lw´‐ _‐ノv畳の上に座っているだけのようです 三畳目「正統派マッチョ」



lw´‐ _‐ノv「もう誰か現れても」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv「……見えないふりしよ」

lw´‐ _‐ノv「うん、そうしよう」

lw´‐ _‐ノv「間違っても悩みとか聞かないぞ……」

(,,゚Д゚)「よし、あと3セットいくぞ、ゴラァ!」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv(平常心を保て、私……)



(,,゚Д゚)「おい、そこのお前……」

(,,゚Д゚)「なんで前転してんだ!」

lw;´‐ _‐ノv「えっ……」

(,,゚Д゚)「いくら予選がまだまだ先だって言ってもなあ!」

(,,゚Д゚)「日々の鍛錬が大切なんだ!」

lw;´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「よし! スクワット続けんぞ!」

lw´‐ _‐ノv(私は蝋人形、私は蝋人形……)

(,,゚Д゚)「使ってる筋肉にちゃんと集中しろゴラァ!」

(,,゚Д゚)「はっい、いーち! にーい! さー……」

lw;´‐ _‐ノv「……」



(,,゚Д゚)「はーち! きゅーう! じゅー……」

lw´‐ _‐ノv「あの……」

lw;´‐ _‐ノv「あんまりうるさいと隣人に壁ノックされるから……」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「外部からの制裁は無用である」

lw;´‐ _‐ノv「壁という壁、畳の下からもコンコン鳴るんだけど……」

(,,゚Д゚)「北村さん……」

(,,゚Д゚)「……マッスル北村さんの御言葉だ」

lw´‐ _‐ノv「あれ、でもここ一階なのに」

(,,゚Д゚)「さあ、続き続き!」

lw´‐ _‐ノv「なんで、下からもコンコン聞こえるんだろ……」

(,,゚Д゚)「……って」

(,,゚Д゚)「どこだここ……?」



lw´‐ _‐ノv「生きてるのか、生き畳なのか」

(,,゚Д゚)「すいません」

lw´‐ _‐ノv「足の裏の匂いかいでるのか」

(,,゚Д゚)「……あの、ここはどこですか?」

lw´‐ _‐ノv「えっ」

lw´‐ _‐ノv「えーと、何の変哲のない和室だよ」

(,,゚Д゚)「はあ……」

(,,゚Д゚)「通りで落ち着くと思いました」

lw´‐ _‐ノv「おもてなしとかないけど」

lw´‐ _‐ノv「安らいでいったらいいんじゃないかな」



(,,゚Д゚)「はあ……」

(,,゚Д゚)「じゃあちょっと休むかな」

lw´‐ _‐ノv「うん」

(,,゚Д゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「ふう……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「って、違う違う!」

(,,゚Д゚)「なんで俺はこんなところに!」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv「はっ、わたしもなんでこんなところに」

lw´‐ _‐ノv「まさか、なにかげーむにさんかさせられるんじゃ……」

(,;゚Д゚)「……なんですか、その棒読みは」



(,,゚Д゚)「何か知ってますよね?」

lw´‐ _‐ノv「そもそも私とは一体なんなのだろう……」

(,,゚Д゚)「ちゃんと教えてください! じゃなきゃ俺……」

(,,゚Д゚)「トレーニング始めますよ!?」

lw;´‐ _‐ノv「どんな交換条件だよ、分かったから腕立てしようとするなよ……」

(,,゚Д゚)「はい」

lw´‐ _‐ノv「ここは、もと悩みを持った人がお目見えする部屋」

(,,゚Д゚)「もとって何ですか……、現に俺がここに現れ出ちゃってますよ」

lw´‐ _‐ノv「私、この部屋と方向性の違いで決別したんで」

(,;゚Д゚)「バンドでも組んでたんですか……」

lw´‐ _‐ノv「いいこととか言わないし、畳の上に座ってるだけなんで」



(,,゚Д゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「つまり、この部屋であなたが悩みを解決してくれるってことですか」

