( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第二部
第32章 非情なる時
( ゚∀゚)「お前……何してんだ…?」
問いかけるジョルジュ。その対象はイヨウだ。
服の所々に血を飛び散らせたイヨウ。
そしてそのすぐ側に顔を血に染めて倒れているブーンの姿。
わかってはいた。
しかし認めたくなかった。
だが、真実は残酷にもイヨウの口からあっけらかんと打ち明けられる。
(=゚ω゚)ノ「俺がやったヨウ。見てわかんねぇか?お前は脳みそまで筋肉かヨウ?」
悪びれている様子は無い。
ジョルジュの視界が真っ赤に染まったような気がした。
同時に、心の中で何かがぷっつりと切れる音も聞こえた気がした。
(#゚∀゚)「てめぇぇっ!!!」
ゴヅッ――
骨と骨のぶつかり合う嫌な音。ジョルジュがイヨウの顔面を思い切り
殴りつけたのだ。
筋骨隆々のジョルジュの肉体から生み出される拳は形容し難い威力を誇る。
イヨウはジョルジュのパンチの衝撃で顔を地面に叩きつけられるようにして
倒れる。
(=゚ω゚)ノ「…ってぇなこら…」
血の混じった唾を吐いて、立ち上がったイヨウは言う。
しかしジョルジュはそんな呟きは耳に入っていないようで手を緩めない。
容赦なく殴り、蹴り、頭突きをかます。倒れたイヨウを無理矢理引きずり起こして
また、殴る。
(#゚∀゚)「オラァ!!立てよコラァ!!弱いってレベルじゃねーぞコラァ!!」
ほどなくしてイヨウはブーンと同じように顔中を血だらけにして地面に倒れていた。
顔だけでなく、体中に数えきれないほどの打撲傷があった。
呻き続けているブーンを肩を貸すようにして支えたジョルジュは最後に一言だけ言い残して
噴水公園を後にした。
(#゚∀゚)「俺は…俺たちは、お前を絶対に許さねぇ。二度と俺たちに関わるな」
応答は無い。聞こえていながら無言を保っているのか、気を失っているのか…。
ジョルジュはそれすら確かめることなく歩き去っていった。
イヨウの口腔内には血液の鉄分の味が充満していた。そして…次々と口へ入ってくる、
なんだか塩辛いような味も。
(= ω )ノ「……くそったれ…」
イヨウは人気の無い公園で一人呟いた。
その言葉がジョルジュに向けられたものなのか、ブーンに向けられたものなのか、
はたまた自分自身に向けられたものなのか……誰も知る術を持たない。
―――――――――――――――
これがイヨウがウィンターカップ県予選に出場していなかった理由、
そしてVIP高校の大敗の理由である。
イヨウの退部から2ヶ月以上経った今でも部内の空気の悪さは拭いきれておらず、むしろ
悪化する一方だ。
学校が始まり、何度か校舎内でイヨウとすれ違うこともあったが、部員達は誰一人として
口をきかず、ピリピリしたふいんきを漂わせる。
部内でも、ジョルジュが中心となってイヨウとは関わりを持たないように言って回った。
イヨウがブーンにしたことだけは、ブーンのことも考えて言わなかった。
ブーンも「噴水公園の階段から落っこちちゃったんだお」の一点張りだった。
しかし恐らくほぼ全員がうすうす勘付いていただろう。あえて言わなかったが。
ブーンの顔の傷には深いものがなかったため、痕はほとんど残らなかった。
しかし校舎内ですれ違った時に見たイヨウの顔には恐らく消えないであろう傷痕が
幾つか残っていた。
ショボンにも手の施しようがなかった。ショボン自ら話をしようと教室に赴くが、
いつ訪れてもイヨウの姿は無い。イヨウの担任に頼んで呼び出してもらっても応じない。
終業のチャイムが鳴ってから下駄箱に即行するも、一度として出くわさない。
もはや消えることの無い亀裂が生まれていた。
―今北産業大学附属今北高校―
(■_■)「よし、今日はここまで!各自自主練に入れ!!」
今北一同「「お疲れ様でした!!!!!」」
( ,,゚Д゚)「クー、やっと練習に入れるようになったな。楽s…」
川 ゚ -゚)「ふあぁ……」
( ,,゚Д゚)「……おいおい、もう眠いのか?あんまり無理は…」
川 ゚ -゚)「ゆうべ、遅くまでアニメを観ていたんだ」
(;,,゚Д゚)「……は?」
川 ゚ -゚)「アニメーションだ。知らないのか?」
( ,,゚Д゚)「いや…それは知ってるが…お前、高校生だろゴルァ…」
川 ゚ -゚)「日本のアニメは世界中で人気があるのだぞ。田守氏ほどの年齢でも
アニメが好きな人間は多い」
( ,,゚Д゚)「…そんなに違うのか?海外のアニメと」
川 ゚ -゚)「あぁ、大分違うな。日本のアニメは各キャラクターに対する設定が
しっかりされていて……」
( ,,゚Д゚)「へぇ……」
川 ゚ -゚)「うんちくうんちくうんちく……」
(;,,゚Д゚)
川 ゚ -゚)「うんちくうんちくうんちくうんちく……」
(;;,, Д )「………」
・
・
・
川 ゚ -゚)「つまりアニメーションという存在の…」
(;,,゚Д゚)「も…もういいぞゴルァ…」
川 ゚ -゚)「なんだ。ここからがいいところなのに」
( ,,゚Д゚)「お腹いっぱいだゴルァ」
川 ゚ -゚)「そうか…残念だ」
( ,,゚Д゚)「けどアニメって夜の7時〜8時くらいのものが多くないか?
