「1,2,3,4,5……あと一人ですね」

「どこの部活ですか?」

「……会議に遅れると言ったら、あの人しかいないでしょう?」

「はぁ」

小さな個室に、5人の人間が集まっていた。
集まった理由は、『体育館使用割の変更』について。
つまり、ここにいる5人は、全て部長ということだ。

「男女バレー、男女バドミントン、男子バスケットさんもいますね」

('A`) 「はい」

部長は、俺が勤めることになった。
俺か内藤の二者選択で、あっけなく俺に決定した。

そして今、この部長会議に参加しているというわけだが、
その部長会議に、ある部活の部長さんが、遅刻しているというわけだ。









  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第六話【はじめての練習】











既に会議開始予定時刻から、15分が経過していた。
他の部活の部長さんも、いい加減しびれを切らしている。
更に、この場にいる人間で、1年生は自分だけなのだ。
息苦しいのも、分かる。

「……仕方ないです。今から部長会を──」

仕切っている人(バレー部部長さん)が、会議を始めようとした時だった。
唐突に、勢いよく扉が開いたのだった。

(*゚∀゚)「女子バスケット部ただいま到着しましたーーー!」

一人の女子がドアを突き破るような勢いで入ってきた。
髪はショートで、見るからに活発な動きをしそうな人間だ。
俺が、苦手とするタイプでもあった。

「……では、部長会議を始めます」




「先日、新設された男子バスケットボール部から、体育館の使用要請が来ました。
 そこで、使用割を新しく作り直すため、今日、各部部長さんに集まってもらったという事です」

(*゚∀゚)「男子バスケ部!?そんなのいつ出来たんだい!?」

知らなかったのも無理は無いだろう。
出来てから日にちは経っているものの、活動はしていなかったのだから。

「知らない方もいるようですので、ちょっと紹介をお願いしましょうか」

その人の視線が、俺に向かう。
どうやら、俺に紹介をしろといっているようだった。

('A`) 「……男子バスケ部の部長になりました、一年のドクオです」

(*゚∀゚)「一年!?ついに私より歳下がきたね!」

ついに歳下が来た、ということは、この人は二年生なのだろう。
よくある話だ。三年生が、部活にいないというパターン。
恐らく女子バスケ部も、二年と一年だけで成り立っているのだろう。


「では、本格的に会議を始めましょうか」

……それから、1時間掛けて、体育館の使用割が決められた。
男子バスケ部は三人だけということもあり、あまり練習時間は多く取れなかった。
だが、それも仕方ないといえるだろう。

