ξ;゚听)ξ 「私とした事が、寝坊だなんて……」

私は走っていた。
理由は至極簡単、体育館にいち早く着くためだ。
ならば、何故いち早く体育館に着かなければいけないのか。

今日、VIP高校で、VIP対パー速での試合があるのだ。
試合といっても、私達の女子バスケット部ではない。
最近出来たばかりの、男子バスケット部の試合だ。

ξ゚听)ξ 「もうそろそろ後半始まる頃かな……」

本当なら、試合開始直後には着くはずだった。
だが、休日ということから寝坊をしてしまったのだ。
男子バスケの試合など、そんな無理して見る事もないのだが、
私を急がせる『何か』があった。

ξ゚听)ξ 「ついた……!」

体育館の二階のギャラリーに向う。
そして、そこから確認した得点板。

ξ゚听)ξ 「12対22……負けてる……」








  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第十四話【第3クォーター】













第十四話【第3クォーター】 〜ξ゚听)ξ 〜






慌ててコートを確認する。
コート上には誰も居らず、メンバー全員がベンチに座っていた。

ξ゚听)ξ (前半が終わってハーフタイムか……)

どうやら、ちょうど試合の中間の時に辿り着いたようだ。
試合は10点差で負けているが、まだ逆転可能な点数だろう。

ξ゚听)ξ (問題は、試合内容なんだけどね)

今表示されている点差だけが実力ではない。
残り16分を走りきる体力。メンバーのテンション。
今日のシュートの成功率。ミスの少なさ。
これらが、後半は目立ってくるものだ。

『ビーー!』

タイマーが音で後半開始を知らせる。
VIPメンバー、パー速メンバー双方が立ち上がり、コートへと上がりこんだ。



( ゚д゚ )「さぁ、後半行くぞ!」

( ^Д^)「はい!」

パー速4番と13番が大きな声を出す。
他の選手達も、それに大きく頷いていた。

第3クォータースタートは、パー速のオフェンスからだった。
ポイントガードの8番と、キャプテンの4番でボールを運んでいる。

ξ゚听)ξ (ディフェンス頑張ってるじゃない)

思っていたよりも、VIPのディフェンスはまともだった。
ガード陣をドクオ君が抑えて、その他はカバーで補っている。
ブーンのところが少し穴だが、ショボン君がそれを補っていた。

ξ゚听)ξ (相手も攻めあぐんでいるわね……)

見始めたばかりだが、相手は随分と慎重に攻めているようだった。
パスを幾度も回し、相手の隙ができるのを狙っている。


('A`) 「ディフェンス!!」

24秒タイマーが残り10秒を切った時、ドクオ君のディフェンスが厳しくなった。
マークマンである4番が、苦しそうにパスを出す。

(;゚д゚ )「くっ……またんき、頼む!」

──バシッ

(;゚д゚ )「!!」

(´・ω・`) 「もーらいっと」

4番が出したパスを、ショボン君が機敏な動きでカットした。
チーム全員で相手を守る、上手いディフェンスの仕方だった。

( ><)「さぁ、こっちも一本決めるんです!」

ショボン君から、ビロード君へとボールが渡る。
そこで、一つの違和感に気付いた。

ξ゚听)ξ (ドクオ君に、ディフェンスが二人……!)



( ゚д゚ )「ディフェンス!」

( ^Д^)「オッケーです!」

('A`) 「……」

二人のディフェンスが、ドクオ君を囲んでいる。
かなり近くで守っているため、ドクオ君もかなり動きづらいようだ。

ξ゚听)ξ (でもあれじゃ、ディフェンスの方が大変でしょうね)

