( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第二部
第19章 Giko-time
インターハイ出場をかけた決勝リーグ最終日。
共に1勝1敗を記録したVIP高校と今北産業大学付属今北高校は、2つの代表枠のうち
残る一つをめぐって争っていた。
第1クォーターに引き続き第2クォーターまでも、どちらも突き放すきっかけを
得られずに得点だけが積み重なってゆく。
チームの勝利を第一に優先するドクオと、自らの信念に基づき自らの勝ちを優先するギコ。
両チームのポイントガードも、自らの持ち得る最大限のプレーで互いにコート上で
交錯する。しかし第2クォーター終盤、試合の均衡がギコの連続スリーポイントによって
崩れる。ギコをノせてしまったかと思われたが、VIP高がブーンのシュートで
VIP46-48今北産大附今北
というハイペースな試合展開にプレーヤーだけでなく会場内までもが
異様な熱気に包まれていた。
―VIP高ベンチ―
(´・ω・`)「なんとかくらいつきはしたが…最後の約1分間…危なかったろう?」
('A`;)「確かに…やばかったです。けど前半だけでギコ一人にあんなにも点を
取られるなんて…くそっ…!!」
(´・ω・`)「あれがあるから今北は恐い。だからギコをノせないために、ギコの
シュート回数を1回でも減らすために、うちは時間をかけて攻める。
今北の得点はギコがメイン。それは初めからわかっていたこと。
今日の彼は明らかなオーバーペース。終盤できっとツケがくるさ」
('A`)「(…だといいんだけど…)」
ドクオの懸念。それは一度対峙したことのあるドクオならではのものだった。
あのずる賢い男が何の考えもなしにオーバーペースでスタミナ切れなど
起こすだろうか。きっと何か考えがあってこそではないのか。
考えすぎだろうか。
うん、きっとそうだ。
いや、でもひょっとしたら…。
考えだしたらきりがない。
(´・ω・`)「イヨウ君も。イラついてしまうのもわかるが自分を見失えば負ける。
そういう試合だということは忘れないように」
(=゚ω゚)ノ「わかりましたヨウ」
(´・ω・`)「ドクオ君、ギコをフェイスガードで守れるかい?辛いだろうが
勝つためには君の動きが必要だ」
('A`)「うちに池上がいればいいんですがねwwwそういうわけにもいきませんし
気合いで頑張りますよ。俺がダメでもヒッキーがいますしね」
d(・ω・`)「その心意気、しかと見届けたり」
('A`*)「ちょwwwなんすかそれwww」
―今北産業大学付属今北高校ベンチ―
(■_■)「ギコが当たり始めるのがもう少し早ければ試合を動かせたかもしれんな…
だがいい。少しではあるがこちらが主導権を握ったことに間違いはない」
( ,,゚Д゚)「けど手応えはありましたゴルァ。第3クォーターのうちにはくると思いますゴルァ」
<ヽ`∀´>「『ギコ・タイム』期待してるニダよ」
今北C「ギコ、俺たちは勝利のためなら喜んでお前の兵隊になるぞ」
今北D「お前のために死ぬ覚悟はできてるぞwww」
( ,,゚Д゚)「先輩…」
<ヽ`∀´>「そういうことニダ。ギコにすべて任せるニダ」
( ,,゚Д゚)「…そこまで言われたら断るわけにはいかねぇじゃねぇかゴルァ。
…はなからそんなつもりはないがなゴルァ」
<ヽ`∀´>「その意気ニダww」
――ビーーーーーッ!
