来たんだ」
( ´∀`)「内藤君?屋敷の使用人やめて東京に出てきてたモナ?」
川 ゚ -゚) 「ああ、でも死んでいた」
( ´∀`)「モナ?」
川 ゚ -゚) 「詳しい事はこれから調べる」
( ´д`)「モナ!?死んだって内藤君がモナ!?」
川 ゚ -゚) 「ああ。私も昨日知って驚いたんだ」
( ´д`)「それは気の毒に…。事故か何かモナ?」
川 ゚ -゚) 「わからないんだ」
( ´д`)「そうモナか…。ツンちゃんはこの事は?」
川 ゚ -゚) 「まだ伝えていない。帰ったら直接伝えるつもりだ。
あまり激しく落ち込まないといいのだが…」
( ´д`)「モナも!モナも一緒にお屋敷に行かせて下さいモナ!
ツンちゃんが心配モナ!あんなに仲が良かったのに…」
モナー君は身を乗り出さん勢いで私に詰め寄る。
ああ。ツンは慕われているなぁ。
( ФωФ)「モナー様。大学の方は…」
( ´д`)「文系の院生なんていてもいなくても一緒モナ!!」
川 ゚ -゚) 「気持ちは嬉しいが妹をそっとしておいてやって欲しいんだ。
きっと内藤の事を知ったら一人で泣きたくなると思う」
( ´д`)「モナ…」
(´<_` )「お待たせ致しましたにゃー」
( ´∀`)「あ、来たモナ」
(´<_` )「『これでもかと苺を乗せましたハンバーグセット』のお客様ー」
川 ゚ -゚) 「私だ」
( ФωФ)「苺でハンバーグが見えませんね…」
川 ゚ -゚) 「ふむ。美味そうだ」
(´<_` )「『餓死したくない気持ちで作ったハンバーグセット』のお客様ー」
( ´∀`)「モナモナ」
川 ゚ -゚) 「でかいな…」
( ФωФ)「でかいですね」
(´<_` )「『チーズハンバーグセット』のお客様ー」
川 ゚ -゚) 「普通だな」
( ´∀`)「普通モナ」
(;ФωФ)「普通を罪のように言わないで下さい」
( ´∀`)「食べるモナー」
川 ゚ -゚) 「そうだな」
それからハンバーグを食べながら、とりとめのない世間話を交わした。
モナー君はよく笑った。昔と何一つ変わっていなかった。
川 ゚ -゚) 「モナー君」
( ´∀`)「モナ?」
川 ゚ -゚) 「あの子が、ツンが落ち着いたら、是非尋ねてやって欲しい」
( ´д`)「もちろんそのつもりだモナ」
川 ゚ -゚) 「うん。頼む。モナー君」
( ´∀`)「任せるモナ」
川 ゚ -゚) 「うん。私は、君が好きだから、君と、家族になれるのは、とても嬉しい。
だから、頼む」
( ФωФ)「………」
川 ゚ -゚) 「今日は苺の森か…」
鬱蒼と生い茂る森の中だった。
大小様々な木々のそこかしこに苺がなっている。
('A`)「クー様…。今日は一段とメルヘンですね」
川 ゚ -゚) 「メルヘン?何がだ?そもそもこの夢はお前が作っているんじゃないのか?」
('A`)「いいえ。この夢はクー様と、彼のモノです。
俺はそれを繋ぎ合わせているだけに過ぎません」
川 ゚ -゚) 「ふむ。よくわからんが、ここが私の心象世界と言う事か…」
('A`)「そう言う事になります!」
川 ゚ -゚) 「苺が美味かったからな…」
('A`)「はい!それでクー様。今日はこれを」
彼はそう言うと編みかご一杯に入った苺を私に渡した。
川 ゚ -゚) 「いらん。そのへんにたくさんぶら下がってるからな」
('A`)「そうですか…」
川 ゚ -゚) 「それよりも、いい加減彼とやらに会わせては貰えないのか?」
