ツンが並びたてる言葉の数々に、僕は口もつけてないのに胃もたれしそうだった。
魚介類の盛られたものに、ミックス、肉肉しく脂ぎってるものに果実で飾られているもの。
これらバリエーション豊かなピッツァの品々を、ツンはどれもLサイズで頼んだのだ。
ξ*゚听)ξ「いやぁー、奢ってくれるっていうから、たっぷり頼んじゃいました。
食べ切れるかなぁ……!」
( ^ω^)「絶対食えお、残したりしたら承知しねぇお」
さほど余裕のない僕の財布が、より痩せてしまった。
丁度運ばれてきたコーヒーは僕が唯一のオーダーであったが、この女はまるで気にしなかった。
ξ゚听)ξ「あ、コーヒーはどうします? 砂糖入れましょうか?」
( ^ω^)「10個頼むお」
ξ;゚听)ξ「10……ですか?」
( ^ω^)「そうだお、入れるならさっさと入れてくれお」
ボックス状に固められた砂糖が、一つまた一つとコーヒーに沈められていく。
中々どうして、こういった気遣いも出来るのだなと僕は感心していた。
ずずとコーヒーを啜ると、焙煎された豆の香りと、強い甘味が同時に押し寄せる。
このギャップがあるからこそ、コーヒーには砂糖を多く入れないと気が済まなかった。
ξ゚听)ξ「……糖尿病になりますよ」
( ^ω^)「けっ、その尿すら飲み干してやるお」
ξ゚听)ξ「うわぁ……素で引きますよ、それ」
本来なら、ここで爆弾狂のお前に言われたくないと、
定型文と成りかける反論をぶつけるのだが、今この時ばっかりはそうもいかなかった。
川 ゚ -゚)「ふふ、本当に仲良くやっているみたいだな」
ξ゚听)ξ「でしょう、私とブーンの相性は抜群ですよ!」
( ^ω^)「……抜群に良くない方の可能性を検討したいお」
それは、この優雅に美しい黒の長髪を靡かせている女のせいだった。
何も知らない一般人を前に、マッドボマーの話なんて出来るはずもない。
あの家から逃げだした僕は、我儘を言い続けるツンをなだめる為、喫茶店に入った。
喫茶店にしては飲食物が豊富で、結局ツンの願い通りに、ピッツァを奢る羽目になる。
そこに現れたのがクーだった。 彼女は僕の故郷の人間で幼馴染でもある。
もっとも、彼女は僕が少年と呼べる時代を終えると同時に引っ越したので、本当に久しい再会だった。
ただ僕がそれを素直に喜べないのは、やはりツンの存在である。
凶悪犯罪者と一緒に時間を過ごす危険を冒すのは僕だけでいいからと、
もちろん口には出さずに、さっさとお帰り頂く事を望んだ訳ではあったのだが、
ξ゚听)ξ「またまた、ブーンったら照れちゃって!」
川 ゚ -゚)「ふふふ、遠慮のない関係なんて、カップルとしては理想じゃないか」
ξ*゚听)ξ「えへへ、ですよね、やっぱり遠慮はよくないと思うんですよね」
この通り、ツンは何故だかクーとの会話を所望したようで、今も話に花を咲かせている。
いつしか――と言っても、つい最近感じた――疎外感に隔離され、僕はやはりコーヒーを啜るのだ。
それと、ツン、お前の言う遠慮しないとは、朝っぱらから人を爆殺しようとすることか、あ?
