「だーかーら。君達は建部の条件を満たしてないの」

(;^ω^)「そんな……」

職員室に入って、建部のお願いをしたところ、帰ってきた返事がこれだった。
諦めずに押し押しをする内藤だが、そんなことで結果が変わるはずが無い。
見るのも飽きてきた俺は、内藤の肩を叩いて静止させた。

('A`) 「行こうぜ」

(;^ω^)「ドクオ君っ!」

ぺこりと頭を下げて、職員室から出て行く。
俺に続いて、内藤も職員室から出た。

(;^ω^)「なんだお!諦めるのかお?」

('A`) 「ばかやろう……建部の条件さえ満たせばいいんだよ」


( ^ω^)「つまり……」

('A`) 「もう一人、部員希望者が必要って訳だ」










  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第二話【三人目】










鞄を持ち、廊下を歩く俺達二人。
既に校舎内には人がほとんどいない。

('A`) 「明日、手当たり次第当たってみようぜ。
    一人や二人くらい、元バスケ部がいてもおかしくないだろ」

( ^ω^)「元バスケ部じゃなくても、全然ウェルカムだお!」

('A`) 「……人数が少ない今、出来る限り戦力が欲しいんだけどな」

部活をやるという事は、バスケットをやるという事だ。
バスケットをやる以上、へらへらしたお遊びをやるつもりはない。
勝ちを目指した、真剣なバスケットをやりたいんだ。

( ^ω^)「とりあえずは明日だお!」

今日はもうすることがないため、校舎を後にする俺達。
帰り道は途中まで同じだったため、一緒に帰ることになった。



('A`) 「大体、なんで内藤はバスケしようと思ったんだよ」

高校からバスケをやろうと思う人間は、少なくは無い。
だが、現実的なものとして、高校からのスタートは、大きな障害となるのだ。

( ^ω^)「友達とバスケをやったら、楽しかったからだお!」

その程度だろうとは思っていた。
所詮こいつのことだ。深い理由はないことは簡単に予測できた。
やはり、その通りだったようだ。

だが、その簡単な理由とは別に、こいつには"バスケに対する情熱"があることは
今日の1オン1で、渋々感じていることだった。

('A`) (それに、俺を知ってるってことは、雑誌とかも読んだんだろうし)

動きは初心者でも、知識的には初心者で無いことを祈っておく。


( ^ω^)「それじゃ、僕はこっちだおー」

自転車を扱いでいる途中で、内藤が急カーブをした。
俺はここから真っ直ぐだ。ここがお別れという事だろう。

('A`)ノ「……」

黙って手だけを上げておく。
生憎、「さようならー」と楽しげに声を出す趣味は持っていない。


それから数分掛けて、祖父の家に到着した。
祖父の家と言っても、これから3年間は俺の家でもあるわけだが。

('A`) 「ただいま」

/ ,' 3 「おかえり」

鞄を置いて、自分の部屋に戻る。
久しぶりに、自分のボールを掴んで見た。



('A`) 「……もうちょっと大きくなるんだよな」

中学生ようのボールは、6号球。
高校男子のボールは、7号球だ。
大きさも重さも、少しだけ増加する。

スリーポイントを打つ上で、ボールの大きさや重さは重要な物だ。
今度、7号球を購入する必要があると思った。


明日、部員探しをしなければいけない。
それで、少しだけ不安な事があった。
部活に入ってくれる奴がいるとして、そいつの本気具合だ。

たとえ下手でも、一生懸命に練習する奴はすぐに上手くなる。
だが、逆のパターンもしかりだ。
上手い奴でも、練習をしなければそれ以上にはならない。

新生チームとして、雰囲気というものもある。
少なからず、3人目の入部希望者は、重要なものになるハズだと考えた。




・・・・・・・・
・・・・・
・・

次の日、俺が学校へついた時には、既に内藤は学校に来ていた。
嬉しそうに俺の元に近づいてくる。

( ^ω^)「探すお!3人目!」

('A`) 「……そうだな」

朝っぱらから元気な奴だ。
はしゃぐ内藤の後ろにつき、俺は教室を後にする。


先ずは隣のクラスからだった。
手当たり次第にバスケ部への勧誘をする。
元々、そういう物が苦手な俺は、後ろで見守るばかりだったが。




( ^ω^)「おおっ!?元バスケ部かお!?」

「うん。だけどもう、テニスに入っちゃった」



( ^ω^)「初心者だけど、やってみたいのかお!?」

「でも体力ないから、走らないよ!ケガしちゃうし!」

('A`) 「却下」




( ^ω^)「さあ、一緒に新境地へ!」

「死ねよ」





(;^ω^)「ダメだお……全然見つからないお!」

('A`) 「……」

元バスケ部という奴は何人かいたが、どれも既に部活に入っていた。
入っていないものもいたが、そいつらには入る意思が見られなかった。
無理矢理入れても、正直無駄になるだけだろう。

