赤子の時、彼はあまりに笑わない子だった。

夜泣きも滅多になく、脳の一部に異常があるのではないかと危惧される程だった。

1歳の頃、彼は言語を完全に理解した。
そんな彼を他の人間は神童と崇め、様々な英才教育を施すよう勧めたが、父親は断固としてそれを認めなかった。
生まれる前から決められていた父の教育方針に従って育っていくことになる。
もしもここで誰かが無理やりにでも父の暴走を止められたのならば、彼の行く末も変わっていただろう。

3歳の頃、初めて与えられた父親からのプレゼント。
玩具と称して渡されたそれは、確かな切れ味を持ち、銀の煌めきを放つナイフだった。

彼は、ナイフを前に、初めて『美しい』と思う感情に芽生えた。
既に悪魔になるだけの片鱗を示していたのかもしれない。

そして、とある日のこと、彼はそのナイフで怪我を負うことになる。
まだ刃物が危険だと知らなかった彼は、その刃への興味のあまり、自らの腕に押しつけたのだ。

止めどなく溢れる血液、激痛を伴ったことだろう。
しかし、彼は一切涙を流さず、それどころか、その体躯を赤く染めながら満面の笑みを浮かべていた。
無邪気とは程遠い場所にいた筈なのに、この時は声を上げ、今までの鬱憤を晴らすかのように笑った。
彼の頭が狂ってしまったのだと嘆く者が殆どであったが、父だけはそんな彼を優しく抱きしめた。

その時彼に芽生えた新たな感情は、『快楽』であった。
人生のスタートライン付近にも関わらず、彼はこの世で一番の悦びを知ってしまったのであった。






5歳の頃、人間を殺した。
その年の父からの誕生日プレゼントは、縄で縛られた人体だった。

父は言った『そのナイフでこれをバラバラにしてみせろ』と。
彼には人を殺す事が悪事だという常識がなかったので、何の疑問も持たず、首を縦に振って応えた。

無表情を保ったまま、彼はその人間の体を切り刻んでいった。
耳を削ぎ取り、指を切断し、血を飛び散らせ、目玉をくり抜き……細かなパーツを分けた後、四肢を分割した。
案外呆気なく終わってしまった解剖に満足いかない様子で溜め息をつくと、父親が指をパチリと鳴らした。
すると運ばれてくる新たなモルモット、彼は喜々としてそれに飛び付き、思う存分ナイフを振るった。

7歳の頃、仕事を始めた。
所謂、暗殺業であったが、彼の子供という外見はその仕事に大いに役立つことになる。
ターゲットとなる誰もが、いたいけな少年に命を狙われている等とは微塵も思わず、頸動脈を切られてからようやく事実に気付く。
しかしその時にはもう遅い、そのように致命傷を負った彼らは、体力の消耗が同時に命のカウントダウンとなる。

最後の最後まで『こんな子供に……』と怨みを重ね、現実を理解しきれないまま死を迎える。
彼は、その様子をやはり楽しそうに眺め、自分は人間を超越した人間であると、優越感に浸っていた。

当然、学校といった類のものに、父は彼を通わせようとはしなかった。
無論、ある程度の教養は施したし、元神童である彼には、勉学などテキストを読み通すだけで充分過ぎた。






10歳の頃、とうとう父親を殺した。
それが彼の人生の絶頂であり、同時に人生の終焉に近いものだった。

直観的に感じてしまったのだ『これより先、今以上の快楽を得ることは出来ない』と。
十年で、彼は世界の全てを見終わったかのような喪失感に苛まれ、自決を図ろうかとまで悩んだ。

しかしそれを思い留まらせたのは、他でもない父の言葉である。
彼は父の書斎を片づけている時、自分宛と思われる便箋を見つけ、読み進めた。
便箋の中身は、今までの憂いを吹き飛ばすかのようなものであった。
よって彼は歓喜に震え、街へと繰り出した。