('A`)「会いたいのですか?」
川 ゚ -゚) 「興味がある」
('A`)「俺じゃ駄目ですか?俺なら、今だけは、こんな事だって出来るんですよ?」
次の瞬間。
ドクオが大きくなった。
いや、極端に大きくなったわけじゃない。
ほんの少しだと思う。
しかし先ほどまでは、私とほとんど同じ目線だったのが、
今は見上げなくてはならない。
ξ゚听)ξ「どうした?小さくなって」
('A`)「これを」
そう言って、彼は私に小さい手鏡を渡す。
ξ゚听)ξ「…っな!?」
それは、妹の姿だった。
私の、たった一人の、可愛い妹の。
('A`)「クー様…。」
ξ゚听)ξ「お前は…何で…これを…」
('A`)「クー様が、ずっと望まれていた事です」
何を、言っているんだこいつは。
ξ゚听)ξ「お前は…。お前、は…」
('A`)「クー様。どうぞお手を」
手を差し伸べるドクオ。
私の上から。
私の上からの目線で。
('A`)「ここでなら、俺は何でもあなたの望む事を何でも。
クー様が好きなんです!あのどえすっぷりが正直たまらないんです!」
ξ゚听)ξ「………消えろ」
('A`)「え…」
ξ゚听)ξ「消えろぉ!!消えてしまえ!!私をかきまわすな!!私を見るなぁ!!!」
ドクオは一瞬、自分が何を言われているのかわからない、そんな顔をした。
手に持っていた苺のカゴを地面に落とす。色鮮やかな苺が私の足元にも広がる。
そして彼は、酷く傷ついた顔をすると、泣いた。
(;A;)「クー様…」
泣くな。やめろ。
吐き気がする。
川 ゚ -゚)「泣くな!カスが!泣ける人間が偉いとでも思っているのか!!
そうやって分かりやすく傷つけば許して貰えるとでも!?」
(;A;)「ごめ…なさ…クー様…俺…違…だって…クー様が…」
川 ゚ -゚) 「うるさい!!言い訳をするな!!言葉を重ねれば何かが変わるとでも思っているのか!?」
私は足元の苺を踏み潰しながら喚く。
彼は泣き叫ぶ。
ああ、いつもと同じだ。
これでは、私が。
(;A;)「あ、あぁああああああああ!!!」
川 ゚ -゚) 「やめろ!!その目で私を見るなぁああ!!!」
私が、
加害者ではないか。
次の瞬間。
そこには何も無い、ただ真っ暗な空間だった。
何も見えない。
ただ耳には、ドクオの断続的な泣き声が聞こえてくる。
「っぐす、…ぅ様ぁ…ごめん…なしゃ…ぐすっ嫌わないで…下さ…」
子どものような哀れな声を出すドクオ。
川 ゚ -゚) 「わかった…。だから、もう泣くな…」
「…ごめんなしゃい…許して…許してくださっ…」
川 ゚ -゚) 「…わかった。わかったから…」
「俺…ほんとに、クー様…好きで…だから…夢が繋がった時…嬉しくて…それ、で…」
川 ゚ -゚) 「もういい…」
「クー様ぁ…好き、なんです…ほ、ほんとに…」
川 ゚ -゚) 「お前は無様だな…」
「よく…言われます…」
川 ゚ー゚)「羨ましいよ」
「…クー様?」
川 ゚ -゚) 「そうやって、無様に、人に好きと言えたら、どんなにか良かっただろうな…」
「クー様…。ごめんなさい」
川 ゚ -゚) 「だからもういいと」
「彼に、会ってください」
次の瞬間。
そこはシロツメクサの花畑だった。
( ´∀`)「お、クーちゃんが来たモナ。待ってたモナー。何してたモナ?」
川 ゚ -゚) 「モナー君…」
彼、がいた。
シロツメクサの花カンムリを手に、こちらにニコニコと笑いかける。
( ´∀`)「じゃ、一緒に作るモナ」
