('A`)ドクオが夢を紡ぐようです
ああ、なんかいいなぁ。こう言うの。
今頃一人ねずみーらんどでおおはしゃぎの弟者には一生わかるまい。
Ω Ω
( ´_ゝ`)「ええいアンドレは!アンドレはまだ出てこないのか!!」
(*゚∀゚) 「おー。ベル薔薇読んでたのか弟者ー。出来たぞステーキ」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「なんと」
美味しそうなステーキの皿を持ってつーちゃんがこちらに向かってくる。
俺はベル薔薇を本棚に戻すと、皿を運ぶのを手伝うために立ち上がった。
あらやだ何この共同作業。ラブラブ?ねぇ、私たちラブラブかしら?
もうカップル板に言って涙を流す事もなくなるのかしらん?
(*゚∀゚) 「さぁ食べてくれー」
Ω Ω
(*´_ゝ`)「うむ。頂こう」
つーちゃんは自分は箸を持つことなく、俺が食べるのを期待に満ちた目で待っていた。
俺は、箸でも食べやすいように一口大に切り分けられたステーキを口に含む。
濃厚なステーキソースの旨みに柔らかな牛肉の歯ざわり。
それらが口内で合わさって、そしてさらりと溶ける。
Ω Ω
(*´_ゝ`)「うまい!」
(*゚∀゚) 「本当かー!?流石タロベェだなー!!」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「タロベェもこんな料理上手なつーちゃんに料理してもらって幸せだな」
(*゚∀゚) 「照れるんだぜー」
それから二人でタロベェの人生に思いを馳せつつ夕食は和やかに進んだ。
二人の皿がおおかた空になるところでつーちゃんは、ずいと身を乗り出す。
(*゚∀゚) 「それでなー。弟者にお願いがあるんだぜー」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「ん?何だ?」
ほーら来たぞ来た来た来た来た。
見えるかいジョン!マイケル!ソニー!ついでに弟者!
そびえ立つこのフラグの雄雄しいことを!
夕日を受けて輝くその姿の美しいことを!
(*゚∀゚) 「ずっと、この部屋にいてくれないか?」
Ω Ω
(;´_ゝ`)「は?」
おぜうさん?
告白接吻性交倦怠期仲直りすっ飛ばしていきなり同棲ですか?
あなた、少し急展開すぎやぁしませんかねぇ?
(*゚∀゚) 「あひゃー。てゆーかな。弟者、今日からこの部屋から出ちゃ駄目なんだぜ?」
Ω Ω
(;´_ゝ`)「あー…なんだっけこーゆーの…」
なんか、喉まで出掛かってるんだけどさー。
俺、二次元でこーゆーの結構見てる気がするんだよー。
(*゚∀゚) 「あひゃひゃひゃひゃ。もしなー。逃げるようなことがあったら、痛い思いすることになるんだぜ?
もちろん弟者だけに痛い思いさせるわけにもいかないからその時は俺もお揃いの傷をつけるんだー。
弟者が逃げようとするたび、お揃いの傷が増えて二人の愛も深まるって寸法なんだぜ?
