高層建設物の犇めく街中には、絶えず車が行き交っていた。
排気ガスを煙たがりながら、必死で働き務めるサラリーマン達が不憫にさえ思える。
そんな大多数の無機物が蔓延る中で、一際目立つ建物があった。

警察庁超特殊事件捜査機関、通称FOXの本部である。

この街のシンボルと言っても良いこのビルは、
人が見上げる高層建設物が、更に見上げなければならない高さを誇っていた。

そのような建物が警察の、それも『犯罪者よりも危険』と噂されるFOXの所有物であるのだから、
存在感、並びに街全体に与える圧力というものは並大抵のものではなかった。
この辺りがVIP国の中で最も犯罪発生率が低いのはその所為だろう。

(,,゚Д゚)「……でかいな」

(*゚ー゚)「相変わらずだよねぇ、でも無駄に大きく造りすぎだと思うんだけど」

その絶対的存在とも呼べるビルを、敵対するにはあまりにも小さな影が見つめていた。
ギリシア=コクーンステイツとシール=リア。
本来FOXに所属している二人は、今日、この場所と決別する為にやって来ていた。






(,,゚Д゚)「このでかさが、同時に俺達とそのまま戦う規模になる訳だが……。
     びびってねぇか? トイレは済ませたか?」

(*゚ー゚)「最っ低な質問だよね、セクハラだって自覚してる?」

(,,゚Д゚)「はっ、それだけ言えりゃ上等だ」

シールは生意気な言葉を口に出してはいたが、実際は不安があった。
ギリシアと違い、彼女には直接的な戦闘能力が無い。
ギリシアが雑魚と呼ぶFOXの一般職員ですら、普通にやり合うことも出来ないのだ。

しかしギリシアは『上等だ』と彼女に答えた。
それはつまり、『俺について来るだけの度胸があれば十分』という意味を持っている。
ギリシアは直接的な戦闘は自身が引き受けると考え、シールもそれを理解していた。
短いやりとりの中には、二人の深い信頼があった。

(*゚ー゚)「でも意外だね、ギリシアがブーン=マストレイの頼みを聞くだなんて」

(,,゚Д゚)「……俺が薄情だと言いたいのか?」

(*゚ー゚)「そういう事じゃなくてさ、だって『世界を救う』だなんてねぇ。
     正義ぶってるというか、夢見がちというか、少なくともギリシアには似合わない」

(,,゚Д゚)「……ふん」






数日を遡り、『オールデイ』の店内。
過去を話し終えたブーンは本題に移った。

( ^ω^)「僕はドクオを止めなきゃならない、それは友達として。 
       同時に、この世界を守るためにと言っても良いお」

( ФωФ)「……えと、つまりはどういうことですか?」

( ´_ゝ`)「ドクオの目的はともかくとして、奴がやっているのは全世界に不死をばらまいてるようなものだ。
       不死を悪用されるってのはやべぇぞ、例えば政治家なら、永遠の独裁が出来るかも知れないしな」

(´<_` )「世界のバランスを破壊するんようなもんさ、ゲームで言う所のチートだな」

(;ФωФ)「うぅ、規模が大きすぎていまいちピンと来ません」

( ^ω^)「……自分でも滅茶苦茶な話だとは思うけど、これが真実だお。
       僕が知っている情報だと、もうかなりの人が不死になってしまったらしいし」

その言葉に反応したのは、ロマネスクとツンを除いた面々だった。
余りに露骨であった為、ブーンが言葉を尋ねる。






( ^ω^)「何か心当たりがあるのかお?」

(,,゚Д゚)「ほんの小さな引っ掛かりの筈……だったんだが、そうもいかないらしいな」

(*゚ー゚)「FOXの署長がね、ブーン=マストレイの捜索を極秘に乗り出してる。
     不死の力を得る代わりに、署長がドクオに協力している可能性は高いよね?」

( ^ω^)「だお、ドクオは不死の力を渡す代わりに、色んな組織から力を借りている。
       FOXもその内の一つだと考えるのが妥当だお」

ξ゚听)ξ「まぁ犯罪者でもない『ブーンを探す』ってなったら、ほぼ間違いないでしょうねぇ」

シールとギリシアは、無言のまま、眉をひそめた。
二人が所属している、『正義』の警察組織が私用で動いていたのだ。
ブーン=マストレイを殺し、不死の力を得る為だけに。
『正義』とは程遠いその有様を知って、平然としていられるはずはなかった。