その日、彼は仕事とは一切関係のない、快楽の為だけの殺人を犯していった。
何人殺しても満足しきれず、結局、手持ちのナイフ全てが血と脂に塗れて使いものにならなくなるまで殺戮を楽しんだ。
犠牲者は30を超えていたと後日のニュースでやっていたが、過ぎ行く過去など、興味の対象にはならなかった。

それから、彼は今まで通り『殺し屋』として生きることにした。
本名で仕事を続けているのは自信の表れであり、名を知られようと誰にも自分は止められないという意味合いがある。
もちろん、その一方では楽しむためだけに殺しを行う、快楽殺人鬼としての一面も持っていた。

これが彼―――マス=ワカッテの少年時代の歴史である。






マス=ワカッテという名がそこそこ知れ渡って来た頃、彼は成熟しきっていた。
『少年』という羊の皮は被れなくなったものの、堂々と仕事をしようが、不安材料の欠片も見出せない。

誰も彼を止められなかった。
過ぎた存在だと恐れた同業者は、彼を躾けようと刺客を送り込む。
しかし完全武装した男たち数十人がかりすら一蹴された時、同業者たちも諦めの色を見せた。

そして、別の方法によって利用することにした。
それは彼を裏の業界の象徴代わりにするというものであった。

『何事にも縛られず、殺戮をこの世の生甲斐とする快楽殺人者』

この様な銘を打たれて、マス=ワカッテの名は更に広められていく。
段々と凶悪犯罪者の影に脅える者が増え始め、平穏な日常は脆くも崩れ去った。
例えば、不安のあまり現実逃避を目論む若者たちを中心に、ドラッグが蔓延していった。
護身用の域を超えた重火器が、不当なルートを辿って販売された。

つまり、彼は裏の業界のマスコットとして扱われたのである。

恐怖に染まった混沌の世界は、マフィアなどの存在にとって居心地の良いものだった。

もっとも、彼はこの事態を不快に思う訳ではなく、むしろその逆の心持でいた。
まるで世界が自分を中心に回っているかのように感じ、気分良く、狂い出す世界を達観していたのだ。

彼の伝説は、こうして作り上げられたのである。






「今日も世界は平和だなぁ」

昼下がりの午後、近年増加する犯罪数のグラフを見ながら彼は言った。
テレビ内のニュースキャスターとはまるで相反する台詞であったが、心の底からそう思っていた。

彼の胸を高鳴らせるような事件が起きない限り、その気持ちに変化が訪れることはない。
もっともその程度に至る事件など、これまで起きることはなかったし、これからも無いだろうと予測する。
自分を満足させられるのは、自分以外にはいないのだというのが彼の持論だった。
唯一、世間も自身の心も満足させることの出来る、世界一のエンターテイナーだと自負しきっていたのだ。


―――その時、テレビの向こう側が暴れるようにざわついた。


キャスターを含めた局の人間が慌ただしく情報を確認し始めている。
その尋常でない様子に、彼も思わず画面に食い入ってしまった。

キャスターは落ち着きを取り戻すと、一呼吸置いてから言葉を紡ぎだした。


「たった今入った情報によりますと、先刻、同時爆破テロが起きた模様です。
 被害となったのは『シューマン発ヤオイ行の、ONEピース機』。

 『VIPのリンゴタワー』、『オオカミのモムスドーム』。
 明確な被害状況はいずれも不明ですが、そのどれもが壊滅的な被害を負っており、現場はまるで地獄絵図と―――」


ニュースは尚も続けられていたが、そこに新たな情報が加えられた。






「……え? これ、本当に……? いやでも……」

唯、キャスターの表情は困惑に満ちていて、テレビには滑稽な姿が曝され続けていた。
プロとしてあるまじき失態だが、この未曽有の事態の前では、それも大目に見られることだろう。
やがて半ば無理やりにでも上司に納得させられたのか、キャスターは重たい口を開いた。


