( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです  第二部

第23章 最後の攻防





「4番のスリ―――!!!」
「VIP高同点だ!」
「すげぇ!14点差からじわじわと来てついに!」

( ;・∀・)「なんて試合なんだ……!」

ξ;゚听)ξ「ドクオが…スリー!」
(;´・ω・)「ずっとこの時を待っていたんだろう…ははっ、たいした子だよ」

流れは完全にVIP高校へ。沸き上がる会場内の空気に、田守は平静を保てずにいた。

(■_■;;)「(なんてこった……!まさかあの4番がスリーとは…!)」

VIP高校82-82今北産大附今北








田守はタイムアウトをとるべきか迷った。
プレスからの4番のスリー…今までまったくアウトサイドから攻める素振りを
見せなかったのも、全て向こうの若監督の作戦のうちだったのではないか。
あんな形で同点にされれば誰であっても動揺する。
タイムアウトをとりたくなるのが自然なこと…。
ならばここでこちらがタイムアウトをとってしまうことはもしかすると
向こうの計算どおりということなのではないか。
タイムアウト中にまた新しい作戦――それもあんな奇想天外な作戦を連発されてはまずい。

(■_■)「(タイムアウトは…とらない!)」

田守は迷った挙げ句、タイムアウトをとらないことにした。
新たな作戦にはめられることを恐れたというのもあるが、
接戦でかつVIP高校に追い上げられているこの状況でこそ自分のチームの選手たちの持つ
勝利への執念が導く驚異的な粘り強さが発揮されるはずだと信じたからだ。
個人能力では劣っているかもしれないが積み重ねた基礎力と総合力ではこちらが
勝っているはずなのだ。

(■_■)「勝てば天国負ければ地獄…か。お前たちと心中してやろうじゃないか…」





一方ショボンは…。

(*´・ω・)「わーいわーい、やったぜドクオーひゅー♪」

特に何も考えていなかった。
一方田守は…

(■_■)「(あの若造の指揮官としての能力…認めざるを得ないな…)」

深読みしすぎる人間は色々と大変そうである。

しかし、田守の考えとは裏腹に今北の選手たちは冷静でいることができなかった。
いや、冷静でいられるはずがないだろう。
バスケットにおいて、勝負所で難なくスリーポイントを決められることほど
恐ろしいものはない。
対戦相手をのせてしまうだけでなく、観客すら味方につけてしまうのだ。
そして声援を送るような観客は大概が派手なプレーを好む。
勝負所でのスリーポイントは彼らにとっては大好物なのだ。
その証拠に、ついさっきまでギコの応援をしていた観客までもが
VIP高校の応援に回っている。
今北の選手たちへの精神的なプレッシャーは極限に達しようとしていた。
…一人を除いて。

( ,,゚Д゚)「走れ!プレスにかけられるな!」

ギコ。闘争心の塊のようなその男はこの状況を楽しんでいるようにさえ見えた。




しかしVIP高校もディフェンスの手を緩めない。
ギコにボールが入った瞬間にドクオとブーンがダブルチームをかける。
が、二人の間に生まれたわずかな隙間をギコが強引に突破する。

('A`;)「(うお…)」
(;^ω^)「(やらかしたお…)」

ゾーンプレスをする際に限らず、ダブルチームの間を割られるというのは
ディフェンス側にとって、致命的なミスである。
コート中央を突破しようとするギコにイヨウがなんとかディフェンスにつくが、
バックチェンジ1発で簡単に抜かれてしまう。

(=゚ω゚)ノ「(ちぃっ…!!)」

ギコはそのままハーフライン上のジョルジュも楽々とかわし、最後の砦――モナーと


「す…すげぇ―――!」
「一人でぶち抜いちまうぞ!」
「VIP高校の7番と1対1だ!」

ギコはためらいなくモナーへ突っ込んできた。




( ´∀`)「(この場面でなんて図太い神経してるモナ…!ここで外したら
      どれだけ危険なことになるかわかってるモナ!?)」

<ヽ`∀´>「(ギコ…決めろニダ!)」

ギコが右サイドからレイアップに跳ぶ。
モナーもそれを止めるべく、ギコに合わせて跳ぶ。
モナーの手はレイアップのコースを完全に塞いだ。
ギコはボールを下げてブロックを回避。
そのままモナーの体の脇から左サイドへとボールを持った手を伸ばす。

