('A`) 「……残念ながら、入部は認めねぇ」
ドクオが俺を見て言った。
どこか後ろめたいような感じを持ちながらも、はっきりと言い切った。
(;^ω^)「ちょ!ドクオ!何を言ってるんだお!」
('A`) 「だから、入部は認めねぇって言ってるんだよ」
ドクオの目は、ただ俺だけを真っ直ぐ見つめていた。
数秒間の静寂が続き、それを自分が割る。
ミ,,゚Д゚彡「……俺が怪我してるからってこと?」
('A`) 「それもある」
「それもある」、ということは、他にもあるという事だ。
自分には思い当たらない。
正直言って、全力疾走できなくても初心者よりは上手い自信はある。
( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第二十話【パッション】
(;^ω^)「怪我してるとは言え、絶対僕よりは上手いお」
ブーン君が慌ててフォローをした。
いつもあたふたしているイメージだが、根はいい人のようだ。
('A`) 「まーよ。だけど、いつ怪我が悪化するか分からないんだろ?
ちゃんとした設備のないウチでやっても、身の保証はできないしな」
ドクオはこう言った。
だけど、これだけじゃないんだ。
彼が俺を拒む理由は、これだけじゃないはずだ。
ミ,,゚Д゚彡「……他には?」
('A`) 「……しらねーよ。ウチにはやる気のない奴はいらないってことじゃね?」
変な言い方をする。
それに、その条件に僕は当てはまっていないはずだ。
確かに、前まではバスケを諦めていた。
だが今は、確かにやる気はある。
もう一度バスケをやりたいと思う意思がある。
ミ,,゚Д゚彡「……」
('A`) 「……」
ミ,,゚Д゚彡「……分かった」
小さく呟いた。
そしてブーン君の方を向いて、少し笑顔を作る。
ミ,,゚Д゚彡「そういうこと。ちょっとバスケは無理かなw」
(;^ω^)「で、でも──」
ミ,,゚Д゚彡「怪我人がいたら部内の雰囲気も気まずくなるしね。
ブーン君なら上手くなれるよ。頑張って」
誰かが止めるのも待たずに、後ろを向いた。
歩き出した俺の足を止める者は、もういなくなっていた。
───……・・・
──・・・・・
─・・
・・
ミ,,゚Д゚彡「……うっわ」
外に出ると、6月というのに大雨が降っていた。
転校初日を終え、家に帰るときのことだ。
まだ友達といえる友達も作れず、たった一人で校門を出た。
傘の上に落ちる水玉が、僕の耳を絶えず振るわせる。
ミ,,゚Д゚彡「今頃……」
ドクオ達は練習をしているのだろうか。
濡れないように窓を締め切り、腹の底から声を出して、
汗だくになりながらも走り続け、あのボールをリングに放っているのだろうか。
ミ,,゚Д゚彡「……」
バスケットは好きだった。
それ以外にすることがないというくらい好きだった。
練習していくうちに、自分が他の人より少し上手いことに気付いた。
中学では全国区へ進むことも可能になり、高校は超有名校に推薦でいけた。
ミ,,゚Д゚彡「それが、このザマかー」
たった一人で。
雨が降り続ける、まだ夕方5時の道。
怪我をしている右足をかばいながら歩く、この自分の姿。
ミ,,゚Д゚彡「なんでかな……」
どうしてだ。
何故、ドクオは自分を部活に入れてくれなかったのか。
自分に情熱がないと、何故言い切ったのか。
自分がひろゆきを辞めた事に対してだろうか?
いや、自分は怪我をしてしまったのだ。
元々裕福な家庭ではない。
推薦金さえなくなってしまえば、通い続けることは難しかったのだ。
ミ,,゚Д゚彡「……」
だから公立に来た。
誘われたバスケ部に入部を決めた。
そして、それをも拒否された。
ミ,,゚Д゚彡「意味わかんねー……」
バスケットがしたい。
あの体育館で、ボールのつく音を聞きたい。
汗と叫び声に沈む、あの日々を取り戻したい。
ミ,,゚Д゚彡「……あー……くそっ!」
_
( ゚∀゚)「おいテメェ!今俺を見て舌打ちしただろッ!?」
ミ;,,゚Д゚彡「は?」
いきなりチンピラに絡まれた。
しかもこのチンピラ、どうもガタイがよさそうである。
つくづく、最悪な日だと思えた。
_
( ゚∀゚)「あーテメェ?俺様は今とってもお金が必要なんだぜぇ?」
意味が分からない。
かつあげしたいつもりだろうが、日本語があまりにおかしすぎる。
ミ,,゚Д゚彡「……バッシュ?」
チンピラの手には、真新しいバッシュが握られていた。
買ってまだ数日、いや、ひょっとしたらまだ未使用かもしれない。
_
( ゚∀゚)「おうおう!この靴買ったら高いのなんのって!
っつー事で金くれや」
ミ,,゚Д゚彡「……」
バスケ部か。
見れば確かに、筋肉のつき方がバスケらしい。
こんなチンピラは入れて、俺は入れないのか。
ミ,,゚Д゚彡「はは……ドクオの野郎……」
_
( ゚∀゚)「……ドクオ?」
チンピラの目が変わった。
いきなり肩を掴んできて、どっしりと体重を乗せる。
_
( ゚∀゚)「お前、ドクオが嫌いなのか?」
ミ,,゚Д゚彡「え?あ、ま、まぁ」
_
( ;∀;)「同志よ!!」
本当に変な奴に絡まれた。
いきなり俺に抱きつき、涙を流す。
_
( ;∀;)「なんであのガリガリの方がもてるんだよぉ!
つーの馬鹿野郎があああ!!」
何なんだろう、この男。
とりあえず黙ったまま動かないでいると、男は顔を上げた。
_
( ゚∀゚)「んで、お前はなんでドクオが嫌いなんだ?もてる所か?」
ミ,,゚Д゚彡「…・・」
_
( ゚∀゚)「言わねぇと殺す」
───……・・・
──…・・・
・・・・
全てを話した。
脅されたことが理由じゃなくて、ただ単純に誰かに話したかった。
それが見ず知らずのチンピラでも、良かった。
_
( ゚∀゚)「そんな事か」
ミ,,;゚Д゚彡(そんな事って……お前の恋愛話の方がそんなことだろ……)
_
( ゚∀゚)「んじゃ、部活に入れよ」
ミ,,゚Д゚彡「……だから、それが拒否されたんだって」
_
( ゚∀゚)「あー弱いね弱いねー。一回挑戦してもう終わりですか?!」
ミ,,゚Д゚彡「……?」
_
( ゚∀゚)「俺がつーに告白した回数はそんなもんじゃないぜ!
男なら何発でも攻撃を続けるんだぜ!」
ミ,,゚Д゚彡「……」
_
( ゚∀゚)「ドクオがお前を入れたくない理由?
はっ、そんなの簡単だろwwwww」
_
( ゚∀゚)「お前の考えはさ、流れに流れちまってるんだよ。
怪我したからバスケできない〜とか、
いい人に部活誘われたから入る〜とか」
_
( ゚∀゚)「男なら、自分の芯を持て。
んで、その芯を思いっきりぶつけろ」
_
( ゚∀゚)「んま、そしたら俺みたいにチョ−カッコイー男になれるんだ……って」
_
( ゚∀゚)「……もういねぇ」
第20話 終
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