( ^Д^) 「どうしたワタリカ、随分とご機嫌なようだな」
从'ー'从 「ふふふ、そう見えますか?」
( ^Д^) 「見えるもなにも……その振る舞いにはいささか歳を考えるべきだと忠告したくなるな」
ワタリカは鼻歌を口ずさみながら、体をリズムに乗せて揺らしていた。
それでも彼女の手だけは別の働きを続けていて、機械的だった。
从'ー'从 「まだ50ですよ? 人生のようやく半分ってとこじゃないかしら」
( ^Д^) 「その元気を私にも分けて欲しいものだよ」
从'ー'从 「あなたの方が、よっぽど現役じゃないかしら?」
( ^Д^) 「それは嫌味か?」
キッチンに立つワタリカは料理を作っていた。
時刻は既に一般的な夕食の時間を大幅に過ぎていて、それは夫であるプギャー・ナーベインのためだけのものである。
もっとも本来なら家事全般は使用人に任すべき仕事だった。
しかし、プギャーはワタリカの作る料理が、三星レストランのフルコースよりも好きだった。
从'ー'从 「いえいえ、お仕事が順調であるということは喜ぶべきことだと思っていますよ」
( ^Д^) 「すまないな、君の事を構ってやれる時間があまりとれなくて」
从'ー'从 「そう言いながら、お休みの日は私と過ごしてくれるじゃないですか。
今だって、わざわざキッチンに来てまで話し相手になってくれる。
それだけで私は満足ですし、幸せです」
そしてまた、ワタリカも料理が好きだった。
愛する人に食事を振る舞うということに、喜びを感じていた。
出来る事なら、家事の全てをやってしまいたいくらいだった。
だが、二人の住む屋敷の広さに、ワタリカの老いた体はいささか力不足であり、
時折、この通りの簡単な食事を作るくらいが精々だった。
( ^Д^) 「そう言ってくれると私も助かるよ。
……だがな、一人で街をうろつくというのだけは止めてくれないか?」
从'ー'从 「あら、散歩をする自由も認めてくださらないの?」
悪戯めいたその言葉に、プギャーは少しむっとした。
( ^Д^) 「そういう訳じゃない、『一人で』というのを止めてほしいんだ」
从'ー'从 「『一人で』自由気ままに歩くから、散歩は楽しいんですよ?」
( ^Д^) 「……なぁワタリカ、私が言いたいのはだな、」
从'ー'从 「分かっていますよ、あなたが私の心配をしてくださってることは。
……はい、出来ましたよ」
それは、この5人は同時に作業できそうなキッチンには不釣り合いなスープである。
素朴な香りと外見。 小腹を満たす程度のものだった。
( ^Д^) 「ふむしかし……いや、もういい……有難う」
そしてプギャーはそれ以上、何も言うことはなかった。
夫という立場においていうのなら、ここは従うように促すべきだろう。
だが、ワタリカに対して無理強いをすることを、彼は好まなかった。
男尊女卑の名残を留めるこの世の中では珍しく、夫婦は対等であるべきだというのが彼の持論だった。
从'ー'从 「確かに物騒な世の中ですけど、良い出会いもそれなりにあるものです。
今日も、親切で、愉快な方と知り合うことが出来ました」
その言葉にプギャーは眉を潜めた。
以前に彼女が同じ言葉を発した時、彼女が知り合った人物は犯罪者だったからだ。
从'ー'从 「綺麗な花火でしたよ、あなたにも見せたかったくらいです」
( ^Д^) 「……花火?」
季節外れの言葉だった。
東の国の『花火』という文化は、夏夜に行うものである。
屋敷中で稼働している暖房を意識して、プギャーはより違和感を覚えた。
从'ー'从 「そういえばリンゴを頂いたんです、貴方もどうですか?」
( ^Д^) 「そうだな、頂こうか」
从'ー'从 「ああ神様、大地の恵みと、人との出会いに感謝します」
ワタリカは軽く祈りを捧げ、馴れた手つきでリンゴの皮を剥いた。
第2話「老婦人は何も知らずにリンゴを頬張った」
ξ゚听)ξ「で、これからどうするんです?」
( ^ω^)「その前にとりあえず離れてくれお、うざったい」
このツンとかいう爆弾狂の女は、先刻より僕から離れようとしない。
腕は絡まれ、首を寄せられ、事情を知らない人が見れば立派なバカップルだ。
ξ゚听)ξ「だって運命の相手ですし、何か逃げたりしそうですし」
( ^ω^)「逃げねぇお、だから離れてくれお、歩きにくい」
ξ゚听)ξ「ほいほい、分かりましたよっと」
ようやく解放されたかと思えば、今度はこの女、背負っていたリュックからペンと紙を取り出し、
一心不乱に、何やら難しい言葉を次々と紙上に並べ始めた。
( ^ω^)「何やってんだお?」
ξ゚听)ξ「ああー、これはですね、火薬の計算ですよ」
(;^ω^)「……は?」
ξ゚听)ξ「今、体を触りながら色々と調べてたんですよ。
どれくらいの量を、どんな風に爆発させればブーンをバラバラに出来るかって。
過不足なく完璧に吹っ飛ばせた時の爽快感ときたら、もう!」」
目を爛々とさせながら、そんな物騒な事を考えるんだからたまったもんじゃない。
出会ったばかりで、これから暫く一緒にいるというのに、不安な事この上無しだった。
( ^ω^)「黙ってりゃ可愛いのに……」
ξ゚听)ξ「何か言いました?]