( ´∀`)「(ダブルクラッチ……!!けど大丈夫モナ。
      体を入れてあるから腕だけで強引に打つ体勢になってるモナ…!)」

だがギコは肘から先しか自由に動かせないような不利な体勢から無理矢理シュートを放つ。
手首のスナップでボールに反時計まわりの回転をかけられたシュートは、
ボードの白い内枠からボール1つ分ほど離れた場所に当たる。
普通ならば外れるコースのシュートであるがボールの回転がそれを防いだ。
回転をかけられてボードに当たったボールは導かれるかのようにリングの方向へ飛んでいく。
ボードに当たり、リングの内側に数回当たりながらギコのシュートはリングへ吸い込まれていった。

「は…入った!」
「一人でゾーンプレス抜いちまいやがった!」

VIP高校82-84今北産大附今北




( ・∀・)「勝負所ではやはりギコか……」

('A`)「ひるむな!走れ!」

VIP高校は早いボール運びで今北のゾーンプレスを攻略。
セットオフェンスからモナーがインサイドプレーに持ち込み得点。

VIP高校84-84今北産大附今北

対する今北はセットオフェンスでニダーから得点を試みるがシュートは外れ、
ジョルジュがリバウンド。

VIP高校ボール。
イヨウがジョルジュのスクリーンを受けてインサイドへドライブ。
今北のディフェンスがスイッチした瞬間にジョルジュとのピック&ロールが決まる。

VIP高校86-84今北産大附今北

VIP高校、逆転に成功。会場はまるで有名アーティストのコンサート会場のようだ。
残り時間は40秒を切り、今北ボール。
キープドリブルでリズムを整えるギコと激しくプレッシャーをかけるブーン。
ブーンの気迫の籠もったディフェンスは、もはや完全にギコを封じ込めてたかと思われた。




(;;,,゚Д゚)「くっ……」
(#^ω^)「おー!おーおーおー!おー!」

視線をきょろきょろと動かすギコ。

( ^ω^)「(またパスかお…ここらでパスも止めてやるお!)」

ショットクロック残り15秒。ギコの手元がわずかに動いた。

( ^ω^)「(パスだお!)」

パスが出ると予測した方向に腕を出すブーン。
しかしいつまで経ってもその手にボールが来ることはなかった。

(;゚ω゚)「(ぱ…パスフェイク…?視線も全部フェイクだったのかお…?)」

ギコのスリーポイント。いったんボードに当たってからリングを潜る。

――ウォォォォォォ!ありがとありがとありがとギコちゃん!
  ありがとありがとありがとギコちゃん!スリー!スリー!スリー!
  ウォォォォォォ!

VIP高校86-87今北産大附今北




(■_■)「よぉぉしっ!よくやったギコ!!」

今北再逆転。
ベンチで握りこぶしを作り雄叫びをあげる田守。
それほどまでに今のスリーポイントは大きいものだった。

残り時間は30秒を切った。
未だ緩まない今北のゾーンプレスだったがドクオは一人でボールを運びきる。
セットオフェンスに持ち込む。
残り18秒。
ぎりぎりまで時間を使ってなんとか一本。そして残った数秒を守り切る。
それがVIP高校に残された唯一の道だった。

('A`)「(そろそろ…決着をつけなくちゃ)」

ギコとの決着。そして過去の自分との決着…。
全てを賭けてドクオはドライブした。

抜いた。

ブーンがモナーのスクリーンを受けて右45度からゴール下へスタートを切った。
ゴール下には誰もいない。ブーンがノーマークでゴールへ走っている。

勝った!
あとはプレスでしっかりと守り切れば…!




ドクオがブーンへパスを出そうとした瞬間だった。

バチッ

('A`;;)「!?!?」
<ヽ`∀´>「ナイスニダ、ギコ!」

なぜニダーがボールを持っている?

抜かれたギコが後ろからボールをはたき、飛んでいったボールがニダーの手に渡ったのだ。
パスを出す瞬間、無防備になった瞬間…油断した瞬間を狙われたのだろうか。

( ,,゚Д゚)「ニダー、前出せ!」
<ヽ`∀´>「カウンターニダっ!」

残り時間15秒。
いつのまにか速攻のスタートを切っていたギコにニダーがロングパスを送る。
ワンマン速攻。
万事休すかと思われたその時、コートに一陣の風が吹いた。




⊂二二二(#^ω^)二二⊃「おおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」

('A`)「ブ―――ンっ!」
(=゚ω゚)ノ「ブーン!」
( ´∀`)「止めてくれモナ!」
( ゚∀゚)「ブーン、頼む!!」
(-__-)「ブーン先輩!!」
(・▽・)「内藤先輩!!お願いします!!」
(´・ω・`)「内藤くん…!」
(*゚ー゚)「ブーン君ー!」
ξ゚听)ξ「ブーン…お願い!(神様…!)」

