(*゚ー゚)「……とまぁ、僕が見たのはこれくらいのものさ。
     さぁどうかな、これを聞いて君は何を思う?」

(,,゚Д゚) 「そうだな……とりあえず……」

(*゚ー゚)「うんうん!」

(,,゚Д゚) 「俺を君と呼ぶのは止めろ」

(;*゚ー゚)「あいたっ」

シール=リアに拳骨をぶつけると、上目遣いで睨まれた。
睨むというよりかは、涙ぐんだ目で見つめらている風に感じる。
まるで子犬だ。

(;*゚ー゚)「分かった分かった、謝るよ、ギリシア=コクーンステイツ」

(,,゚Д゚) 「本名で呼ぶなとも言ったよな?」

(;*゚ー゚)「あいたっ」

シールは抜けた所がある……いや、ありすぎるが、その代償に見合う利用価値がある。
出ないと、この俺がこんな奴と一緒にいる理由がつかない。




(,,゚Д゚) 「お前はしぃで、俺はギコ……VIPではこう名乗ると約束しただろ?」

(;*゚ー゚)「だってその名前、ネーミングセンスゼロ―――あいたっ」

(,,゚Д゚) 「うるせぇ、お前は黙って俺に従ってればいいんだよ」

たんこぶでも出来たのか、シールは頭を押さえ続けている。
俺の拳も若干痛んでいる。 糞、この石頭め。


(*゚ー゚)「うぅ……で、どう思うよ?
     不死身の男と、冷徹な女の話!」

(,,゚Д゚) 「どう思うも何も、不死身ってのはお前の見間違いだろうな」

(*゚ー゚)「えー」

(,,゚Д゚) 「で、女は……まぁ、人それぞれ色々あるってだけだろ」

(*゚ー゚)「ええー!!」

何か不満らしく、シールは声を張り、反論したがっていた。
ただ、俺の拳骨が怖いのか、中々口に出せないようだ。




(,,゚Д゚) 「……ちっ、何だよ言ってみろよ」

(*゚ー゚)「あ、店員さーん!! シーフドピッツァとコーラお願いします!!
     ……そだ、この人にコーヒー、はい、ブラックで!!」

俺が妥協して言ってやったのに、シールはウェイターを呼びつけた。
そしてウェイターが注文を受け取り終えた所で、ようやく俺の方を見た。

(*゚ー゚)「VIPのピッツァは滅茶苦茶美味いって評判でさ、知ってたかい?
     でも、どうせギコは食べないだろうし、ブラックコーヒーを注文しておいたよ。
     もし食べたいって言うなら一切れくらいなら……あげ…る…けど……」