川 ゚ -゚)「それにしても安心したぞ、ブーン。
あの村にいた頃は女っ気などまるで無かったのだからな」
(;^ω^)「あー、うん、出来れば一生無いままでいたかったお」
ξ゚听)ξ 「私の事で胸がいっぱいで、毎日苦しいんでしょう?」
川 ゚ -゚)「惚気られてしまったか」
うふふ、おほほ、と雅な笑い声が僕に頭痛を与える。
不死身の肉体を持つとはいえ、精神面は既に瀕死であった。
川 ゚ -゚)「では、私はそろそろ行くとしようかな」
ξ゚听)ξ「え、一緒にピッツァ食べていかれないんですか?」
川 ゚ -゚)「これから約束もあってな、そこで食べる予定なんだ」
余計にピッツァを食べ尽くせるかが不安になってしまった。
だから、僕は言うのだ。
( ^ω^)「残念だお、クーがいなくなって、僕は本当に残念だお」
川; ゚ -゚)「そ、そうか? それは喜ばしい言葉として受け取っておくよ」
クーは席を立ち、和やかな笑顔を残して去ろうとしたのだが、
ふと僕が視線を感じてもう一度顔を上げると、彼女はまだそこにいたのだ。
川 ゚ -゚)「ブーン=マストレイ」
(;^ω^)「な、何だおいきなり」
川 ゚ -゚)「君が何かを知りたいのなら、まず自分が何であるのかを考え直すことが必要だ」
その突拍子もなく、意味ありげな言葉に僕は少し心臓の鼓動を速めたが、
それは急激におさまっていき、最終的には小馬鹿にしている言葉なのだろうと判断した。
( ^ω^)「……宗教のお誘いかお?」
川 ゚ -゚) 「ふふ、私は昔から謎かけが好きだった……忘れてしまったようだな」
そう言い残し、今度は振り向きもせず、クーは店を後にした。
遠い過去の事を振り返ると、確かにクーに色々と謎かけをされていたことを思い出す。
彼女はいつも答えを教えようとはせず、僕の睡眠時間を減らすことを得意としていた。
ξ゚听)ξ「ブーン、ピッツァが届きましたよ」
( ^ω^)「お、美味そう……だけど……これは……」
だが今の僕にとっては彼女の謎かけなど考える余地もなく、
この机いっぱいに広がったピッツァをどうやって減らすかの答えこそ、僕は知りたいものだった。
ξ゚听)ξ「……一応聞きますけど、タバスコって要ります?」
( ^ω^)「当たり前だお」
取り分けたピッツァに、これでもかとタバスコを振りかけていく。
大体半分ほど赤く染まれば、僕の満足いく調味である。
ξ゚听)ξ「……ブーンって、結構変わってますよね」
( ^ω^)「お前に言われたくねーお」
この口内を破壊し尽くす勢いで暴れまわる辛味がたまらない。
ピッツァの味自体もよく、ここらの人がいつも食べているのも納得だ。
それに、やはり僕はツンと二人っきりのが気が楽だ、何て考えていたりもした。
第四話「友好の度合と月日の経過が比例するとは限らない」
デミタス=ロングデイカムズが扉を二度ノックすると、
ノックの返事が二度返され、そうしてようやく彼は部屋に入ることを許可される。
この動作をたった一度忘れた者が、容赦なく入室と共に頭を打ち抜かれたことを彼は知っている。
(´・_ゝ・`)「失礼します」
落ち着き払った声で中に入ったものの、心臓の鼓動は早かった。
ここに来るのは初めての事ではないが、慣れることはなかった。
/ ,' 3「よく来たな、デミタス、そこに腰掛けるが良い」
数人の使用人兼用心棒の奥で、齢七十は超えようという老人がデミタスを迎えた。
ただ、その眼光は老体とは相反して鋭くとがっていた。
老人の名はアラマキ=アーラシ。
デミタスらが所属するアーラシファミリーのボスであり、事実上この街の支配者である。
アラマキは顎の下に生やした白髭を撫でながら、書類に目を通していた。
デミタスは促された通り、赤いソファへと腰掛ける。
この部屋の中は家具から使用人の服装まで、ほぼ全てが鮮やかな赤一色である。
その中でデミタスの来ている白のスーツは浮いているのだが、彼のネクタイは赤色だった。
/ ,' 3「やはりお前には赤が似合っておる」
(´・_ゝ・`)「ありがとうございます」
/ ,' 3「ふぁっふぁっ……して、早速任務失敗について話を聞こうか」
心拍は更に早まり、胃が締め付けられる。
だが、ここで誤魔化せば、やはり死が待っているのだ。
(´・_ゝ・`)「ブーン=マストレイを一度殺すことには成功致しました。
しかし、思わぬイレギュラーが発生し、取り逃してしまいました」
/ ,' 3「言い訳を聞きたいのではない、『何があったのか』と、ワシは聞きたいのだ」
背後の使用人たちが殺意を発していることをデミタスは感じ取っていた。
彼らの主な仕事がそういった類の『ゴミ処理』であることも彼は知っている。