「では、これで決定ですね。お疲れ様でした」

解散、という言葉とともに、全員が席を立った。
全員が出るまで待って、それから自分も席を立つ。
そして、小さな個室を出て行った。

(*゚∀゚)「おー!噂の男子バスケ部くん!」

部屋を出た瞬間、女バスの部長が顔を出してきた。
うぜぇ。

(*゚∀゚)「やーやーやー。そんな嫌そうな顔しない!」


(*゚∀゚)「いつの間にか男バスできてて驚いたよ!あ!あたしの名前は【つー】!
     女バスキャプテンの、PGやってまーす!」

('A`) 「……ドクオです」

(*゚∀゚)「えぇ?聞こえないよ!元気よく行こうじゃないかー!」

そういって、俺の肩をバシバシ叩く。
普通に痛い。こいつは本当に女子なのだろうか。

('A`) 「ドクオです」

先ほどよりちょっと大き目の声で言った。
ようやく聞こえたらしく、つーさんは俺の肩から手をどける。

(*゚∀゚)「ドクオ君かー!どっかで聞いたことある名前だねーw顔も何か見たことあるしw」

……こいつは狙っているのか、素で分からないのか。
どちらにせよ、うざいことには変わりない。


(*゚∀゚)「それじゃ、今日は今から男女バスケの練習だろ!
     がんばろーじゃないか!」

ケタケタ笑いながら走り出すつーさん。
女子バスケ部と書かれた部室に入り、全員に今から練習という事を告げている。

俺も、少しだけ早歩きになる。
男子バスケと書かれた部室(大分字がボケている)に入り込んだ。

( ^ω^)「ドクオお疲れだおー!」

( ><)「お疲れなんです!」

内藤は、いつしか俺のことをドクオと呼び捨てするようになっていた。
別に嫌な気はしない。むしろ、こいつになら呼ばれてもいいとまで思っていた。

('A`) 「今から練習だ。さっさと着替えるぞ」




( ^ω^)「おおっ!」

内藤が嬉しそうに声を挙げる。
そういえば、こいつが体育館でまともに練習するのは初めてだろう。

( ^ω^)「体育館〜体育館〜」

変な歌を歌い始める。
着替えをし終えた内藤が、鞄から何やら取り出した。

( ><)「何ですか!それ?」

( ^ω^)「体育館シューズだおww」

('A`) 「……」

ま、まぁ。
確かに、部活を始めたばかりだから、バッシュはもっていなくて当然だろう。
しかし、なんと言うか。
体育館シューズでバスケの練習をする奴を、久しぶりに見た。


俺自身も、きちんと練習儀を着て、練習をするのは久しぶりだった。
練習着が小さくなっていることを感じ、少しだけ嬉しく思う。
まだ、俺は身長が伸びているようだ。

('A`) 「っしゃ。着替えたな」

ビロードと内藤を確認して、声をかける。
三人で練習というのも、初めての体験だが、大丈夫だろう。
一応、昨日の内に、練習メニューは考えていたのだ。

('A`) 「今日は時間が無いから、走りこみはしない。
    各自、時間をとって家で行ってくれ」

( ^ω^)「だおー」

('A`) 「それじゃ、まずは基本練習からやっていこうか」



('A`) 「まずは、パス練習だ」

ビロードに指示をして、俺と正面の位置に立たせる。
距離はまだ短めだ。

('A`) 「ボールを両手で掴み、胸の正面に持ってくる」

内藤に説明するように、一回一回動きを止めながら言った。

('A`) 「そして、手首の力を使いながら、ボールを相手に投げるんだ」

──シュッ

俺が軽くパスを放つ。
綺麗にビロードの正面に向かうそのボールを、ビロードは受け止めた。

('A`) 「理想はバックスピンだ。バックスピンをかけることで、空気抵抗が減って落ちにくくなる」

( ^ω^)「把握だお!」




内藤にボールを渡して、一度やらせて見せる。
内藤がボールを持った時点で、俺は一回動きを静止させた。

('A`) 「ちょっと待ってくれ。今の手、よく見てみろ」

内藤の手を上げて、見せてみる。
手のひらがびちっとボールについていて、硬くボールを掴んでいた。

('A`) 「手のひらはボールにつけちゃダメだ。球離れが悪くなって、コントロールが聞かなくなるぞ」

(;^ω^)「お・・・・・・」

困った顔をする内藤に、説明を加える。

('A`) 「指の腹で掴むことを意識しろ。後は、指先まで意識を持つことだな」

内藤がボールを掴みなおす。
先ほどより、随分とましな形になっていた。


('A`) 「よし、その形で、一回ボールを投げてみろ」

( ^ω^)「お!」

胸の正面から、ボールを放つ内藤。
だが、そのボールは無回転で、ビロードに届く前に落ちてしまった。

('A`) 「バックスピンだ。シュートやパスのほとんどが、手首の力を必要とする。
    返しを鋭くして、出来る限り回転を掛けるんだ」

('A`) 「一気に言い過ぎているとは思うが、これも仕方ない。
    癖が出来ないうちに、正しいフォームを身につけることが大事だからな」

( ><)「僕もパスだけは得意んです!」

それから、俺とビロードによる内藤の特別レッスンが始まった。
人に教えるのはやはり難しく、思うように動いてくれない。




('A`) 「よし、大分マシになってきたかな……」

練習時間が残り少なくなってきた頃、ようやくバスケらしい構えになった。
まだまだボールの威力は弱いが、上手く回転を掛けれるようになっている。
これなら、練習すれば上手くなる。