( ^ω^)「力を貸してほしいとまでは言わないお、でも少しの手助けくらいはして欲しい。
       君たちの知っているほんの些細な情報でも良いから、教えてほしいんだお」

ξ゚听)ξ「今の所、手がかり無しって感じなんですよね、だからこの哀れなお人に愛の手を」

冷やかな緊張が流れる中で、ひょうひょうとしているのはツンだけだった。
彼女だけが、この話の完全な部外者であるからなのだが。






( ´_ゝ`)「世界を守る……なんてつもりは毛頭ないが、だ」

(´<_` )「ああ、この街に生きる者として、今の話は聞き捨てならないな」

オトリスが以前に立てた仮説が、今これ以上ない程に現実味を帯び始めていた。
二人が薄らと笑みを浮かべたのは、自分たちの予想が間違っていなかった為、
そして何よりも『面白くなってきた』為だった。

( ´_ゝ`)「よし、良い事を教えてやろう、お前がさっき話していた過去の件だが」

( ^ω^)「おおっ、一体なんだお?」

(,,゚Д゚)「…………」

ギリシアは言葉も発さず、ただ自分の思考に耽っていた。
考えるべきことは多くあった。
それは近頃悩んでいたものと重なり、思考は更に深いものへと陥っていく。

暫くして、一つの結論を導き出したギリシアは、胸に大きな決意を秘めていた。






(,,゚Д゚)「俺は、確かに世界を救うだとか、そんなものに興味はねぇ」

(*゚ー゚)「……え?」

再びFOX本部の前、ギリシアが語るのは、あの日に導き出した結論だった。

(,,゚Д゚)「お前と組んだ時からだったか、マッドボマーを追い始めた時だったか。
     何時からだったかは思い出せそうにねぇが、俺はずっと考えていて、そしてようやく思い出した」

(*゚ー゚)「何を?」

(,,゚Д゚)「FOXに所属した理由をだ。
     今でこそ強い奴を戦うためにFOXにいるが、昔はそうじゃなかったんだ」

ギリシアは本部の最上階を見つめる。
降り注ぐ日光に視界を阻まれながらも、その場所には確かに感じるものがあった。
そこにいるのはFOXの署長、オズワルド=J=フォックス。
ギリシアがFOXに入隊する理由となった人物だった。

(,,゚Д゚)「俺は所長に憧れてFOXに入った。 
     あの人の掲げる絶対正義は、俺にとっての憧れであり、遠い日に見た夢だった。
     数十年の年月が記憶を朧気なものにしていたが……そうだった、俺の目標はあの人だった」






(*゚ー゚)「ギリシアはどうしたいの?」

(,,゚Д゚)「俺は聞きたい、何故『絶対正義』である貴方が、信念を曲げてしまったのか。
     ……もしも話を聞いて俺が納得出来ないようなら――」

(*゚ー゚)「出来ないようなら?」

(,,゚Д゚)「……そん時はそん時、だな」

(*゚ー゚)「なんだそれ」

濁らした答えではあったが、ギリシアの言いたい事は明確であった。
シール自身、一切合わない視線からそれを感じ取っていた。

(,,゚Д゚)「俺達が直接署長に会う事は基本許されない。
     これはFOXの厄介な掟な訳だが……つまり、分かってるよな?」
 
(*゚ー゚)「何を今更って感じ?」

(,,゚Д゚)「なら良いが」







基本許されないと言っても、ギリシア程の男なら、申請が認められれば署長に会う事も可能だ。
しかし正規の方法を辿るとなると、全ての行程を終えるまでに一月はかかる。
一般職員では署長に会うことすら叶わない、徹底した秘密主義。
今すぐにでも話を聞きたいギリシアにとって、これはあまりにも遠すぎる。

