( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです  第二部

第25章 tragic destiny





(;A;)「うわあぁぁぁぁっ!うあぁぁぁぁっ!カーチャン!カーチャン!うあぁぁぁぁっ!」


カゼ一つひかなかった母。「健康なのが取り柄だ」と言っていつも笑っていた母。
そんな母があっさりと死んでしまった。
人間はなんて脆いんだろう。すぐに壊れてしまう。

(;A;)「カーチャン!あはは!あはははははっ!カーチャン……カーチャン!」

霊安室に座り込み、狂ってしまったかのように泣いたり笑ったりを繰り返すドクオ。
ショボンも医師も看護士も警察官も…その場に居合わせた人間はかける言葉も見当たらず、
静かに涙を流すしかなかった。

もしも神がいるのなら、今こそ神を恨まない時はない。
どうしてドクオが。
母親思いで仲間思いで…誰よりも優しいドクオが、どうしてこんな目に
あわなければならないのか。

(´;ω;`)「(…どうして…)」







(;A;)「うあぁぁぁぁっ!カーチャン!うあぁぁぁぁっ!」

泣いたり笑ったりを1時間ほど繰り返し、疲れ果てたドクオはその場で眠りに落ちてしまった。
ショボンがドクオをおんぶして帰ろうとしたが、医師がそれを制止した。
今一人にしたらドクオが自殺を図る可能性があるという。
厳重な監視の上、病院で保護してくれるそうだ。
ショボンは「ドクオはそんなことを考えるような人間ではない」と反論したが、
過去にそういった例が確認されているために安心は出来ないそうだ。
ショボンは医師に頭を下げ、病院を後にした。
ショボンはブーン達に何も言わずに飛び出してきた。

病院では携帯電話の電源を切っていたため、ブーン達から連絡があったとしても繋がらない。
病院から出てブーンに連絡をしようとショボンは考えた。
しかし、どう伝えればいいのだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、
横から声をかけられた。

( ゚ω゚)「ショボン先生!」




(´・ω・`)「内藤くん!?それにみんな…どうしてここが?」
( ^ω^)「ブーンして車を追い掛けてきましたお。病院に入っていくのが見えたから
     みんなに連絡しましたお」
(=゚ω゚)ノ「緊急っぽかったんで1年は帰らせましたヨウ。ドクオのお母さんは…
     どうなんですかヨウ?」

(´・ω・`)「……」

(;´∀`)「…ショボン先生?」
(;゚∀゚)「まさか…」

ショボンは話した。

手遅れだったこと。

ドクオがひどく取り乱したこと。

万が一を考え、今晩は病院に泊まること…。

思い出すたびに涙が流れる。数時間前に出し切ったと思っていたのに。
話が終わる頃には全員が顔を伏せて泣いていた。
嗚咽と沈黙の時間がどれだけ続いたのだろうか。
ブーンが唐突に口を開いた。




( つω;)「僕も…ドクオの病室に泊まらせてくださいお」
(=;ω;)ノ「…俺もですヨウ」
( つ∀;)「ドクオ君を一人にしておけませんモナ」
( う∀;)「あいつは今日の試合での自分をずっと責めてた…それで親も亡くして
     独りぼっちなんて…辛すぎます」
ξ;;)ξ「私も…お願いします。ドクオも目が覚めた時に一人だと寂しいだろうから…」
(*;ー;)「ドクオ君は…一人じゃありません。私たちがついてます」

(´;ω;`)「…そうだね。僕もご一緒するよ。葬儀の手続きもしなくちゃいけない」

ドクオの部屋への宿泊には許可が降りた。
今回限りで特別に許可されたらしい。
病院から人数分の毛布を借りて、病室の床に各々場所をとる。
しかし今日はあまりに沢山のことがありすぎた。

睡魔と闘いながらショボンはドクオの母の葬儀のことを考えていた。
母子家庭のドクオの家にはおそらく葬儀を執り行う余裕はない。
母親がなくなってしまった以上、ドクオの経済力は0に等しい。
ショボンはポケットマネーで葬儀を執り行うことを決意した。
病室を出て、ドクオの母の死を看取った医師を尋ね、葬儀についての打ち合せを済ませる。




仮通夜を今日中に行いたかったがドクオがあの状況だ。
きっと今日は目を覚まさないだろう。
先に葬儀屋に連絡をしておき打ち合せを済ませ、ドクオが目を覚まし正気を取り戻し次第、
すぐに葬儀屋に来てもらうことにした。

葬儀もおそらく自宅で行う質素なものになるだろう。
ブーン達の眠る病室に戻ってきたショボンも静かに眠りに落ちた。




――――――――――――――――――――――――――

('A`*)「カーチャン!俺レギュラーになったよ!」


ドクオは夢を見た。

小学校の頃から根っからのバスケ少年だったドクオは強豪のVIP北中で、

初めてレギュラーに指名されて、最高の気分でドクオは家に帰った。

J('ー`)し「おかえりドクちゃん。何かいいことあったの?嬉しそうだね」
('A`*)「へへへ、聞いてよカーチャン!俺レギュラーになったんだよ!
    VIP北の歴史の中で1年でレギュラーになった人は今まで一人も
    いなかったんだってさ!」
J('ー`)し「まぁ!すごいわね、ドクちゃん。さすがトーチャンとカーチャンの子だわ」
('A`*)「へへへ…」
J('ー`)し「じゃあご飯の前にトーチャンに報告しよっか」
('A`*)「うん!」