でも、もちろん弟者が逃げないってわかってるけどなー。でも、なんにしろ愛に間違いや障害は付き物だからなー」
あーあーあー。思い出した……。
Ω Ω
( ´_ゝ`)「ヤンデレだ…」
大人の階段一段目。思ってたよりもきっついなぁ……。
それにしても、いつもこんな世界にいるリア充は凄いな。
流石、リアルが充実してるだけあるぜ。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ。
その時、妙な静寂に支配されていた部屋に俺の携帯電話のバイブ音が響き渡る。
それはタイトル、本文共になしの素っ気無いメールで、唯一添付ファイルの画像が一枚だけついていた。
それは多くの電飾に飾られたねずみーのパレードが鮮やかに映し出された見事な一枚だったが、
当然の如くその携帯電話は希代の萌え娘、つー嬢により逆パカ(携帯電話を通常開く方向と逆方向にパキっとする技)され、
その後永遠の沈黙を約束される事となる。
Ω Ω
( ´_ゝ`)「卵子作戦……失敗だったな……」
(*゚∀゚) 「あひゃひゃひゃ。それよりも弟者一緒にテレビ見ようぜテレビー」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「うむ。こうなれば深夜のアニメまで付き合ってもらおう」
(*゚∀゚) 「なんだー?深夜にアニメなんかやってるのかー?」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「この世には夜中にアニメを見る、大きいお友達と言う種族がいるんだよ」
(*゚∀゚) 「そうかー。弟者は大きいお友達なんだなー。でも弟者はお友達じゃなくて恋人だからなー」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「あーそれなんだけどさ。俺、弟者じゃなくて、双子の兄の方の兄者なんだけど、帰っていい?」
(*゚∀゚) 「そんなつまらない冗談言うと、悲しくて泣いちゃうぞー?」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「ですよねー」
(*゚∀゚) 「次言ったら背中にカッターで『嘘吐き』って書くからなー」
Ω Ω
(;´_ゝ`)「ハイワカリマシタ。ボクウソツキマセン」
(*゚∀゚) 「なーところでその耳いつまでつけてるんだー?可愛いぞー?」
Ω Ω
( ´_ゝ`)「耳?」
(*゚∀゚) 「弟者はおっちょこちょいだなーもー」
つーちゃんは手を伸ばして俺の頭の耳を外してくれた。
え?俺これつけてさっきまで生活してたの?
(;´_ゝ`)「やっちまったぜ……」
拝啓家族様。
彼女いない暦21年のこんな俺にも、
可愛い恋人が出来ました。
('A`)「あれ…?また弟者…?」
( ´_ゝ`)「よう。ソウルブラザー」
そこは大学の構内だった。
玄関ホールの掲示板の前。貧相な男がこちらを訝しげに伺っている。
('A`)「あっちにも弟者でこっちにも弟者…?あれ?」
( ´_ゝ`)「そんな事よりも早くあの美人との関係を教えろ。
何をどうすれば美女にムサい男二人と言うエロ同人みたいな布陣になるのか、
気になって夜も眠れないではないか」
(;'A`)「いや…寝てんじゃん…」
( ´_ゝ`)「ああ。しかも可愛い子の添い寝つきだった。
手首縛られたのには驚いたが、あれはあれでとても良いものだ。
今日は総合的に見ればご褒美の方が多かったから良しとしよう。
明日は……わからんが」
(;'A`)「なんだかわからんけど……。どうしたの?」
( ´_ゝ`)「なんでもない。『二次元の属性を持った女が実際にいると立派な困ったちゃん』と言う教訓を身をもって体験しただけだ。
お前、なんだかわからんが弟者の友達だろう?しばらく帰らないが心配ないと伝えておいてくれ。
何しろ連絡手段も破壊されてな。せめてパソコンがあれば良かったんだが……」
Ω Ω
