('A`) (くそ……)

心の中で文句を垂らしながら、俺は手に持つ苗を地面に埋め込む。
腰を上げて前を見てみると、随分と曲がった線上に、苗が埋められていた。

('A`) (あー……曲がっちまった)

シュール先生からは、「綺麗に真っ直ぐ」並べるように忠告されていた。
しかし、今の俺の並べ方では、そうはなっていない。
だからといって、綺麗に並べなおす気にもならない。

大体、何で俺がこんなことをしなくてはいけないのだろうか。
練習着にも泥がたくさん着き、簡単には落ちそうに無い。
一石二鳥の反意語だ。一つ行いで、二つの悪いことがおこっている。

('A`) 「……」

ほんの2時間前の、会話を思い出す。

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・・・・
・・








  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第五話【自由or我慢】













・・・・
・・・・・・・

lw´‐ _‐ノv 「さてさて、それじゃ苗植えにいこうではないか」

('A`) 「ちょっと待ってください」

進もうとするシュール先生を制止する。
全く理解できなかった。
何故、俺達が田植えなど、しなくてはいけないのか。

('A`) 「何故田植えなんですか?」

言いたいことを、一言に収めたつもりだった。
だが、返ってきた言葉も、一言に収められていた。

lw´‐ _‐ノv 「米になるからだ」




('A`) 「意味が分からないです。何故、バスケ部の俺達が、田植えをしなくちゃいけないんですか?」

lw´‐ _‐ノv 「私が顧問だからだ」

('A`) 「……」

どうにかして、この先生を顧問から外す方法を考える。
だが、いくら考えても、その方法は思いつかなかった。

lw´‐ _‐ノv 「ではでは行くぞ。田植えは重労働だ」

(;^ω^)(;><)「……」

あの二人も、俺と同じ心境であるには間違い無い。
しかし、それに反抗するかどうかは、俺とは違うみたいで、
ただ、おとなしくシュール先生についていく姿があった。

('A`) 「……」

仕方が無しに、俺もその後に続いていった。



シュール先生の車に乗せられる俺達。
4人乗りの軽、それにギリギリの人数で乗り込む。

移動中は、随分とゆれが激しかった。
相当古い車のようで、エンジン音もうるさい。
だがしかし、車としての機能は、十分に達しているようだった。

(;^ω^)「……」

車が出発して、30分程度たったころだろうか。
ようやく、車が停止した。

lw´‐ _‐ノv 「到着」

今まで目を瞑っていた俺も、目を開け外に出る。
そこで俺が見たものは
先が見えなくなるほどたくさんの、田んぼだった。


(;'A`) 「まさか──」

(;><)「これ全部──」

(;^ω^)「ですかお?」

lw´‐ _‐ノv 「もちろんだ」

田んぼの数は、数えられないほど多かった。
一つ一つの大きさもそこそこ大きく、全てを合わせると、相当な広さになる。
機械を使うという考えも、恐らくないだろう。

手作業だけと考えれば、軽く1週間以上は掛かってしまう。

lw´‐ _‐ノv 「さてさて始めるぞ。時の流れは止まらないのだ」

いつのまにか作業着に着替えていたシュール先生が言った。
そして、田植えの説明を始めたのだ。




・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

('A`) 「……」

俺や内藤、ビロードは手作業で、一つ一つ植えている。
別の田んぼでは、シュール先生が、機械を使って、スムーズに苗を植えていた。

( ><)「大体、この田んぼ誰のなんですか!?わかんないんです!」

( ^ω^)「たぶんシュール先生のだと思うお……。前、田んぼ持ってるって聞いたことあるお」

