学校の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
生徒は自分の荷物をまとめ、それぞれ席を立つ。
友達のところに行くもの、明日の時間割を確認するもの。
そして、急いで部活に向うもの。
('A`) 「今日は体育館の使用割前半だからな。急ぐぞ」
( ^ω^)「把握だお!」
練習着の入ったエナメルバッグをかるって、教室を出る。
数少ない練習時間を十分に使うため、急いで体育館へと向った。
('A`) 「……あれ?」
下足箱で、靴を履き替えている時。
自分の外靴の中に、一枚の紙が入っていた。
( ^ω^)「それなんだおー?」
('A`) 「……『果し状』ってさ……」
( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第七話【ジョルジュ長岡】
その紙の表には、大きく雑な字で、【果し状】と書かれていた。
裏には、その差出人の名前だろうか。「ジョルジュ」とだけ書かれていた。
( ^ω^)「ジョルジュって人、知り合いかお?」
('A`) 「しらね。行くぞ」
大体、果し状などいつの時代の話だ。
それに、場所も日時も指定していない。全く何がしたいのか。
たとえそれらが書かれていたとしても、行く気はないが。
そのまま体育館に入った俺達。
部室ですぐに着替えて、フロアへと出る。
ビロードはまだ来ていなかった。
他の部活の連中も姿を見せておらず、体育館にいるのは俺達二人だけ。
怪我をしないために、ストレッチを始めた、その時だった。
_
( ゚∀゚)「たのもーーーー!!!」
体育館の入り口に、一人の男が現われた。
ずんだれた制服、ワックスで整えられた髪の毛。
どこぞの不良ですか。
_
( ゚∀゚)「ここにドクオって奴はいるかぁ!」
(;^ω^)「ど、ドクオならそk('A`) 「ドクオ?いや、知りません」
変なことに巻き込まれるのは面倒だった。
ドクオという人物の存在を知らない振りして、やり過ごそうとする。
_
( ゚∀゚)ノ□「こいつなんだけどよ。見かけたら教えてくれ」
そいつが俺に、『ドクオ』の写真を見せた。
雑誌か何かの切抜きだろう。はっきりと俺の顔が映っている。
_
( ゚∀゚)「よく見たらお前似てね?」
('A`) 「よく言われます」
_
( ゚∀゚)「お前かああああああああ!!!」
('A`) 「……はい」
_
( ゚∀゚)「テメェ!!お前がドクオか!!」
見た目も不良だが、中身もやはり不良品のようだ。
頭がからっぽなのではないかと、問い詰めたくなる。
('A`) 「そうですけど、何ですか?」
_
( ゚∀゚)「俺と勝負しやがれ!タイマンだコノヤロー!!」
……やはり、バカだ。
('A`) 「いや、断ります」
_
( ゚∀゚)「お前に断る権利はねぇ!俺が勝負をふっかけたんだからよ!」
('A`) 「今から部活ですし、怪我したくないですから」
_
( ゚∀゚)「黙れ!」
(*゚∀゚)「黙るのはアンタの方だよ!ジョルジュ!」
突然、俺等の会話に第三者が割り込んできた。
女子バスケット部キャプテン、つー。
制服のままズカズカと俺達のところまで来て、大声で叫び始めた。
(*゚∀゚)「アンタ、ドクオ君に何かしてないだろうね!」
_
( ゚∀゚)「つー!今からタイマンはるから、見てろ!俺の方が強いに決まってらぁ!」
(*゚∀゚)「馬鹿!ドクオ君にタイマンはるなんて、私が許さないよ!」
完全に俺を置いてけぼりにした会話だ。
正直言って、反応に困ってしまう。
俺等から少し離れたところで、内藤が涙目になっているのが見えた。
_
( ゚∀゚)「じゃーなんでだよ!お前、こいつのファンとかぬかしたんだろ!?」
(*゚∀゚)「そりゃそうさ!バスケ上手いしプレイかっこいいし!」
_
( ゚∀゚)「はぁ?こんなガリっぽちがバスケ出来んのか?