川 ゚ -゚) 「作るって…何をだ?」
( ´∀`)「? 決まってるモナ。これだモナ」
モナー君はカンムリをぶんぶんと振り回す。
川 ゚ -゚) 「シロツメクサの花カンムリ…」
( ´∀`)「クーちゃん、これ、羨ましそうに見てたモナ。
作り方、教えて欲しいんだったらそう言えばいいモナ」
川 ゚ -゚) 「作り方…?」
( ´∀`)「そうモナ。一緒に作った方が楽しいモナ」
川 ゚ -゚) 「だって…そんなもの…私には…似合わない…」
( ´∀`)「モナ?」
川 ゚ -゚) 「似合わないのに…作っても…仕方ない」
ましてや、他人に被せて貰いたいなんて、そんな事は…。
( ´∀`)「クーちゃん何言ってるモナ?」
ニコニコと、モナー君はこちらを見つめる。
( ´∀`)「似合わないのは当たり前モナ。
こんなメルヘンで可愛い物が似合うのなんてそこらじゅう探しても、
このモナくらいしかいないモナ」
川 ゚ -゚) 「………」
( ´∀`)「………」
川 ゚ -゚) 「そうか。それなら仕方ないな」
( ´∀`)「そうモナ。わかったらとっとと作るモナ。
簡単だからすぐ出来るモナ」
川 ゚ -゚) 「うむ。ご教授願おう」
( ´∀`)「まずはこう、一本目の花に二本目の花を、くるってするモナ。
次はその二本目の花を押さえるように、くるってするモナ。
これの繰り返しだモナ」
彼が教えてくれた花カンムリは
本当に、笑えるほど簡単だった。
ああ、私は。
こんな簡単なものを、ずっと欲しがっていたのか。
川 ゚ -゚) 「モナー君」
( ´∀`)「モナ?」
川 ゚ -゚) 「好きだ」
( ´∀`)「ごめんモナ。モナはツンちゃんが好きだモナ」
川 ゚ -゚) 「うん。それは知っている。済まないな」
( ´∀`)「でも気持ちは嬉しいモナ。嬉しいからこれはご褒美モナ」
そう言って彼は私に作ったばかりの花カンムリを被せてくれた。
ちなみに彼が元々持っていた方の花カンムリは既に彼の頭の上だ。
川 ゚ -゚) 「ありがとう。しかし意地悪を言うとツンが好きなのは内藤だ」
( ´∀`)「知ってるモナ」
川 ゚ -゚) 「そうか知ってるか」
( ´∀`)「モナモナ」
川 ゚ -゚) 「…悪かったな」
( ´∀`)「何がだモナ」
川 ゚ -゚) 「意地悪を言って」
( ´∀`)「別に意地悪じゃないモナ」
川 ゚ -゚) 「うちの妹を頼む」
( ´∀`)「それはツンちゃんが決める事モナ。
落ち込んだツンちゃんを励ます事くらいは出来るけど、
それ以上はツンちゃんが望まないと踏み込めないモナ」
川 ゚ -゚) 「しかし君とツンとの結婚は決定事項だ」
( ´∀`)「子どもじゃないんだからモナもツンちゃんも結婚相手くらい自分で決めるモナ」
川 ゚ー゚) 「そうか…。そうだな…。私が、馬鹿だ…」
本当に、本当に私は馬鹿だ。
どうして、ツンが内藤と結婚したら、
自分がモナー君と、添い遂げられるなんて思ったのだろう。
川 ;-;) 「…あれ」
( ´∀`)「どうしたモナ」
川 ;-;) 「わからない…悲しい…んだ…どうして…」
( ´∀`)「…内藤君の事モナ?」
内藤。
内藤ホライゾン。
ブーン。
あのにやけ顔。
妙な喋り方。
妙に不味いお茶。
だらしない体型。
大事な大事な私の妹の、
幸せな、使用人。
彼がこの世にもういないと知ったら、
ツンは、どれだけ悲しむ事だろう。
川 ;-;)「そうだ…。内藤…気の毒だ…まだ、若かったのに…。