もう始まっちまってる時間だぞゴルァ」
川 ゚ -゚)「ゴールデンのお子様アニメに興味は無い。深夜アニメだろう、常識的に考えて……」
( ,,゚Д゚)「お前…まさか……」
川 ゚ -゚)「午前4時位まで起きていたぞ」
( ,,゚Д゚)「…授業は大丈夫なのか…監督、成績にも結構厳しいぞ」
川 ゚ -゚)「夏休み明けの実力テストでは学年9位だったぞ」
( ,,゚Д゚)←432位/480人中
川 ゚ -゚)「?どうかしたか?」
( ,,゚Д゚)「いや…なんでもない…けどそんな生活続けてたら体に悪いぞ?
深夜アニメは確かに面白いけどゴルァ…」
川 ゚ -゚)「ギコも深夜アニメを観るのか?」
( ,,゚Д゚)「ちょっと前にやってた涼宮ハ○ヒの憂鬱ってのは観てたぞゴルァ。
時間が遅かったから俺は録画してたけどゴルァ」
川 ゚ -゚)「ハルヒか。ハルヒも面白いな。…む?ということはギコの部屋には
ビデオデッキがあるのか?」
( ,,゚Д゚)「俺のじゃないけど同じ部屋のニダーが家から持ってきたんだ」
川 ゚ -゚)「ならば私が今観ているアニメを録画しておいてくれないか?」
( ,,゚Д゚)「な……なんで俺が…」
川 ゚ -゚)「私の携帯電話に朝比奈みくるのエロ画像があるのだが…容量も
いっぱいになってきたしそろそろ消すかな…」
(*,,゚Д゚)「後で録画するアニメをメモっといてくれ」
<ヽ`∀´>「(あのクーってやつギコとは良く喋るニダな……ウリや先輩達が
話しかけても二言三言くらいしか返さないくせに…。
まさかウリをシカトしてるニダか?謝罪と賠償をry)」
川 ゚ -゚)「じゃあ、メモは後で部屋に持っていくぞ」
(*,,゚Д゚)「うん!」
体育館を後にするクーの後姿を見ながら、ギコは思った。
( ,,゚Д゚)「無愛想だと思ってたけど…ちゃんと喋る時もあるんだな」
<ヽ`∀´>「どうせ自分の趣味のことくらいでしか話を盛り上げられない
陰険なヤツニダよ。」
( ,,゚Д゚)「お前はどうなんだゴルァ、ニダー?」
<ヽ`∀´>「ウリなら謝罪と賠償について小一時間…」
ε=(-Д- ,,)「陰険なヤツ……ねぇ…」
<;ヽ`∀´>「……」
( ,,゚Д゚)「今日はもう少しやってくか」
<ヽ`∀´>「フリースロー勝負するニダ。先に30本連続入れたほうの勝ちニダ」
( ,,゚Д゚)「負けたほうは部屋の掃除だぞゴルァ」
時の流れは止まらない。流れる水のように、速さを変えずに、流れ続ける。
今この瞬間でさえ、悲しむ者、喜ぶ者、セックスする者、怒る者…
いつ、誰が、どこで、どのような日常を歩んでいようが時というものは流れ続ける。
ある意味非情なものだろう。楽しい時はあっという間に終わってしまうような気もするし
嫌な時はいつまでも終わらないような気がする。
ブーン達の時も流れ続ける。それはまるで心の傷を抉っていくようであるが、時の流れは
止まらない。
もしも時間を戻す事が出来たなら。
もしもイヨウの異変に早く気付く事が出来ていれば。
願えど願えど、その願いは叶うはずもなかった。
そしてブーン達とイヨウの間の傷も癒えぬまま、無情にも時は流れていった。
少しずつ肌寒くなってくる季節。
日が沈む時間も早くなってくるこの季節。
日が沈み始めた広場からドリブルの音と陽気な騒ぎ声が聞こえていた。
男1「っしゃぁー!こっちこっち!」
男2「イヨウ、こっちだぁ!!」
(=゚ω゚)ノ「そぉいwww」
男3「あwwwてめぇ一人で持ってくなよwww」
女1「キャーーwwww」
女2「イヨウくーんwww」
(=゚ω゚)ノ「げへへへへwwwさぁパンツを脱げーww」
女1「いやーんwwあっち向いててwww」
女2「生パン5000円でいかが〜?ww」
やはりこちらの方が居心地が良い、そう思うイヨウだった。
次の瞬間、広場がざわめいた。
川 ゚ -゚)
「お…おい、あいつ……」
「この前の……」
「何しにきたんだ、まだ暴れたりないってのか…?」
(=゚ω゚)ノ「あ……」
川 ゚ -゚)「久し振りだな、イヨウ君」
(=゚ω゚)ノ「お…おう…」
イヨウは、クーが前回とは違いバスケットのウォームアップスーツを
着込んでいるのに気付く。
(=゚ω゚)ノ「へぇー…バスケ部だったのか…っていうか高校生だったのかヨウww」
川 ゚ -゚)「む、老けて見えるということか?」
(=゚ω゚)ノ「そういうことでは…wところで今日は何しに来たんだヨウ?