田んぼを持っている、という量しては多すぎる。
持っているというよりは、「経営している」の方が近いだろう。

(;^ω^)「それにしても、腰が痛いお……」

田植えは、常に腰を曲げる作業だ。
流石の俺でも、体力的にきつい面がある。




( ><)「まさか、先生は、これで体力増加を狙っているんじゃ!」

( ^ω^)「そうかお!すっげーお!!」

嬉しそうに語っている二人。
そこに、迷惑とは分かっていながらも、俺は口を挟んでしまった。

('A`) 「いや、それはない。足腰を曲げる作業ならともかく、これは腰だ。
    バスケの性質上、腰をこんなに曲げてしまっては、ディフェンスの害だ」

あの時の内藤のように、腰がくだけたディフェンスになってしまう。
この作業にメリットはない。デメリットばかりだ。

(;^ω^)「……」

( ><)「わかんないんです!」

二人の足取りが、少し遅くなった。
無駄な行為と分かって、俺と同じようにやる気をなくしたのだろう。

遠くの田んぼで、相変わらず無表情で苗植えをしているシュール先生が見えた。


lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。今日はここまでにしようではないか」

日が暮れた頃、シュール先生が俺等を呼びにやってきた。
心身ともに疲れている俺等は、ようやくの終了に、歓喜する。

lw´‐ _‐ノv 「それでは学校まで送ってしんぜよう。
        ちなみに、明日はあっち側の田んぼをするぞ」

('A`) 「は?」

思わず間抜けな声が出た。

lw´‐ _‐ノv 「この田んぼ全てを終わらせるまで、作業だ。
       ふむふむ。米が楽しみである」

('A`) 「あの、バスケットは?」

lw´‐ _‐ノv 「米とバスケ、どっちが大切なのだ?」

('A`) 「バスケットです」




lw´‐ _‐ノv 「だがしかし、田植えをするのだ。残念」

そう言って、先生は進みだした。
俺たちに着替えるよう促し、車に乗らせる。
既に暗くなった町並みを、車は走り抜けていった。

('A`) 「……」

車内での俺達の会話はなかった。
疲れというものもあるだろうが、何より、明日もこれがあるという事実に。

( ´ω`)「……」

( ><)「……」

二人も、疲れきった顔になっている。
学校に着き、それぞれ帰路に立ったときですら、会話はなかった。

・・・・・・
・・・



2日目も3日目も。
『男子バスケットボール部』が設立されて依頼、この田植えは続けられた。
そして、1週間目を迎えたその日だった。

lw´‐ _‐ノv 「さてさて今日も張り切っていくぞ」

シュール先生の田んぼの前に立たされる俺達。
だが、苗が埋められていない田はもう少ない。
上手くいけば、今日中には全て終わるだろう。

('A`) 「……」

一言も交わさないまま、俺達は作業に入った。
1週間も続けた田植えだが、未だに苗は真っ直ぐにはならない。
特に、今日は急いでいるという事もあって、普段よりも汚く植えられていた。

──そして、日が暮れた頃。


('A`) 「……へっ……」

(*^ω^)「……だお!」

( ><)「終わったんです!」

あれだけ広かった田んぼに植えられた苗。
お世辞にも綺麗とはいえない。いや、完全に汚いといえる。

lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。それでは、今日はここまでにしようか」

('A`) 「先生、言われた範囲の田植え、全て終わりました」

ようやくバスケが出来る。
毎日家でボールには触れていたが、シュートは打てずにいた。
だが、これからは、きちんと体育館で、練習が出来るのだ。


lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。では、今日植えた分の苗を抜いて、明日また植えなおしだ」


──は?