「えー……どうやら先日、局に犯行予告と思われる手紙が届いていたそうです。
 内容は――

『退屈で仕方がないので、爆弾を沢山沢山爆発させようと思います。
 どうか皆さん、死にまくってください、生き残った人がいたら、とても残念です』

 ――などという文から始まる、あまりにふざけた内容で綴られており、局側としては性質の悪い悪戯だと判断していました。
 しかし、手紙の最後に今回事件の起きた地名が並べられており、これは紛れもなく犯人からの手紙だと推測されます。
 更に付け加えるのであれば……こ、今回起きた事件は個人の気まぐれによって引き起こされたものであり、
 テロと呼べるものではなく……一個人が引き起こした大量殺人として扱われるものと思われます」


キャスターの語る話は、まるで夢物語であった。
推定でも五百は下らない命を一瞬で奪い去った事件の犯人がたった一人であり、目的はほぼ無いとまで言うのだ。

局には様々な理由での抗議の電話が殺到していたが、
そんな事実など知る由もなく、マスは言いようのない気持ちに駆られてテレビの電源をオフにした。






胸がムカムカするのと同時に、顔が自然と緩んでいく。
正体不明の感情の最中で、彼は自然と言葉を吐き出し始めていた。


「誰だ誰だ誰だ誰だダレダダレダダレダヨ、誰なんだよ、俺よりも殺し、てる? のか?
 なんだよ、俺を舐めてるのかよ、畜生、俺を愛してるのか、世界で一番フォーリンラブか?

 俺をいらつかせたいのかよ、俺の心を満たしたいのかよ、どっちだ、どっちもか?
 ……嫌だ、俺の方が殺す、お前なんかには負けねぇ、お前を殺す、すぐ殺す、絶対殺す。
 
 ムカツクムカツク、ウレシイウレシイ、カナシイカナシイ。
 俺は誰だ、俺はマス=ワカッテだ、誰よりも強く、誰よりも狂って、クルッテマワッテ―――?」


息継ぎもしないまま支離滅裂な言葉を口に出した後、地面にばたりと倒れ込んだ。
テレビを見終わってからずっと、高速で回転し続けていた為、すっかり酔ってしまったのだ。

彼を混乱に陥らせたものは、その時初めて芽生えた感情である『嫉妬』と『愛』と『憎しみ』と―――

その他様々な感情が、一挙に押し寄せてきたのだ。
殺し屋として異常な日常を当然として生きてきた彼にとって、それらは未知数のものだった。
初めて訪れる不思議な感覚に、彼の思考回路はショート寸前だった。






そのまま睡眠に陥った彼が目覚めた時、視界は漆黒に染まっていた。
それは単に夜が訪れたからなのであるが、それすら理解出来ずに横になったまま呆けていた。

彼はその暗闇を、自分という名の宇宙であると判断した。

宇宙に溶け込むと、驚くほど滑らかに考えが纏まっていく。
熱くなっていた脳は程良く冷まされ、そうしてある答えが生まれた。


「当分の人生の目標決定。
 あの忌々しいクソ野郎をバラバラにして、ミンチにして……それから愛を語ろう。
 お礼を言わなくちゃ、初めて『生きたまま』俺を楽しませてくれた人間なんだから」


それが、彼が冷静になった頭で導き出した結論だった。
常人からすればぶっ飛んでいる思考であったが、彼はスッキリとした心持で立ち上がった。

そして、歌い、踊り狂った。
マス=ワカッテが一つ人間に近付き、また、更なる狂気に芽生えた記念すべき一日だった。






そんなプロローグから俺の人生は始まる。
そう、俺の伝説はまだまだ始まったばかりだ、今もショーの真っ最中。

街を散歩するという至って平凡な行為さえ、俺にかかれば素敵なものに早変わり。
人間の血で真っ赤な絨毯を作ったっていい、悲鳴のオーケストラを響かせるのも一興。
俺には何だって出来る、何故なら『最強』『最狂』『最凶』が具現化された存在だからだ。

しかし、あえて俺は普通に、散歩する。

人外の存在が普通に街を闊歩する―――それこそが一番の狂気だ、間違いない。


(*<●><●>)「うはっはっはっ、見ろよ、人がまるでゴミのようだ!
       違うね、人はゴミなんだ、虫けら以下の屑共、てめぇらはそれ以外の何者でもねぇ!!

