( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第二部
第24章 喪失
('A`)「(入れ!)」
( ^ω^)「(入れお!)」
( ´∀`)「(入ってくれモナ!)」
( ゚∀゚)「(入れ入れ入れ入れ入れよこの野郎!)」
(*゚ー゚)「(お願い入って!)」
ξ゚听)ξ「(入って…!!)」
(´・ω・`)「(入ってくれ……神よ!)」
( ,,゚Д゚)「(落ちろ落ちろ落ちろ落ちろぉっ!)」
<ヽ`∀´>「(延長に入ったら疲れるからもう勘弁してくれニダ…!)」
(■_■;)「(6番は今日の試合、ノーマークからのスリーは外していない…!やられた…)」
(=゚ω゚)ノ「入れぇぇぇっ!」
しかし非情にもシュートはリングの奥に当たり、高く、大きく跳ね上がる。
(=゚ω゚)ノ「…あ……ぁ…」
跳ね上がったボールが放物線の頂点に達する頃、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。
(;*゚ー゚)「うそっ…」
ξ゚听)ξ「そんな…嘘でしょ…」
(;-__-);・▽・)「負け…た…?」
(;´・ω・)「………」
審判「試合終了!スコア通り、89対86で水色!」
――ウォォォォォォ!やったぞやったぞやったぞ今北!全国全国全国今北!
ウォォォォォォ!今北!!今北!!今北!!今北!!
(*,,゚Д゚)「勝ったぞゴルァァァ!!」
<*ヽ`∀´>「インターハイニダ!全国ニダよ!」
今北C「やった…やったぁ!」
盛り上がる今北とは正反対に、沈み込むVIP高校サイド。
(= ω )ノ「……………」
( A )「……………」
( ω )「……………」
( ∀ )「………………」
( ;゚∀゚)「……………」
(* ー )「……………」
ξ )ξ「……………」
( __ )「……………」
( ▽ )「……………」
(´ ω `)「…………」
( ;ω;)「…こんなの嘘だお……あんなに頑張ったのに…ここまで来たのに!
何かの…間違いだお…」
(=;ω;)ノ「俺のせいで…俺のせいで…うぅっ…」
( ;∀;)「悔しいモナ…悔しいモナ…ひぐっ」
( ;∀;)「ちくしょう……ちくしょおっ…うっ…うっ…」
(*;ー;)「ぐすっ…うぅ…」
ξ;;)ξ「………」
('A`)「みんな……胸を張ろうぜ。俺たち…たった一年でここまで来れたんだ。
やれるだけのことはやったんだ。だから…だから…」
(;A;)「……うぅっ…ごめん…ごめん…みんな…俺があんな大事な所で…!うぅっ…」
本当はもっとキャプテンらしく…胸を張って、強がりの仮面を被って、
堂々と言いたかった。
「頑張ろう」って。
だけど言えなかった。
言おうとすると、あの瞬間が脳にフラッシュバックする。
自分が油断したせいでボールを奪われた、あのワンシーンが。
試合中に油断するなんて最低だ…。
みんなはきっとかばってくれるんだろうけど、わかってる。
全部、全部自分のせいなんだって。
思い出したくないのに記憶はそれを許さなかった。
偽りの励まし。自分への嘘。
自己満足にすぎないであろうその言葉は、胸につっかえてしまって喉を通り抜けない。
そのもどかしさ、苦しさが…いつのまにか悲痛な嘆きに変わっていた。
(;A;)「うっ…うっ……ごめん…ごめん…」
ドクオの涙をきっかけに、堰を切ったかのように全員が声をあげて泣きだした。
ブーンも、イヨウも、モナーも、ジョルジュも。
ツンも、しぃも、ショボンも。一年生も。
全員が顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、目を真っ赤にしながら、
声をあげて泣いた。
彼らにはもう何も見えなかった。何も聞こえなかった。
思わずもらい泣きする観客も、会場中から惜しみなく送られる暖かい拍手も。
どれくらいの間泣き続けたのだろうか。
涙も枯れ果て、ブーン達はようやく落ち着きを取り戻した。
互いに「ひどい顔だな」と指を差して笑い合う。
しかし、それすらも強がりにすぎないことは互いが重々承知しており、
あえて触れなかった。
全員が自然に「頑張ろう」と言い合えた。
偽りでなく、確かな覚悟の籠もった真実。
更衣室に戻って着替えを始める。
もっともっと強くなって、次こそは絶対に。
口にこそ出さなかったが誰もがそう思っていた。
(´・ω・`)「ん……?電話…」
ショボンの携帯電話のバイブが震えている(性的な意味でない)。
(´・ω・`)「(国立VIP病院…?)」
ショボンがニュー速県へ赴任してからのかかりつけ医である国立VIP病院。
おおかた、少し前に行った健康診断の結果をとりにきてくれ、とかそんな感じだろう。
軽い気持ちでショボンは電話に出た。
(*´・ω・)「もっしもーし♪お久しぶりでーす♪」
出来る限り元気を装った。
できるだけ他人には今の自分を知られたくなかったからだ。
「ショボンさん!あのっ……!」
(´・ω・)「どうしたのー?焦んなくていいからゆっくり話してよー」
「あの…えっと…ドクオ君ってご存じです?」
(´・ω・)「ご存じも何も僕の教え子ですよwww」
「今すぐその子を連れて病院まで来てください!早く!」
(´・ω・)「……何かあったの?尋常じゃなくない?その焦り方」