(#,,゚Д゚)「…………」

(*゚ー゚)「あ、あれ? 何か怒ってないかい?」

(#,,゚Д゚)「…………」

(;*゚ー゚)「あいったぁ!! 無言で殴るのは止めろよ!!」

周囲から暴力を振るう所を見られて冷たい視線を送られる。
だが、いい、俺はコイツを殴らないと腹の虫が治まらない。




(,,゚Д゚) 「ああ面倒くせぇ、もうお前のつまんない話はいい」

(*゚ー゚)「つまんないって……酷いなぁ」

(,,゚Д゚) 「んな話より、マスとかマッドボマーの話はねぇのかよ」

(*゚ー゚)「あるよ、とっておきのが」

(,,゚Д゚) 「……何?」

俺があまりにも神妙な顔をして聞き返したせいか、
何か変な事でも言った? という様子でシールはきょとんとしていた。


(,,゚Д゚) 「どんな話だよ、言ってみろ」

(*゚ー゚)「じゃあさぁ、後で一緒にピッツァ食べてくれない?
     頼んでおいてなんだけど、絶対一人じゃ食べ切れないんだよね」

(,,゚Д゚) 「分かった、だから早くしろ」

(*゚ー゚)「やったぜ!!」

シールは大袈裟に、ガッツポーズを作って喜んだ。
こいつの声は無駄にでかい。
店一杯に響くその雄叫びに、さっきとは違ったタイプの視線が俺たちに注がれていた。




(*゚ー゚)「さっきの男たちを見失った後、僕はもう一度見回りに出たんだ」

(,,゚Д゚) 「おう」

(*゚ー゚)「そうしたらさ、何とあの二人が一緒にいるのを見付けたんだ!!」

(,,゚Д゚) 「…………」

(;*゚ー゚)「い、いたっ、だから無言で殴るのは止めろって!!
      ていうか、連打は反則……あ、ダメ、グリグリはしないで!!」

両の拳をシールの頭に合わせ、捻りを加えながら万力のように締め上げる。
周りの客は、こいつらはこういう奴らなんだと理解してくれたらしく、
誰一人シールが悲鳴を上げているその姿に目をくれようとはしなかった。

(*;ー;)「痛いぃ……頭が割れちゃうぅ……」

(,,゚Д゚) 「俺は、つまらない話をするのは止めろって言ったよな?」

(*;ー;)「だから、この話がマッドボマーに繋がるから黙って聞いててよ!!
      ギコはもうちょっと我慢ってもんを覚えた方が良いよ!!」

あまりに必死に語るものだから、俺は黙って話を聞くことにした。




(*゚ー゚)「んで、僕は完璧な尾行で彼らについていったんだ。
     そしたら、ターゲットはナーベイン家の前で色々やっていたから、
     少し近付いたんだけど……そしたら、なんと見つかってしまったんだ!!」

(,,゚Д゚) 「そうか」

(*゚ー゚)「奴らはただものじゃないね……あんな簡単に見破るなんて……」

シールは唸っていたが、こいつが物陰に隠れることすらまともに出来ない事を俺は知っていので、
大した反応も示さずにその発言を流した。


(*゚ー゚)「彼らはナーベイン夫人に用があったみたいで、僕は色々と問いただされた。
     必死な様子でね……あれは間違いなく犯罪者の目つきだったよ、うん。
     そして!! 君が聞きたい情報はここからさ!!」

(,,゚Д゚) 「そうか、お前はそんなに俺に殴られたいか」

(;*゚ー゚)「ああ! ごめん、ギコだよね、分かってるってば!!」

こほんと咳を置いてから、改めて話を続けた。




(*゚ー゚)「奴らはだね、突如壁を爆破したんだ!!
     爆風で僕は吹き飛ばされ、頭をぶつけて気絶してしまった。
     見てよ、これがその時のたんこぶ!!」

シールは自分の後頭部を指し、髪をかきあげ患部を此見よがしにしていた。
僅かにぷっくりと盛り上がっている。

(,,゚Д゚) 「なるほど……つまり、その男が?」

(*゚ー゚)「うん、マッドボマーである可能性が非常に高いね。
     で、見てよ、これがその時のたんこぶ」

シールは頭を下げ続けていたが、二度も見る必要はないと俺は無視した。
爆破物を持ち歩いているとなると、十中八九間違いないだろう。


(,,゚Д゚) 「しぃ、その男の外見は覚えているか?」

(*゚ー゚)「あぁ、覚えているよ。
     あまり格好良いとは言えないけど……うん、あれはあれで味があるっていうか……」

(;*゚ー゚)「あいったぁ!! だから殴るなって言ってんだろ!!
      後ろも前もたんこぶ出来たらどうすんだよ!!  
      これから僕にたんこぶレディとして生きろとでも言いたいのかい!?」

俺がうるせぇと一言呟くと、シールはしゅんとした。




(,,゚Д゚) 「ほれ」

俺の手帳とペンをシールに差し出す。
これが、俺がコイツと相棒になった理由だった。

(*゚ー゚)「うんうん、その男はね……えーと、身長170前半ってとこだったね。
     服装は全身黒で統一していて、革製のジャケットにシーンズ……ブーツだけは茶色だったかな。
     髪の毛は黒で長さは少し耳に掛かる程度で……あ、右目の下に泣き黒子ってやつがあったね。
     恵比寿顔なんだけど、どこか生気がなくて……うん、出来た!!」