(´<_` )「人の友人にちょっかいを出すとは流石だな兄者」
( ´_ゝ`)「なんだ弟者来てたのか。それならそうと早く言えばいいものを」
(;'A`)「あれ!?弟者が二人……」
( ´_ゝ`)「どうも。格好よくて遊園地に一人で遊びに行ったりしない方の弟者こと兄者です」
Ω Ω
(´<_` )「だから言ったろう?ドクオ、あれから何度言っても双子だと信じてくれなくて、俺はちょっと泣きそうだったぞ」
(;'A`)「ごめん…。だって見たことなかったから…お兄さん」
Ω Ω
(´<_` )「まあ、今納得してくれればそれでいいさ」
( ´_ゝ`)「それよりも弟者。俺は事情によりしばらく帰らないが心配しないでくれと母者に言っといてくれ」
Ω Ω
(´<_` )「把握した。なるべく早く帰れよ」
(;'A`)「えっとさ……。普通に話してるけど……これ夢だよ?」
( ´_ゝ`)「それがどうした?」
Ω Ω
(´<_` )「別に夢だろうと話すくらい、いいじゃないか」
(;'A`)「いや、そうだけど……実はこれ、夢だけどさ、夢じゃないんだよね」
( ´_ゝ`)「お前はどこのトトロだ。メイちゃんのパンツで抜くのだけは許さんぞ」
Ω Ω
(´<_` )「落ち着け兄者。とりあえず事情を説明してくれ。兄者も、ドクオもな」
( ´_ゝ`)「別に説明する事など何も無い。ちょっとヤンデレの子に愛されちゃっただけだ」
(;'A`)「えっと……俺は……他人の夢を繋げる事があって……それで……」
Ω Ω
(´<_`;)「お前ら……。そう言うのは中学二年生までに終わらせておかないと恥ずかしいぞって習わなかったか…?」
(#´_ゝ`)「誰が中二病だ」
(;'A`)「ごめんなさい……あ、なんか俺今、素直に傷付いたわ……」
( ´_ゝ`)「まあ、あれだ。案ずるな」
Ω Ω
(´<_` )「無事に帰って来いよ」
( ´_ゝ`)「善処する」
Ω Ω
(´<_` )「ん」
( ´_ゝ`)「あとお前耳つけっぱなしだぞ」
Ω Ω
(´<_` )「大丈夫。わざとだから」
( ´_ゝ`)「そうか。変態だな」
Ω Ω
(´<_` )「違う。夢見る年頃だと言ってくれ」
( ´_ゝ`)「わかった。変態だな」
Ω Ω
(´<_`#)「違うと言っておろうに!」
(;'A`)「………」
(*゚∀゚) 「おはよう弟者ー。よく眠れたかー?」
ああ、夢だったんだよなぁ。
可愛らしいおにゃのこが包丁片手に起こしてくれるシチュエーション。
( ´_ゝ`)「んなわけあるかい」
包丁に驚いて折角のモーニング勃起も萎む思いなんだぜ。
全く朝からハードだなぁ。俺の可愛いつーちゃんは。
(*゚∀゚) 「ん?緊張してあんまり眠れなかったのか?実は俺もなんだぜ。お揃いだなお揃いー」
( ´_ゝ`)「つーちゃん…?その包丁は…?」
(*゚∀゚) 「ああ、朝ごはん作ったんだー。ご飯と目玉焼きと玉子焼きにしてみたんだぜー。
顔洗ったら一緒に食べようなー」
( ´_ゝ`)「あれ?それ心なしか卵率高くないか?」
(*゚∀゚) 「目玉焼きと玉子焼きどっちにしようか凄く迷ったんだー」
( ´_ゝ`)「そうか。ところで手首の縄ほどいてくれないか。これだと顔を洗えない」
(*゚∀゚) 「わかったんだぜー」
つーちゃんは包丁を片手に素直に縄をほどいてくれた。
うむ。高感度アップだ。
( ´_ゝ`)「洗面台借りさせて貰う」
(*゚∀゚) 「あひゃー。メンズ用の洗顔フォームも用意してあるんだぜー」
( ´_ゝ`)「用意がいいな」
(*゚∀゚) 「あひゃひゃ。ずっと用意してたからなー」
( ´_ゝ`)「そうか。男なんて石鹸で十分なのにな」
(*゚∀゚) 「そうなのかー。なぁなぁ弟者ー?」
( ´_ゝ`)「何だ?」
(*゚∀゚) 「愛してるんだぜー?」
( ´_ゝ`)「知っている」
(*゚∀゚) 「…あひゃー♪」
だけど、残念だったねつーちゃん。
君の事はとても可愛いけれど、
俺と弟者も見分けられない人間が俺の事を、
愛せるはずなんてないだろう?