だからこそ、唯一残された方法がある。

基本が許されないのならば、


(,,゚Д゚)「強行突破だ」

(*゚ー゚)「うん、ギリシアらしいや」


残された選択肢は、無茶な方法だ。



警察庁超特殊事件捜査機関、通称FOXの中でずば抜けた能力を誇る二人は、
組織全体を敵に回す覚悟で、本部へと足を踏み入れた。















  第十七話「正義は迷える道へ、悪は歪んだ道へ、青年は真っ直ぐ前へと」
















( ´_ゝ`)「オトリスはどう見る?」

(´<_` )「一応は奇襲になるだろうが……ここまで大きく動いてたら、アーラシにも筒抜けだろうな」

( ´_ゝ`)「……スパイの件もあるし」

とある廃屋に犇めく男たち。
サスガファミリーの面々は、『その時』を今か今かと待ち侘びていた。

この場所は地理的に言えばアーラシファミリーのテリトリーに中る。
しかし廃屋に人が訪れるはずもない為、一時身を隠すには絶好の場所だった。

( ´_ゝ`)「全く、こんな無謀な真似をするとは俺達も焼きが回ったか」

(´<_` )「本心が隠しきれてないぞ、アニムル」

言葉に驚き、アニムルが自分の顔を触ってみると、口の端が吊り上がっていた。
どうやら胸の高鳴りも緊張している訳ではないようだ。

( ´_ゝ`)「ははっ、そりゃあこんな盛大なお祭りを楽しまないのは損だよな」

(´<_` )「サスガファミリー初の大舞台だ、当然だろ?」






アニムルが時計を確認すると、時刻は三時一五分前。
丁度いい頃合いだろうと立ち上がると、全員の視線が一斉に集中する。

( ´_ゝ`)「おー、いいか野郎共、話はこの前話した通りだ」

(´<_` )「だが、今一度話そうか、気持ちを鼓舞するためにも」

ある者は瞳を輝かせ、ある者は静かに心を震わせ、ある者は兄弟の名を叫んだ。
家族として対等に、というユストピー兄弟の信念は遵守すべきものであるし、尊敬もしている。
しかしやはり彼らにとってユストピー兄弟の存在は特別なものの為、二人の言葉は絶対でもあった。

( ´_ゝ`)「近頃の行方不明事件はお前らも知っているな?
       中には家族の一人が攫われたって奴もいるくらいだ、腸煮え返ってるだろ」

(´<_` )「……そしてだ、この事件の首謀者がアラマキであることが発覚した。
       攫われた人間を、非人道的な実験に使ってるらしいな」

被害者を家族に持つ者達は、堪え切れない想いを怒号で表した。
一つ一つ聞き届けて、兄弟は言葉を紡ぐ。






( ´_ゝ`)「この街は俺らの仕事場だ、行き過ぎた沙汰は起こしちゃならねぇ。
       矛盾した話だが、俺達は住みやすい環境を市民共に提供することも時には必要だ」

(´<_` )「裏の業界としての鉄則みたいなもんだ、だから私欲に走り過ぎた奴には必ず罰が当たる。
       ……例えば、同業者からのきつーいお仕置きとかな?」

( ´_ゝ`)「オトリスのお仕置きはいてぇぞ、それは何より俺が知っている」

げらげらと下品な笑い声が行き交った。


(´<_` )「……さて、俺達はどこまでいっても屑だって自覚してるか?」

( ´_ゝ`)「人を脅して、人を騙して、人を傷つけ……。
       俺達の存在は基本的には『害』に他ならねぇ。
       実際、一般人に気に入られたいなんて思ってる奴はこの中にいるか? いねぇだろ?」