一人を二人で守ると言っても、相手は全国一位のドクオ君なのだ。
恐らく、簡単に事は進まないだろう。
 その瞬間、私の予感は見事に的中した。

('A`) 「ビロード!コッチだ!!」

一瞬の隙をついて、ドクオ君がマークマンを一人振り切った。
ゴールの方向へと走り出し、パスを貰おうと声を出すドクオ君。
だが、しかし──

(;><)「え?あ!!」

──パスを出す側が、反応できていなかった。


(;'A`)「くっ……」

ビロード君が一瞬の隙を見逃した隙に、またもやドクオ君に二人のディフェンスがついた。
バスケットにおける『隙』というのは一瞬で、何度も作れるものではない。
だからこそ、その『隙』を活かせる人間が必要なのだ。

(;><)「ごめんなさいなんです!」

ビロード君は一年生。
しかも、中学の時の試合経験はほとんどないという。
そんな彼では、『試合慣れ』していないのは仕方がないことであった。
  _
( ゚∀゚)「ビロード!」

マークがいないジョルジュさんが叫ぶ。
ノーマークでボールを手にするジョルジュさん。
しかし、パー速の誰も、それを慌ててそれを止めにいこうとしていない。
  _
(#゚∀゚)「バカにすんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

ドリブルをついて、ゴールとの距離を縮める。
そして、勢いのついたレイアップを放った。




──ゴンッ!

強く弾かれるボール。
それを大きくジャンプして、リバウンドするパー速センター。

(・∀ ・)「よし!!」

速攻を出そうして、前へのパスを狙ったが、
既にドクオ君がディフェンスとして戻っていた。

('A`) 「絶対速攻だけは出させるな!」

そう叫ぶドクオ君。
周りのメンバーがそれに応えた。

( ゚д゚ )(あいつには気づかれたようだな……)

パー速は速攻を主体とするチームだった。
相手にシュートを打たせ、リバウンドを取り速攻を出す。
身長が大きくないチームにとって、速攻は大事な武器であるのだ。


お互いシュートが決まらない時間が続く。
VIPの唯一の得点源であるドクオ君が抑えられ、
パー速は上手く繋がらないオフェンスに戸惑う。


──停止した得点に、ようやく動きが出た。

(;´・ω・`)「!」

(゚∠゚)「It's チャンス!!」

ブーンのカバーばかりを考えていたショボン君が、
本来のマークを見逃してしまったのだ。
ノーマークとなった 9番にボールが渡り、あっさりと点を取られてしまう。
点差が12に広がった。

('A`) 「一本だ!コッチも一本取るんだ!」



ドクオ君の声が体育館に響く。
どうしても、どうしても1点が欲しい一言だった。
だが、現状は先ほどと変わらない。

シュートの入らないフォワード。
チャンスを見逃すガード。
二人を振り切れないエース。
攻めることができないディフェンスマン。

そして──

ξ゚听)ξ (あのバカブーン……!!)

ブーンにいたっては、ほとんど攻める姿勢が見られなかった。
完全に相手センターに抑えられ、攻め気を失っている。
不思議と、悲しみと怒りがこみ上げてきた。

(;><)(攻められないんです……)

