審判「パー速学園の勝ちで、試合を終了します」
「「「ありがとうございました」」」
コートの中央で、恒例のあいさつが行われた。
正面に立つパー速学園メンバーの顔は、晴れ晴れとしている。
それに対する俺達は、お通夜のそれだった。
('A`) 「……」
黙ってコートに戻ろうとする。
そこへ、突然背後から声が聞こえた。
( ^Д^)「よぉ。お疲れさん」
('A`) 「……お疲れ様」
プギャーだった。
試合後、知り合いの奴と話すことはあるが、こいつとはそこまで親交はないはずだ。
微妙な距離を感じながら、俺はプギャーを見る。
(;^Д^)「……もしかして、お前、俺覚えてない?」
('A`) 「知り合いだったっけ……?」
( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第十七話【苦悩】
(;^Д^)「くっそ……中体連、決勝の時のチームにいただろ!?」
('A`) 「……ひろゆき中学?」
( ^Д^)「そう!それの8番だよ!」
('A`) 「あー……」
そういえば、こんな奴がいたかもしれない。
曖昧な記憶だが、確かいた気もする。
('A`) 「なるほどな……。どーりで並の動きじゃないと思った」
( ^Д^)「結局、俺は一度もお前を止められなかったんだけどな」
確かに、俺はこいつに止められなかった。
俺は、自分なりの動きが出来た。
だけど──
( ^Д^)「何でお前、こんな高校入ったんだよ」
唐突に、プギャーが問いかけた。
黙ったまま、俺は面倒くさそうに髪を掻く。
( ^Д^)「ひろゆき高校蹴って……わざわざバスケ部のない高校か?」
('A`) 「お前こそ、どうしてパー速にいったんだよ」
( ^Д^)「……お互い、色々あるってことかい」
適当に頷いて、目を逸らす。
今は、誰とも話したい気分ではなかった。
( ^Д^)「……お前の才能、完全に埋もれちまうな」
最後にプギャーが呟いた。
聞こえたが、聞こえない振りをして、歩き出す。
あいつらが待つ、ベンチへと。
( ^ω^)「……」
_
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`) 「……」
( ><)「……」
ベンチは、完全な静粛に包まれていた。
誰もが下を向き、会話を交えようとしない。
lw´‐ _‐ノv 「……こんなときは、米('A`) 「みんな、悪い」
シュール先生の話を遮って、俺が言う。
全員の顔が上がったが、声は出なかった。
('A`) 「……俺の責任だ」
作戦、各々のポジション、役割、俺のミスだ。
それだけじゃない。
二人のマークに対抗できず、点をとる事が出来なかった。
('A`) 「試合状況とか、ペース配分とか……俺のミスだ。
本当に悪い」
( ^ω^)「ドクオばっかりが謝ることじゃないお」
内藤の声が入った。
だが、今の俺にとって、それは外野のたわごとにしか聞こえない。
('A`) 「いや、俺が悪い。試合に一番なれているはずの俺が、みんなを引っ張れなかった」
( ^ω^)「だから、ドクオは頑張ってたお。十分引っ張ってたお」
('A`) 「だけど、負けた」
_
( ゚∀゚)「うっせぇな……誰もお前責めてないんだから、それでいいだろ!?」
ジョルジュだ。
いつもより調子を上げて、俺に向って言った。
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚)「……」
無言のまま、お互いを見詰め合った。
ただ見るだけではなく、睨みつけるように。
( ><)「そうなんです!ドクオ君は凄かったんです!」
(´・ω・`) 「得点力、ディフェンス力、総合的に考えても、ドクオ君が一番でしょう」
二人が続く。
だけど、俺にとっては、遠くからのお世辞にしか聞こえない。
負けた。
その事実と、耐え切れない責任感が、俺を囲んでいた。
('A`) 「……俺のせいだよ……」
残すように呟いて、俺は部室へと入っていった。
部室。
ただ一人だけの空間で、俺はうつむいていた。
少しだけ時間を待って、それからすぐに着替えた。
('A`) 「……」
着替えながら、今日の試合を思い出す。
思えば、終始相手のペースに嵌っていた。
ミルナの3ポイント。
プギャーのドライブ。
抑えられなかった。
二つを同時に抑えることが出来なかった。
('A`) 「……くそ!」
壁を拳で叩いて、部室を出る。
鞄につめこんだ、汗だくのシャツが、やけに重く感じられた。
そのまま、誰にも会わずに家に着いた。
部屋にあるベッドに、倒れこむように寝転ぶ。
('A`) 「……負けか……」
随分と久しぶりの感触だった。
中学3年のときは、負けたことなどほとんどない。
それに、長い間試合から離れていたのだ。
