( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第二部
第13章 甘え・克服
(-__-;;)「(どうしよう…どうしよう…早く交替させて欲しいよ…!ドクオさん、早く…!)」
('A`)「ヒッキー!?どうした、冷静になれ!ヒッキー!」
ドクオがベンチから必死にヒッキーに呼び掛ける。ブーン達もヒッキーに声をかけるが
まさに馬耳東風、と言った具合にヒッキーの頭の中には何も刻まれなかった。
('A`;)「ショボン先生!このままじゃ…」
(´・ω・`)「このままじゃ君を戻しても同じことだ」
('A`;)「ど…どういう…こと…ですか」
(´・ω・`)「強豪校と試合しているときに君は違和感を感じていたはずだ」
('A`)「…!」
(´・ω・`)「しかし、その違和感が何なのかはわからぬまま、君はプレーし続けた」
('A`)「…………」
沈黙は肯定を意味していた。
(´・ω・`)「君がこれまで感じていた違和感の正体は、強豪相手になると途端に
パスが通らなくなることじゃないかい?」
('A`)「…それは…」
その通りだった。強豪校相手になるとそれまでラクに通っていたはずのパスが
通らない。タイミングをずらしても通らない。しかしパスが通らないということには
なんとなくしかわからなかった。しかし、これまでわからなかったことが、ショボンに
指摘されて今ようやくわかった。
(´・ω・`)「僕も確信を持てていたわけではないからね。今日の試合でようやく
確信を得たんだ」
ショボンの指摘が鍵となり、ドクオの脳内で思考がぐるぐると音を立てて回りだす。
これまで自分が出していたのは味方をノーマークにするパス…味方を自分の意思で
強引にノーマークにするパスだったのではないか、と。
ドクオは今までずっと味方の現状を把握し、味方の動きを瞬時に予想し、味方が
最低限の動きでノーマークになれるようなパスを出す…。この一連の流れを一瞬のうちに
判断し、実行していた。それが正しいと思っていた。しかし、ベンチで客観的に試合を
見つめ、ショボンの指摘を受けたことでようやくあることを理解した。
('A`)「(いつの間にか俺の考えだけでオフェンスをリードすることが多くなってたのか…)」
味方にパスを出すときの判断はほんの一瞬である。感覚的に「ここだ」、「これだ」と
思ったパスを出す。味方もそのパスでシュートを決めていてくれた。しかし…
('A`)「(一人の意思じゃあ…こいつらなら読めちまうよな…)」
もちろん、相手も理屈でそれがわかるわけではない。長年の経験が培った感覚が
なんとなくそれを察知し、ほぼ無意識的に体が反応するのだ。
('A`)「(だけどどうすれば…。俺のパスはもうとっくの昔に体に染み込んでしまってる…)」
(´・ω・`)「先に言っておくが君が悪いのではない。これまで、走らされるパスとは
いえ君のパスに依存し、甘え続けてきた彼らにも責任がある。もちろんそれに
ずっと気付くことのできなかった僕にもね。高校バスケは全員の意思が
通じ合わなければ高みを目指すことは出来ない。僕もわかったつもりで
いただけなのかもしれないね」
('A`)「………」
(´・ω・`)「そもそも君以外のメンバーは中学時代に良い環境でバスケットをすることが
できなかった。そこに名門校出身の君のパスだ。彼らが一人のパスだけで試合が
成り立つと勘違いしてしまうのも仕方がない。」
('A`)「でも………」
(´・ω・`)「君だって同じさ。中学までは一人の能力で何とかなってしまうのが現状なんだ。
そしてそれに対しての指摘がなかったからここまできてしまった。
間違いに気付いたのならば正せばいいじゃないか。一人で背負う必要は
ないんだ。辛ければ分け合えばいいんだよ」
ドクオはスコアボードを見る。ショボンと話していた数分の間に、点差は23点差にまで
広がっていた。
(´・ω・`)「そろそろ本格的にヤバスだね…ドクオ君、対処法は思いついたかい?」
('A`)「…おそらく、ですが」
(´・ω・`)「充分だ。行こう」
――ザシュッ
「またカウンターが決まったぞ!」
「25点差だ…やっぱ勝てないか」
「あーあ、期待してたのにな。帰ろうぜ…」
――ビーーーーーッ!