ビロード君がボールをついて、パス相手を探している。
ほら、ブーン。思い切ってパスをもらいに行ってご覧よ。
動かなきゃ、パスはもらえないんだよ。

……。
………。







ξ#゚听)ξ 「こらブーン!!アンタも動きなさいよ!!」

(;^ω^)「ツ、ツ、ツン!?」


ξ#゚听)ξ 「何弱気になってんの!誰もアンタなんかに期待してないんだから、
        当たって砕けなさいよ!!!」

(;^ω^)「……」


ξ#゚听)ξ 「この前のやる気はどうしたわけ!?私のアドバイスも無駄だったっていうの!?」

( ^ω^)「ツン……!」


ξ゚听)ξ 「……もっと、自信持っていいって言ったじゃない……」


気付けば叫んでいた。
言った後、思わず顔が赤くなる。




ξ///)ξ「わ、私何言ってるんだろ……」

思わず顔を隠したくなる。
体育館中の視線を浴びているような錯覚に陥った。

(*゚∀゚)「おやおや恋の予感って奴かい?」

ξ///)ξ「そ、そんなんじゃ……」

ξ゚听)ξ 「って、つー先輩じゃないですか」

私の隣に、いつの間にかつー先輩が立っていた。
本当にこの人は、行動が読めない。

(*゚∀゚)「内藤君だっけ?彼は……うん。いいお肉持ってるじゃないか」

ξ゚听)ξ 「いやいや違いますから。断じて。
       というか、先輩は何してるんですか」

(*゚∀゚)「応援に決まってるじゃないか!」

ξ゚听)ξ 「ジョルジュ先輩?」

(*゚∀゚)「ドクオ君に決まってるだろ!」



そんなつー先輩をよそにおいて、私は試合に目を戻す。
先ほどとは違う、状況が変わっていた。

( ^ω^)「ビロード!コッチだお!」

ブーンが、ポストでボールを要求していた。
自ら、声を出して。

(;><)「ブーン!お願いなんです!」

ビロード君から、ブーンへとパスが出る。
身長が高いおかげか、すんなりとそのパスは通った。

(・∀ ・)(コイツが攻めるのは初めてだな……ま、動きは初心者だが)

( ^ω^)「……」

ボールを手にしたが、全く動かないブーン。
やはり、攻めることが出来ないのだろうか。


──次の瞬間だった。

(;^Д^)「またんきさん!!」

(・∀ ・)「?……!!」

ブーンの大きな影から、もう一つの影が現われた。
その影は、ブーンから手渡しでボールを貰い、そのままゴールへと向う。
疾風のように、素早い影。

ξ゚听)ξ 「ドクオ君……!!」

('A`) 「っしゃぁ!」

そのまま、ドクオ君は誰もいないゴールへと一直線。
静かに、レイアップを沈めた。

(*^ω^)「ドクオ!」

('A`) 「よくやった!ブーン!!」



ξ゚听)ξ 「……2人のディフェンスは……?」

二人のディフェンスは、いつ振り払ったのだろうか。
ドクオ君の動きに注目していなかった私は、それを知らないままだ。

(*゚∀゚)「スクリーンさ」

隣のつー先輩が、口を挟む。

(*゚∀゚)「内藤君の横スレスレを、ドクオ君は通っただろ?
     それによって、ディフェンスは内藤君が邪魔で守れなくなるってことさ」

ξ゚听)ξ 「ディフェンスは、常にオフェンスの横についているから……。
       スレスレを通られると、内藤君にぶつかっちゃうわけですね」

(*゚∀゚)「そのとーり!あとはそのままゴールに一直線さ!かーっこいい!」




これで、点差はまた十点。
少しだけ、勝利への入り口が見えてきた。

( ><)「ディフェンス頑張るんです!」
  _
( ゚∀゚)「おうよ!」

(´・ω・`) 「カバーしっかり!」

メンバーも、それにつられて元気が出ている。
体力もなんとか残っているらしく、これからが期待できた。

それに対して、パー速。
こちらは、意外な反応だった。

(;゚д゚ )「はぁ……はぁ……」

(;^Д^)「くっそ……」

ドクオ君についている二人が、あきらかに息切れしている。
ここに来て、体力の限界に達してしまったのだろうか。


──パァン!

ボールのはたく音が聞こえた。
それは、以外にも、ジョルジュさんの元から。

(゚∠゚)「オーマイガーット!!」
  _
( ゚∀゚)「っしゃぁ!もう一本行くぜ!!」


そのとき、既に走っている人影があった。
それは、パー速のディフェンスではなく……。

('A`) 「ジョルジュー!!パス!」

ドクオ君だった。





ジョルジュさんからドクオ君へのロングパス。
それを受け取り、軽くレイアップへ。

──パスッ



('A`) 「8点差!」

( ^ω^)「絶対に勝つお!!」



試合は、まだ終わらない。



第14話 終

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