シールは手帳に一人の男を描きあげてみせた。
素人目にも上手いと思えるその絵が、完璧な模写であることを俺は知っている。

シールは、一度、見聞きしたものを絶対に忘れない。
本気になれば、今日すれ違った人物全ての容姿を言い表す事が出来るだろう。
賢さも折り紙付で、以前にIQテストをした時、200に近い数字を出してみせたという。

画家としても幾つかの賞を貰っているらしく、
情報を扱う事に関して言うならば、右に出る者はいないという程だった。
他がてんでダメなのが玉に瑕、いや玉に風穴だ。




(,,゚Д゚) 「コイツがねぇ……凶悪犯罪者には見えねぇけどなぁ」

(*゚ー゚)「まぁそう言われれば、そうだけどさ……」

(,,゚Д゚) 「もう一人の方も描いてくれや、女の方」

シールはあいあいさと返事をして、絵に取り組む。
描きあがった絵には、以前に聞いた通り、美麗な女性の姿があった。

(,,゚Д゚) 「この女がマッドボマーと関係があるのか……。
      人目につきそうだな、こっちについて漁った方が良さそうか」

(*゚ー゚)「マッドボマーが脈無しだったら……かな。
     ちなみに、この女、ツンって呼ばれてたと思う」

(,,゚Д゚) 「『ツン』ねぇ……よし、コイツらに関しての聞き込み行くぞ」

げ、と悲鳴をあげるのは、やはりシールである。




(;*゚ー゚)「まずは、上の方にこの情報を提出……じゃないのか?」

(,,゚Д゚) 「知るか、他の奴らに手柄を横取りされたりしたら堪らん」

(;*゚ー゚)「で、でも……!!」

絵を描いていたページから戻り、表紙付近のページを俺に見せつける。
そこには、『2ch国警察』としての心得が刻まれていた。

(*゚ー゚)「2ch国警察、第一条!!
     我々が何よりも優先すべしは国民の平和であり、命である。
     個としての意思は必要なく、組織としての行動を重んずるべし!
     ……これに従って行動しないのは、どうかと思うんだけど」

(,,゚Д゚) 「確かにそうだ……だが、俺達は警察である以前に……何だ?」


シールは悪態を突かれたかのようにうろたえ、口をもごもごとさせていたが、
やがて怪訝そうな顔つきで口を開いた。

(;*゚ー゚)「僕たちは……警察庁超級特殊事件捜査機関……通称FOX機関……」

(,,゚Д゚) 「そうだ、俺たちの信条は何だ?」




(;*゚ー゚)「我々は警察であり警察でない。 我々は人であり人でない。
      我々はFOXであり、それ以上でも以下でもない。
      ……だからと言って、警察のルールを無視するのもどうかと思うんだけど」  

(,,゚Д゚) 「お前だって、面倒くさいから聞き込みをしたくないだけだろ?

(;*゚ー゚)「うっ……」」

(,,゚Д゚) 「我々が為すべきことは世の中の凶悪犯罪者を殲滅することである。
      妊婦がいようと、子がいようと、老人がいようと、上司がいようと、愛する者がいようと、
      我々が第一に考えるのは犯罪者の確保であり抹消である。   
      ……その為に、俺は自分自身のやる気を削ぐ様な事はしたくない訳だが」

(;*゚ー゚)「むぅ……確かにギコはFOXでも一番の逮捕数を誇る訳だし……。
      ギコが動くのが一番良い……のかなぁ……いやでもダインさんだって……」

FOXにおいては、犯罪者を殺害した後の逮捕も認められる。  
俺の犯罪者逮捕数は百を超えているが、
『生きた状態で』に限れば、右手一つで数えられる程度しかなかった。




(;*゚ー゚)「あぁ、分かった、分かったよ!!
      どうせ僕はギコに従って働くしかないんだし、言う通りにするよ!!」

(,,゚Д゚) 「それでいい、だからこそお前は良い」

シールと相棒になってから三月になるが、言い合いになっても折れるのはいつだってシールの方だ。
能力があり、優先権を持たせてくれる、俺の右腕として相応しいやつだった。

