「センター入ったぞ!」
「カバー早くッ!」
「速攻ッッ!!」

様々な声が流れ飛ぶコート。
県大会ともなれば、流石にそれなりの迫力も出てきている。
選手の熱気が、この客席にも伝わるようだった。

(´・ω・`) 「両チーム……中々いい勝負ですね」

('A`)(……いや)

得点差は確かに大してない。
だが、オフェンス力、ディフェンス力共に、ラウンジ学園の方が勝っているようにも見える。

クビナガが、シラネーヨを中心に必死に攻めているのに対して、
ラウンジは鋭いパスを回して、簡単にシュートを決めている。

体力の問題も出てくる後半には、おそらく点差が広がるだろう。






  ( ^ω^)ばすけっとからバスケットのようです 第七話 【違和感】









( ・∀・)「先輩!」

ラウンジのオフェンス。
3ポイントラインに沿うように広がった陣形でパスを回す。
相手の視線を右へ左へ動かし、混乱を誘っているようだ。

('A`)(……だが、クビナガもそれは分かってる……)

マンツーディフェンスをしているクビナガ高校。
自分のマークだけはしっかりおさえられるように、ぴったりと引っ付いている。
これでは、パスで混乱を誘うことは難しい。

( ・∀・)「っしゃあ!」

いつの間にか、モララーがディフェンスを振り切ってゴール下に走りこんでいた。
そこへ、針の穴を通すようなパスが来る。
ディフェンスをかわして、モララーがゴール下を決めた。




('A`)「またこれか……」

パスを回し続けて、隙が出来たら中に入る。
中にさえボールが入れば、ラウンジは丁寧にそれを決めてくるのだ。

( ^ω^)「ラウンジはパスがめちゃくちゃ上手いお……。
      さっきのパスも、ちょっとでも間違えればカットされてたお」

(´・ω・`) 「そうですね……。
      スピード、精度。共に一級のパスですね」

今度は、クビナガのオフェンスとなる。
パスを回し続けるラウンジに対して、クビナガの攻めは単調だった。

( ´ー`)「コッチダーヨ!」

センターシラネーヨが、ポストでガッチリと構える。
そこへ、あのとても高いパスを出して、ボールを入れるのだ。




( ・∀・)「囲めッ!」

だが、それだけではもちろん攻めることは出来ない。
モララーがシラネーヨを後ろから囲み、ボールを叩こうと手を出した。

シラネーヨがボールを上に上げているため、ボールに手は届かない。
しかし、そのせいでシラネーヨは動くことも出来ないのだ。

( ´ー`)「くっそ……お前ら……!!」

(#´ー`)「邪魔なんダーヨ!!!」

シラネーヨがボールを持ったまま、半回転する。
そして、右手だけでボールを持ち、そのまま高くジャンプした。

('A`)(またフックシュートかよ!)




ただでさえ身長がでかいシラネーヨが腕を伸ばすと、
それはとんでもない高さになる。
もう少し高く飛ぶことが出来たら、ダンクも可能なくらいだ。

シラネーヨの手から、ボールが放たれた。

──その瞬間だった。


(#・∀・)「なめんなッ!」

(;´ー`)「!!!?」


シラネーヨの背後から、モララーの手が伸びてくる。
それはシラネーヨの頭を超え、次の瞬間には──

──バチッッ!

空中のボールを、見事にはたいた。



(;^ω^)「ちょ……おま……。
      今モララー、半端なく飛んでいたお!?」

(´・ω・`) 「シラネーヨのフックを止める高さ……。
      理論的に言えば、ダンクも可能ですね」

(;'A`)「……」

さすがの俺でも、あの高さには驚かざるを得なかった。
中学時代から身体能力は長けていたが、さらに脚力が伸びている。
いや、脚力だけじゃなく、体全体が一回り大きくなっているように感じた。

「走れッ!」

ボールを拾ったラウンジ高校が叫ぶ。
それに応えるように、周りの連中が走り出した。




片手で思い切りボールを投げる。
ぐんぐんと伸びるそのボールは、
ついには先頭を切る選手の手元に届いた。

「ナイスパスッ!」

そのままスピードを緩めることなくシュートを決める。
いよいよ、点差が開いてきた。

('A`)「これじゃ、どんどん広がるな……」

──……・・・
─…・・・
……
・・




('A`)「あーあ……」

俺の予想通り、試合終了間際にはかなりの点差がついていた。
バテバテになっているクビナガに対して、ラウンジにはまだ余力がある。
実力差は、明らかだった。

('A`)「……」


審判「試合終了!!」


そしてついに、試合終了の笛が鳴る。
52-29。
考えられないほどの、ロースコアで試合は終了した。



( ^ω^)「ラウンジやばいお……」

('A`)「県大会で29点とか……。
    バカみたいに強いディフェンスだな」

次の試合までの休憩時間。
近くの自販機でお茶を買いながら、ブーンと話していた。

(;^ω^)「みんな僕より大きい人ばっかりだお」

('A`)「ガードでも、最低170は欲しい所だからな……」

周りの選手を見ながら、会場に戻る。
先ほどの席には、ショボンが席取りをしてくれていた。

('A`)「あれ?お前何してんだ」

(´・ω・`) 「ああ、さっきの試合のビデオを見ているんです。
      色々研究したいこともありますしね」




('A`)「ふーん……」

何気なくそのビデオを覗き込む。
先ほどみた通り、ラウンジがパスを回したシーンだった。

('A`)「……」

そのシーンを見て、何か違和感を感じる。
試合中には気づかなかった、何かしらの違和感。

('A`)(何だ……これ……)

まるで、窮屈そうに攻めているラウンジ。
何故そう見えてしまう?別に、変わったところはないハズだが。

('A`)「……ちょ、ちょっとショボン!」

(´・ω・`) 「?」


('A`)「そのビデオ、早送りしながら見せてくれ!」

(´・ω・`) 「……はぁ……」

そう言うと、ショボンは早送り再生のボタンを押した。
ビデオの中の選手たちが2倍のスピードで動き始める。
俺はその映像を、集中して見ていた。

ラウンジがパスを回す。
誰かが中に切り込んだ。
そこパスを入れてシュート……。

('A`)「次は……」

スリーポイントラインでパスを回して……
一人がスクリーン。
スリーポイントを打つ……。

('A`)「次も……次もだ……」




完全に気づいてしまった。
これは、間違いではない。
初めから最後まで、ラウンジはこれを続けていたのだ。

(´・ω・`) 「どうしたんです?一体……?」

('A`)「ラウンジは……最初から最後まで……」

ビデオがすべての再生を終わり、止まる。
得点は52-29。
そして、俺は続ける。

('A`)「ラウンジは──ドリブルをついていないんだ」



第七話 終

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