('A`) 「次、パス練習!」

( ^ω^)「把握だお!」

( ><)「ジョルジュさん相手お願いしますなんです!」
  _
( ゚∀゚)「……まかせとけ」

暑苦しい体育館で、威勢のいい声が響いていた。
4人だけの練習は相当ハードなもので、流石にきつさも出てきた。
……と言っても、他の学校に比べたら、こんなものじゃ追いつけないのだが。

('A`) 「パス貰う側は声を出して。
    試合中、いつでも出せるように、習慣にしとおくんだ」

( ^ω^)「把握だお!ヘイパースカモーン!」

( ><)「ジョルジュさん、パスくださいなんです!」
  _
( ゚∀゚)「……ちょっと待った」

ジョルジュがパスを止め、俺の元に近づいてくる。
そして、体育館の入り口を指差して、言った。
  _
( ゚∀゚)「気が散るんだよ……あそこで覗いている奴がよ!」








  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第九話【未来を読む男】










ジョルジュが指を指した方向を向く。

壁|ω・`) 「……」

('A`) 「……」

確かに、何者かがこちらを覗いていた。
壁に半分身を隠し、だが、明らかにこちらを向いている。
  _
( ゚∀゚)「今日の練習ずーーっと覗いてやがる!」

('A`) 「……しゃーないですよ。できる限り気にしないでください」

ぶつぶつ文句を言いながらも、ジョルジュは元の位置に戻っていった。
気になるのは仕方が無いが、試合中はもっと多くの観客がいるのだ。
たった一人の野次馬に、踊らされてはいけないだろう。