「…いいですか?落ち着いて聞いてくださいね?」
・・・・・・・・
(;;´・ω・)「……なんてこった……」
全身の力が抜けてその場にへたりこむ。
携帯電話を持っていた手からも力が抜け、携帯電話は床に落ちる。
「もしもし!?ショボンさん!大丈夫ですか!?ショボンさん!?」
床に落ちた携帯電話から声は出続けている。
(;´・ω・)「急いで伝えなきゃ…!時間が…ない」
ふらふらと立ち上がりながらブーン達が着替えている更衣室のドアに手を掛ける。
手が震えている。
扉を開けた。
('A`)「どーしたんすかショボン先生?顔色悪いですよ?」
( ^ω^)「負けたのはすごく悔しいけど思いっきり泣いたら結構すっきりしましたお」
( ´∀`)「今日が終わりじゃないですし…元気出してくださいモナ」
( ゚∀゚)「なんならDVD貸しますよ?」
(´・ω・`)「……ドクオ君」
('A`)「ど…どうしたんですかそんなに凄んで…恐いですよ?」
(´・ω・`)「気を確かに聞いてくれ」
('A`)「……?はぁ……」
(´・ω・`)「君の……」
('A`)「………?」
(´・ω・`)「…君のお母さんが交通事故に遭われて重体だそうだ」
('A`)「……へ?」
(´・ω・`)「話は後だ!とにかくついてきてくれ!」
('A`)「え?え?……嘘だろ…?」
ショボンに手を引かれてスポーツセンターから出る。
いつのまにか天気は大雨となっていた。
あぁ、天気予報が珍しく当たった。折り畳み傘持ってきておいてよかった…。
ドクオはそんなことを考えていた。
ショボンの運転する車の助手席に座って詳しい事情を聞いた。
細い路地でのひき逃げだったため発見が遅れたこと。
原因はおそらく大雨のせいでドライバーの視界が悪かったであろうこと。
目撃者が居なかったため犯人の手がかりが無く、捜査は難航している事。
雨の中放置されていたためきわめて危険な状態であること。
そして――母が今集中治療室にいるということ。
ドクオの頭の中は真っ白になっていった。
今は今日の試合での自分を責めることで精一杯だと言うのに…。
そもそも母は今パートの真っ最中。交通事故に遭うはずがないのだ。
気付いた頃には病院についていた。
国立VIP病院。こんな大きな病院に母は運ばれたというのか。
いまいち実感が沸かなかった。沸いてきてほしくなどなかったが。
ショボンが受付で何やら話している。
ショボンは青ざめた表情でドクオの方へと歩いてきた。
そのまま3人で歩き始めた。
('A`)「(カーチャンは集中治療室にいるんじゃないのか…?どこ行くつもりなんだ…)」
('A`*)「(あ、容体が安定して病室に移されたんだな。よかった…)」
ドクオ達の乗ったエレベーターは下へ降りていく。
('A`)「(ん…?どこ行くんだ?)」
エレベーターが止まり、扉が開く。
そこはさっきまでいた階とは違って、薄暗く、静かだった。
霊安室
そう書かれた扉の部屋の前で看護士は立ち止まった。
扉の前には白衣を来た男女が数名と警察官がいた。
院長と書かれたプレートを胸に付けた医師がドクオの前まで来て、深々と頭を下げた。
「手は尽くしましたが…」
ドクオの頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。
――手は尽くした?どういうことだよ。
そんなカーチャンが死んだような言い方するなよ。
茫然としているドクオに警察官が声をかけた。
「本人確認をお願いできますか?中へ…」
霊安室の鍵が開けられ、入るように促される。
('A`)「…………」
足が動かなかった。一歩でも進んだら……全てが壊れてしまうような気がしたから。
(´・ω・`)「ドクオ君…」
ショボンの目には涙がたまっていた。
いつ溢れ出してもおかしくはないだろうが必死にこらえているようだ。
('A`)「…大丈夫ですよショボン先生」
何が大丈夫なのかはわからなかった。
ただ、そう口にすることでなんとか自分を保つことが出来た。
ドクオは意を決して霊安室に踏み込んだ。
キャスター付きのベッドのようなものの上に遺体が置かれている。
体には白いシーツがかけられ、顔には白い布。
サスペンスドラマで見たようなシーンをまさか自分が経験するとは思ってもみなかった。
顔に被せられた布を…取り去った。
J( ー)し
「あなたのお母さんに…間違いありませんか?」
霊安室の入り口から警察官がドクオに声をかける。
医師も警察官も、仕事柄、人の死に立ち会う機会は一般人のそれと比べれば多い。
そんな彼らの表情には悲しみや哀れみの表情が浮かんでいた。
この若さで唯一の肉親を失ったのだ。
生活も全てをこれから一人で切り盛りしなければならない。
年頃の少年にはあまりにも辛すぎる…。そう思ったのだろう。
「あなたのお母さんに…間違いありませんか?」
沈黙を続けるドクオに警察官がもう一度尋ねた。
( A )「……違う……」
( A )「これは…カーチャンじゃない…だってカーチャンは今日はパートで…」
「所有していた身分証明書から身元を割り出しました。酷な話ですが…」
('A`#)「違う!違う違う違う違う!たまたまカーチャンに似てる人が
たまたまカーチャンの身分証明書を持ってただけだ!!