       でもそんなお前らに生存を許す優しさと慈悲深さ、素晴らしいだろ、平伏せ!!
       見ろ、俺が回ると世界も回る、つまりこの世界は俺を中心に回る、恨むなら神様の贔屓っぷりを恨め!!」


VIPの街全体に轟かせるかのように吠えた。
脅えきった――もしくは輝きに堪えられくなった――愚民共は、俺を避け始め、周囲に空虚な空間が出来上がる。

まるでモーゼだ、これは俺が引き起こした奇跡だ。
奇跡すらも自由自在に操れる……ひょっとしたら俺の存在こそが奇跡なのではないか?






( <●><●>)「……おうおうおう?」


しかし、俺の作り上げた奇跡の空間に一人の女が立ち塞がった。
人の波に呑まれない俺と女の二人は、まるで世界に隔離されたかのようだ。

顔を伏せていて表情が見えなかった為、俺は最初、女が泣いているものだと勘違いした。
女の体はがたがたと震えていたし、両の手は左胸の辺りを押さえていて―――体調が悪いなら死ねば楽になるぞと提案したかった。


そして、ガン無視することに決めた俺が一歩踏み出すと、唐突に女の震えが治まった。

ゆっくりと顔を上げ始めると、やがてその表情を確認することが出来た。




ξ゚∀゚)ξ




女――マッドボマーは、嗤っていた。

俺の心臓は急激に高鳴った。






マッドボマーこと、ツン=デレイド=クヴァニル。

俺が唯一尊敬し、俺に唯一屈辱を与えてくれた人間よ。
お前さえ殺せば、世界は俺のものになる、世界の頂点に立つことが出来る、

全身全霊を持って殺しに来い、それを超えてこそ、俺の力は何物をも凌駕すると証明出来る。


父を殺した時以上の快楽は確実に訪れる。
俺は人生の最高潮まで上り詰める波に乗ってやる。

お前の生きていた意味は、俺を楽しませる為だけにあったのだ。


ξ゚∀゚)ξ「―――さぁ、遊ぼうかぁ!」


( <●><●>)「―――さぁ、遊ぼうかぁ!」

















  第十二話『遊びに誘う声に振り向くと、死神が満面に笑みを湛えていた』















ツンは初めに小型の爆弾をばら撒いた。
金貨サイズの火薬玉はマスの足元で爆ぜ、僅かに行動を封じ込める。
そのほぼ一瞬の隙にツンは駆け寄り、加速の勢いを乗せたダガーを繰り出した。

金属音。

咄嗟の所でマスのククリはダガーを受け止めることに成功し、二つはそのまま空間に固定される。

しかし均衡する時間は一秒にも満たない。
ツンは手に込めた力の角度を変え、ダガーの位置をずらし、ククリを刃上で滑らし受け流す。
力の行き場を失ったマスは体勢を崩しかけたが、即座に持ち直し、飛び退いて距離を取った。


( <●><●>)「おおう驚いた、マインゴーシュみたいな使い方するんだな。
       ……ていうか、あれ、そのナイフ前と違くね、何かでかくね??」

ξ゚∀゚)ξ「適当な店で盗って来たんですよぉ、骨ごとぶった切れるようなのが欲しくって!」

(*<●><●>)「二、三日前の強盗殺人事件の犯人はやっぱお前か! うひゃひゃうっけるー!」


マインゴーシュとは、鍔の部分が刀身に向けて垂直でなく、カギ爪状になっているナイフ。
これは本来、利き手とは反対の手に持ち、相手の攻撃を受け流す為に用いられるもの。

ツンの持っているものは普通のダガーである――つまり完全に技術のみで受け流しを可能にしたのだ。
繊細かつ思い切りのいる達人級の所業であったが、マスは軽く感心する程度だった。