( ^ω^)「いいえ、私は何も言っておりませんお」
確かに顔だけなら正直言ってタイプだった。
ただ、何故だかこの女を褒めると、ろくでもない事になりそうで、僕はそれを隠した。
彼女は尚も爆弾制作の計画を進めている。
頭が痛くなった。
( ^ω^)「とりあえず、今日はもうこんな時間だし、宿でもとって明日に備えるとするお」
ξ゚听)ξ「あ、なんなら家に来ます?」
( ^ω^)「家があるのかお? ツンはここの街の人かお?」
ξ゚听)ξ「いえ、まだVIPに来て一週間ってとこですよ?」
不意に嫌な予感がした。
それも、とびきりのもので、おまけに確率の高そうな。
(;^ω^)「その家……どうやって手に入れたんだお?」
ξ゚听)ξ「簡単ですよ、家主を爆弾で吹っ飛ばしてやったんです!
鍵はこの通り無事なので、何も心配はいりません!」
可愛らしいキーホルダーは恐らく彼女自身のものだろうか、
とにかくそんな物のついた鍵をチャラリと鳴らし、彼女はそれを見せつけた。
ああ違う、僕が言いたいのはそういうことじゃあないんだ。
(;^ω^)「いや、ね、もっと他に思い直す点があるお?」
ξ゚听)ξ「うーん……あ! ちゃんと知人の訪問の無さそうな一人暮らしの男を選んでやったんで、
もう暫くバレることなく使っていられると思いますよ!」
(;^ω^)「君っていう人は……」
とはいえ、折角ある物を使わない手はないし、何より金策になる。
非常に憂鬱ではあるが、僕はその家を借りることにした。
( ^ω^)「今日はひとまずとして、明日は人を尋ねに行くお」
ξ゚听)ξ「ふぅん? どんな人に?」
( ^ω^)「この街きっての富豪であるナーベイン氏の奥さんの、
ワタリカ=ナーベインっていう老婦人だお」
ξ゚听)ξ「……富豪の……老婦人?」
何か気になることでもあったのか、ツンはたどたどしく聞き返してきた。
( ^ω^)「そうだお、ほら、この人」
ツンの家までの会話の種になればと思った僕は、
胸ポケットに入っていたナーベイン夫人の写真を取り出し、それを掲げた。
ξ;゚听)ξ「……はは、ははは」
すると、ツンの足が止まった。
妙に乾いた笑顔を浮かべていた。
( ^ω^)「どうしたんだお?」
ξ;゚听)ξ「この人、結構大事な人だったりします?」
( ^ω^)「当たり前だお、この人の話を聞かないと、僕は途方にくれる羽目になるお」
ξ;゚听)ξ「そ、そうなんだ……なら今日中に話を聞きにいった方が良いんじゃないかな、うん」
どうやらツンは隠し事をしているらしい。
その眼の泳ぎっぷりは、嵐に沈没寸前の小舟の如く荒れていた。
( ^ω^)「正直に言えお、一体何をしたんだお?」
ξ;゚听)ξ「え、えーとですね、その……」
( ^ω^)「……ん?」
ξ;゚听)ξ「言っても怒りません?」
( ^ω^)「もちろんだお、正直な子が僕は大好きだお」
ツンの表情はぱぁっと快晴になり、
ξ*゚听)ξ「うん! あのね、実はね……この人に爆弾あげちゃったんだ!!」
そんな事を口走った。
そうか、爆弾をね、爆弾を……。
(#゚ω゚)「何やっとんじゃボケエエエエエ!!」
ξ#゚听)ξ「怒んないって言ったじゃん、この嘘つき!」
(#^ω^)「逆ギレすんじゃねぇお、とにかくその爆弾っていうのはやばい奴かお?」