壁|ω・`)「……」




  _
( ゚∀゚)「……」

壁|ω・`)「……」


  _
( ゚∀゚)「……」

壁|ω・`)「……」


  _
(#゚∀゚)「……」

壁|ω・`)「……」



  _
(#゚∀゚)「あーもうウゼェェェェェェ!!!!!!!!」




('A`) 「あーちょっと。俺が行きますよ」

怒り狂うジョルジュを制して、俺が一歩前に出た。
ジョルジュなんかにいかせたら、本当に何が怒るか分からない。

('A`) 「あのー……」

入り口にいる男に話し掛ける。
壁に隠れた体を出し、俺に正面を向けた。

('A`) 「ウチのメンバーが、気が散るらしいんで……。何か用ですか?」

(´・ω・`) 「ドクオ君ですね?」

('A`) 「……そうですけど」

(´・ω・`) 「流石ですね。体のキレ、瞬発力、判断力、全ての能力が高い」


何だこの厨二病オーラが全開の男子は。
しょぼくれた眉毛、微妙に低い声が、更におかしな雰囲気を出している。

('A`) 「で、用件は?」

(´・ω・`) 「入部希望です」

('A`) 「……はい?」

(´・ω・`) 「ですから、入部希望だと」

またおかしな奴が、この部活に入ってきてしまう。
何故だ、何故、おかしな人間ばかりがこの部活に集まる。

(´・ω・`) 「顧問であるシュール先生には既に届けています」

('A`) 「……分かりました。えっと…・・・名前は?」

(´・ω・`) 「ショボン。一年、ショボンです」




  _
( ゚∀゚)「おう、ドクオ。誰だったんだ、そいつ」

俺とショボンの元に、ジョルジュが歩いてきた。

(´・ω・`) 「こんにちは。一年生のショボンです。あなたは……ジョルジュさんですね」
  _
( ゚∀゚)「あ?何で名前知ってんだ?」

(´・ω・`) 「自分が入りたい部活なので、一応下調べをしておきました」
  _
( ゚∀゚)「入りたいって……何?入部希望?」

(´・ω・`) 「はい」

(´・ω・`) 「一応、中学の時もバスケをしていました。
       ……まぁ、ある程度は動けると」

それは助かる。
これ以上初心者が増えたら、正直対応に困るところだ。





  _
( ゚∀゚)「なんか一発、先輩からかましてやらないとな……!
     よし、ショボン!俺と1対1しやがれ!」

(´・ω・`) 「よろしくお願いします」

あっけなく認めるショボン。
どうやら着替えもバッシュも持ってきているらしく、
更衣室で着替えることへの許可を求めてきた。

('A`) 「あんまりイジめないでくださいよ?」
  _
( ゚∀゚)「なんとなく態度が気にいらね。ぶっちゃけキモくね?」

('A`) 「……ぶっちゃけ」
  _
( ゚∀゚)「お前でも思うくらいなんだから、相当だよな……」

('A`) 「あ、更衣室から出てきましたよ」



(´・ω・`) 「1対1の前に……ドクオ君、いいですか?」

('A`) 「ん?」

ショボンが俺の近くまで寄ってきて、耳元に口を寄せる。
何やらひそひそと、俺に呟き始めた。

(´・ω・`) 「右に抜き、そこで一度左にボールを持ち変える。
       左に抜くと見せかけて、右に抜きます」

それだけ言うと、ショボンは俺から離れた。
ジョルジュの前に立ち、ボールを拾い上げる。

('A`) (自分の作戦を俺に伝えて、何がしたいんだか……)

(´・ω・`) 「それではジョルジュさん、よろしくお願いします」
  _
( ゚∀゚)「来い!」




(´・ω・`) 「──!」

ショボンが地面を勢いよく蹴り、踏み出す。
踏み出した方向は左。

('A`) (なんだよ、さっきの言葉はなんだったんだよ)
  _
( ゚∀゚)「甘い甘い!」

ジョルジュはその踏み込みに、悠々と追いついていた。
いとも簡単に追いつかれて驚いたのか、ショボンは身体を起こし上げてしまう。
  _
( ゚∀゚)「バーローwww ドリブルが高いぜー!!」

ジョルジュが、浮いたボールを狙おうと手を出す。
だが──

──ダムッ!
  _
(;゚∀゚)「うぉっ!」

かなり低い位置でのドリブル。
差し出したジョルジュの手の、更に下をくぐるドリブルで、ショボンはジョルジュの手をかわした。


ジョルジュを抜いた後は、そのままシュートへ。
外すことも期待したが、難なくレイアップを沈めた。
  _
( ゚∀゚)「……ま、俺の実力はオフェンスってことだ」

負け惜しみを言うジョルジュ。
だが、それも事実だ。
正直、オフェンス力(シュート除く)だけで考えたら、
俺はジョルジュに勝てる気がしない。

(´・ω・`) 「では、僕がディフェンスですね」

低く構えを取るショボン。
向き合った状態で、ジョルジュがボールを掴んだ。
  _
( ゚∀゚)「……?」

ジョルジュが不思議そうな顔をする。
それも頷けるものがあった。
ショボンのディフェンスの構えが、普通のソレとは違っていたのだ。



('A`) 「あれは……」

ショボンの構えは、ジョルジュに対して『面』ではなく、『線』だった。
体の正面をジョルジュに向けているのではなく、
右側の一面だけをジョルジュに向けているのだ。

(;^ω^)「あんなんじゃ、すぐ抜かれてしまうお」

内藤がいう事は正しかった。
普通、ディフェンスはオフェンスに対して正面を取る。
広い範囲を守ることで、相手の動きを防ぐのだ。

だが、ショボンの構えは細い線上。
片方の動きに対しては確実についていけるが、もう片方が、かなり隙だらけなのである。
  _
( ゚∀゚)「……」

それを知ってかしらずか、ジョルジュは、未だに動こうとしない。


  _
( ゚∀゚)「行くぜッ!」

──ダムッ!!