きっと、今後首輪を付けろと言っても、こいつは渋々ながらも承知してしまうだろう。


(*゚ー゚)「……何をにやけているんだい?」

(,,゚Д゚) 「はん、ようやくマッドボマーをボコボコに出来ると楽しみで仕方ないのさ」

(*゚ー゚)「うげー、ギコって奴は悪趣味だから嫌だね。
     そんなことより、ほら、ピッツァのご登場だぜ!!」

エビやイカがふんだんに載せられたシーフードピッツァが運ばれてくる。
こんがりと、とろけているチーズは香りも強く、食欲をそそられた。

(,,゚Д゚) 「そうだな、では少しばかり食うとするか」

俺は鞄から木製の入れ物を取り出した。




(*゚ー゚)「……なんだい、それは?」

(,,゚Д゚) 「マイフォークとマイナイフだ。
      初めは毒を警戒する為に使ったんだが、癖になってしまってな」

(*゚ー゚)「……やけにボロボロだね」

(,,゚Д゚) 「ああ、俺は物持が良いからな、かれこれ三年は使っている」

(*゚ー゚)「それは物持っていうより、やっぱり悪趣味……あいたっ!」

拳骨を放った後、頼んだ本人よりも先にピッツァを貪った。
人気があるというのも頷ける出来だった。

その後、シールは口を休めることなく、
いつまでもぺちゃくちゃとお喋りしていた様だったが、俺の耳にはまるで届かなかった。

考えていた。 事件のこと。

考えていた。 マッドボマーのこと。




俺は妄想する。



俺の前に平伏し、命乞いし、無様に泣き喚くマッドボマーの姿を。


そして、その頭を踏みつけ、蹴り飛ばし、動かなくなるまで蹂躙する俺自身の姿を。



興奮は形となり表れ、込み上げる笑いを抑えきれなくなる。


ひひひ。 ひひひ。 


待っていろ、マッドボマー。



『正義の味方』様が、お前の命を奪いに行ってやる―――




起きて起きてと、誰かが呼ぶ声がする。
しかし、僕はそれを寝ぼけた頭の流す幻聴であると判断した。
全てを捨てて生きることを決めた僕を、誰がそんな風に呼ぶことがあろうか。

もう一度声がする。
今度は、起きないと爆発するよ、と声の主は言った。

爆発か、そういえばマッドボマーはいい加減捕まったのだろうか。

あんな犯罪者がいる限り、世の中は平和にならない……ん、爆発?


(; ゚ω゚)「ちょっ、ちょっと待つお!!
       今起きるから、それだけは勘弁してくれお!!」

ξ゚听)ξ「あ、お早うございます。
      突然ですけど、残念なお知らせがあります」

慌てて目を覚ますと、目前にいるツンはそんな事をいった。
ああ、本当に顔だけは可愛い……と、見惚れてるな。阿呆。




(;^ω^) 「何だお」

ξ゚听)ξ「それがですね、既に点けちゃったんですよね」

(;^ω^) 「……何にだお」

ξ゚听)ξ「だからですね、爆弾に火を点けちゃったんです」

黒光りする球体からは、縄のような紐が伸びていて、先端はじゅうと音を立てて燃えている。
いかにも爆弾といった外見だなぁと、先日のリンゴ爆弾を思い返して僕は頭を働かせていた。