(*゚∀゚) 「なぁなぁ。今日は俺も講義ないからずっと一緒にいられるんだぜー」
( ´_ゝ`)「俺も引きこもるの大好きだから一緒にいられるんだぜー」
(*゚∀゚) 「あひゃー♪一緒だな」
( ´_ゝ`)「うむ」
(*゚∀゚) 「何する何するー?」
( ´_ゝ`)「アンニュイな言葉しりとり」
(*゚∀゚) 「わかったー。でもその前にご飯を食べなきゃなー」
( ´_ゝ`)「うむ」
朝ごはんを食べてアンニュイな言葉しりとりをしながらテレビを見る。
NHKの教育番組を鑑賞しながらのアンニュイな言葉しりとりは中々にシュールで悪くなかった。
つーちゃんは時折擦り寄ってきては頭を撫でろと命令する。とても可愛い。
そして包丁やらカッターやらをちらつかせては一緒にいろと命令する。とても可愛い。
(*゚∀゚) 「ずぅっと一緒なー。弟者はこれから俺以外と話しちゃ駄目なんだからなー」
( ´_ゝ`)「泣き寝入り」
(*゚∀゚) 「リュックあるだろー。弟者が持ってきたやつー。あれ、弟者が寝てる間に捨てちゃったけど許して欲しいんだぜー」
( ´_ゝ`)「喘息持ち」
(*゚∀゚) 「超迷ったんだけどなー。でも、俺以外の女の声の入ったCD入ってたから我慢できなくてごめんなー。」
( ´_ゝ`)「生肉」
(*゚∀゚) 「繰り返すんだけど、弟者これから俺以外と話しちゃ駄目だからなー。
退屈だろうからテレビだけは見ていいけど、部屋から出るのも駄目だからなー」
ああ、弟者。
俺、すげぇ愛されてるわ。
お前に代わって欲しいくらいだぜ。
( ´_ゝ`)「なぁ、つかぬ事を聞くけどさ。俺のどこが好きなの?」
もとい、弟者のどこが好きなの?
我が弟は今でさえリア充の皮を被っているが、
昔は俺以上の立派な引きこもりの上、
酷いどもりでツッコミも満足に入れられない、へたれだったと言うのに。
何ゆえこのように情熱的に愛されているのか。
(*゚∀゚) 「んー。弟者はなー。凄いんだー」
( ´_ゝ`)「そうか凄いか。流石だな」
(*゚∀゚) 「覚えてるかー?ゼミで会ってなー。初めて話した時なー。
俺が可愛くないから彼氏が出来ないんだーって言ったらなー。
その時弟者『どうしてそう思うんだ?』って聞いたんだー。
俺びっくりしたんだー。普通はなー。『そんなことないよー』ってお世辞言ってなー。
みんな俺を騙すのになー。弟者は凄かったんだー」
( ´_ゝ`)「そんな…事、あったのか?」
(*゚∀゚) 「覚えてないのかー?」
( ´_ゝ`)「いや…覚えている」
俺は記憶の糸を探る。
扉の向こうの弟者。
その頃には、まだあてがわれていた一人部屋の中で、
小さくなっているであろう弟の、小さな小さな声。
『だ、だ、だだって……お、おお俺が行ったら、み、みんな……わら、わ、笑う、んだ』
『なんて?』
『ま、まままた、あに、あ、兄者の、に、ににせ、偽者が、来たって……』
『偽者?』
『あ、あ、あ、兄者と、そ、そそそっくり、なのに、お、お俺、
う、うううまく、喋れなくて……。べ、勉強も、うんど、運動も……』
『そうか』
『お、おお、俺、だか、だから、だ、だ駄目、だから、ああ兄者と、違う……』
思い出す。
その時ちりちりと、俺の胸を焦がした、いらつき。
下らない妄言で、弟の居場所を奪った学校の馬鹿どもと、
俺の存在ごときに打ちひしがれてる馬鹿な弟と、
そして、大事な弟を、『偽者』にした俺自身の存在に対する、怒り。
『どうして、そう思うんだ?』
次の日から俺は、どうしたかと言うと、学校で土下座した。
目に付いた女子に、片っ端から縦笛を舐めさせてくれと土下座しまくった。
そしてそれを弟者の部屋の前で誇らしげに語る。
今日は二組の○○ちゃんが一時間半に渡る土下座の末、少し舐めさせてくれた。凄かった。