オフィシャル「メンバーチェンジ、白!9番アウトで4番インです!」
('A`)「ヒッキー!交替だ!」
(-__-)「ど…ドクオさ…僕…あの…す…すみませ…でした…」
('A`)「よくつないでくれた!後は任せろ!」
「ようやく4番投入か…」
「遅すぎるだろ…25点差だぞ?勝てるわけねぇ」
('A`)「みんな、聞いてくれ。試したいことがある。ごにょごにょ…」
( ^ω^)「…やってみる価値はあると思うお」
(=゚ω゚)ノ「一か八か、って感じだヨウ」
( ´∀`)「僕らならできるモナよ!」
( ゚∀゚)「やろう!やろう!」
――ダムッ…
('A`)「一本!行くぞ!」
ミ,,゚Д゚彡「(むっ……?)」
(´_ゝ`)「(まぁ…定石か…)」
(´<_`)「(浅はかだな、VIP高校)」
VIP高メンバーはジョルジュ以外の全員が右サイドに寄った。右45度にイヨウ、右コーナーに
ブーン、右ハイポストにモナー、そして逆サイドのローポストから少し離れた所に
ジョルジュ。
ミ,,゚Д゚彡「(片側に寄ったか。ゾーン崩しの定石ではあるが…)」
(´_ゝ`)「(1-3-1はそれぞれの守る範囲が広い。ゾーンを片側に寄せて逆サイドに
パスを出すつもりだろうが…)」
(´<_`)「(俺たちはパスが出た瞬間にその方向へ潰しにかかる。その程度の小細工など
無駄だ!)」
( ^ω^)「(ドクオが言ってたお…)」
(=゚ω゚)ノ「(『ポイントガードからのパスが一方通行になってる』ってヨウ…)」
( ´∀`)「(ポイントガードからのパスも大切だけど僕たちも動いてドクオ君がパスを
出しやすい状態に…)」
( ゚∀゚)「(どんな時でもドクオがパス出してくれるから大丈夫だ、って考えが
甘かったのか…自分でも積極的な意識持たなくちゃな!)」
(´・ω・`)「ヒッキー君、今の数分で…学べたことはあるかい?」
(-__-)「…上には…上がいるものなんですね…。僕なんてまだまだだ…」
(´・ω・`)「それがわかるだけで充分だ。胸を張ればいい」
(-__-)「けど…僕が出たせいで点差が…」
(´・ω・`)「君一人のせいじゃないさ。実はね…」
ショボンは先ほどドクオに話したことをヒッキーにも教えた。驚いてはいたが、ようやく
自分が投入された意味を知ったようだった。
(´・ω・`)「みんな勝つためにやっている。僕も意味のない采配はとっていない
つもりだ。君は君の役割を果たした。だから胸を張ればいいのさ。そして
今、僕らにできることは、彼らを信じることだよ」
(-__-)「……はい!」
『いいか?具体的にはジョルジュ以外が片側に寄ってパスを回す。この時
気を付けることは…』
( ^ω^)「(パスミートを…思い切り大きく、だお!)」
パスを受ける際、キャッチした瞬間にボールを奪われることがないように、パスが来た
方向に気持ち一歩ほどだけボールに飛び付くように動くパスミート。それを思い切り
大きく行う、というのがドクオの指示だった。
('A`)「イヨウ!」
(=゚ω゚)ノ「(ボールに向かって大げさに走っていくくらいのつもりで相手ディフェンスの
マークを外す…!)」
『普通のパスミートのタイミングじゃ奴らの餌食だ。できるかわからないけど、
やるしかない。こっちからタイミングをずらして向こうのリズムを少しでもいいから
ズラすんだ』
イヨウは大きなパスミートでパスを受ける。大きく動いたため、キャッチから
即シュートには持っていけなかった。しかし、ほんのわずかであるがディフェンスの
対応が遅れたということがわかった。ボールに向かって思い切り飛びつくことで
(=゚ω゚)ノ「ブーン!」
イヨウは池上、兄者、フサギコの3人が一斉に自分に向かってくる姿を見ながら
コーナーのブーンへパスを出す。ブーンも一歩の歩幅が大きなパスミートでパスを
受ける。ラウンジ学園の選手がイヨウのパスに反応し、ブーンに詰め寄ろうとした頃、
既にブーンはジャンプシュートを放っていた。
――パシュッ
右コーナーのミドルレンジから放たれたブーンのジャンプシュートは綺麗な弧を描いて
リングに吸い込まれた。
「な…なんだ今のパス回し…?」
「簡単にノーマークができた…!」
「いや、この点差だし油断しちまっただけじゃね?」
ミ,,゚Д゚彡「(…どうなっているんだ…?)」
(´<_`)「(まるでディフェンスにぽっかりと穴が開いたようだった…)」
(´_ゝ`)「(パス回しのタイミングが少し早くなった気がするな…様子を見てみよう)」
ミ,,゚Д゚彡「(1-3-1ゾーンは完璧なはずだ…。ほんの数回のパスで崩せるわけがない…)」
――バチッ!