(;^ω^)「どうするお?後聞いてないのは、このクラスだけになっちゃったお」

('A`) 「いざとなったら2年にも行けばいいだろ」

(;^ω^)「……このクラスにいることを願うお」

最後の一クラスへ足を踏み入れる。
既に時間は昼休み。弁当を食べている生徒がほとんどを占めていた。

その中で勧誘行為を続ける内藤。
正直、俺には絶対真似できない。するつもりもないんだが。



( ^ω^)「君、バスケ部に入らないかお!?」

ご飯を食べている生徒に、声を掛けた内藤。
今までほとんどの生徒が無視をかましていた中、一人だけ顔が上を向いた。

( ^ω^)「お!君、バスケ部に興味があるのかお!?」

( ><)「……べ、別にないんです!」

小柄な生徒だった。
いや、小柄といっては語弊があるかもしれない。
小人だ。かなり小さい人間だ。

( ^ω^)「もしかして、元バスケ部だったりするかお?」

(;><)「そうなんですけど、それとこれとは関係ないんです!」

('A`) 「……」




( ^ω^)「部活にも入ってないのかお!?それじゃ、僕達と一緒にバスケやるお!」

積極的にアピールを続ける内藤。
最後の一クラスということもあるからだろう。
今までにない必死さを見せていた。

( ><)「無理なんです!僕なんかじゃ!」

こちらもこちらで少し強情になっている。
だが、内藤の勧誘はまだまだ終わらなかった。

( ^ω^)「別に無理なんかじゃないお!練習すれば、絶対上手くなるお!」

(#><)「バ、バ、バカにするななんです!」

突如、席を立つ。
何やら憤慨しているようだ。

(#><)「分かってるんです!自分の身長の小ささは!152cmです!
      こんな身長で、高校バスケに通用すると思いますか!?」



('A`) 「うん」




(;><)「び、びっくりしたんです!誰なんです!」

('A`) 「バスケ部設立を目指しているドクオ。
    確かにお前小さいけど、通用しない体じゃないだろ」

身長が大きいというのは武器だ。
身長が小さいということはハンデにもなる。

だが、同時に小ささは、武器になることもあるのだ。

('A`) 「全国大会だって、160cm台がごろごろいるし、150台だって見かけるぜ」

(#><)「その人たちは特別なんです!僕とは違うんです!」

怒りを感じる。
特別、僕とは違う。そう言った、逃げの言葉に対して、怒りを感じる。

('A`) 「……お前、やっぱいいわ。腐ってる」

(;^ω^)「ちょ……ドクオ君!」




('A`) 「最初にも言っただろ?やる気ない奴なら要らないって」

(;^ω^)「でも、これが最後のチャンスだお!」

('A`) 「しゃーねーだろ。二年生探すぞ」

俺が教室を出ようとすると、内藤が俺の腕を掴んだ。
どうやらこいつは、俺の腕を掴んで止めるのが好きなようだ。

( ^ω^)「……どうしてもダメかお?」

('A`) 「自分の弱さを身長のせいにする奴じゃ、無理だろ」

(#><)「──っ!うるさいんです!事実なんです!
      僕は小さいから、バスケットが下手いんです!」


内藤の腕を払いのける。
そして、一歩でこの小人に近づき、胸倉を掴み上げた。

(#'A`) 「……本当にそう思ってんのか?」




(;><)「は、放すんです!」

(#'A`)「自分の下手さは身長のせいだって、本当に思ってんのか?」

慌てて内藤が俺の腕を掴む。
手を解き、小人の胸倉から俺の手が離れた。

(;><)「……」

('A`) 「……今日の放課後、体育館に来いよ」

それだけを言い残して、俺は教室を出る。
何とも下手な逃げだと、自分でも思った。
だが、あの場にいたら、もっと自分を止められなくなっていたかもしれない。

内藤は教室から出てこなかった。
きっと今頃、あいつに謝罪でもしているのだろう。
待っている甲斐もない。

俺は、一人で自分のクラスへと戻っていった。


──放課後

体育館には、俺と内藤の姿だけがある。
終礼が終わって、すぐにここにやってきた。
他の部活が始まってしまっては、俺があいつを呼んだ意味がなくなってしまう。

( ^ω^)「──ドクオ君、ビロードになるするつもりだお?」

あの小人の名前は、ビロードというらしい。
一瞬返事をためらい、そして口を開く。

('A`) 「お前はさ、身長とか才能とか、どう思う?」

突然の疑問を投げかけた。
正直、内藤も返事に困っただろうと思う。
だが、内藤はあっさりと俺に返事を返してくれた。

( ^ω^)「努力で追いつけるものだお!!」

('A`) 「……」

ふと、唇が緩まるのを感じた。



( ^ω^)「お!ビロード!」

( ><)「……」

体育館の入り口に、ビロードが立っていた。
こそこそ様子をうかがうように、俺達のところまで歩いてくる。

('A`) 「早かったな。好都合だ」

( ><)「……何をするんですか?」

('A`) 「1オン1だ」

ビロードが焦りの表情を見せる。
そして次の瞬間には、それは怒りの表情に変わっていた。

(#><)「また、僕の身長をバカにするつもりですか!?」

('A`) 「俺は手を肩より高く上げないって条件付きだと……どうする?」

( ><)「────!?」



('A`) 「さて……高さ的には有利になったビロード君は、どうするのかな?」

( ><)「……ばかにするななんです……!」

ぷるぷると震えるビロード。
そして、キッとした目で、俺を睨みつけてくる。

( ><)「僕が負けるはずないんです!僕は、そこまでヘタレじゃないんです!!」

そう言って、俺の手からボールを奪い取った。
両手でボールを掴み、俺と対峙する。

にやりと、俺の唇が上になった。


('A`) 「さぁ……スタートだ」



第二話 終

前のページへ] 戻る [次のページへ