どうせヒョコヒョコしてるだけだろーがよ!」
(*゚∀゚)「はぁ?ドクオ君のプレイ見たことないの!?神だよ神!」
いや、お前に俺のプレイを見せた覚えも無ければ、
俺如きのプレイが神である覚えも無い。
('A`) 「練習の邪魔なんですけど……」
_
( ゚∀゚)「だーー!!ならあれだ!俺の方がバスケ上手かったら、お前は俺に惚れるのか!?
ってか惚れろ!俺の方がバスケ上手い!」
(*゚∀゚)「適当なこと言うんじゃないよ!ドクオ君>>>>>>>超えられない壁>>>>>>>>アンタ
の方程式は決定的だよ!」
_
( ゚∀゚)「おうおう!?何ならここで一発勝負してやろうか!?あ!?」
……なんだこの流れ。
また、何やらめんどくさいことになってしまいそうな気がする。
(*゚∀゚)「いいよ!やっちまいな!どうせドクオ君の圧勝さ!」
_
( ゚∀゚)「バーカ!俺のプレー見てから惚れたって遅いからな!」
そう言って、ボール籠から一つ、ボールを取り出すジョルジュ。
バシバシとボールを叩き、俺を睨みながら言った。
_
( ゚∀゚)「1オン1だ!このドクオ野郎ッ!」
('A`) 「……」
この馬鹿には、これを拒否しても意味が無いのだろう。
むしろ、ボコボコにして、戦意喪失させるのが一番だ。
そう考えた俺は、ジョルジュの前に立ち、ディフェンスの構えを取った。
_
( ゚∀゚)「話の早い奴だな!おい、そこの豚!」
(;^ω^)「な、何ですかお!」
_
( ゚∀゚)「バッシュ貸せ。さすがに靴下じゃ無理だ」
内藤が急いでバッシュを脱ぎ、それをジョルジュが履く。
ジョルジュの身長は、大体180ないくらいだろう。
185を超えている内藤の靴では、サイズが合わないはずだ。
_
( ゚∀゚)「おっ……ピッタシピッタシ」
とんとん、と靴を慣らすジョルジュ。
どうやら足のサイズは異常に大きいらしい。
ボールを持ち、俺の前に立った。
_
( ゚∀゚)「へっ。実は俺、中学の時はマイケルジョーダンと呼ばれたものさ!」
つーさんと知り合いという事は、恐らく俺等の一個上だろう。
つまり、今は高校二年生ということだ。
_
( ゚∀゚)「しかも!中学の時はバスケ部所属でなぁ……エースとして頑張ったもんだぜ」
('A`) 「……はあ」
前置きが長い。
こいつは、本当に馬鹿なんだろう。それも、最上級のレベルの。
_
( ゚∀゚)「懐かしいぜ。あの時はバンバン抜いたもんだなぁ。そりゃもう」
_
( ゚∀゚)「──こうな風に」
('A`) 「!!」
一瞬だった。
目の前にいたハズのジョルジュが、一瞬にして俺の視界から消えた。
俺の右を吹き抜ける一つの風。
ジョルジュだった。
(;'A`) (嘘だろ……!?)
抜かれたことに気付き、後ろを振り向いたときには、
ジョルジュは既に俺の2歩程度後ろまで進んでいた。
_
( ゚∀゚)「ッッッッッシャアア!!」
俺が追いかけ始めたときには既に、ジョルジュはシュート体制に入っている。
基本の技、レイアップシュート。
───ガコンッ!