ジョルジュが右にドリブルをついた。
そちら側は、ショボンが完全に隙を作っているスペース。
簡単に、抜けるはずだった。

(´・ω・`) 「まだっ!!」」

完全に隙だらけだったスペースに、ショボンが追いついていた。
かなり早いジョルジュの動きに、完璧に追いついていたのだ。
  _
(;゚∀゚)「くそが……!!」

ジョルジュが慌てて右手のドリブルを止める。
左手にドリブルチャンジし、そのまま左に抜こうと顔を左に向けた。



  _
( ゚∀゚)「っていうのはウッソー!」

ジョルジュのその動きは、顔だけのフェイク。
左に抜こうとしていた体の動きを急転換させ、再度右手にボールを移す。

右、左、右のフェイクを、ジョルジュは仕掛けたのだ。

(´・ω・`) 「残念でしたね」
  _
(;゚∀゚)「────!!」

ジョルジュが抜こうとしたその場所に、ショボンがいた。
完全に正面に回りこんでいる。

前に人がいることなど予想もしていなかったジョルジュの手から、
ボールが零れ落ちた。




('A`) 「……」

右に抜き、そこで一度左にボールを持ち変える。
左に抜くと見せかけて、右に抜きに行った。

ショボンの言った言葉は、ジョルジュの動きを表していたのだ。

( ><)「……凄かったんです……」

(;^ω^)「何で二人ともあんなに動きが早いんだお」

ジョルジュにいたっては、体の筋肉が全てを支えているだろう。
生まれ持った運動神経が、あのスピードを実現させる。

だが、ショボンはどうだ。
正直言って、ガチガチの筋肉は見当たらない。
一般人より、足が少し太くなっているくらいだろう。
  _
( ゚∀゚)「……うぜ」

(´・ω・`) 「……」




(´・ω・`) 「僕が半身のディフェンスをしたことにより、あなたは確実に隙を突いてくる。
       初めから、片方だけを注意しておけば、その隙も埋めれます」

(´・ω・`) 「動く方向が分かっていれば、守ることは簡単。
       右で動きを止め、わざと逆サイドに抜かせようとする。
       それを必死に止める"フリ"をして、フェイクをかけさせれば、結果はこうなります」

何を語りだしたかと思う。
どこの世界に、そのような偶然が重なるのかと。
どうやって計算すれば、そのような式が出来るのかと。

(´・ω・`) 「まぁ、普通の人ならここまで上手く行きませんね。
       ……ジョルジュさんだからこそ、成功しました」
  _
(#゚∀゚)「絶対殺す」

( ><)「説明の文章が分かりにくいんです!」

( ^ω^)「ショボン策士
      ジョルジュ思い通りに動かされる
      ショボン勝利」

( ><)「わかったんです!」



('A`) 「……」

はっきり言って、ショボンのディフェンスは完璧だった。
予想して動いたとは言え、あまりに上手かった。

それが偶然にしろ、実力にしろ。
5人目の部員が、入部した。
バスケットをすることが出来る、5人の部員が揃った。

  _
(#゚∀゚)「絶対殺す」

(´・ω・`) 「またまた。怖い冗談は辞めてくださいって」

(;^ω^)(空気重いお・・・・・・)

( ><)「わーい!また新しい友達が出来るんですー!」



('A`) 「……」






〜職員室〜


lw´‐ _‐ノv 「米……米……。ふむ、こいつのノートは米だな」

lw´‐ _‐ノv 「ケアレスミスか……。仕方が無い、米だ」

lw´‐ _‐ノv 「米米。……ん、電話か」

ガチャ

lw´‐ _‐ノv 「はい……はい……」

lw´‐ _‐ノv 「……男子バスケ部の、練習試合?」



第九話 終

62 名前: ◆PL34tlmoTI :2007/09/20(木) 23:08:33.09 ID:tHub1mUI0
〜用語〜

・ドリブルチェンジ
ドリブルを、右から左、または左から右に変えること。
自分の前で入れ替えることを(フロントチェンジ)。
自分の背中の当たりで入れ替えることを、(バックチェンジ)とも言う。

フロントチェンジはバスケットの基本的な技で、初心者から上級者まで使われている。


・フェイク
騙すこと。
右に抜くフリをして左に抜いたり、シュートするフリをしてドリブルしたりなど。
これに関しては、個人の上手さが出る。

・サイド(逆サイド)
右側、左側のこと。


前のページへ] 戻る [次のページへ