自分の今までを否定された気がした。
僕の考えを根本的に覆す発言だった。
小さい奴しか出来ない仕事があるなど、信じられなかった。
(;><)「小さい奴しか……?」
('A`)「あぁ。フサギコや俺じゃなくて、お前にしか出来ない仕事だ」
ドクオ君の顔はいたって真面目だ。
とても僕をおちょくっているようには見えない。
そもそも彼は、試合中に人をおちょくるような人間じゃない。
('A`)「フサギコとビロードは交代。ビロードがツンデレに着いてくれ」
フサギコ君と僕に向かって言う。
頷くフサギコ君とは反対に、僕は動けず固まったままだった。
(;><)「ちょ、ちょっと待つんです!」
僕が反論しようとした時、突然ドクオ君が身を乗り出す。
そして、僕に顔を近づけて呟くように言った。
('A`)「大丈夫だ。お前はただ、“一生懸命”ディフェンスをすればいい」
( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第四話 【超がつくほどの凡人】〜( ><)〜
「時間です!」
ドクオ君の言葉の意味を理解する前に、タイムアウトが終了する。
いや、意味自体は理解出来るのだが、その真意が分からないのだ。
(;><)(一生懸命って……?)
考えながらも、足を進める。
普通のフロアとは違う、コートの感触。
訳が分からないという、巨大な不安感。
僕の足は、少なからず震えていた。
( ^ω^)「ビロード!」
突然、ブーン君が声を出す。
慌てて後ろを振り向くと、彼は飛びきりの笑顔でコチラを見ていた。
( ^ω^)「打たれても僕がリバウンド取るから大丈夫だお!」
しまいには、Vサインまで送ってきた。
周りからの視線が少々痛い。
だが、それ以上に大きな何かがあった。
( ><)「さぁ!ディフェンス頑張るんです!」
審判「男子ボールから試合を再開します〜」
(;><)「……」
僕らのオフェンスが始まる。
シューターのフサギコ君が抜けた分、僕が頑張らないと行けないのだ。
(*゚∀゚)「ディフェンス頑張るよ!」
僕の相手は女子部キャプテンのつーさん。
ドクオ君は普通に降していたけど、それでも実力は確かなはずだ。
一瞬の気も抜けない相手である。
(;><)「く……」
かなり接近して守られている。
攻めるようなつーさんのオフェンスに対して、
僕はただボールが取られないように逃げ腰になるだけ。
(;><)(し、しかも何かいい匂いがするんです!)
甘く、僕の心理を誘惑するような匂い。
僕の鼻から入ってくるその刺激は、僕の脳を直接揺さぶってくる。
(*><)(ふぁ……気持ちいいんです……)
ボールをカットしようとして、つーさんが僕に体を密着させる。
女子ならではの体の柔らかさ。
どこを触れようと、優しく受け止めてくれる肌。
僕は今、確かに幸せの中にいた。
―――バチィ!
(;><)「あ!!」
(*゚∀゚)「カットー!!」
いつの間にか、右手からボールがなくなっている。
その変わりに、僕の遥か遠くを走るクーさんに向けてボールが投げられていた。
川 ゚ -゚)「ナイスだ、つー」
ボールを受け取ったクーさんが、悠々とレイアップを決める。
この試合初のターンオーバー。
僕の完全なミスによる、失点。
(;><)「あ、あ……」
やはり僕には無理だったのだ。
そもそも、ドクオ君たちは僕とは違う。
天性の才能が、僕には何一つとしてないのだ。
僕には、無理だ。
ドクオ君が近づいて来る。
きっと、何か文句を言われるのだ。
ひょっとしたら交代の知らせかもしれない。
('A`)「……自分より小さい奴に負けたのは初めてか?」
(;><)「え……あ……!!」
言われてみればそうだ。
相手は、僕より身長の低い女子。
初めて感じた、本当の敗北。
('A`)「まだ1クォーターだ。オフェンスはあんまり気にすんな」
意外にもドクオ君から聞こえのは、慰めの言葉だった。
だが、裏を返せば「ディフェンス」は気にしろと言うこと。
( ><)「……」
負けたくはない。
今まで僕が言い訳にしてきた、小さいと言うこと。
そんな嘘っぱちの理由も通じない相手。
絶対に、負けたくない。
走ってくるツンデレさんを確認する。
身長は僕と同じくらい。
言い訳はもう出来ない。
( ><)「止めてやるんです!かかってこいなんです!」
両手を大きく横に広げる。
僕が出来る精一杯の力で、彼女を止めてみせる。
ツンデレさんを初め、女子がオフェンスの体勢に入った。
僕の左サイドには、クーさんとペニサスさんがいる。
目を離したらきっと、スクリーンに来るのだ。
(;><)(……どうやってツンデレさんを止めればいいんですか……)
フサギコ君でも突破出来なかった、ダブルスクリーン。
ディフェンスを阻む二つの壁を、一体どうやって攻略すればいいのだろう。
唯一ドクオ君から与えられたアドバイスは、
「一生懸命ディフェンスをすること」
たったそれだけの言葉だ。
( ><)(別に僕は手を抜いているわけじゃないんですが……)
全く意味が分からない。
だが、頼りはそれしかないのだ。
( ゚∀゚)(´・ω・`)「「スクリーン!!」」
二人の声が聞こえた。
そして、僕の真横に感じる人の気配。
やってきた、ダブルスクリーン。
ξ゚听)ξ「――――ッ!」
ツンデレが突然鋭く動き出す。
僕の左側へ走り出した。
僕の真横にいるクーさんの眼前を走っていくツンデレ。
(;><)(と、止めるんです!)