(*<●><●>)「良いねぇ、前よりずっといい、百万倍も美しいッ!!」

ξ゚∀゚)ξ「何言ってるんですかぁ、私はいつだって女神級に美しいですよぉ!」


自身を誉めたたえながらナイフを振り回す女の表情は、およそ美しいとは言い難く、
大抵の人間は一見しただけで恐れを抱くほどのものだった。

しかし、それを目前で眺めるマス、彼はそれを確かに『美』であると認めていた。
狂気に染まる瞳を浮かべ殺しかかってくる女に、『愛』に近い感情を抱いていたのだ。


(*<●><●>)「本当に良いよぉ……ああ、犯してやりたい……。
       殺した後ぉ……内臓を捏ね繰り回しながらぁ……交わりあいたいなぁ……!」


一撃必殺の威力を十分に秘めた斬撃の嵐の中、マスはそんな事を呟いていた。
ツンの耳にもその言葉は届いていたが、反応するのも馬鹿馬鹿しいと判断し、ただ無情に切りかかる。

それはより一層マスの興奮を高め、ボルテージは着実に上がっていく。
気持ちの高ぶりが限界付近に達しようかという頃、ようやくマスも反撃に打って出た。






ξ゚∀゚)ξ「死ねぇッ!」


( <●><●>)「死ねぇッ!」


その攻防を一言で言い表すとしたら、『異常』であった。
そもそも攻防と呼んで良いのかすら疑問である、彼らの脳裏には守るという概念は存在しないのかもしれない。

攻撃の一つ一つは単調であり、予備動作も大きく、テレフォンパンチに近いものがあるだろう。
成長と共に隙を極限まで減らしていくナイフ使いたちにとって、その光景はあまりにも無様だ。

―――しかし、疾い。

大袈裟な動作から繰り出されるナイフは、トップスピード地点で不可視の一撃に姿を変える。

互いの攻撃の最中、瞬間的にナイフが視界から消え去る様子は、
断片的にしか再生されない映像となり、まるで拙い作画のアニメーションのようだった。

そう、彼等は『殺傷』ではなく、『破壊』を目的にしているのだ。
罵声を浴びせ合いながら、威力のみに重視した斬撃を繰り出し、相手を無残な姿に変えることだけを願う。
ツンとギリシアが戦った時のような優雅さはまるでなく、あるのは醜さと憎悪と、そして一欠けらの愛だけ。

死と隣り合わせという言葉も似合わず、その場はまさしく地獄であった。






(*<●><●>)「最高だぁ! 楽しいよ、楽しくて笑いが止まらないよ!!
       死んでしまえよ、そして殺してくれよ、永久の快楽を俺に与えてくれよ!!」

ξ゚∀゚)ξ「私の玩具を奪っておいて、何かを貰おうなんて図図しいんですよぉ!!」


マスが風切り音を響かせながら切りかかれば、回避と共にツンの攻撃動作が始まっている。
呼吸の間を置く音すらなく、唯只管に互いのナイフが振り回されていく。
狂気に満ちた二人の攻防であるにも関わらず、精密さは失われず、どれもが正確な狙いを保っていた。
死神でさえも困惑してしまう光景、最早二人自身が死神というのが言い得て妙である。


( <●><●>)「玩具ぅ!? なんだそりゃあ、全くしらねー!!」

ξ゚∀゚)ξ「知る必要なんかないです! 
      必要はないですけど……それでも貴方がいては邪魔になる!!」

( <●><●>)「勝手だなぁ、だがそれが良い!
       理不尽な理論を無理矢理押し通すのが俺達みたいな人種のやることだよなぁ!」


ほぼ無酸素運動に近い攻防は尚も続く。
弧を描く横薙ぎを伏せてかわし、上下から繰り出される直線軌道を体勢をずらして避ける。
そのどれもが両者共に行われた行動であり、個人に限定することは出来ない。

思想から『遊び』の方法まで同一、それは―――彼らが似通った存在であると証明していた。







11話へ] 戻る [つづきへ