ミ,,゚Д゚彡「(しまっ…)」
「4番のスティーールーーーーっ!!」
「いいぞー、4番!そのまま行っちまえ!」
――ザシュッ
ミ#,,゚Д゚彡「ちっ……!!」
(´_ゝ`)b「フサギコ先輩、イライラは禁物ですよ」
d(´<_`)「いつものプレー、期待してますよ」
ミ,,゚Д゚彡「…おう。ありがとう」
池上「ここでこのエースのワンマンショーが…」
ミ,,゚Д゚彡「おし、一本行こう!」
池上「フサギコ君…最近少し冷たいよね…あたし寂しいな…」
ミ,,゚Д゚彡「弟者!行けっ」
池上「あ、オフェンスの時は完璧無視というわけか(笑)」
左45度でフサギコのパスを受けた弟者とブーンの1on1。弟者はドライブ一発で
ブーンをいとも簡単に抜き去った。
(´<_`;)「(手応えがなさすぎる…また後ろからスティールするつもりか!さっきは
油断していたがそうは…!)」
弟者が意識を背後に向け、ブーンからボールをはたかれまいと警戒していたその時…
――バチッ
( ゚∀゚)「とったぞ、速攻!ブーン、走れぇーっ!」
(*^ω^)「おっ!」
――ザシュッ
(*゚∀゚)「ナイッシューだブーン!」
(*^ω^)「おっおっwwwナイスカバーだったおwww」
(´<_`;)「(俺が後ろを警戒するのを読んでいてあえて抜かせて8番にとらせた…?)」
( ^ω^)「(今のはガチで抜かれんだおw)」
「3連続でVIP高の得点…!」
「今ので19点差…」
第3クォーター残り3分。VIP高としては第4クォーターまでに出来る限り点差を詰めて
なんとか10前後にまでしたいところだ。それができれば第4クォーターでスパートを
かけて一気に逆転できる可能性が見えてくるからである。
しかし今のVIP高は非常に大きな波に乗っており、ラウンジ学園の1-3-1ゾーンから
素早いパス回しで容易に得点を重ねていった。
――ザシュッ
「6番のスリーーーー!!」
「ゾーンが裏目に出た!あいつは池上クラスの奴じゃなくちゃ抑えられない!」
「勝敗はもう完全にわからなくなってきたぞ!」
('A`)「ナイススリー、イヨウ!」
(=゚ω゚)ノ「おうヨウ!このまま一桁まで行くヨウ!」
第3クォーターも残り40秒を切ったところでVIP高は10点差まで追い上げた。
パスミートを大きくしてパス回しを行っていることに気付き始めたラウンジ学園の
プレイヤー達は「これ以上点差をつめられたくない」という心理的な焦りから
ディフェンスに「読み」を用い始める。
しかしVIP高にとっては、そうなってしまえばこっちのもの。相手の意図を読んで
その裏を突く。レシーバーもその意思を汲み取って自在にオフェンスを展開する。
逆にラウンジ学園は隠し球であった1-3-1ゾーンをかいくぐって次々と決まるVIP高の
シュートに焦る。フサギコさえもが徐々に精彩を欠き、ターンオーバーを連発。
ラウンジ学園がタイムアウトをとって建て直しを図った直後にイヨウのスリーポイントが
決まったのだ。
――ダムッ…
ミ,,゚Д゚彡「(なぜだ!?どうなっているんだ!?どうして俺たちはこうも追い込まれて
いるんだ…!)」
(;´_ゝ`)「(点を取るのが4人ってのもあるが…俺たちの1-3-1ゾーンが…!)」
(´<_`;)「(第4クォーターのためにも…ここは絶対に決めなくてはな)」
ミ,,゚Д゚彡「(一桁差にだけは絶対にさせん…!!)」
追い込まれていく恐怖がフサギコの焦りを助長していく。しかし、フサギコはキャプテンと
しての自分を思い浮べ、どうにか自分を落ち着かせる。まだ時間は充分ある。ここで
一本決めて、さらにもう一本奪えばいいじゃないか。そう自分に言い聞かせて
フサギコはコート全体を見渡す。
兄者はハイポスト。弟者はブーンの裏を取ろうとカットを行っている。それを助けるように
ラウンジFが弟者へスクリーンをかけた。この瞬間、フサギコの頭に電撃が走ったかのように
あるワンプレーが思い浮かんだ。しかしトリッキーすぎる。だが流石兄弟ならできるのでは…
葛藤を振り切ってフサギコは兄者へ豪速球でパスを投げる。
ミ,,゚Д゚彡「兄者ぁーっ!」
フサギコがパスを出した瞬間、弟者はラウンジFの助力を得てブーンを振り切る。
('A`)「インサイド、兄者だ!!コンビプレー気を付けr……」
スピードのあるパスは兄者がパスをキャッチしようと構えた両手のひらの間をするりと
通り抜けていった。パスミスかと思われたそのパスはゴール下へノーマークで走り込む