それに、どうしよう…ツンが、きっと悲しむ…」
( ´∀`)「モナがいるモナ」
川 ;-;)「頼む…本当に…繊細な子なんだ…私の、大事な妹…」
( ´∀`)「モナモナ」
川 ;-;) 「うわぁああああん!!」
風が吹く。
私が泣いていても、泣いていなくても、同じように、風は吹いた。
シロツメクサの花の波が、私の足をくすぐって、去っていく。
ああ、
ごめん内藤。
安らかに。
川 ゚ -゚) 「………」
( ФωФ)「お嬢様。お早う御座います」
川 ゚ -゚) 「お前、別室を取ったとか言ってなかったか?なんでずっと私の部屋に居るんだ」
(;ФωФ)「えっと…それは…」
川 ゚ー゚) 「冗談だ。ありがとう。感謝してる。」
(;ФωФ)「に゛ゃっ!?どうされたんですかお嬢様!?熱でも!?」
川 ゚ -゚) 「お前は…」
( ФωФ)「何か、良い夢でもご覧になられたんですか?」
川 ゚ -゚) 「…うん。そうだな。良い夢だった。ところで杉浦」
( ФωФ)「なんで御座いましょう」
川 ゚ -゚) 「お前、花カンムリ、作れるか?」
( ФωФ)「作れますよ?練習しましたから」
川 ゚ -゚) 「練習?」
(;ФωФ)「あ゛、に゛ゃ…」
川 ゚ -゚) 「やっぱりお前は馬鹿だな。杉浦。
…それにしても、私はそんなに花カンムリを物欲しそうに見てたか…?」
(;ФωФ)「えっと…そ、そりゃぁもう…」
川 ゚ -゚) 「そうか。悪かった。ありがとう」
(;ФωФ)「お嬢様ぁ…」
川 ゚ -゚) 「ふむ。ついでに聞いてもいいか?」
( ФωФ)「ええ。何でも」
川 ゚ -゚) 「私は内藤とツンが結婚したら、自分がモナー君と結婚出来るかもしれないと思ったんだ。
内藤は、許してくれると思うか?そしてお前は、こんな浅ましい私に、仕えられるか?」
( ФωФ)「お嬢様…」
ロマネスクが、いつもの困った顔でこちらをじっと見つめる。
川 ゚ -゚) 「どうだ?杉浦…」
( ФωФ)「お嬢様。震えておられます」
川 ゚ -゚) 「え?」
自分の手を見る。確かに小刻みに震えていた。
( ФωФ)「大丈夫で御座いますよ。内藤はそんな事で怒ったりするような人間ではありません。
使用人はそんな狭い心でやっていける仕事じゃありませんから」
川 ゚ -゚) 「杉浦…」
( ФωФ)「そしてお嬢様。使用人は人間です。完璧な主人など、恐ろしいだけです。
我輩は、お嬢様の浅ましさも、弱さも、そのクーデレっぷりも、愛しく思います」
川;゚ -゚) 「お、おおお、お前は何を言っている!」
(*ФωФ)「………ぽ」
川;゚ -゚) 「照れるな!!」
( ФωФ)「それよりもお嬢様。今日こそ家に帰られますよね?」
川 ゚ -゚) 「いや、帰らない」
(;ФωФ)「あぁああ…」
川 ゚ -゚) 「今日はねずみーらんどへ行く」
(;ФωФ)「へ!?」
川 ゚ -゚) 「そしてあれだ。ドクオ、いただろう?情報提供のお礼に彼も誘おう」
(;ФωФ)「それも冗談で御座いますかお嬢様…」
川 ゚ -゚) 「いや、本気だ」
(;ФωФ)「はぁ…それにしても何故にまたねずみーらんど」
川 ゚ -゚) 「ん?決まってるだろう?」
(;ФωФ)「はい?」
川 ゚ー゚)「夢の国、だからだよ」
('A`)ドクオが夢を紡ぐようです 第四話 了
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