ξ゚听)ξ「あ、えっとですね、こんどこそ言っても怒りません?」
( ^ω^)「……うん、怒らないお」
ξ*゚听)ξ「大体、車一台が跡形も無くなるくらいの威力の奴かな!」
(#゚ω゚)「貴様ぁあああああああああ!!」
僕は怒った。
前言撤回とか、そういうレベルを超越してブチ切れた。
ξ;凵G)ξ「違うの、本当はね、頭が吹き飛ぶくらいのだったの。
でも、よりによってあの人にだけはね、とっておきの一発を……」
もはや、どこにどう突っ込めばいいのかも分からなかった。
(;^ω^)「と、とにかくワタリカさんの所に行くお!今すぐ!!」
ξ゚听)ξ「えー、もう吹っ飛んでると思うんだけどなぁ」
(#^ω^)「それ以上、つまんない事言ったら、お前の口を吹っ飛ばしてやるお……!!」
ξ゚听)ξ「じゃあ……今、何時か分かります?」
あまりに呑気に思えるその発言に、やや腹が立ったのは今更隠すことではなく、
僕はぶっきらぼうにツンに腕時計を見せつけた。
ξ゚听)ξ「あー、残り30分ってとこですね」
( ^ω^)「何がだお?」
ξ゚听)ξ「いやね、時限爆弾なんですよね」
言葉を聞いて僕は数秒フリーズしてしまった。
目前には手を振りながら、もしもーし、なんて言っている憎きこん畜生がいる。
(;^ω^)「って、フリーズしてる場合じゃねぇお!
一刻も早くワタリカさんに会いに行かないと!」
ξ゚听)ξ「あ、私ナーベイン家の場所なら知ってますよ。無駄にでかいからぶっ壊そうか迷ってたんですよね。
という訳で、案内するから褒めてください」
( ^ω^)「よくやりましたね、マッドボマー!
……よし、さっさとその場所まで案内しやがれだお!」
ξ゚听)ξ「何か酷いなぁ……まぁいいです、じゃあ付いてきてくださいねー」
そう言いながらツンは物凄い速さで駆けていく。
事故現場から逃げ去っていく時もそうであったし、この女の身体能力は相当なものだろう。
走るという行動により、マフィアから逃げていた時の事を不意に思い出す。
あの時のような恐怖は今はなく、火照った体に風を快く感じる余裕すらある。
それはツンと共にいるからに他ならない、それ故に、僕はどこか複雑な気分を抱えていた―――
大都市VIPには言い尽くせない程様々な人がいる。
その中に、ドクオとヒートというカップルがいた。
('∀`)「へい、ヒート! 知ってるかい?」
ノパ听)「はい、ドックン! 何をだい!?」
('A`)「このVIPという街はだな……」
ノハ;゚听)「う、うん……」
('A`)「この街は……!!」
ノハ;゚听)「うん……!!」
('∀`)「なんと、ピッツァが滅茶苦茶美味いんだよ!!」
ノハ*゚听)「おおおおお!! マジでかあああああああ!!」
('∀`)「マジだぁあああああああ!!」
ノハ*゚听)「ピッツァ食いてぇえええええ!!」
('∀`)「俺も食いてぇえええええええ!!」
('A`)「よし、折角だし食いに行こう」
ノパ听)「そうだねドックン、食べない手は無いよね」
('∀`)「とりあえず歌うかヒートォ!」
ノハ*゚听)「歌いながら行こうかドックンッ!!」
('∀`)「らららピッツァ〜♪」
ノハ*゚听)(トロトロチーズにこんがりお耳!!)
('∀`)「らららピッツァ〜♪」
ノハ*゚听)(魚介にお肉になんでもござれ!!)