_
( ゚∀゚)「……」
(;'A`) 「……」
シュートは見事に外れた。
綺麗にリングの部分に当たり、ボールは変な方向へと弾かれたのだ。
_
( ゚∀゚)「へっ、久しぶりだったからな。シュートの感覚忘れちまったぜ」
ボールを拾いに走るジョルジュを見ながら、俺はただ考えていた。
速すぎた。
あの時のジョルジュのスピードは、俺が目で追えないほど、速かった。
(;'A`) (ちくしょ……)
まさか、こんな公立高校で、抜かれるとは思わなかった。
ディフェンスに自信がある訳ではないが、全国で通用する程度の実力は持っていると思っていた。
だが、こんなにも簡単に、しかも、一年のブランクがある人間に、抜かれてしまった。
_
( ゚∀゚)「あ?ビビったか?」
ボールを持ち直し、もう一度俺の前に立つジョルジュ。
本当ならば、次は俺のオフェンスの番だ。
だが、何故かオフェンスをしたい気分ではなかった。
意地でも、こいつを止めてみたいと思った。
('A`) 「……来い」
グッと腰を下げる。
一切手は抜かない。絶対に、止めてみせる。
(;*゚∀゚)「低っ……」
(;^ω^)「どんだけー、だお。あれじゃ絶対抜けないお・・・…」
_
( ゚∀゚)「すっげー低いなお前。相当足腰鍛えてんのな」
('A`) 「……」
相手のへその辺りを見ていた。
だが、一点を集中してみるのではなく、なんとなく、全体を見る感じでだ。
こうすることで、相手の細かい動きがすぐに分かる。
後は、それに負けないスピードで、ディフェンスをするだけだ。
_
( ゚∀゚)「……」
今まで喋り続けていたジョルジュが、口を閉じる。
当然だ。話しながら抜けるほど、今回のディフェンスは力を抜いていない。
ふっ、とジョルジュの右足が動いた。
だが、その動きは全然スローだ。
抜く気はない、ただ、俺を引っ掛けるためのフェイクだ。
('A`) (いや……!)
これはフェイクじゃない。
俺が気を抜いた瞬間を狙い、スピードで抜くつもりだ。
その証拠に、左足の方向が右を向いている。
これだと、右にしか動くことが出来ない。
俺は少しだけかかとを浮かせ、いつでも動ける状態にしておいた。
緊迫した空気。
静寂な体育館。
そして、動き出すジョルジュ。
_
( ゚∀゚)「オラァ!」
やはり、俺の予想は的中した。
相手は右に強いドリブルを付いたのだ。
相手より早く動き、相手の前に回りこめば、俺のディフェンスは成功だ。
浮かせていたかかとから急いで動かして、俺は大きな一歩を踏んだ。
それが、間違いだった。
──ダンッ!
ボールが俺の視界から消えた。
ジョルジュは目の前にいるが、ボールが消えてしまったのだ。
_
(;'A`) (くそっ!どこに消えた!)
_
( ゚∀゚)「あーばよ」
俺がジョルジュから目を離した一瞬の隙に、ジョルジュは俺の左を走り去る。
その手にボールは握られていない。
ボールは、一体どこに……
(;'A`) 「!!」
ジョルジュが俺の後ろに回りこんだとき、どこからともなくボールが現われた。
それをタイミングよくキャッチするジョルジュ。
(;'A`) (まさか……!)
ボールは俺の股間の隙間を抜けていた。
ジョルジュはドリブルの振りをして、大きく広げられた足幅の間にボールをついたのだ。
視界からボールが消えた俺は、一瞬ボールを探す。
その隙に、本人が俺を抜き去る。
そして、股を抜けたボールをタイミングよくキャッチした。
(;'A`) (くそやろッ……!)
慌ててジョルジュを追いかける。
だが、既にジョルジュはゴール目前の位置。
_
( ゚∀゚)「終わりだあああああ!!!!」
レイアップ。
───ゴンッ!