この感触を忘れるのも、仕方の無いことだった。
('A`) 「……」
身体は重く、疲れていた。
だが、何故だか動きたかった。
このままじっとしていたら、嫌なことばかり考えてしまう。
そして、ふと思いつき、立ち上がる。
自転車の鍵を持って、家から飛び出した。
自転車をこいで、約20分。
到着した場所は、ちいさな公園。
昔、随分とお世話になった公園。
('A`) 「……変わってねーなぁ」
思わず呟いた。
公園の隅にある、本当に目立たない、バスケットリング。
それを、何年かぶりに、見たからだ。
('A`) 「中学1年……2年の最初の時も使ったっけ」
自分がまだ、ラウンジ中学に入学したばかりのときだった。
その少し前、ラウンジ中学に有名な監督が入ってきたのだ。
無名だったラウンジ中学は、見る見る内に実力をつけ、県内でも名があがるほどに成長していた。
('A`) 「1年と2年は、まともに体育館も使わせてもらえなくて……」
毎晩、この公園で自主練習をしていたのだ。
ズルズルとすべる公園だが、それでも、自分に力と自信を与えてくれた。
('A`) 「……」
リングを見つめる。
自分が、シュートを打つ姿が思い浮かぶ。
その自分は、シュートを外してばかりいた。
('A`) 「……ん?」
自分の想像だと思っていたその姿は、人だった。
小太りの男が、汗を流してシュートを放っている。
('A`) 「……内藤……じゃねーな」
内藤よりも、一回り大きい。
その巨大な身体を持つ男は、何本もシュートを放っては、外していた。
('A`) 「……」
俺の足は、自然とそちらに向っていた。
──ガコンッ
またシュートを外す。
先ほどから見ているが、入った数の方が少ないだろう。
単純な、ゴール下シュートなのに。
(;´∀`)「はぁ……はぁ……」
男は、俺が見ているのにも気付いていない様子だった。
繰り返し繰り返しシュート放っては、外れたボールを拾っている。
(;´∀`)「モナッ……」
リングの淵にボールが当たってしまい、それは勢いよく跳ねていった。
バウンドしながら転がるそのボールは、俺の足元で停止する。
俺はそれを拾い上げて、男の顔を見た。
('A`) 「……っと。こんばんは」
(;´∀`)「オバケエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ」
(;'A`) 「は?」
(;´∀`)「ごめんなさい許してください別に悪気は無かったんですだから殺さないで!」
男が俺に向って頭を下げる。
どうやら、幽霊か何かと勘違いしているようだった。
('A`) 「あの……俺、人間なんで……」
( ´∀`)「モナッ!?」
がばっ、と男が顔を上げた。
服をパンパンと叩きながら、のしのしと立ち上がる。
( ´∀`)「モナモナ〜驚かさないでくれモナ」
('A`) 「……」
柔和な笑顔の男に、俺はパスを出す。
( ´∀`)「ありがとうモナ。……ひょっとして、バスケ経験者モナ?」
俺のパスの動きを見て思ったのだろう。
俺は返事をすることなく、ただ頭を上下に動かした。
( ´∀`)「モナー!悪いんだけど、ゴール下シュートを教えてほしいモナ!」
('A`) 「あ、はぁ……」
( ´∀`)「お願いしますモナ!師匠!」
何とも急展開だった。
初めて会って5秒後に、俺達は師弟関係に結ばれた。
( ´∀`)「いやー。まさかこんな公園で人に会うとは思わなかったモナ」
笑いながら俺を見る。
不思議と、嫌な感じの笑みではなかった。
('A`) 「えっと……何て名前?」
( ´∀`)「モナー。よろしくモナ!!」
( ´∀`)「高校でバスケを始めたんだけど……周りが経験者ばっかりで、取り残されたモナ……」
寂しそうに呟くモナー。
だが、その直後にはまたもや笑顔に戻っていた。
( ´∀`)「だから、この公園で練習して、みんなに追いつくモナ!」
ポジティブで、前向きな行動だった。
体型が似ているせいか、内藤の顔が被ってしまう。
そして、何故か親近感さえも。
('A`) 「とりあえず、シュート打ってみて」
( ´∀`)「モナ〜」
モナーが重そうな腕を上げて、シュートを放つ。
一瞬で、改善すべき点がいくつも見つかった。
('A`) 「あんまり跳んでない気がする……もうちょっと高く跳んだら入りやすいんじゃね?」
本当はもっと気付いたことがあったが、
初見の人物にそこまで酷評するほど自分は冷徹ではない。
とりあえず、一番気になったことを言ってみた。
( ´∀`)「モナモナ!やって見るモナ!」
そう言って、スグ行動に移すモナー。
やはり、内藤の面影があった。
( ´∀`)「モナッ!」
モナーがシュートを放つ。
今度は、ちょうどいい高さで跳んでいた。
体型の割には、よく跳んだほうだと思う。
──パスッ!