('A`)「ららら」 ノパ听)「ららら」
('∀`)「ピィィッツァアァアアアア!!!!〜〜♪」
ノハ*゚听)「ピィィッツァアァアアアア!!!!〜〜♪」
二人は街中の人に冷たい視線を向けられてる事に気付かなかった―――
「ナーベイン夫人は出掛けております」
(;^ω^)「そ、そうかお、夜分に失礼したお」
ナーベイン家のインターフォンからはそんな無機質な声が流れた。
事情を言う訳にもいかず、現在地を聞けないまま対話を終えた。
ξ゚听)ξ「チッチッチッチッ……残り10分でございます」
( ^ω^)「誰のせいでこんな風になったかを分かっていて、そんな事言ってるのかお?」
ξ゚听)ξ「まぁまぁ、時間はまだあるじゃないですか」
( ^ω^)「ほんの僅かに、だお」
残り10分を切ったこの状況で、VIPという範囲の中から人を探すのは困難を超えて不可能に思える。
もはや、時計の針を刻む音が、ワタリカさんの命のカウントダウンに聞こえた。
( ^ω^)「せめて、もう少し情報があれば……」
ξ゚听)ξ「妥当な点としては人に聞くことですよね。例えば、あの人とか」
ツンが指さした先には、電灯の柱から顔を覗かせる女性の姿があった。
僕達が視線を送ると何故かぴょんと飛び上がった。 古典的な反応だが、驚いたということなのだろうか。
あまりまともな人間とは思えなかったが、藁にもすがる思いで声をかけた。
( ^ω^)「もしもし、ちょっと良いですか?」
(;*゚ー゚) 「え!? な、なんだい、僕は極々平凡な一般人だぜ!?」
明らかに普通ではなかった。それは態度の問題だけではない。
仕草や声質は明らかに女性なのだが、服装や口調は男性のものなのだ。
ただ、深々と被ったブラウンの帽子から僅かに覗く顔は、美少女と呼べるほど可愛らしいものだった。
( ^ω^)「ちょっと急ぎで訪ねたいことがあるんだけど、いいかお?」
(*゚ー゚) 「だ、大丈夫だろうな、たぶん、恐らく、いやきっと!」
やたらと落ち着きがないのがやはり気になるが、今は他人に構っている暇はなく、
僕は寄り道もせずに本題に進んだ。
( ^ω^)「あの家に住んでる、ワタリカさんについて何か知って無いかお?」
(*゚ー゚) 「わ、ワタリカさんか、6〜9時は散歩に出かけていることが多いんだよな!
夜がお好きなようで……家のベランダから星空を眺めていることもあるんだぜ?
ちなみに、好きな食べ物はアップルパイだってさ!」
(;^ω^)「そ、そうかお……」
やたらと詳しい情報に引いてしまった。
ただ、これならもしやと思い、率直に聞いてみた。
( ^ω^)「ワタリカさんの現在地とか……分かるかお?」
(*゚ー゚) 「この時間帯はさぁ帰ろうって時なんだよ。
でも、ワタリカさんは帰宅する前に必ず寄る場所があるからな。
今は丁度その場所でお喋りしてるんだろうな、いやぁ、なんて楽しそう!」
何故、そんな事まで知っているかなんていうのはどうでもいい。
それ以上に僕は可能性が零で無くなっている事に興奮していた。
( ^ω^)「その場所っていうのはどこだお!」
(;*゚ー゚) 「あんまり大きな声出さないでくれよ! スレッド通りにあるフラワーショップだよ!
いやぁ、あの店は小さいけど中々に雰囲気が良くて……」
( ^ω^)「そのスレッド通りってのはどこにあるんだお!!」
(;*゚ー゚) 「だ、だから怖いって……。
この壁の向こう側が丁度スレッド通りだよ!」
普段は祈りもしないが、今は神に感謝しておこう。
今や全ての要素が自分に味方しているとしか思えなかった。
( ^ω^)「どうもありがとうだお!」
(*゚ー゚) 「ど、どういたしまして……」
ツンのいう時間が正確だとすれば残り3分、間に合うか?