(´・_ゝ・`)「マッドボマーです」
/ ,' 3「……ほう?」
(´・_ゝ・`)「マッドボマーがブーン=マストレイの手助けをし、私たちを殺しました。
その後、ブーン=マストレイを甦生し、共に逃げ回っている模様です」
/ ,' 3「お前以外に死んだ『レッド』の組合員はどうした?」
(´・_ゝ・`)「不始末の責任、という意味も兼ねて、蘇生せず廃棄しました」
/ ,' 3「妥当なところか……それにしてもマッドボマーとはな……」
アラマキは言葉に反して嬉しそうだった。
脅える心よりも好奇心の勝ったデミタスは、思わず尋ねた。
(´・_ゝ・`)「……何か、気になることでもあるのですか?」
/ ,' 3「……マッドボマーが出たとなれば、あの男を呼ぶ口実が出来るからな。
あやつは気難しい所が多いが、興味があるものに対しては非常に貪欲じゃ」
あの男という言葉を聞いて、デミタスは苦い表情を浮かべる。
以前、三度ほど戯れに殺されたことがあったからだ。
/ ,' 3「そういう訳だ、ブーン=マストレイ及びマッドボマーに関してはあやつ待ちで良いだろう。
責任をとらせるのはしょうがない事だが、レッドをこれ以上減らすのはあまり気持ちが良いものではない。
……特にデミタス、お前のような有能な男はな」
(´・_ゝ・`)「……分かりました」
アラマキが言いたいのは、組合員の中でとびきり目をかけられているデミタスであっても、
何か面倒を起こせば、容赦なく廃棄されるということだ。
不死の体を持っていても油断してはならないと、改めてデミタスは身を引き締めた。
(´・_ゝ・`)「そうです、もう一つ報告しなければならないことがありました」
/ ,' 3「何だ?」
(´・_ゝ・`)「ユストピー兄弟が、成り行きでブーン=マストレイの捜索を始めました。
もっとも、彼をマッドボマーだと勘違いしてのことなのですが」
/ ,' 3「……それは、ブルーとイエローを使ってか?」
(´・_ゝ・`)「はい、私も手を貸すことになっています」
デミタスは厄介な問題だと判断してこの報告をしたのだが、
アラマキが思考に及んだのは一瞬の事で、それは即答だったと表してもいいだろう。
/ ,' 3「ブーン=マストレイが殺されようと、こちらは死体の状態で手に入れればそれでいい。
むしろ駒が増えて良かったと考えるべきではないか」
(´・_ゝ・`)「しかし、不死の存在を知られてしまう可能性がおります」
/ ,' 3「それならば、ブルーもイエローも殺してしまえば良い。
アーラシファミリーには、レッドさえいれば良いのだからな」
レッド、本来アーラシファミリーには存在しない、『赤』を掲げるチーム。
アラマキ直属の部隊下にある彼らは、皆、不死の体を備えている。
(´・_ゝ・`)「分かりました……ではそのように」
/ ,' 3「デミタス、お前は賢い男であることを期待しているぞ」
気性を自在に操れることを買われて、デミタスはレッドに選出された。
それ以来様々な仕事を、ただただ冷静にこなしてきたが、心が陰鬱に染まるのは初めてのことだった。
(´・_ゝ・`)「……俺は、捨て犬は放っておけないタイプなんだよなぁ」
アラマキの部屋の外、壁にもたれながら彼はそう呟いた。
馬鹿丸出しの、マフィアでいることが信じられない程に純粋なアイツを、
果たして、俺は殺すことが出来るのだろうか?
その答えを先延ばしにするのが無意味であることは分かっていたが、
それでも時間は必要だろうと、デミタスは天井を見上げた。
その日、アニムル=ジャイ=ユストピーは男と肩をぶつけ合った。
すれ違いざま、やや細い路地裏での出来事だった。
( ´_ゝ`)「いてっ」
(´<_` )「どうしたアニムル、大丈夫か」
( ´_ゝ`)「いや大丈夫じゃなさそうだ、これは間違いなく肩の骨が折れてる」
(´<_` )「そうか、それは一大事だな」
( ´_ゝ`)「という訳で……」
( ´_ゝ`)「この落とし前、どうつけてくれるんだ?」(´<_` )
と、相手の反応を伺ったところ、男は肩を震わせ、連れの女と共にこう叫んだ。
('∀`)「不良だぁああああああああああああああああ!!」
ノハ*゚听)「不良だぁああああああああああああああああ!!」
(;´_ゝ`)「……あ?」
(´<_`; )「な、何だこいつら……」
アニムルとオトリスは思わず圧倒されてしまい、
先ほどまでの威勢はどこへやら、すっかりたじろいでしまった。
('∀`)「すっげぇええええ!! 完璧なまでに不良だぁああああああああ!!」
ノハ*゚听)「ドックン、私、今の流れを本当にやる人がいるとは思わなかったよ!!」
('∀`)「俺もだ! 本当に折れたかと思っちまったぜ!!」