少なくない人数が集まっているにもかかわらず、問いかけには全くの無反応だった。
それはアニムルが語った事が真理であると示している。
残酷で、冷たい真実を。






(´<_` )「しかし、だ」

( ´_ゝ`)「気に入られたいとは思ってなくても、お前たちはこの街を気に入ってる筈だ。
       生まれてからずっとここで育ってきた奴もいるし、遠くから住み着いた奴もいるかもしれん。
       だが同じく言えるのは、この街に長居するだけの魅力をお前らは感じたんだろう?」

今度は力強い返事が齎される。
先ほどと同じ人物たちと思えないような、人間味に溢れた表情だった。

(´<_` )「俺達の家族がこのサスガファミリーであるように、俺達の家はこの街だ。
       家を荒らされて、腹を立てない奴はいない」

( ´_ゝ`)「つまり、何だかんだ俺達はこの街が好きなんだ。
       この街にちょっかいだすのは俺達だけでいい、この街にとっての『悪』は俺達だけでいい」

(´<_` )「もう少し時間をかけるつもりだったが……そうも言ってられん状況だ」


( ´_ゝ`)「ぶっ潰すぞ、アーラシファミリー」

(´<_` )「ぶっ潰すぞ、アーラシファミリー」


建物が震えるような、歓喜の声が湧きあがった。






( ´_ゝ`)「このでかい祭り、楽しもうじゃないか!

(´<_` )「このでかい祭り、楽しもうじゃないか!」

不安を感じているものなど一人としていなく、表情は皆同様に晴れやかであった。
これから始まるのが祭りだという言葉を鵜呑みにしている。

いや信じ切っている。
絶対であるユストピー兄弟の言葉だからという訳でもなく、心の底からそう思っている。

言ってしまえば、この場所には馬鹿しか存在しないのだ。

だからこそ、本来無謀であるこの『祭り』を、楽しもうとしているのだ。



( ´_ゝ`)「……いいなオトリス」

(´<_` )「ああ、そうだな、アニムル」

馬鹿騒ぎが続く中で、兄弟は壁にもたれ、静かに話した。
これからやろうとする事柄など忘れているかのような、穏やかな瞳だった。






( ´_ゝ`)「臭いと思われるかもしれんが、俺は今幸せだよ」

(´<_` )「……今日は茶化さんよ、俺も幸せだと思う」

( ´_ゝ`)「いつか誰かに聞かれたな、『大事なものは何か』と」

(´<_` )「そんな事もあったな」

( ´_ゝ`)「あの時の答えは今も変わらん、だがそれにこの馬鹿共を加えてやりたい。
       こいつら一人一人が俺の大事なものだ、何一つ欠けて良いとは思えない。
       ……だがどうなんだろうな、大事なものが変わるってのは」

(´<_` )「生きてればそういう事もあるさ、時には何かを捨てて、時には何かを拾っていく。
       失くしたものにずっと想いを馳せるよりも、ずっと建設的な生き方だ」

( ´_ゝ`)「……永遠の生だとか、死者を蘇らすだとか、くだならいよな」

(´<_` )「そうだな、人は変わっていく。
       ……きっと、老いる事も突然の死も、一つの変化に過ぎないんだろう」






話に一区切りをつけると、兄弟はまた家族の先頭に立つ。
兄弟が前に出るだけでピタリと騒ぎが止んだ。

( ´_ゝ`)「こっちの『準備』は万端だ」

(´<_` )「お前らの『準備』はどうだ?」

以前の様に跪く者はいない。
しかし突きだされた手と、そこに立てられた親指。
全員の覚悟と決意が秘められた、新たな誓いを示す方法だった。


( ´_ゝ`)「さぁ行くぞ野郎共!」

(´<_` )「さぁ行くぞ野郎共!」


兄弟の背中を追うように、男たちが廃屋を飛び出していく。

午後三時丁度、サスガファミリーはアーラシファミリー討つべく動き出した。






窓を叩き続けていた。

ばんばん。

不規則な音が鳴り続いて、手が真っ赤になっていった。
手跡が窓に残されていって、割ってしまおうと思うくらいに力を込めて叩き続けた。

ばんばん。

それでも彼はこちらに振り向きはしなかった。
どこまでも暗く沈んだ瞳で、隣に眠るあの子を眺め続けている。
それが異常であることはすぐに分かったし、だからずっと叫んで叩いてを繰り返す。