(#'A`)「いい加減にしてくれよ……!」

シュール先生の言葉を遮った。
最悪だ。何故、もう一度やり直しなのか。
これ以上は、耐え切れない。

lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。いい加減なのはどちらなのだろうか」

(#'A`) 「何……?」

lw´‐ _‐ノv 「いつまで経っても上達しない苗植え。今日のは最悪だ。あれでは育たない」

(#'A`)「……意味分かんないだよ。何で、バスケ部の俺が田植えをしなくちゃいけないのか!」

lw´‐ _‐ノv 「意味などないのだから」




lw´‐ _‐ノv 「残念ながら、お前等がバスケをやる上で、この行動には意味が無い」

(#'A`) 「……」

そんな事分かりきっている。
だから、だから怒っているのだ。

lw´‐ _‐ノv 「だが、意味が無いわけではない」

( ><)「……?」

lw´‐ _‐ノv 「バスケットをやる上で、この行動には意味が無いだろう。
        しかし、この作業は、米を育てる上では大変意味を持っている」

(#'A`) 「米なんて関係ないだろ……!」

lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。ならば、お前はバスケに関係ないことならば、一生懸命しないのか?
       バスケじゃなければ、全て適当にしてもいいのか?」




lw´‐ _‐ノv 「甘えるのもいい加減にして欲しいものだ。自分達はいつでも自由と思ったか。
        大好きなバスケがいつでも出来るとでも思ったか。
        『バスケのためならどんなにきついことでも耐えられる』なんていうのは、バスケの練習のみの言葉か?」

('A`) 「……」

lw´‐ _‐ノv 「バスケをしたいのならば、一生懸命になることだ。
       好きなことをいつでも出来ると思うな。
       我慢をを耐えのけてこそ、真の自由があるのだ」

( ^ω^)「……」

lw´‐ _‐ノv 「さて、今日はもう暗いからな。苗を抜くのは私がやる。
       制服に着替えておきなさい」

( ><)「……」


車に乗り込もうとするシュール先生。
不思議と、体が動いた。

('A`) 「……俺、苗抜きします」

lw´‐ _‐ノv 「……?」

('A`) 「明日、すぐ苗植え始めれるように、俺、今日苗抜きします」

( ^ω^)「僕も、手伝いますお!」

( ><)「僕もなんです!」

俺達は、田んぼの中にもう一度入り込む。
そして、今日植えた苗を、一本一本丁寧に抜き始めた。

雑に並べられた苗。
見れば見るほど、汚らしい。
こんな風に植えてしまっては、確かに、植物は育たない。




(;'A`) 「はっ……はっ……」

既に田植えの作業を終えた後だ。
苗抜きの作業中、足が悲鳴を上げて止まない。

(;^ω^)「はふっ……」

隣の列の内藤も、汗水垂らしながら、苗を抜いている。
その隣のビロードもしかりだ。



(;'A`) (;^ω^) (;><)



lw´‐ _‐ノv 「米……これは美味しく育つ米なり」




(;'A`) 「お、終わった……」

(;^ω^)「ふひぃ……ふひぃ……」

(;><)「ひーひーひーひーひー」


田んぼ横にばたんと倒れこむ。
既に足は足としての機能を果たしていない。ただの棒だ。

lw´‐ _‐ノv 「米」

そこへ、シュール先生が現われる。

lw´‐ _‐ノv 「米は一日にしてならず」

(;'A`) 「……?」

lw´‐ _‐ノv 「バスケットとやらは、一日にしてなるか?」



(;'A`) 「……い、いえ……」

lw´‐ _‐ノv 「ではでは練習が必要。それなら明日からでも練習するべきだろう。
        うむうむ。そうに決まっている」

(;^ω^)「お?」

lw´‐ _‐ノv 「明日から、バスケットの練習を始めようではないか」


先生から、その言葉が出てきた。
待ちに待った、その言葉が聴けた。

バスケットが、出来る。

('A`) 「……」

唇が、あがる。

('∀`)「へへ……」

(*^ω^)「だおだおww」

( ><)「やっと……やっとなんです!」



寝転んだまま、三人は笑った。
不思議と、疲れもとれていくような気がした。

明日から、バスケットの練習が始まる。
体育館で、ドリブルをつける。シュートが打てる。
そう考えただけで、嬉しくなった。

ちょっとだけ時間がかかったけど
ようやく、部活動がスタートした。



第五話 終

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