ノハ*゚听)「んな訳ないってー!!」
('∀`)「あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
ノハ*゚听)「あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
(;∀;)「いーひっひっひっひっひっひっひっひっ!!」
ノハ;∀;) 「いーひっひっひっひっひっひっひっひっ!!」
(#´_ゝ`)「……なめてんのか?」
とアニムルは凄みを利かせて言ったものの、
二人の高笑いは治まる気配はまるでなく、なんだかすっかり白けてしまった。
(´<_` )「行こうか、アニムル……」
( ´_ゝ`)「そうだな、オトリス……」
アニムルとオトリスは、相手にするだけ無駄だと去っていく。
ただ、その背中には、敗者が背負うはずの哀愁が漂っていた。
('A`)「なぁ、不良が木を育てたらしいんだけど、何て名前だか知ってるか?」
ノパ听)「えー、分かんないなぁ」
('∀`)「ヤン、キーつってよぉ!!」
ノハ;∀;) 「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」
二人の馬鹿騒ぎは、それから、夜遅くまで続く。
( ´ω`)「あぁ、気持ち悪い……」
ξ゚听)ξ「まだ言ってるんですか、消化悪すぎですよ」
昼食を摂り終えてから、すでに六時間が経過する。
空にはすっかり星が撒かれているというのに、
僕の体内で未だ消化されないピッツァ達のせいで、最悪の気分だ。
( ´ω`)「何でツンは平気なんだお……僕の三倍は食べてたっていうのに……」
ξ゚听)ξ「乙女は胃袋を四つ持っているっていうじゃないですか」
( ´ω`)「それは牛だお……まぁツンならそれでも納得がいくけど」
ξ*゚听)ξ「えっ、そうですかぁ」
別に褒めてはいないんだけど。
しかし、最早それに突っ込む気力もなく、僕は椅子にぐでんと垂れていた。
僕たちはというと、街を闊歩し時間を潰した後、昼と同じ喫茶店に戻ってきた。
ここにくるとピッツァの思い出が蘇るせいか、気分はより優れないものとなっている。
ξ゚听)ξ「全く……男の人ってのは軟弱ですねぇ」
( ´ω`)「主に君のせいであるってこと、自覚してほしいものだお」
僕がここまで滅入っているのは、何も胃もたれのせいだけではない。
時間つぶしの筈の散策で、やたらとツンが張り切ってしまったのも要因だ。
ξ゚听)ξ「だって、楽しかったんですもん」
( ´ω`)「……確かにこれ以上ない程に楽しそうだったお……」
これが、普通ならデートを張り切って楽しんだという意味になるのだろう。
だが、僕らは普通どころか、まるっきりの異常者だ。
ツンは僕が弱っていることをいいことに、様々な場面で僕を爆殺した。
いきなり殺しかかる訳でもなく、あくまで僕の不注意を誘いながら爆殺するのだ。
転んだ先に爆弾を先置きされていた時には、思わずやるなぁと褒めてしまった。
既に四回死んでいる訳だが、これは一日の死亡回数の記録を更新していた。
( ^ω^)「にしても……ワタリカさんは遅いお……」
ξ゚听)ξ「そうですね、もう約束の時刻を30分も過ぎているんですけど……」
从'ー'从「はぁ、何だかすいません」
謝るくらいなら、最初っから早く来てほしいものだ。
かと言って、謝りもしなかったら間違いなく腹を立てるのだろうけど。
……ん?
(;^ω^)「どわっ、ワタリカさん!! いつの間にいたんですかお!!」
从'ー'从「かれこれ一時間ほどですかねぇ」
(;^ω^)「僕たちより先に来てるじゃないですかお!!」
从'ー'从「何だか辛そうだったんで、もう少し休まれてからの方が良いのかなと思いまして」
ξ゚听)ξ「あはは、別に死にゃあしないから平気ですよ!」
確かに死なないけども。
まるでコントの様な展開を経てしまった。
ワタリカさんはずっと僕らの席の後ろに座っていたらしい。
先日の約束をより明確にした後、僕らはワタリカさんと会う事になった。
都合が良いのはやはり夜なようで、こんな時間になってしまったのだ。
从'ー'从「それで、今日は一体どんなマジックを見せてくれるのかしら?」
(;^ω^)「……あれ、まだ僕のことをマジシャンだと思ってたのかお?」
从'ー'从「え! もしかして違う……?」
(;^ω^)「残念ながら……」
从'ー'从「そうなの……悲しいわ……」
それだけで何故か瞳を潤ませ俯くものだから、
僕はこの人が本当に五十という年齢を迎えたのかどうかが気になって仕方がなかった。
ξ゚听)ξ 「あ! 私、マジック出来るかも知れませんよ!」
( ^ω^)「もし、それが人体再生とかそういうのだったら、黙っとけ」