一緒に遊んでいた時の、こっちまで嬉しくなるような彼の笑顔。
今の彼にはその面影はまるで無くて、表情というものを忘れてしまったのかとすら思える。

話しを聞くことさえ出来ればと、ここを開けてと訴える。
でも一枚の窓を隔てた私達の距離は、どこまでも遠くて、声をかけることも許されない。
この窓は、彼の姿を見ることしか認めてくれないのだ。






ふと涙を溢していることに気付いた。
彼の名前を叫び続ける口の中に、それが流れ込んで来たのだ。
自分が泣いていると自覚して、余計に寂しくなって、嗚咽が段々と酷くなっていく。

何か黒いものに包まれそうになっていた。
叫び続ける言葉は、いつしかその恐怖から逃れる救いの言葉に変わっていたのかもしれない。

そんな時、彼はゆっくりと私に近付いてきた。
あまりの嬉しさに一層強い力で窓を叩く。


しかし私の手の動きは、すぐに止む事になった。

彼は私の元へ来た訳ではなく、カーテンを閉じる為にここまでやってきたのだ。


視界から彼が消え去ると、私はすぐに得体の知れない黒いものに包まれた。
世界から色が失われ、温かさも消え去り、孤独がはっきりと感じられる。

これが絶望であると気付いたのは、大人たちが集まり出した後だった。






川 ゚ -゚)「……んっ」

夢を見ていた。 
随分と久しい夢だ、同じ内容のものを何度か見たことがあるが、最後に見たのはいつだったか思い出せない。
それにどちらかというと不吉な夢だ、出来れば忘れたままでいたかった。
寝汗のせいで服が纏わりつき、嫌悪感を加速させる。

体を起こし、時計を見ると、まだ昼過ぎだった。
ここ暫く徹夜が続いたせいか、睡魔は隙あらばと私の体に襲いかかる。
しかし先ほどの悪夢のこともあり、寝直す気にはならなかった。