lw´‐ _‐ノv「……違います、私はただの置物です」

(,,゚Д゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……熊、そう私は鮭を咥えた熊の置物」

(,,゚Д゚)「うーん……」

(,,゚Д゚)「相談にのってくれたら、いいトレーニング方法教えますよ」

lw;´‐ _‐ノv「ちょくちょく謎の交換条件を提示するね……」

(,,゚Д゚)「でも、筋肉には興味がおありなんですよね?」

lw´‐ _‐ノv「まるでないよ、お箸持てたらそれで充分とさえ思ってるよ……」



(,,゚Д゚)「ええっ!?」

(,,゚Д゚)「ここに来た時に前転してたじゃないですか」

lw´‐ _‐ノv「まあまあな気持ちを確かめてたの」

(,,゚Д゚)「いや、意味が分からないんですが」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「……どうでした?」

lw´‐ _‐ノv「うん」

lw´‐ _‐ノv「まあまあ」

(,,゚Д゚)「まあまあ、ですか……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)(……帰ったら、やってみるか)



lw´‐ _‐ノv「そういうことだから」

(,,゚Д゚)「……わかりました」

(,,゚Д゚)「じゃあ独り言言いますけど、気にしないでください」

lw´‐ _‐ノv「うん、私は置物だから、気にしないで」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「俺、小さい企業の実業団で陸上やってるんです」

lw;´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv(熊の置物に正面向かって話しかける人って……)

(,,゚Д゚)「毎年、ニューイヤー駅伝も予選落ちするようなとこなんですけど」

lw´‐ _‐ノv「……陸上?」



(,,゚Д゚)「ええ、半ば愛好会のようなチームなんですけどね」

lw;´‐ _‐ノv「いや、やたらマッチョだから……」

(,,゚Д゚)「うっ…」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「……」

lw´‐ _‐ノv(これは)

(,,゚Д゚)「……」

lw;´‐ _‐ノv(何の沈黙なの……)

(,,゚Д゚)「本当は……」

lw´‐ _‐ノv「ん……?」

(,,゚Д゚)「本当は、ボディビルダーになりたかった!」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw;´‐ _‐ノv「えぇ……」



(,,゚Д゚)「だけど、それじゃ食っていけないし」

(,,゚Д゚)「俺はとっくに割り切ったつもりだったんだ……」

lw´‐ _‐ノv「う、うん」

(,,゚Д゚)「けれど、気付けば鳥肉のささみや卵白を貪り」

(,,゚Д゚)「長距離走で使わない筋肉を鍛えていて……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「ああ!」

(,,゚Д゚)「俺の大胸筋は何のためにあるんだ!」

lw´‐ _‐ノv「……」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「熊さんは、どう思います?」

lw;´‐ _‐ノv「いや、知らないよ……」



(,,゚Д゚)「どうしたらいいですかね、俺」

lw;´‐ _‐ノv「どうして熊の置物が相談にのるんだよ、どんな超解釈だよ……」

(,,゚Д゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……鮭、いる?」

(,,゚Д゚)「ないじゃないですか……」

lw´‐ _‐ノv「……うん」

(,,゚Д゚)「はぁ……」

(,,゚Д゚)「人は何のためにがんばるんですかね……」

lw;´‐ _‐ノv「そんな大きいことは分からないよ……」

(,,゚Д゚)「……そう、ですよね」

lw´‐ _‐ノv「でも、歳をとってから後悔はしたくないなあ」

(,,゚Д゚)「あっ……」



lw´‐ _‐ノv「どしたの?」

(,,゚Д゚)「マッスル北村さんも」

(,,;Д;)「同じことをおっしゃってました……」

lw;´‐ _‐ノv「そ、そう」

(,,;Д;)「ありがとうございます……」

lw´‐ _‐ノv「えっ、何が?」

(,,;Д;)「なんか、吹っ切れました」

(,,゚Д゚)「俺、来年のミスター東京出てみます!」

lw;´‐ _‐ノv「何? ボディビルの大会?」

(,,゚Д゚)「この自慢の腹筋と両脚、いや……」

(,,^Д^)「このアドミナブル・アンド・サイを武器に!」

(,,^Д:*:。.:*:・'

(,,^ :*。:・'

:・’



lw;´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv「……よく分かんないけど、がんばってね」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv「久々にいいかんじで消えていったな」

lw;´‐ _‐ノv「私、なんにもしてないけど……」

lw´‐ _‐ノv「……」

lw´‐ _‐ノv「うん」


終わり
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