( ^ω^)「ツン!」
ξ゚听)ξ「……あいよ〜」
(;^ω^)「……何で不貞腐れてるんだお」
ξ゚听)ξ「だって、私というものがありながら、他の女とイチャイチャしちゃってさ〜」
その他の女が目の前にいる状態で、それを言うか普通。
ああ、そんな事はどうでもいい。
( ^ω^)「ツン、ちょっとこの壁ぶっ壊してくれお!」
ξ゚听)ξ「え、何でです?」
( ^ω^)「良いから早く!!」
ξ゚听)ξ「……? よく分かんないけど、ほい」
何の躊躇いもなく爆弾と思わしき物体をツンは放り投げた。
その威力といったら、コンクリートで作られたその壁を粉々にするだけでは飽きたらず、
僕は爆風で尻もちをつき、後方回転までする始末で、親切だった少女は数メートル先まで吹っ飛んでいった。
ξ゚听)ξ「何やってるんです? 急いでるんでは?」
(;^ω^)「……分かってるお」
それでも平然としているツンに、僕は世間の広さを思い知る。
そして、その異常な彼女に救われている事実には、
数メートル吹き飛んだ少女が頭を打ちつけ気絶しているという光景と共に、目を瞑った。
( ^ω^)「よし、行くお!」
ξ゚听)ξ「はぁ、まぁ付いていきますけど」
壁の向こうは民家だったようで、家主と思わしき男性と目が合ったが、
あまりに突然の出来事に呆けている様子だったので、とりあえず挨拶をしておいた。
すると急に現実に戻った男は様々な暴言を浴びせてきたが、無視してその部屋内を通り過ぎる。
北風吹きこむあの家で彼は何を思うのだろう。 まぁどうでもいい。
先ほどの女性の事も踏まえ、これら非人道的な行いにも胸が痛まない僕に、ツンを責める資格はないのだろうなと思った。
スレッド通りに出ると、フラワーショップはすぐ目の前にあった。
可愛らしい看板を掲げたその店の入り口付近を、色彩鮮やかな花々が飾る。
そして、丁度その場所から出てきたばかりのワリングさんと目が合った。
从'ー'从 「あら、貴方はさっきの……」
ξ゚听)ξ「ども〜」
そんな和やかな挨拶をしている二人をよそに、僕の眼は血走っていたはずだ。
ワリングさんが僕を見た瞬間、ひっと短い悲鳴をあげたのだから間違いない。
(#^ω^)「早く爆弾を僕に渡すんだお!」
ξ゚听)ξ「ちなみに、リンゴ(型爆弾)を渡せってことですね」
初耳だぞ、この野郎。
从'ー'从 「え、リンゴ泥棒……?」
ξ゚听)ξ「世の中、本当に物騒ですよねぇ」
(;゚ω゚)「いいからかせぇぇええええええええええ!!」
残り15、14、13……。
僕はワタリカさんの鞄を無理やり剥ぎ取り、中からリンゴを取り出した。
(;゚ω゚)「で、でも、どうすんだお、これ!」
ξ゚听)ξ「あー、とりあえず思いっきり、ぶん投げてくれない?」
ツンの人差し指は真っ直ぐ縦に伸びていて、
僕は不思議と何の疑問も持たずに上空へリンゴを放り投げた。
そして僕はリンゴではなくツンに目をやっていた。
気づけば、彼女は片目を瞑り、両手を空へ向って構えていて、その手にはピストルが握られていた。
ぱん。爆発音を聞いたばかりの僕には、やけにあっさり聞こえる銃声が鳴り、
かん。薄い鉄のようなもの――推測するは爆弾の信管――を打ち抜いた音がした。
どかん!