これはカーチャンじゃない!」
(´;ω;`)「(ドクオ君……)」
('A`#)「証明してみろよ!この肉の塊が俺のカーチャンだってさぁ!なぁ!?
証明してみてくれよ!?無理だろ?無理に決まってるよなぁ!これは
カーチャンじゃないんだからさぁ!あはっ!あはははっ!!
あははははははははははははははははははははははは!!!!!」
(´;ω;`)「ドクオ君…」
霊安室の入り口にいる医師集団の中にいる看護士……おそらく新米看護士だろう。
ドクオを見て涙ぐんでいる。
このままでは何も進展しないと判断したのだろうか。
警察官は看護士に「あれを持ってきてください」と頼んだ。
数分後戻ってきた看護士の手には直方体の箱のようなものがあった。
「これをあの子に渡してあげてください…」
看護士は泣きながらショボンに箱のようなものを渡した。
ショボンも涙を流しながらゆっくりと頷く。
(´;ω;`)「ドクオ君…これを」
ドクオはそれを無言で受け取る。誰かへのプレゼントだろうか。
包装紙に包まれている。
雨の中放置されていたのだろうか。包装紙は滲んでいる。
うっすらとだが血が滲んでいるのわかる。
事故現場に放置されていたであろうことはなんとなく予想できた。
これをどうしろと言うのだろうか。
とりあえず開けろということか。
包装紙を開いていくと見慣れたマークが書かれた箱があった。
('A`)「(……アシックス?)」
わけがわからぬまま箱の蓋を開けると白い包装紙の上に小さな2つ折りのカードが乗っていた。
ドクオは警察官を見る。警察官は無言で頷いた。
カードを開けということだろう。
ドクオがカードを開くとそこには文字が書かれていた。
見慣れた文字。もう二度と見ることは叶わない文字が。
『ドクちゃんへ
全国大会出場おめでとう。
カーチャンはドクちゃんにようやくばっしゅを買ってあげることができます。
遅くなってごめんね。あの時約束守ってあげられなくてごめんね。
カーチャン貧乏だったから、ごめんね。
カーチャンは、ドクちゃんが今のばっしゅを自分で直しながら使っていることを
知っていました。だけどカーチャンは何も出来ませんでした。本当にごめんね。
だけどカーチャンはドクちゃんがこのばっしゅを履いて全国大会で活躍している姿を
考えるだけで毎日楽しくて楽しくて。
パートの時間を増やすのは大変だったけどドクちゃんのことを考えたら、
カーチャンはなんだって頑張れちゃいます。
少し先の話になりますが、ドクちゃんは賢い子だからきっと大学に進むよね。
カーチャンは大学に行かなかったからわからないことが多いけど頑張るからね。
お金のことも心配しなくていいからね。
ドクちゃんはドクちゃんが生きたいように、自分の道を進んでください。
話がそれちゃったけど、全国大会頑張ってね。
普段は恥ずかしくて言いづらいけど、カーチャンはいつでも
ドクちゃんの大ふぁんだからね。
カーチャンより』
メッセージカード。この少しクセのある字は間違いなく母親のもの…。
それでもわずかな可能性に全てを託し、ドクオは箱の中の白い包み紙に手をかけた。
――たまたまカーチャンの身分証明書を持っていて、
たまたまカーチャンとそっくりな顔をしていて、
たまたまカーチャンと似たような字を書く人で、
たまたまドクちゃんという名前のバスケをしている息子がいる人で――
包み紙を開いた。
('A`)「ポイントゲッターL……」
昔母にねだったバッシュ。
ドクオの家計に大打撃を与えるほどの価格のバッシュ。
――違う…たまたまこのバッシュを欲しがっている子供がいる人で……
たまたま…たまたま…――
('A`)「先生…これはカーチャンじゃないよな!?違うよな!?別人だよな!?」
「……………」
('A`)「なぁ…頼むよ…嘘でもいいんだ…カーチャンじゃないって…言ってくれよ…」
「……………」
('A`)「カーチャン…」
(;A;)「カーチャン俺…負けちゃったよ…全国行けなかったよ…」
(;A;)「俺のせいで…負けちゃったよ…カーチャン…カーチャン…」
(;A;)「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
第24章 完
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