二人は小さな仏壇の前に移動した。
自分が生まれてすぐに亡くなってしまった父親。
遺影でしか顔を知らない父親。
自分が小さい頃、母は夜中にアルバムを眺めながら涙を流していた。

どんな父親だったのだろう。
中学に入った頃から母は「本当にトーチャンに似てきたわね。やっぱりあの人の子だわ…」
と呟くようになった。
ドクオは幼いながらも、自分が母にとってのドクオにもトーチャンにもなりたいと思った。
母はそのたびに「ドクちゃんはドクちゃんのままでいいんだよ」と言っていた。

J('ー`)し「さ、ご飯食べよっか」
('A`*)「うん!」

('A`*)「もぐもぐもぐ…」
J('ー`)し「おいしい?」
('A`*)「うん!…あ、あのさカーチャン…」
J('ー`)し「ん?」
('A`*)「レギュラーになったらさ、試合にもたくさん出るようになるからさ…
    体育館シューズだとちょっと…その…」
J('ー`)し「そうだね…」
('A`*)「えぇっと…」
J('ー`)し「今度の休みに、ばっしゅ買いにいこうか」
('∀`*)「ホントに?やったー!」




J('ー`)し「(靴屋さんの特売品とかで見つければいいかな。特売品なら2000円くらいで
     買えるわよね…念のため5千円持っていこうかな)」
('A`*)「カーチャンごちそうさま!洗い物したら宿題やるね!」
J('ー`)し「いつもありがとうね。勉強頑張ってね」
('A`*)「うん!」

('∀`*)「(バッシュ…バッシュ…!)」

宿題をやるドクオの頭の中は新しく手に入るバッシュのことでいっぱいだった。
雑誌で見て一目惚れしたバッシュ。
値段がやけに高いのが心配だったが頭の中では期待が上回り、それは記憶の奥底へと
沈んでいった。

そして待ちに待った休日が訪れた。

―VIPスポーツ―

('A`*)「この店だよ!」
J('ー`)し「(見たことないお店ね…初めて入るわ)」
('A`*)「こっちこっち!えっと…バッシュコーナーは…」
J('ー`)し「(ふふっ、楽しそう…)」
('A`*)「カーチャン、これ!これがほしいんだ!」
J('ー`)し「どれどれ?あら、なかなかかっこいいじゃない」




('A`*)「ホントに…いいの?」
J('ー`)し「いいのよ、遠慮しなくて」
('A`*)「ありがとうカーチャン!!すいませーん!!試着したいんですけどー!!」
J('ー`)し「(値段は…2850円に消費税を足して…あら、3000円で足りるわね)」

('∀`*)「よし、ピッタリ!!これください!!」

「ありがとうございまーす。それじゃあレジに持って行きますね」

J('ー`)し「5000円でお願いします」

「…あのー…お会計29925円ですが…?」

J('ー`)し「……え?」

値札に書かれていた定価は28500円。
老眼気味の母親にははっきり見えなかったのだろう。
桁を一つ見間違えてしまったのだ

J('ー`)し「そ…そんなにするんですか…?どうしよう…」

「多分セールにかかると思いますからそれまで待ってもらえれば…」

J('ー`)し「特売ですか?2000円くらいで買えますか?」




「2000円はちょっと…セールっていっても1割引くらいですからね…」

J('ー`)し「ご…ごめんなさい…ちょっとお金が足りないので戻してもらえますか…?」
('A`*)「…カーチャン……?」
J('ー`)し「ドクちゃん…ごめんね…本当にごめんね……」

バッシュを買ってもらえなかったのは残念だったけどそれから1週間位経ったあと、
カーチャンは従兄弟のお古を貰って来てくれたんだっけ。
あの頃の俺にはブカブカで、つま先の所に綿を詰めて…。
自分の家の家計が本当に苦しいんだって事をあの時初めて知った。

J('ー`)し「ドクちゃん…本当にごめんね…」

母の目に涙が浮かんでいた。
見えていないふりをした。

―――――――――――――――――――――――――――




('A`)「カーチャンっ!!!!」

('A`)「(…夢かよ…やなとこで終わりやがる…)」

('A`)「…ここは……?」

月明かりに照らされている真っ白な部屋。
全部夢だったのだろうか。試合に負けた事も、……母親が死んだ事も。

しかし体に残る疲労とベッドの脇に置かれていた箱が、全てが現実であると教えてくれた。

('A`)「……みんながいる…」

すやすやと寝息を立てているブーン達。
月明かりに照らされるその顔に涙の跡が残っているのが見えた。




('A`)「……俺…これからどうなるんだ…」

('A`)「…カーチャン…馬鹿だよ。ホントに…」

('A`)「今はこれよりも安くて性能の良いバッシュたくさんあるのにさぁ…」

('A`)「あんなに昔の約束忘れてたのにさぁ…」

('A`)「余ったお金でおいしい物たくさん食べれたのにさぁ…」

('A`)「死んじゃったらもうなんにもできないんだぜ…オムライスも食べられないんだぜ…?」

(;A;)「カーチャン…バッシュなんていらないから…帰ってきてくれよ…」

( -ω-)「ドクオ…バスケ…するお…むにゃむにゃ…」

('A`)「(俺は…どうすればいいんだよ…誰か教えてくれよ…)」

第25章 完





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