審判「ハーフタイム終了です!第3クォーターを開始します!」
――ダムッ…
今北ボールで始まる第3クォーター。ブーン達は瞬間的に異変を感じ取った。
('A`;;)「(ギコだけじゃない…なんだろ…全員の目が据わってるような…)」
(;^ω^)「(なんか…怖いお)」
自ら捨て駒になることを選択した人間の覚悟にはすさまじいものがある。
特攻隊然り、八頭身のために蜂起したニー速工業然り。
今北のプレーヤーたちの覚悟が、ブーン達にびりびりと威圧感となって伝わる。
今北のオフェンスは完全にギコのアイソレーションになった。
( ^ω^)「(……?今北の選手がみんな左サイドにきたお…)」
(=゚ω゚)ノ「(4人を片側に寄せて…右サイドを使ってドクオとギコで1on1ってことかヨウ?)」
――キュ…
('A`)「へっ、そんな簡単に通すと思うか!?」
(#,,゚Д゚)「どれだけビッタリついてこようがお前にゃ俺は絶対に止められねぇんだよゴルァぁ!」
ギコのドライブ。前に回り込んだドクオは痛いほどのギコのパワーに
弾き飛ばされかけるが足腰にあらん限りの力を込めて辛うじて踏張る。
初動は止めた。
しかしギコはまだドリブルを止めていない。油断はできない。
ギコは素早くステップバックでスリーポイントライン上へ。
ギコのスリーポイントだけは止めなくては…!
ステップバックで二人の間に生まれたわずかな隙間を埋めようとドクオが距離を
詰めるために一歩踏み出した瞬間に、ギコは再度ドライブで踏み込む。
('A`#)「んなろっ…!」
ドクオは前にあった重心を強引に後ろにかけなおしてギコの前に入り込もうとする。
急激な体重移動に積み重なった疲労も相まって下半身が悲鳴を上げる。
ふくらはぎが一瞬つりかけた。
('A`;)「(痛ぅっ…)」
(;,,゚Д゚)「やろっ…(ここまでくらいつくかゴルァ…)」
「す…すげぇ―――!!」
「すげぇディフェンスだあの4番!」
( ;・∀・)「体格のハンデを脚力でカバーして必死にくらいついている!」
ディフェンスは嘘をつかない。
中学のときにまずこれを教えられた。
オフェンスには調子の善し悪しや多少なりともセンスが関係してくる。
しかしディフェンスは積み重ねれば積み重ねただけの実力がつく。
練習すれば練習するほど成果が出るのがディフェンス。
徹底した反復は必ず自分にとってのプラスになる。
反復練習の大切さをディフェンスを通して学んだ。
ディフェンスの上手い選手っていうのは努力の天才なんだ。
池上も…頑張ったんだろうなぁ…。
('A`)「(…ってなんで今日はこんなに昔のことばっかwww)」
(;,,゚Д゚)「うぐっ…」
('A`)「(絶対…とる!)うぉぉぉ!」
突然厳しくなったドクオのディフェンスに、ギコは思わずボールをファンブル。
ドクオはルーズボールに飛び付き、そのままドリブルで速攻へ。
ブーンは…今スタートをきったところのようだ。この距離ならば
自分が行った方が早いだろう。
レイアップを放つドクオに次いでギコが飛び付いていく。
空中で両者の体が激しく接触する。
('A`;)「いてっ…!」
審判の笛が鳴る。
シュートは外れたがギコのプッシングでドクオにツースローが与えられた。
ドクオは落ち着いて2本ともフリースローを決める。48対48の同点となった。
VIP高としてはここでもう一つターンオーバーを奪って連続で得点したいところである。
第3クォーター、意気込んで向かってきた今北の出鼻を挫き、逆にこちらが主導権を
握る。そうすることで第2クォーターでノせかけてしまったギコの調子も
落とせるかもしれない。
今北C「ギコ、気にするなよ。お前の役目は点をとることだからな」
今北D「得点以外のことは俺たちに任せてくれてかまわないからな。遠慮はするなよ」
<ヽ`∀´>「ギコのために壊れる覚悟はできてるニダ」
( ,,゚Д゚)「…先輩……とニダー」
ギコの心臓の拍動が強くなる。
ギコは体の筋繊維の隅々にまで力が満ちていく錯覚を覚えた。
今なら何でもできそうな気がする。