その格好だとバスケの練習とかかヨウ?」
川 ゚ -゚)「いや、部活の試合があってな。近くだったから帰りによってみただけさ。
どうやら私達は本当に縁があるようだな」
(=゚ω゚)ノ「そうだな…ヨウ。あ、あのヨウ!」
川 ゚ -゚)「む?なんだ?」
(=゚ω゚)ノ「携帯の電話番号…教えてもらっていいかヨウ?」
川 ゚ -゚)「私の…か?別に構わな…」
「おい、クー!何してんだ。帰るぞゴルァ!!」
どこかで聞いた覚えのある声。忌々しい記憶とともに封印したはずの声が
離れた所から聞こえた。
( ,,゚Д゚)「おーい、クー!聞こえてんのかー!!!」
(=゚ω゚)ノ「ギコ……!?なんでクーを…」
川 ゚ -゚)「まぁ同じ部活だからな。そろそろ行かなくてはいけないな」
(=゚ω゚)ノ「………」
川 ゚ -゚)「携帯の番号だったな?かばんのなかにあるから少し待っt…」
(=゚ω゚)ノ「……やっぱいいヨウ」
川 ゚ -゚)「……そうか…それでは…な」
(=゚ω゚)ノ「……おう…」
クーは残念そうにそう言って広場の外へと向かっていた。
背中にプリントされた「今北産大附」の文字がやけに鮮やかに見えた。
(=゚ω゚)ノ「(マネージャーだったのかヨウ…)」
まぁ仕方ないか、とイヨウは日が沈みそうな空に向かって呟いた。
ギコは全国レベルのプレーヤーで恐らく次期キャプテンの最有力候補だろう。
そんな男に同じ部活内のマネージャーが惹かれてしまうのも仕方の無いこと…
割り切ったつもりだったが胸に何かがつっかえて出てこないような感覚は収まらなかった。
(=゚ω゚)ノ「はぁ…」
(=゚ω゚)ノ「(つまんねぇヨウ…)」
( ,,゚Д゚)「誰と話してたんだ?あんな所に知り合いがいるなんて珍しいなゴルァ」
川 ゚ -゚)「知り合いと言うほどでもない」
( ,,゚Д゚)「?????」
川 ゚ -゚)「日本に来てすぐに空港から出て散歩してた時に会ったんだ。犬に」
(;,,゚Д゚)「はぁ……(こいつもしかして電波なんじゃねぇか…?)」
川 ゚ -゚)「コート上で彼と敵として出会わなくて良かった。心からそう思うよ」
( ,,゚Д゚)「まだコートに立ってないやつが言うなwww」
川 ゚ -゚)「くはは、そうだな。しかしな、ギコ。ところで今日のお前のボール運び
なんだがもう少し…」
ギコは自尊心が強かった。それゆえに他人からアドバイスを受ける事を何よりも
嫌っていた。
だが、クーだけは違った。クーのアドバイスにだけはなぜか耳を貸すことができた。
いまだ試合に出場していない、実力すらわからないこの男の言葉に。
( ,,゚Д゚)「(ん…?コイツ男なんだったよな?)」
練習でも目立つものは特に感じていなかった。実際にはクーが今北の選手のレベルに
合わせて手を抜いて練習していたからなのだが、それをギコが知るのはまだしばらく先の事だ。
深夜アニメのせいで寝不足になっていたというのも理由の一つではあるのだが。
―VIP高校体育館―
('A`)「……今日は終わるか」
( ^ω^)「……お」
( ´∀`)「お疲れモナ」
( ゚∀゚)「俺今日は帰るわー……」
ぞろぞろと体育館から出て行く2年生メンバー達。
残された1年生の部員達は用具の後片付けや掃除をしながら雑談していた。
一年A「なぁ、マジふいんき悪くね?」
一年B「イヨウさんの枠も考え直さなきゃダメじゃね?てんで役に立ってねぇじゃん、
トラオのやつも」
一年C「馬鹿、聞こえるぞwwww」
(・▽・#)「………」
「お前ら笑い事じゃないだろ!!!!」
一年A「…ヒッキー…?」
(-__-)「なんで真剣に考えようとしないんだよ!!僕達全員のチームだろ!?」
亀裂は次々と広がっていった。
第32章 完
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