(■_■;;)「バカなっ!あの距離から追い付けるわけが…」

残り時間13秒。
ハーフラインを越えたギコに、ついさっきまでゴール下付近にいたブーンが
追い付いた。

( ;・∀・)「は…速い…速すぎる!」
( ><)「あの距離から追い付けるなんて…すごすぎるんです!!」

( ,,゚Д゚)「(ちょーどいい!ドクオだけでなくこいつとも決着をつけてやるぞゴルァ!)」
⊂二二二( ^ω^)二二⊃「(絶対に止めてやるお!)」

残り時間11秒。
ギコがレイアップに跳ぶのとブーンがブロックに跳ぶのはほぼ同時だった。




⊂二二二( `ω´)二二⊃「おぉぉぉおぉっ!」

ギコの腕が伸び、ボールが放たれるか否かのその刹那、
ブーンの指先がボールに触れてギコのレイアップはわずかにコースがずれた。

( ,,゚Д゚)「やべっ…」
( ^ω^)「(かすったお!絶対リバウンドとってカウンターだお!絶対勝つんだお!)」

ボールはボードの内側の白枠より少し外側に当たって跳ね返り、リングにあたる。
それからもう一度跳ね返ってボードに当たり、勢いのついたボールはリングの手前に当たる。
勢いが消えないままリングで跳ね返ったボールは再びボードに当たり、
もう一度リングの手前に当たる。
失速したボールは、落下しながら最後にリングの奥に当たり静かにネットを揺らした。

VIP高校86-89今北産大附今北

残り時間7秒。

観客席が大歓声に包まれる。
大地が震えるとはまさに今この状況だろう。




床に落ちたボールをブーンが急いで拾い、叫びながらドクオにボールを入れる。

( `ω´)「ドクオ、速攻だおぉっ!!」

残り7秒で負けている。
本来ならばここはタイムアウトをとるべき局面である。
しかしショボンはあえてとらなかった。なぜか。
今北のディフェンスは試合終了間近だというのに衰えていない。
タイムアウトをとると試合が中断されるため、タイムアウトを終えて
VIP高校ボールで試合を再開する際には、今北は各自がそれぞれの
ディフェンスポジションに入り、万全の状態でのゾーンプレスを行うことができる。

しかし今はギコのワンマン速攻で、今北の選手たちはまだディフェンスに
戻りきれていない。
この場面ならばこのまま流れで、ドクオが一人で素早くボールを運んで
速攻を展開することができるからだ。

残り時間7秒、VIP高校3点ビハインド。




この状況でなすべき事はただ一つ。「最低でも3点を獲得する」ことである。
スリーポイントシュートかインサイドでファウルをとってスリーポイントプレーか。
とにかく最低でも同点に持ち込んで延長に持ち込まなければVIP高校に勝機はない。

この速攻の状況ではインサイドにディフェンスが戻るまで待って、さらにファウルを
とるようなプレーをしている余裕などない。
残された手段はスリーポイントシュート。前線を走る背番号6番の男に全てが託された。

残り時間6秒。
ドクオとギコが対峙する。
ドクオはブーンからのパスを受けた瞬間に右にフェイクを入れ、即座に左へドライブ。
ブーンと初めて出会った日、VIP公園でドクオが見せたプレー。
ブーンがこの世界に足を踏み入れるきっかけとなったプレーだった。

( ,,゚Д゚)「(は…はえぇっ…!!)」

(=゚ω゚)ノ「ドクオ!!出せぇっ!!」




残り時間5秒。
ギコを抜き去ったドクオがフロントコートのイヨウへパスを送る。

残り時間4秒。
パスを受けたイヨウが高速レッグスルーで今北Cを揺さぶって抜き去る。
今北Cはその場で尻餅をつく。
夜のVIP公園でドクオとイヨウが勝負していた時にイヨウが見せたプレーだった。
ブーンはあのプレーを見て高いレベルを目指す事を決めた。
努力というものの大切さを知った。

残り時間3秒。
イヨウがスリーポイントライン上に到達し、シュートを構えた。

(=゚ω゚)ノ「(ぜってぇ決めるヨウ)」

残り時間2秒。
イヨウが、スリーポイントシュートを放った。

第23章 完




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