(; ゚ω゚)「消せッ!! 今すぐその火を消すんだおッ!!」

ξ゚听)ξ「そう簡単には消えないように作ってるですよね、これが」

まるで他人事に話すツンは役に立たないだろう。
僕は近くにあったミネラルウォーターを慌ててぶち撒けた。

しかし、導火線についた火は、消えることも勢いを劣らせることもなく、
ただただ無情にその身長を縮めていってしまうのだ。




ξ゚听)ξ「だから無駄だって言ったのに……。
      それ、私のお水なんですから、後で奢ってくださいよね」」

(; ゚ω゚)「なら切るッ! この紐をぶった切ってやるおッ!!」

護身用に持ち歩いているナイフを取り出し、導火線を切りつける。
だが、切れない。 僅かに外郭が解れた程度で、まるで寸断出来る気配がない。


ξ゚听)ξ「ふっふっふっ、そう簡単にどうにか出来ると思ってもらっちゃあ困りますね!」

(; ゚ω゚)「だったら、この爆弾をどうしろって言うんだお!!」

ξ゚听)ξ「ブーンが抱えた状態で爆発させれば、部屋を一切破壊しなくて済むんですけどねぇ」

(; ゚ω゚)「その案だけは絶対に却下だお!!」

一日一爆殺なんてたまったものじゃない。
もっとも、ツンは一日に五回は殺そうとしているだろうけど……ああ、余計な事に考えがいってしまう!




ξ゚听)ξ「もう五月蠅いですねぇ……こうすりゃ良いじゃないですか」

そう言ってツンは窓を開け、


ξ゚听)ξ「ほいっ」

爆弾を外に向かって放り投げ、


ξ゚听)ξ「一丁上がりっと」

再び窓を閉じた。



窓の外で爆音。

そして燃え盛る家屋が見えた。





(; ゚ω゚)「お、お前何て事を……」

ξ゚听)ξ「これで安心ですね。 二度寝でもします?」

この女の考えが僕には全く分からなかった。
そもそも、今は物事を考える余裕すらなかった。


(;^ω^) 「逃げるお! ここにいたら面倒な事になるお!」

ξ゚听)ξ「ええー、すっごくお腹空いてるんですけど」

(;^ω^) 「そんなもん、どっかで好きなだけ食べさせてやるから、とりあえず早く!」

ξ*゚听)ξ「わぁ、うれしい! ピッツァでも食べに行きましょう!」

まるでデートに誘われた少女のように、ツンは笑顔だった。
僕も応えようとはしたが、その表情が出来たかは微妙なものだった。















   第三話「それぞれがそれぞれの思惑を持って動き出し始めたが、
    とりあえずランチタイムにピッツァを注文するという事だけ、彼らの考えは一致した」













ミ,,゚Д゚彡「なぁなぁ、見てくれよ!!
      買っちまったんだよ、高級キャメラってやつをよ!!」

重厚感のあるゴツゴツとした、その黒のキャメラを、俺は愛しそうに掲げた。
だというのに、親友のデミタスはため息を吐いてこう言うのだ。

(´・_ゝ・`)「はっ、また愛しのマリアンヌの為……ってか?」

ミ;,,゚Д゚彡「ど、どうして分かるんだよ……お、お前、まさかエスパーに目覚めたのか!?」

(´・_ゝ・`)「フッサール、俺は昨日、何度お前がマリアンヌと口にするか数えたんだよ。
        それが幾つになったと思う?」

ミ,,゚Д゚彡「……えーと、10回ぐらいか?」

(#´・_ゝ・`)「俺とお前が一緒にいた時だけで128回だ、この色ボケ野郎!! 
        俺はマリアンヌを一回も見たことないのに、ストーカー並に詳しくなっちまったよ!!」

ミ;,,゚Д゚彡「お、おおーう……それは、うん、すまないんだぜ」

よく分からないけど、デミタスを怒らせちまったらしい。
温厚なやつだって聞いたのに、知り合って一週間の相手にぶち切れるなんて、どうやらその情報は嘘だったみたいだな。

そう、温厚な人間っていうのは『俺の彼女の』マリアンヌみたいな人の事を言うんだ。
マリアンヌは例えピッツァに山ほどタバスコをかけられたとしても怒りはしないさ。

だって彼女は優しいから! 

聖母マリアもはだしで逃げ出す慈悲深さなのさ!