僕は耳を塞いでいなかったことを後悔した。
ξ゚听)ξ「……ああ、勿体ない」
そんな事をツンは呟いていた。
恐らく人間相手に使いたかったのだろうと、彼女の心中を察せる僕自身が嫌になる。
けたたましい音を響かせた爆発は、闇夜を一瞬だけ照らしあげた。
寒気を熱風が入れ替え、火薬の匂いが鼻につく。
爆弾の残骸と思わしき物体が、僕の周囲に降り注ぎ、地面に罅を入れていた。
それでも、その爆発には美しいと思わざるを得なかった。
フラワーショップの花々を彷彿とさせ、それでいて雅さを超越する煌めきがあった。
確か、こういう爆発物を、東の国では―――
从'ー'从 「わぁ、なんて綺麗な花火なんでしょう」
そうだ、花火と呼んでいたのだった。
また、自分のバッグから出てきたリンゴがその爆発を起こしたというのに、
呑気に拍手を送っているワタリカさんの正気を疑った。
そこいらの家から、今の爆破音を聞きつけた人たちが集まってくる。
ここは逃げるのが得策だろう。
(;^ω^)「色々ありましたがワタリカさん、明日またお話を聞きに伺います」
从'ー'从 「あらそうですか、明日も楽しいマジックを期待していますよ」
困った。よく分からないが、マジシャンだと思われてしまったらしい。
生憎、僕は不器用であると断言してよく、その期待には恐らく応えられない。
ξ゚听)ξ「ワタリカさん、それではどうぞこれを」
そう言ってツンはワタリカさんにリンゴを手渡した。
僕は疾風の勢いでツンの首を締めあげた。
( ^ω^)「な、ん、で、そうなるんだお……?」
ξ;゚听)ξ「ちっ、ちがっ、それは本物だから……」
( ^ω^)「本物?」
ぱっと手を離すと、ツンはげほげほと咳きこんだ。
ξ;゚听)ξ「一応、カモフラージュ用に本物もいくつか持ち歩いているんですよぅ。
それで、お詫びの印にって思ってあげたのに……」
(;^ω^)「そ、そうかお、それは悪かったお」
普段の行いが悪いからいけないのだ。 僕は悪くない。
等とは思うものも、確かに僕が短期になっていることも否定出来ない話だった。
从'ー'从 「よく分かりませんが、ありがとうございます。
それから、愛する人に暴力を振るったりしてはいけませんお?」
(;^ω^)「べっ、別に僕はコイツを愛してなんか……」
ξ゚听)ξ「私からよく言って聞かせます」
(;゚ω゚)「おめーも否定しろお!」
女性二人が意気投合した時の盛り上がりに適うはずもなく、
どうせ逃げるんだからと、僕は誰に言うまでもなくひっそりとその場から離れた。
妙な敗北感は気のせいであろう。
非常に疲れた一日だったと、僕は、思い耽っていた
不死の体を手に入れたその日から僕に安息が訪れることは滅多になかったが、
その中でも群を抜いて変異な一日であったと断言できる。
ただ……そうだな、ええと……うん、認めよう。
ちょっばかし楽しいなぁと感じてしまった事を、認めよう。
むず痒くなった鼻先を、ぽりと掻いた。
そして曲がり角を三、四つと過ぎた所でツンが追い付く。
ξ#゚听)ξ「もう、何で先に行っちゃうんですか!」
( ^ω^)「おお、早歩きで逃げたのに、ツンは随分と足が速いお!」
ξ゚听)ξ「へっへー、私、走るの嫌いだけど、苦手ではないんですよね〜。
って、そういう話はどうでもいいんですよ!」
まったくもぅ、とツンが言って僕は笑った。
それを不思議そうな様子で彼女は見ていたが、
やがて釣られて頬を緩ませ、二人の笑い声が人気のない道を賑やかなものにしていた。
ξ゚听)ξ「あ、そうだ、リンゴ食べます?
まだ余ってるんですよね、残っても勿体ないですし」
今体が最も欲しているのは、食事よりも睡眠だった。
唯、僕は夕食をとっていなかったし、小腹を満たす程度はしておきたいものだった。
( ^ω^)「頂くお」
ξ゚听)ξ「はい、どーぞ」
だから、僕は彼女からリンゴを受け取った。
瑞々しいその様子に、僕は思わずがぶりと噛みついた。
かち。
あれ、『かち』とは何の―――
そうして、僕は一瞬の間に三つの光景を見た。
まずは初めて体験する白。
次に既に幾度となく見てきた黒。
最後に、僕に唾を吐きかけながら、腹を抱えて笑うツンの姿。
白とは爆発の閃光で、黒とは死がもたらす闇である。
混乱した頭が全てを理解し、改めてツンを眺め―――
僕は泣いた。
―――The story might continue
ツン=デレイド=クヴァニルはブーン=マストレイを前に猫を被る。
ワタリカ=ナーベインは様々な異常に遭遇しながらも何も知ることなくVIPで生きる。
お疲れ様です。
ありがとうございました。
昨日今日と途中でお腹が。
すいません。
今日は終わりです。
それでは。
また。
[1話へ] 戻る [3話へ]