弟者の手元へ最高のタイミングで届き、弟者のレイアップが決まった。
「す…スルーパス!?」
「あのパススピードで…!?」
「つーかなんだよあのパス…サッカーじゃねぇんだぞ、バスケはよぉ!」
( ;・∀・)「………鳥肌が立ったよ」
(;><)「確かにすごかったんです!流石、流石兄弟なんです!」
( ・∀・)「流石兄弟だけじゃない。フサギコだ……!!」
(;^ω^)「(ど…どうなってんだお…)」
('A`)「気にすんな!取り返しゃいい!残り20秒ちょい、絶対決めようぜ!」
VIP高一同「おうっ!」
――ダムッ…
VIP高一同は再びジョルジュ一人を左サイドに残し、4人が右サイドへ。大きなパスミートを
用いたパス回しでラウンジ学園を翻弄する。ラウンジ学園の選手たちはこのシュートだけは
絶対に防ごうと躍起になってプレッシャーをかけにくる。ブーン達はそれをことごとく
かわしながらパスを回し、ディフェンスの綻びを探る。そして何度かパスを回し、ドクオに
パスが来た瞬間だった。
('A`)「(………見つけた!)」
トップにボールが戻ったためラウンジ学園の選手たちはゾーンを始めの基本形に戻そうと
動き始める。その瞬間見えた、ディフェンスのほんの一瞬のタイミングのズレが生んだ一本の
光の道筋…。狭い、狭いパスコースが見えた。少しでもコースがずれれば間違いなくターンオーバー。
しかしドクオはためらうことなくそのパスコースへ全力でパスを出す。
(;;´_ゝ`)「(……………!!)」
兄者の手のすぐそばをボールがとてつもない勢いで飛んでゆく。そしてそのパスの先には…
( ゚∀゚)「ナイスパス!」
ミ,,゚Д゚彡「(完全に逆を突かれた…………!!!)」
(´<_`;)「(ここで横断パス……!!)」
ゾーンを相手にする際のタブーの一つである、横断パス。コートの長い距離を横断させるように
出されるこのパスは、ゾーンディフェンス相手に使うと必ずと言っていいほどの確率で
インターセプトされてしまう。
ゆえに、ゾーンディフェンスを相手にする際はショートパスの連続で相手の隙を
突くのがセオリーなのだ。しかし相手に隙が生まれれば話は別だ。
ドクオは強引にその小さな穴をついて、危険を冒してまでジョルジュへパスを送った。
ディフェンスの形態が崩れ、ゴール下でノーマークになっているジョルジュへ。
('A`)「ぶち込んでやれ!!(性的な意味でない)」
(#゚∀゚)「うおっしゃぁぁぁぁぁ!!!」
ジョルジュは跳ぶ。ジョルジュは舞う。
ジョルジュの全力を込めたワンハンドダンクが決まった。
リングを勢いよく通過したボールは床に当たって大きく跳ね、観客席へ飛んで行った。
ミ,,゚Д゚彡「くそっ…あと4秒かよっ…」
(´<_`)「フサギコ先輩、早く!速攻で一本取りましょう!!」
( ^ω^)「行かせるわけにはいかんお!!」
(´<_`;)「な…ニコニコ君…!!」
フサギコから弟者へのパスにブーンが飛びつく。奪った。そのまま空中で体をひねり
ゴール下へ走るドクオに向かってパスを出す。ドクオが第3クォーター終了のブザーと
共にレイアップを沈めた。
第13章 完
113 名前: ◆HJkAGxFZpI : 2006/10/07(土) 23:29:49.49 ID:Q/xX+iz70
パスミートについて
バスケットにおいてはパスを受けたら体をゴールへ正対させるのが普通です。
しかし、同じ場所に留まったままパスを受け、体をゴールへ向けようとしても
その正面にはディフェンスが居ます。パスをとった瞬間は無防備な場合が多く、
正面にディフェンスが居るままだとスティールされたり思うように動けなかったり
と不自由が多いです。
そこで大事なのがパスミート。パスが飛んできた方向に少し飛びつくような感じで
ボールを持った瞬間にディフェンスが正面にいるという状況を防ぎます。
そしてボールをキャッチした瞬間にディフェンスが自分を追ってきていた場合には
そのままドリブルで抜けることも出来ますし。プレーの選択肢が増えます。
また、ここではパスを受けた瞬間にワンフェイクを入れたりすることでさらに
プレーの幅が広がります。
急いで書いたので支離滅裂かもしれませんが、結論は
パ ス ミ ー ト は す ご く 大 事
ってことです( ^ω^)
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