お兄ちゃんもうエレクチオンしまくり。弟者にもこの興奮を味わわせてやりたいのに残念だ。
早くお前も学校に来ればいいのに。一緒に土下座しようぜ。楽しいぞ。
弟者。泣き叫んでた。
そしてそんな生活が一週間ほど続いた後、弟は学校に来た。
何故かどもりも改善されてた。
必死で俺の行動を止めようとしていた。
しかし俺の関心はもう、馬鹿な弟などから、女子の縦笛へと移った後だったので、
彼のツッコミは、小鳥のさえずり、川のせせらぎ、タモリの知識自慢のように右から左に抜けていく。
益々ツッコミが激しくなる弟者。
鋭いアッパーをかまして俺をダウンさせる弟者。
ついにマウントまで取り出す弟者。
マウントを取られついでに女子のスカートを覗く俺。
目潰しにかかる弟者。
目を潰されたので、がむしゃらに腕を動かして女子の太ももを触ろうとする俺。
両手をがっちり掴んで鈍い音が鳴るまで捻ろうとする弟者。
なんだかこいつ、母者に似てきたなぁと薄れかけた意識で思う俺。
……懐かしいなぁ。
(*゚∀゚) 「だからなー。弟者は凄いんだー。誠実なんだー。だから恋人なんだー」
( ´_ゝ`)「マウントとるけどな」
(*゚∀゚) 「マウント?」
( ´_ゝ`)「何でもない」
(*゚∀゚) 「それでな。それでな。今日は何食べたいんだー?昼ごはんはな。オムライスにしようと思うんだけどなー。
晩御飯はな。まだお肉が余ってるからそれで何か作ろうと思うんだぜー?何がいい?何がいい?」
( ´_ゝ`)「オムライス」
(*゚∀゚) 「それじゃーオムライス続いちゃうだろー。わかったじゃあ、牛丼にするんだぜー。
卵落としてなー。美味しい奴作るからなー。楽しみにしててなー」
(;´_ゝ`)「卵率高いなぁ……」
それは、ケチャップで『弟者のエサ』と描かれたオムライスを食べ終わってすぐの事だった。
『ごきげんよう』を鑑賞していた俺たちの平和を打ち破る、チャイムが鳴った。
つーは動かないで声もあげないように、との命令を出し玄関へと急ぐ。
(*゚∀゚) 「どなたですかー」
「お届けものでーす」
(*゚∀゚) 「はいはい今開けまーす」
ガチャリとドアが開いて荷物のやり取りをする音が聞こえる。
その後つーちゃんは満面の笑みを浮かべて戻ってきたー。
(*゚∀゚) 「実家からまた食料届いたんだぜー。これで買出し行かなくてもいいなー」
( ´_ゝ`)「引きこもり放題だな……」
それから、ベルサイユの薔薇を全巻読破したり、牛丼を食べたり、
芸人が切り売りされているお笑い番組を横目に二人で大富豪をしたり、
続き物で展開がなんとなく想像出来るドラマを眺めているうちに夜になった。
希代の萌え娘であるつーちゃんは、膝の上に乗って来ては俺に頭を撫でさせたり、
『愛してる』だの『傍にいる』だの単調な台詞を吐かせては喜んでいたが、
残念ながら俺の息子はそんな事で満足したりしないわけで。
折角人生に一度あるかないかのヤンデレイベントだと言うのに。
時折刃物片手に見せるどS発言と、本気で殺る目だけがご褒美だと思うと……。
( ´_ゝ`)「割に合わん……」
(*゚∀゚) 「んー?どうしたー?手首痛かったかー?もうちょっと緩めて縛るかー?」
( ´_ゝ`)「問題ない。むしろもっときつく縛ってくれ」
(*゚∀゚) 「よし来たー」
(*´_ゝ`)「あぁん」
いやでも、これはこれで悪くないかもわからんね……。
そして、今日発見した事実。
パソコンがなくても、結構時間は潰せる。
そこは、大学のゼミ室だった。
窓際にはソウルブラザーがこちらを向いて立っている。
( ´_ゝ`)「よう。ソウルブラザー」
(;'A`)「あ、大丈夫?もしかしてさ。結構大変な事になってるんじゃない?」
Ω Ω
(´<_` )「こいつは心配いらん。ドクオ」