(´・_ゝ・`)「……まぁいい、そろそろアニムルさんの話の時間だ。
        お前も浮かれてないで、その緩んだネクタイを直すなりしてろよ」

ミ,,゚Д゚彡「おっと、もうそんな時間なのか。
      ……あ、そうだ、実はこのネクタイもマリアンヌが選んでくれたやつなんだぜ!
      カッコイイだろ、マリアンヌは服のセンスも抜群で……」

(´・_ゝ・`)「フッサール、それ以上言ったら、俺はお前の友人を止めるからな」

ミ;,,゚Д゚彡「お、おーけい、分かったからそんな事言わないでくれよ
       他の奴は、何故か知らないけど、三日もすると俺の傍から離れて行くんだよ」

(´・_ゝ・`)「……お前も可哀そうな奴だよな」

デミタスは捨て子を見るみたいな目をして、俺の頭を撫でた。
マリアンヌも、膝枕してくれた時にはこうして撫でてくれたっけ。

でも、これは口にしない。
マリアンヌが一番大事なのは確かだけど、友達もいてほしい、これ大事。





暗く、狭い室内に、明らかに許容オーバーの人数が詰めこめられていた。
数にするなら二十、三十……下手したら五十人はいるんじゃないだろうか。

俺も含めて、そのどれもが、白いスーツに黒のワイシャツ、青いネクタイときちっと揃えた格好をするものだから、
この場にいるだけで酔いそうになってくる。

普段はマリアンヌという美酒に酔ってるけどね、あ、上手い!


ミ,,*ーДー彡「ふふふ、うふふ……」


(;´・_ゝ・`)「何だお前……ていうか、おい、アニムルさんが来たぞ!!」

ミ;,,゚Д゚彡「えっ? ……あっ!」

全く同じタイミングで頭を下げた白スーツの中で、俺だけが遅れていた。
でも、こんだけいるんだから、ばれてない。

……よね?




( ´_ゝ`) 「フッサール=ストーンナビット……。
        何かを誤魔化す時は、終えた後も平然としていなければならないもんだぞ?」

……ダメでした。

アニムルさんがそんな事を言うもんだから、視線が一斉に俺に集まる。
だけども、それは一瞬で、またすぐにアニムルさんの方へ向き直した。

(´・_ゝ・`)「皆、またお前かって思ってるから、反応薄いんだろうな」

言うなよ、俺だってそんな事分かってるんだよ。
泣いてないぞ、これはちょっと目が乾燥しているからなだけさ。


( ´_ゝ`) 「さぁ兄弟たち、今日は悲しい話と良い話の二つがある訳なんだが……。
        どうする? なんて聞くこともなく、悲しい話から始めさせてもらう」

ずっこけそうになったのは俺だけみたいで、全員話に聞き入っていた。
冷静なのもいいけど、もし今のがボケだったらどうするんだ……っていうのは俺の杞憂なんだろうか。





( ´_ゝ`) 「これは残念な話だ……非常に残念な話だ……。
        俺はこの話を聞いた時、悲しみのあまり涙が止まらなくなってしまったくらいだ……。」

確かにアニムルさんの瞳は充血していた。
そして、そこまで言うのくらいなのだから、何かとんでもない話なのだろう。

俺たちは固唾をのんで見守っていたのだが、


(  _ゝ ) 「実はだな……その……俺の家が燃えてしまったらしい」

というとんでもない話だったので、
ここぞとばかりにと、今度こそと、俺はずっこけてみせたのだ。

(  _ゝ )「今朝、突然投げ込まれた爆弾のせいで黒コゲだそうだ……。
       あの中には俺のメインPCやら、大事なコレクションが山ほどあったのに……」

爆弾という単語を聞いて、何人かの人が反応していたみたいだった。
俺も昨夜の事を思い出し、思わず腸が煮えくりかえった。





(  _ゝ )「そうさ兄弟、これは間違いなくマッドボマーの仕業だ……。
       これは恐らく挑戦状だろう……当然俺がこのまま黙っている訳がねぇ……
       だが、奴の情報は誰も知らない……ここまでが悲しいお話だ……」