(■_■)「ギコちゃん、今の気分は?」
ベンチから田守がギコに声をかける。ギコはそれにぽつりと答える。
( ,, Д )「…I can fly…」
(■_■)「俺は」
( ,, Д )「きっと」
(■_■)「空を」
( ,, Д )「飛べる」
('A`)「??????」
田守はベンチで一人、不適な笑みを浮かべた。
黒いサングラスのせいではっきりとした表情は読み取れないが、異常に歪んだ口元から
笑っていることが推測できる。
そしてただ一言呟いてパイプ椅子に腰を下ろした。
「ようやくスイッチが入った」…と。
それからの数分間、ギコのプレーは圧巻だった。シュートを打ったらまず外さない。
ドクオを完全に翻弄し、一時的にではあるがフサギコを超える実力を見せる。
無謀なタイミングで放つスリーポイントを楽々と決めてみせ、
パスカットにスティールにと、超人的な動きを見せる。
まるでその時間がギコのためだけに用意されていたかのように。
まるでそれまでの全てが、この時間のための前座にすぎなかったかのように。
本来ならばタイムアウトをとってプレーを中断するべき存在であるショボンでさえもが
ギコのプレーに見惚れるかのように。
夢のような時間に魅了されてしまったかのように呆然としていた。
――ダムッ!
('A`;)「(ちくしょう…今度はドライブかよっ!)」
短時間で何本も決められたスリーポイントを防ごうとすればそれを嘲笑うかのように
決まるギコのドライブ。ギコはドクオを抜き去ってインサイドのモナーへと向かう。
(;´∀`)「(とにかく今はファウルして時計を止めて…タイムアウトを…!)」
空中でギコとモナーの体がぶつかる。
いくら体格の良いギコと言えども体重もパワーもあるモナーにはかなわず、自らの
進行方向とは逆の方向、すなわちリングよりも遠くへギコの体が揺らぐ。
しかし空中のモナーの目に映るのは……床に背中から落下していっているにも拘らず
強引にシュートを放つギコの姿だった。
ボードに当たり跳ね返ってきたボールがリングの内側で何度も跳ねる。
勢いを失ったボールは最後にふわりと上に上がり……静かにネットを揺らした。
その瞬間に今北の応援席から割れんばかりの大歓声。
――ウォォォォォォッ!バスカン!バスカン!バスカンギコちゃん!
バスカン!バスカン!バスカンギコちゃん!のってけのってけのってけ今北!
のってけのってけのってけ今北!ウォォォォォォッ!
「……!」
「……せい!」
聞き慣れた声がする。腕をひっぱられているようだ。
その声が次第にクリアなものになってくる。
ξ;゚听)ξ「ショボン先生っっ!!」
(´・ω・`)「ツンさn…」
(´・ω・`)「…試合!試合は!?」
ショボンは慌ててスコアボードに目をやる。第3クォーター残り6分。スコアは…?
VIP48-61今北産大附今北
何が起こった?いつのまに?どうなっている?
ショボンは軽い目眩を覚えた。ドクオがフリースローを決めて、それから……
(;´・ω・)「た…たた、タイムアウトっ!」
ギコの独壇場。自分はなぜタイムアウトをとらなかったんだ?
ショボンはわけがわからなくなった。
この短時間で13もの得点を稼ぎ、かつディフェンスも怠らない。
どう対応すればいいかわからない。
ダブルチーム?そうしたらノーマークの選手にパスを出される。
それならボックスワン?これもダメだ。
ドクオが抜かれてアウトサイドでノーマークになられたら最悪だ。
しかしVIP高にはドクオ以上のディフェンダーはいない。
どうする…?どうすればいい…?何かないか…どんな些細なものでもいい…。
ショボンの動揺はベンチ中に痛いほど伝わっていた。
そんな中、一人の男が口を開いた。
( `ω´)「僕が、ギコにつきますお」
いつも微笑みを絶やさないその瞳には、静かでありながらも揺るがない確かな決意と覚悟が。
…そして決して消える事のない闘志が秘められていた。
第19章 完
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