('A`) 「それじゃ、二人組みでパスだ。
    ビロードと内藤は二人でパスをしてくれ」

( ^ω^)「ドクオはどうするんだお?」

('A`) 「シュートを打つ」

実質、この二人とパスの練習をしても、自分にはメリットがなかった。
本気でボールを放てば、恐らく二人ともボールをつかめないであろう。
そう思い、自分はシュート率を上げる練習に取り掛かろうと、判断した。

( ><)「僕もシュート打ちたいんです!」

('A`) 「その小柄な体型じゃ、今までのように簡単にはパス出せないぞ。
    ボールも大きくなっているし、重さも全然違うからな」

( ><)「……分かったんです」


それから10分間、二人はパス、自分はシュート練習を行った。
7号球にはまだなれておらず、上手くシュートが入らない。
スリーにいたっては、ほぼ皆無だった。

('A`) 「そろそろバレーが来るな。それじゃ、上がるか」

( ^ω^)「了解だおー!」

体育館に一礼して、その場を後にした。
流れ込むように、バレーが練習を始める。

('A`) 「……」

向こう側のコートでも、女子バスケが練習を終えたようだった。
あまり顔を合わせたくないため、早めに部室へと姿を消す。





部室で着替えている時だった。
突然、部室の外が騒がしくなる。


「ええええええええええええ!!!!!!!111111」

「何?知らなかったのか?」

「しししししる訳ないでしょ!えええ!!!!???」

「ならば早くアイサツしてこい。ちなみにメルアドも聞いて来い」

「え、ちょ!やめ!押さないで!」

「チキン」

「だまらっしゃい!」



部室の前で、大声で話しているようだ。
声のトーンからして・・・・・・おそらく、女子バスケ。


ガチャッ!
突然ドアが開かれる。
そこから、こけるようにして入ってきた、女性陣。

(*゚∀゚)「バ、バカ!押すんじゃない!う、うわっ!着替えてるよ!」

川 ゚ -゚)「みなさん始めまして女子バスケ部です。こんにちは」

つーさんと、もう一人髪の長い女性が入ってきた。
髪の長い女性はかなり美しい容貌で、正直、バスケをやっているようには見えない体だ。

川 ゚ -゚)「いやはや、ウチの部長がね、なんとドクオ君の大ファ
(*゚∀゚)「お前はもう喋んなああああああああああああ!!!!!!」

(;'A`) 「・・・・・・?」

正直反応に困る。
いきなり部室に入ってこられて、どうすればいいのかと。



川 ゚ -゚)「分かったよ。私は何も言わないから、自分でいいなさい」

(*゚∀゚)「・・・・・・仕方がないねぇ!」

何この会話。
俺等をめっちゃくちゃ置いてけぼりにしてるんですけど。

(*゚∀゚)「ドクオ君ッッッ!!!!!」

(;'A`)「え、あ。はい」

(*゚∀゚)「大ファンだよ!!!!」

(;'A`) 「え、あ。はい」

(*゚∀゚)「よっしゃああああああああああああああああ!!!!!」

叫びながら部室を出て行くつーさん。
正直言って、気持ち悪い行動だ。

川 ゚ -゚)「ふむ。それでは私もおさらばする。
     ちなみに私の名前はクーだ」

何その別れ際の自己紹介。
どう考えても作者の展開ミスだろ……名前出すシーンくらい考えておけや。




男三人が残された部室には、沈黙が流れていた。
その沈黙を破るのは、内藤。

(;^ω^)「ドクオ、大人気だお……」

( ><)「今の誰なんですか?わかんないんです!」

('A`) 「女バスのキャプテンだよ……正直、ファンとか言われても困るんだけどな」

そう言って着替えを始める。

今までにも、ファンとか何やら言われて、告白されたこともある。
だが、正直言って、俺にはどうすることもできないのだ。
女子に、興味がわかないのだ。

だから、気にもしていなかった。
この出来事について、深くは考えていなかった。


それが、大事件に発展するとも知らずに───



第六話 終
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