(#´_ゝ`) 「そして、良い話とは他でもねぇ!
       昨日、マッドボマーについての情報が入ったらしいんだ!!」

歓声が湧きあがった。
マッドボマーが活動を開始してから一年が経ち、様々な事件が起きてはいたが、
これまで奴に関しての情報は一切無かったからだ。


( ´_ゝ`) 「という訳で、俺達はこれから奴の捜索を開始する訳なんだが……」

と、そこまで言ったところでアニムルさんは話を止めた。
部屋のドアが開き、そこから光が漏れてきたからだ。

アニムルさんの話を中断するなんて、どんな無礼な輩だと俺はそいつの顔を見たのだが、驚愕した。
思わず二度見してしまったくらいだ。




(´<_` )「おいアニムル、俺がデリバリーを頼んだピッツァ食べたな……と悪い、会議中だったか?」

( ´_ゝ`) 「いや、良いぞ、オトリス、むしろ丁度良かった」

兄のアニムル=ジャイ=ユストピーと、弟のオトリス=ジャイ=ユストピー。
彼ら二人は本来の意味での兄弟であり、俺の所属する『アーラシファミリー』の中でも、相当名のある二人だった。

アーラシファミリーの頂点のボス。
そして、その下に十人ほどの幹部がいるのだが、
アニムルさんとオトリスさんの兄弟は、両者ともその幹部の位置に置かれていた。

ちなみに、更にその下には俺やデミタスといった、所謂下っ端が存在している。
どの幹部の下につくかによって、与えられる仕事も境遇も違うというのが特色だ。


(´<_` )「というと……あぁ、あの話の最中か」

( ´_ゝ`) 「そうだ、お前がいてくれた方が話は早いだろう」

兄弟揃って幹部に上り詰めるということはとても珍しいらしく、
ユストピー兄弟という言葉を聞くだけで、恐れ戦く人もいるほどであった。





( ´_ゝ`) 「知っての通り、俺達は血の繋がった兄弟だ」

(´<_` )「そして、一緒に暮らしていたんだなぁ、これが」

( ´_ゝ`) 「という訳で、今回のマッドボマー捜索に関しては、だ。
        俺達『ブルー』と、オトリスんとこの『イエロー』が協力する事になった」
        ……別に問題はないよな?」

問題はない、が、戸惑いがない訳ではなかった。

同じアーラシ一家の中とはいえ、今まで他のチームと行動することなど皆無だった。
普段からネクタイの色で分けられているせいか、チーム内での仲間意識も相当に強い。
不安を覚えるなというのも無理な話だった。


( ´_ゝ`) 「まぁ、その反応もごもっともだ、分かってる」

(´<_` )「今回の話は、あくまで俺達ユストピー兄弟の名の下に行う。
       アーラシファミリーには関係ない……つまり、強要はしないってことだ」

( ´_ゝ`) 「だが、もし、俺たちを手伝ってくれるやつがいるなら……」

(´<_` )「その忠誠の証に跪いてくれ」

答えなんて、聞く前から分かりきったことだった。





迷うことなく跪いた。
どうやら、それは俺だけではないらしく、全員の挙動は同時だった。

( ´_ゝ`) 「ありがとう、兄弟」

(´<_` )「感謝するよ、兄弟」

俺達の血は繋がっていないが、兄弟であることに変わりはない。
そして、兄弟の悲しみは、自分のものであるのだ。
ファミリーであることは、何よりも細く、それでいて強い関係を持っていた。