ツンは本当に口をびちっと閉じてしまった。
しかもこいつの場合は本気の発言だから困る。
( ^ω^)「……まぁ、とにかく、今日は聞きたいことがあるんですお」
从'ー'从「あら何かしら、知っていることなら何でも答えますよ」
( ^ω^)「それを聞いて安心したお、僕が聞きたいことっていうのは―――」
(,,゚Д゚)「―――ふむ、それは俺も聞いておきたいところだな」
突然乱入してきた男は、さも当然かの如く空いていた座席に腰掛け、
足を組み、右手をテーブルにばんと乗せ、僕の目を見据えながら言った。
(;^ω^)「え、えーと……」
(,,゚Д゚)「ん、どうした? 話を続けてくれて構わないぞ?」
(;^ω^)「いや、その……どちら様でしょうか?」
それは、この謎の男本人以外、全員が欲していた質問だった。
(,,゚Д゚)「ワタリカ夫人に話を聞きにナーベイン家に行ったんだ。
そしたら約束があって出掛けてるとか言うからよ、走って追いかけてきたんだ。
もしやと思ったが……まさか本当に会えるとは思わなかったぜ」
その男は身長が優に180を超えていて、威厳を漂う風体は、明らかに異質を纏っていた。
ツンもそれを感じ取っているのだろう。
異常が大好物な彼女が、涎を垂らしそうになったのを寸前で止めた瞬間を、僕は見た。
(;^ω^)「で……その……どちら様っていうことなんですけど……」
(,,゚Д゚)「気になるかい?」
(;^ω^)「え、まぁそりゃあ……」
(,,゚Д゚)「ああ、俺はな―――」
男が言いかけた時、店内が騒々しくなった。
何事かと目をやると、小柄な女が涙を流しながら店に飛び込んできたのだ。
(*;ー;)「何で走って行っちゃうんだよ!!
ギコみたいな体力馬鹿に、そう簡単に追いつける訳ないじゃないか!!」
(,,゚Д゚)「しぃ、落ち着け、まずは空気を読め」
(*;ー;)「空気を読んで、傍若無人なギコを叱ってやってるんだろ!?
一体、どういう育て方をしたらこんな風になるのか、親の顔が見てみたいよ!!」
(,,゚Д゚)「とりあえず今の状況を確認してから、もう一度話そう」
(*;ー;)「……え?」
やれやれと首を振る男と、涙を拭きながら店内を見回す女と。
ちょっとしたカオスなこの空気に僕は何だか―――
(*゚ー゚)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
という僕の思考すら吹き飛ばす女の叫び声で、
客もウェイターも、皆例外なく耳を塞いだのは言うまでもない。
(*゚ー゚)「ギコ! いた、いたよ、ねぇねぇ、ほら見てここ!!」
(,,゚Д゚)「分かってる、分かってるから、少し黙れ」
(*゚ー゚)「でも、だって、ここ……ほらほら、僕の絵そっくりだっただろ!?」
(,,゚Д゚)「知ってるよ、お前の絵が正確なことくらい」
女がここと指差しているのは間違いなく僕のことだった。
よくよく見てみればその女は、昨日道を聞いて……えーと、爆弾で吹き飛ばした人だった。
(;^ω^)「も、もしかして報復ってやつに来たのかお?」
(*゚ー゚)「報復……? ギコ、何の話?」
(,,゚Д゚)「俺が知るか、てめぇで考えろ」
(*゚ー゚)「ううん……まぁよく分かんないけど違うし、ええと僕たちはだね」
女は喉の調子を確かめるべく、んん、と鳴らしてから言った。
(*゚ー゚)「やいやいやい、この凶悪犯罪者のマッドボマーめ!!
貴様のような悪党風情を黙って見過ごしゃ男が廃る!!
FOX機関、最強コンビ、ギコandしぃがお縄に頂戴してくれるわ!!」
(,,゚Д゚)「……っていうことらしいぜ、マッドボマーさんよ?」
(;^ω^)「……え?」
その文句に店中がパニックになり、数秒後には蛻の殻になってしまったにも関わらず、
このテーブルの客共だけは一切動くことはなかった。
僕は唖然とするのが限界で、老婦人は紅茶を堪能していて、
男はにやにやと俺の顔を眺め続け、女は満足気にふんと鼻を鳴らして、
ここで本来最もうろたえるべき本物のマッドボマーさんといえば、
こいつは面白くなってきたと言わんばかりに、瞳をきらっきらと輝かせていたのだった。
―――The story might continue
デミタス=ロングデイカムズはそれでも本音を曝さない。
アラマキ=アーラシは血の色の赤を好む。
ツン=デレイド=クヴァニルはLサイズのピッツァを三枚たいらげた。
お疲れ様です。
ありがとうございます。
キャラだしまでが大変。
今日は終わりです。
それでは。
また。
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