(;'A`)「だって携帯も通じないんだろ?俺も大惨事になったら責任感じちゃうし……」
Ω Ω
(´<_` )「全く……。こんな変態捨て置けばいい」
(;'A`)「それなんだけどさ。君ら。不思議じゃないの?」
( ´_ゝ`)「何が?」
(;'A`)「いや、夢がさ、繋がってるの……。会いに行ったら弟者も普通に受け入れてるし……」
Ω Ω
(´<_` )「まあ、そんな事もあるだろう」
(;'A`)「ああ、そう……」
( ´_ゝ`)「考えてもみろ。俺と弟者だって違う人間だと言うのに、高々血が繋がっている、
それだけの理由でこんなにそっくりなんだ。そっちの方が不思議じゃないか?」
Ω Ω
(´<_` )「世の中不思議でいっぱいだ」
(;'A`)「それでいいの?」
( ´_ゝ`)「構わん。それよりも未だにねず耳つけている変態にどう制裁を与えるか我々は考えるべきだ」
Ω Ω
(´<_` )「夢の世界くらい、自分を解き放つ必要があると思う」
( ´_ゝ`)「わかったから誇らしげな顔をするな。不快だ」
(;'A`)「えっと……」
Ω Ω
(´<_` )「それで、いつ帰ってくるんだ?」
( ´_ゝ`)「希代の萌え娘にときめきを与えられたら」
Ω Ω
(´<_` )「把握した。昨日は勢いに任せて早く帰って来いと言ってしまったが、
存外帰ってこなくても大丈夫だから心配するなよ」
( ´_ゝ`)「ああ。俺のコレクションには触るなよ」
Ω Ω
(´<_` )「誰が触るかあんな汚いもん」
(#´_ゝ`)「汚いだと!!俺の神聖なコレクションを指して言うに事書いて汚いだと!!
俺が精子をつけないようにどれだけ気をつけて扱っているのかわかっているのか!?」
Ω Ω
(´<_` )「よしわかった。明日燃やしとくわ」
(#´_ゝ`)「てめぇ」
(;'A`)「あのさ……。俺、どうすればいいかな……?」
( ´_ゝ`)「その事なんだがソウルブラザー。相談があるんだ」
(;'A`)「え、何何?」
( ´_ゝ`)「『経済ヴィーナスハイン様』を見忘れた。データ持ってないか?」
(;'A`)「あ、それならばっちり。CMカットもしてある」
(*´_ゝ`)「おぉ。流石ソウルブラザー。弟者はいくら頼んでもアニメの録画してくれないんだ」
Ω Ω
(´<_` )「アニメはリアルタイムで見てこそだろ。兄者は何もわかってない」
(;'A`)「ああ、そう……」
(*゚∀゚) 「おはよー弟者ー!今日も愛してるんだぜー!!」
曰く。君は、わかっていない……。
( ´_ゝ`)「愛してるなら玉を蹴るとか、顔面騎乗位とかすべきだろうが!」
(;*゚∀゚) 「……そう言うのは、まだちょっと……籍を入れてからにしようかなって……」
新ジャンル。貞操観念ヤンデレ。
( ´_ゝ`)「需要無ぇ……」
(*゚∀゚) 「それよりもなー。今日も講義サボるから一緒にいられるんだぜー」
( ´_ゝ`)「俺も引きこもるの大好きだから一緒にいられるんだぜー」
(*゚∀゚) 「なーなー。今日の朝ごはんはパンと卵サラダとゆで卵なんだぜー」
( ´_ゝ`)「うむ。大丈夫大丈夫。俺卵大好きだから!」
(*゚∀゚) 「あひゃー!!じゃあ、縄を解いてやるからなー!!」
しかし、縄を解こうとするつーちゃんの手がふと止まる。
(*゚∀゚) 「……その前に、おはようのちゅーとか、しなきゃなー……」
(*´_ゝ`)「なんと」
(*゚∀゚) 「……あひゃー」
やっべ、つーちゃん照れてる。超可愛い。
手をばたばたさせてこっちを伺うように見つめた後。
手首を縛られてごろごろしてる俺の顔につーちゃんの顔が近づく……。
その時、不躾なチャイムが鳴った。
(#´_ゝ`)「あ゛ー……」