(´<_` )「で、早速だが、マッドボマーの情報だ」

( ´_ゝ`) 「実は、その情報ってのもあんまり大層なもんじゃなくてな。
        黒服の男で、昨夜スレッド通りに出没した……ってくらいなんだな」

(´<_` )「だが、姿を目撃されたのすら、これが初めてだ。   
       だからこそ、このチャンスを逃さず、一気に奴の正体を露わにしたい」


ミ,,゚Д゚彡「スレッド通りの……黒服の男?」


思わず、声を上げてしまった。




( ´_ゝ`) 「どうしたフッサール。 何か気になることでもあるのか?」

ミ,,゚Д゚彡「いえ、あの……その黒服の男ってのは、こいつだったりしませんかね?」

俺は小袋――ちなみにマリアンヌからのプレゼント☆――から、一枚の写真を取り出した。
今朝、現像したばっかりの、出来たてほやほやさ。


( ´_ゝ`) 「ふむ、この男は?」

ミ,,゚Д゚彡「実は昨日、俺の家の壁をぶっ壊して、通り道にしやがった奴がいるんですよ。
      それで丁度手元にあったこのキャメラで撮っておいたんですけど……」

(´<_` )「黒服だな」

( ´_ゝ`) 「フッサール、お前の家はどこにある?」

ミ,,゚Д゚彡「ええと、スレッド通りにあります」

湧き上がるざわめきが、マッドボマーの情報が出てきた事に対してではない事を俺は知っている。
それは、まさかフッサールが役立つなんて、という意味合いで間違いないのだ。くそう。





(´<_` )「黒服、スレッド通り、壁を爆破……間違いなさそうだな」

( ´_ゝ`) 「つまり、この男はスレッド通りへの近道代わりに、フッサールの家を使ったという事か。
        ……いや、自分で言っていてよく分からないがな」

(´<_` )「とにかく、良くやったぞフッサール」

( ´_ゝ`) 「お前はやれば出来る子だって、信じてたよフッサール」

ミ*,,゚Д゚彡「え、えへへ! ありがとうございまっす!!」

かのユストピー兄弟に褒められるだんなて、嬉しすぎて鼻血が出てしまいそうだ、
この喜びを一刻も早くマリアンヌに伝えたい。
今思えば、どうして爆破された時点でマッドボマーだと思わなかったか疑問だが……結果オーライ!


(´<_` )「と、今の話の通りだ兄弟」

( ´_ゝ`) 「この写真の男が、マッドボマーである可能性が非常に高い!
        生死は問わん、見つけ出して連れて来い」

(´<_` )「皆で、このにやけ面を無残なものに変えてやろうではないか」

ここにいる全員が、その言葉で意気を高めた。
マッドボマーを相手に出来るということも、要因であろう。

こうして、一先ず会議は終わりとなった。




( ´_ゝ`)「にしてもよ、今まで何の手がかりもなかったっていうのに、
       いきなり写真まで撮られちまうなんて、どうしちまったんだろうな?」

(´<_` )「俺に聞くなよ、そんな事。
       マッドボマーの遺言にでも聞き出せば良いことだろ?

( ´_ゝ`)「それもそうだな」

ユストピー兄弟は退出間際、そんな会話をしていた。
確かに俺なんかに写真を撮られるなんて無様な話だが……しかし、それよりも……。


(´・_ゝ・`)「フッサール、ピッツァでも食いに行こうぜ」

ミ,,*ーДー彡「うふふ……うふふふふ……」

(;´・_ゝ・`)「……ダメだなこれは」

体の中を感動が駆け巡っている!

駄目駄目な人生を過ごしてきた俺に、飛躍の時が訪れたのだ!





そして、それは他でもないマリアンヌのおかげなのだ。

彼女の為に買ったキャメラが思わぬ形で役に立った。
彼女が俺の幸福の女神だったと言わずはいられない!

早くこのキャメラで彼女の全てを写し取りたい!

 
今週の休みは会えるか? いや、明日は会えるか? 

いや、今日は会えるか? いや、今すぐにでも会えないだろうか! 


ああ愛しのマリアンヌ……僕の心は君でいっぱいさ!



―――The story might continue





シール=リアはギリシア=コクーンステイツに予想以上にピッツァを食べられ憤慨する。
フッサール=ストーンナビットは誰もいなくなった室内で寂しさのあまり泣き出す。
アニムル=ジャイ=ユストピーはオトリス=ジャイ=ユストピーと共に部下の家に居座る。

お疲れ様です。
ありがとうございます。
とても疲れました。
今日は終わりです。
それでは。
また。



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