川 ゚ -゚)「昼食……」

すっかり昼は寝過ごしてしまったが、やはり食事は必要不可欠だ。
軽く料理を作ろうと台所へ向かう途中で、気付く。

川 ゚ -゚)「フッサール?」

普段、片時も私の傍から離れないフッサールがいなかった。
急に家中が静まり返っているように感じ、全ての部屋を見て回るが、どこにもいない。






川 ゚ -゚)「フッサール、フッサール、フッサール!」

数度叫んでみたが、やはり反応はない。
フッサールが私の呼びかけに応えない筈はないので、どうやら本当に家にいないらしい。

川 ゚ -゚)「……この家はこんなに広かったか」

フッサールと暮らし始めてから、初めて家で一人になった。
孤独には慣れていたつもりだったが、今はやけに心細い。

あの夢を見たせいで心が弱っているのだろう。
そう結論付けて、再び台所へ向かおうとすると、玄関の扉が開く音がした。


川 ゚ -゚)「フッサール!」

小走りで玄関へ。

ぱたぱたとスリッパの音を響かせる自分が、滑稽だった。






ミ,,゚Д゚彡「あぁマリアンヌ、ただいま!」

川 ゚ -゚)「駄目じゃないかフッサール、勝手に外へ出たりしちゃ」

ミ,,゚Д゚彡「うん、だってお腹が空いたんだけど、マリアンヌが寝てたから……。
      なら僕が料理を作ろうと思って、一杯食材を買って来たんだ!」

フッサールは両手一杯の荷物を自慢げに見せびらかした。

川 ゚ -゚)「頑張ったね、でもその食材は全部冷蔵庫に入ってるよ」

ミ,,;゚Д゚彡「え、本当!? あ、でもアイスは入ってなかったよね!」 

昼食の材料を買いに行ったのではなかったのだろうか。
そんな野暮な突っ込みは置いといて、後で二人で食べることにした。


川 ゚ -゚)「……ねぇフッサール、もしかして結構外に出たりしてない?」

ミ,,;゚Д゚彡「ぎくぅ!……そ、そんな事はないよ!!」

どうやら頻繁に外出してしまっているようだ。
だが軟禁するつもりはないので、偶には許してあげてもいいだろう。






川 ゚ -゚)「……まぁ次からは私に言ってね、寝てたら起こしてもいいから」

ミ,,;゚Д゚彡「分かった!!……でも外には出てないよ?」

川 ゚ -゚)「うん、フッサールの事、信じてるから」

嬉しそうな顔を浮かべるフッサールを横目に、玄関の扉を閉める。

多少疲れる面もあるが、フッサールがいれば退屈はしない。
嫌な事も忘れられる。 
一歩外に出れば、私にはやらなければならない事が山ほど待っている。

きっと、この家は私にとって唯一の憩いの場なのだろう。
そう思わせてくれるフッサールには感謝しなければならない。
美味しい料理を作って、その気持ちのお礼としよう。


そんな考えの最中、ふと思った。


『何故この扉は閉まらないのだろう』








突如、扉の隙間から手が伸びた。

その手が私の腕をがっちりと掴み、凄まじい力で締め上げる。
鬼気迫る雰囲気を感じ取り、私は思わず小さな悲鳴を上げた。

「やっと見つけたお」

川;゚ -゚)「お、お前は……」

「街でフッサールを見つけて付いて来たんだお。
 ……と言っても、何日も張り込んでようやくだったけど」

聞き覚えのある声だった。 そして唐突に理解した。

あの夢を見たのは、この来訪者の報せだったのだと。


( ^ω^)「マリアンヌ=クークルゥ、また会えて嬉しいお」

川;゚ -゚)「……ふふっ、この前とは随分と様子が違うじゃないか」


ブーン=マストレイは、恐らく真実を掴んだ上で私の元へと現れた。
初めて見る真剣な眼差しが、私を貫いていた。






( ^ω^)「大事な話があるお、ちょっと上がらせて貰うお」

川;゚ -゚)「……好きにするが良いさ」

掴まれた腕を振り解けそうにもない。
もう逃げられないと確信した私は、素直にその要求を飲もうとした。

……のだが、


ミ,,;゚Д゚彡「ま、待て待て待てぇーーーい!!」


飛び出してきたフッサールは、ブーンの手を振り払った。
警戒しているのか、『フーッ』と猫のように息を荒げている。

そんなフッサールの行動に緊張が抜けるのを感じ、心が落ち着いた。
強張っていた体が、自然体に戻った気がした。






川 ゚ -゚)「いいよフッサール、私はこの人と大事な話があるんだ。
     ちょっと外で時間を潰してきてもらえるか?」

ミ,,;゚Д゚彡「でも……」

川 ゚ -゚)「大丈夫、浮気とかそういうのはないから」

ミ,,゚Д゚彡「……わ、分かった」


ミ,,*゚Д゚彡「俺も、マリアンヌの事、信じてるから!」


それだけ言って、フッサールは外へと飛び出していった。
言葉の通り、最後まで私の事を信頼しきっている、無垢な表情だった。


……そのせいか、私の心は、小さな痛みを感じていた。



―――The story might continue







シール=リアは拳骨されないなぁと少し物足りなさげ
アニムル=ジャイ=ユストピーはオトリス=ジャイ=ユストピーのお仕置きが若干トラウマ気味
フッサール=ストーンナビットはお化け云々より浮気の問題を恐れる

お疲れ様です。
ありがとうございます。
本当すいませんでした。
いや現在進行形でごめんなさい。
今日は終わりです。
それでは。
また。





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