(;*゚∀゚) 「ちょちょちょ、ちょっと見てくるなー!大人しくして待っててなー」
そうしてベッドを後にするつーちゃん。
俺は成すすべもなく無様に転がりながら玄関から漏れる声を聞く。
どちら様ですかー。すいませんうちの馬鹿を迎えに来ました。
(*゚∀゚) 「は?どういう意味だー?」
「とりあえず玄関開けて貰えないかな?つーちゃん」
(*゚∀゚) 「ん?兄者かー?なんか勘違いしてるみたいだけど、どうしたんだー?」
「うん。いいからドア、開けてくれない?」
つーちゃんは慌しく戻ってくると、俺に耳打ちをする。
いい子にしててな、弟者。
そうしてタオルを俺の口の中に押し込み、更に上から猿轡をかますと、
再び玄関に向かった。
(*゚∀゚) 「なぁ、どうしたんだよー?お前、兄者だよなー?声でわかるぞー。何かあったのかー?
あれ?そう言えばどーしてうちの場所知ってるんだー?」
「ゼミで名簿作ってたろ?あれに住所も入ってたから」
ベッドに転がりながら俺は思う。つーちゃん。君は可愛い萌えキャラだけど、頭が足りない。
全く。ヤンデレ娘は賢いと相場は決まっているだろうが。
弟者も弟者だ。捨て置くと言いながらわざわざ尋ねおって。ツンデレめ。
ドアを開ける音。
元どもりの弟者の、格好つけた声。
(´<_` )「ごめん。変態で馬鹿で救いよう無いけどさ。あれでも家族は家族だから、返して貰える?」
(*゚∀゚) 「何のことだー?」
必死にとぼけるつーちゃん。
だけど残念な事に君はもう、どうしようもない程に詰んでいるんだよ。
(´<_` )「あのさ。なんで俺が兄者だってわかったの?」
(*゚∀゚) 「え?」
(´<_` )「教えてくれる?」
(*゚∀゚) 「あ………」
つーちゃんは、阿呆な声をあげて固まっている。
そう。もし、つーちゃんが俺を連れ込んでいないのなら、
扉の向こうの弟者を兄者だと思う筈はない。
双子のどちらかが訪ねてきたら、普通は親交のある方だと思うだろう。
まず、先日会ったばかりの他人だとは考えない。
(´<_` )「ごめん。上がるね」
(;*゚∀゚) 「待てっ!!待てってばー!!!」
焦るつーちゃんの声が聞こえる。
ばたばたと、こちらに近づくふたつの足音。
大学生の一人暮らしだ。
リビングと、寝室。キッチン。トイレ。洗面台。風呂。
それだけの間取りで、迷うはずはない。
寝室の扉を開く弟者。
(;*゚∀゚) 「やめろぉおおおおおお!!!」
( ´ ゝ`)「むぐぅ」
目が合った。
(´<_` )「………」
寝室の扉を閉める弟者。
(´<_` )「つーちゃんごめん。勘違いだったわ」
(*゚∀゚) 「は?」
(´<_` )「俺にこんな兄弟はいない。ごめん。うん全然勘違いだった。
楽しいプレイの邪魔してごめんね。俺、ほんと何も見なかったから。いや、マジで」
(#´ ゝ`)「もがががががーーー!!!」
(*゚∀゚) 「………」
(´<_` )「帰るわ。うちの馬鹿兄者をよろしく。つーちゃん」
(*゚∀゚) 「え?馬鹿兄者って………」
(´<_` )「じゃあね。今日のゼミでまた」
(*゚∀゚) 「お前……兄者じゃないのかー……?」
(´<_` )「そう言うと思って。ほら。学生証と運転免許
ああ、それよりもこれを言うのが確実か。
覚えてる?初めて会った時にさ、つーちゃん言ったよね。
『可愛くないから彼氏が出来ない』って。
俺、『どうして、そう思うんだ?』って返したと思うんだけど」
(*゚∀゚) 「え……?」
寝室の扉を開けてこちらを確認するつーちゃん。
何度か、彼女の視線が俺と弟者を往復する。
そのうちに彼女の体はカタカタと震え始め、
そして、吼えた。
(*゚∀゚) 「あ、ああああぁああああ!!」
(#*゚∀゚) 「な、何だよー!騙したのかよー!二人して!!二人して俺を!!