綺麗にシュートが決まる。
まさか、一回のアドバイスで決めてくるとは思わなかった。
それから、いくつか改善点を教えた。
初めの方にあった違和感も、この短時間の間にほとんど消え去った。
かなりのスピードで、上達したのだ。
('A`) 「うん……大体入るようになったんじゃね?」
( ´∀`)「モナモナッ!師匠のおかげモナ!」
どのくらい時間が経ったか分からないが、あたりは暗くなってきている時間帯だった。
試合の疲れもあって、俺は近くのベンチに座った。
( ´∀`)「師匠は、高校でバスケやってるモナ?」
隣にモナーが座ってきた。
軽くベンチが傾いたが、それを気にせずに俺は返す。
('A`) 「一応現役かな……今日負けたんだけど」
( ´∀`)「負けちゃったモナか……それは残念モナ」
( ´∀`)「モナはまだ試合に出たことないから、まだ良くわかんないけど……。
試合に出れたらきっと、『活躍したい』って思うモナ〜」
('A`) 「……まぁ、な。今日の試合、俺の責任で負けたようなもんだし」
( ´∀`)「モナ?」
('A`) 「……ん、なんでもねぇよ」
( ´∀`)「……モナは、誰か一人の責任で行われる試合はないと思うモナ」
ふと、モナーの顔を見る。
やはり、あの、安心できる笑顔だ。
( ´∀`)「いっつもコーチが言ってるモナ!『チームは絶対にチーム』だって。
誰か一人のおかげで勝つこともなければ、誰か一人のせいで負けることもないモナ」
('A`) 「……」
( ´∀`)「誰かが失敗しても、それをみんなカバーするモナ。
誰かが成功したら、それをみんなで盛り上げるモナ」
モナーはそう言った。
当たり前のことを、なぜか誇らしげに言った。
('A`) 「……そうだな」
当たり前のことだが、何故か心についた。
何かを思い出したような気持ちになった。
( ´∀`)「みんな、『自分がもっと上手ければ』って思うモナ。
もうちょっとシュートが決まれば、もうちょっと足が速かったらって」
( ´∀`)「でも、それを自分ひとりで背負いこんだら、中々成長はしないモナ」
( ´∀`)「みんなで支えあって、足りないところを補う。
それが、チームモナ!」
('A`) 「……まさか、こんなところで説教されるとはな」
(;´∀`)「ご、ごめんモナ……。つい熱くなっちゃって」
('A`) 「いや、むしろありがとうって感じだな」
ベンチから立ち上がる。
モナーからボールを貸してもらい、リングを見た。
このくらいかな。スリーポイント。
('A`) 「……チーム、か」
打つ。
入ると思ったそれは、リングに当たり、真上に浮き上がった。
──バチンッ
( ´∀`)「モナッ!」
その浮き上がったボールを、モナーがリバウンドでキャッチする。
( ´∀`)b「モナッ」
('A`) 「……」
('A`)b「おう」
モナーからパスを貰う。
そして、シュートを放つ。
薄暗い夜、見えるか見えないかきわどいリング。
そのネットの中に──
──ボールが、吸い込まれた。
第17話 終
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