そして、リングに弾かれる音。
_
( ゚∀゚)「だああああ!!また外れたあああああ!!」
ダンッ、と地面を踏みつけるジョルジュ。
悔しがっているのだろう。
だが、俺もそれ以上に、気持ちが重かった。
(;'A`) (完全に……抜かれた)
言い訳ができないくらい、完璧に抜かれてしまった。
更に、股下を通されるという、屈辱のおまけ付きでだ。
(;^ω^)「ドクオ……」
(*゚∀゚)「ドクオ君……」
落ちていたボールを拾い上げる。
そして、ジョルジュに言った。
('A`) 「……今度は、俺のオフェンスだな」
_
( ゚∀゚)「あ?俺がディフェンスするとでも思ってるのか?」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚)「俺抜いたんだし、俺の勝ちでいーじゃん!なぁつー!」
(*゚∀゚)「いや、シュート外したし」
_
( ゚∀゚)「黙れ!」
(*゚∀゚)「ディフェンスしないってことは、棄権ってこと?」
_
( ゚∀゚)「……わーったよ!ディフェンスするよ!」
ディフェンスの構えを取るジョルジュ。
こちらは……なるほど。それほど、隙が無いわけではない。
('A`) (超オフェンス型か……)
_
( ゚∀゚)「早くしろよ!この格好疲れるんだよ!」
('A`) 「あ、はい」
そう言って、すぐにスリーを放った。
ディフェンスがこないんじゃ、落とす気はしない。
──パスッ
リングにも当たらず、綺麗にネットをくぐる。
目の前のジョルジュの口が、ポカーンと開いた。
_
(#゚∀゚)「ちょ、お前!卑怯だ!」
(*゚∀゚)「何が卑怯なんだい!立派なスリーさ!お前の負けだよ!」
_
( ゚∀゚)「く、糞野郎!何で勝負をしかけてこねぇ!」
('A`) (早くしろって言ったじゃん……)
(*゚∀゚)「さてさて、もう終わりだよッ!ドクオ君たちは練習中だったんだし!」
そうだ。
それが分かっているなら、早くこの馬鹿をどかしてくれ。
_
( ゚∀゚)「ふざけんな!俺が勝つまでやめねーぞ!」
(*゚∀゚)「シュート入らない奴が何偉そうに!そんなに勝ちたきゃ、部活入って練習しな!」
_
( ゚∀゚)「部活入ったら惚れる?」
(*゚∀゚)「さぁ……?どちらにせよ、口だけの今のアンタにゃ、絶対惚れないね!」
_
( ゚∀゚)「んぐぅ……!」
〜職員室〜
lw´‐ _‐ノv 「ふむふむ。なにやら新入部員の匂いがするぞ」
〜体育館〜
_
( ゚∀゚)「……よし!」
('A`) 「……よし?」
嫌な予感が胸に入ってくる。
_
( ゚∀゚)「俺をキャプテンにしろ」
('A`) 「は?」
_
( ゚∀゚)「俺がバスケ部に入ってやるから、キャプテンにしろって言ったんだ」
('A`) 「いや、もう決めてますし……届出も出しているんで」
_
( ゚∀゚)「じゃ、俺がエースな!」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚)「よし!決定だ!エースジョルジュ!」
(;^ω^)「おっ?おっ?」
_
( ゚∀゚)「エースジョルジュ、ここに入部決定だ!」
……こうして、男子バスケ部4人目の部員が誕生した。
たとえ俺がキャプテンだとしても、入部拒否の権限は無い。
これは、仕方が無いことなのだ。
……そうとは分かっていても。
分かっていても、やはり……
( ><)「遅れてすいませんなんです!」
_
( ゚∀゚)「おう後輩!」
(;><)「だ、誰なんですか!分かんないんです!」
_
( ゚∀゚)「エースジョルジュだ!お前の先輩になった!」
( ><)「エースジョルジュ先輩ですか!凄いんです!」
(*^ω^)「ジョルジュさん!どうやったらあんな鋭いドリブルできるんですかお!」
_
( ゚∀゚)「はっはっは!!」
どうして、ウチの部活は馬鹿ばっかりなんだ……。
第7話 終
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