一瞬、頭の中が真っ白になる。
ただ単純に左に行っては、ダブルスクリーンの餌食になるだけだ。
なら、遠回りしてでも避けるのか?
いや、それではまたもスリーを打たれてしまう。
なら、どうする?
(#><)「あーもう!!!!訳わかんないんです!!!!」
考えたって分かるものか。
僕はフサギコ君やドクオ君みたいに、素晴らしい何かがあるわけじゃない。
凡人だ。
超がつくほど、凡人だ。
(#><)「凡人なら凡人らしく、一生懸命やるんです!」
とにかく、足を大きく横に広げた。
足の出す位置は、先ほどツンデレが通った場所。
彼女と同じ道を僕は行く。
川;゚ -゚)「……!?」
そのまま、するりとクーさんの前を通っていく。
もう一度足を出し、更に一歩進む。
そして見えたのは、ボールを受け取ったばかりのツンデレ。
(#><)「うわああああああああ!!」
――ツンデレの手からボールが放たれる。
――同時に僕が跳ぶ。
(#><)「わああああああ!!!!!」
(#><)「と ど け バ カ ヤ ロ オ ォ ! !」
―――バチィ!!
手のひらに針で刺したような刺激が与えられた。
その直後に地面に転げ落ちる、ボール。
('A`)「速攻!!!!」
そのボールを拾い、そのまま駆け出すドクオ君。
速い、速い、速すぎる。
誰も追い付けないそのスピードのまま、ドクオ君はレイアップを決めた。
(*^ω^)「ナイスだお!二人とも!」
しばらく状況が分からないまま立ち尽くす僕。
そして、全てを理解する。
(*><)「と、止めたんです……!」
止めた。
ツンデレさんのスリーを、この僕が止めたのだ。
ダブルスクリーンをかわし、僕が彼女を止めたのだ。
(*><)「僕だって……チームの役に立てるんです!」
lw´‐ _‐ノv 「ビロード君はどうしてスリーを止められたのだ?」
ミ,,゚Д゚彡「……僕が説明すると、言い訳みたいに聞こえるかもしれませんがね」
ミ,,゚Д゚彡「ビロード君は、ツンデレさんと同じ道を通った。
だから、ダブルスクリーンの影響を受けずに守れたんです」
lw´‐ _‐ノv 「ならば君もそうすれば良かったじゃないか」
ミ,,゚Д゚彡「僕が足を大幅に開いた所で、胴体は確実に女子に当たります。
そこで、ちょっとした時差が生じてしまう。
運が悪ければ、ファウルにもなります」
lw´‐ _‐ノv 「……体が小さい事で、女子の小さな隙間も通り抜けられる……」
ミ,,゚Д゚彡「……そういうことです」
lw´‐ _‐ノv 「米ェェェェェェェ!!!!」
ミ;,,゚Д゚彡「!?」
小さい事はハンデ。
そう思っていた昨日の僕とは、もうおさらばだ。
みんな、それぞれの仕事がある。
得意ことがあれば、苦手なこともあるのだ。
だからこそ、バスケットは5人で行う競技なのだ。
( ><)「一本!大事に行くんです!」
('A`)「っし!!!ここから逆転すっぞ!!!!」
第四話 終
[前のページへ] 戻る [次のページへ] [雑談へ]