なんで?何で何で何で?愛してるって!!愛してるのに!!弟者!弟者!弟者!!
やっと、やっとやっと捕まえて、部屋に入れて、もう二度と、外に出さないで!!
一緒で!!ずぅっと一緒で!!愛してる!!愛してるのに!!
あ、あ、ああぁああああああ!!!」
弟者にすがり付くつーちゃん。
(´<_` )「いや。大丈夫。兄者の方がそーゆープレイ好きだから。結果オーライ」
(*;∀;)「そーじゃねーだろぉおお!!」
つーちゃんの目には大粒の涙が溜まっている。
弟者は涼しい顔で今にも帰ろうと俺に背を向けやがった。てめぇ。
その時、玄関からもう一つの人影がぬるりと出てきた。
(;'A`)「一応、連れて帰った方がいいと思うよ?うん」
(´<_` )「女の子の部屋に勝手に入っちゃ駄目だろうが。待ってろと言ったのに」
(;'A`)「だって今、弟者めちゃめちゃ帰る気満々だったじゃん」
(´<_` )「今の兄者を見てみろ。あんなに輝いてる兄者を邪魔する事なんて俺には出来んよ」
ソウルブラザーがこちらを見る。
彼は驚いたように目を見開いて、そして数秒俯いた後、
(;'A`)「いやいやいや!!あれ普通に考えてプレイじゃなくて拉致監禁されてるんだと思うよ!?」
(´<_` )「マジで?」
ああ。
こいつら駄目だ。
変態の馬鹿ばっかりだ。
全く。
そんなもん。
俺一人で十分だろうが。
ソウルブラザーが恐る恐る近づいてきて、俺の猿轡と手首の縄を外す。
つーちゃんは、床に座り込んでほろほろと泣いていた。
俺は彼女に近づくと、おもむろに彼女に向かい土下座した。
誰が見ても惚れ惚れする、ナイスな土下座だったと思う。
( ´_ゝ`)「お願いします!ストッキングを履いた足で俺のたまたま踏んでください!!」
(*;∀;)「は………?」
彼女は信じられないと言った顔でこちらを向いて、
再び、喚いた。
(*:∀;)「み、み、みんな出てけぇええええ!!!」
向こうで、だから俺の言った通りだろう、と言う弟の声が聞こえた。
結局つーちゃんは、俺にときめく事はなかった。
それなら、俺らの見分けがつかなくても仕方ない。
そして弟者に、何故迎えに来たのかを尋ねたら、『母者におつかいを頼まれたから』らしい。
何故かついてきたソウルブラザーを引き連れて、キロ単位のウスターソースを運びながら、
弟者はどこか不満そうに俺に言った。
(´<_` )「兄者、つーちゃんに勝手に赤外線送っただろう」
( ´_ゝ`)「ばれたか」
(´<_` )「貴重なおにゃのこの登録件数を一件減らしやがって」
( ´_ゝ`)「許せ」
(´<_` )「条件がある」
( ´_ゝ`)「何だ」
(´<_` )「ねずみーr( ´_ゝ`)「断る」
(;'A`)「………なぁ」
( ´_ゝ`)「「何だ?」」(´<_` )
(;'A`)「お前ら、仲いいな」
( ´_ゝ`)「「まさか」」(´<_` )
俺たちは、双子。
お互いがお互いのクロンである、
世にも珍しい、
他人同士。
('A`)ドクオが夢を紡ぐようです 第五話 了
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