第二部

第37章 very cool




ブーン達にとって二度目の新人戦大会。
絆をより強固にした彼らは順調に勝ち星をあげてトーナメントを勝ち上がっていく。
彼らが準決勝で立ち向かうこととなったのは今北産業大学附属今北高校。
もう何ヶ月前のことになるのだろうか、彼らはあの敗北を決して忘れないだろう。
そしてその過去を振り払うかのようにVIP高校は全国区の今北相手に第1クォーターが
終了した時点で17-12と5点のリードを奪い、クォーターブレイクへと入っていた。



―VIP高校ベンチ―

(´・ω・`)「よしよし、よく守ったよ、みんな。オフェンスも今は流れがいい。
      この流れが途切れる前に出来る限り点差を開けたい所だ」
('A`)「1発目のイヨウのスリーがでかいっすね、やっぱ」
( ´∀`)「ああいう守りあいの展開だとスリー一本が絶大な威力を誇るモナね」
( ゚∀゚)「ただ相手もディフェンスがかなりハードだな。少しでも気を抜くと持ってかれそうだ」
ξ゚听)ξ「見ててもやっててもわかることだろうけど向こうのディフェンスが厳しくなった以上に
     こっちのディフェンスも進歩してるわ。スコアを見ればわかるでしょ?」
(*゚ー゚)「このまま油断せずに頑張ろ!!もう負けなんてヤだからさ!!」
( ^ω^)「この展開だとシュート一本一本が大事だお。気合入れていこうだお!!」



―今北産業大学附属今北高校ベンチ―

<ヽ`∀´>「くっそー、リバウンドがとれないニダ…」

(■_■)「無理なシュートが多いな。向こうのディフェンスが前回よりも厳しくなっているにも
    拘らず……な。VIP高のインサイドはうちよりも強力だ。リバウンド勝負は不利になる。
    だから確実なタイミングでシュートに行く事が要求されるのだが…今のままだと
    厳しいかもしれんな」
( ,,゚Д゚)「前回とはまるで違う…。気は抜けないなゴルァ…」
(■_■)「さて……クー、行ってみるか?」
( ,,゚Д゚)「…それしかないでしょうねゴルァ」
<ヽ`∀´>「あいつらはまだクーのこと知らないはずニダwww」
川 ゚ -゚)「黙れエラ張り」
<ヽ`∀´>「なんだとアニヲタ!!」
( ,,゚Д゚)「それは俺のことか?ニダー」
<;ヽ`∀´>「え、あ、ちょ……」
川 ゚ -゚)「みんな仲良くしようじゃないか」



ブザーの音が鳴り響き、第2クォーターの開始が告げられる。
オフィシャルは更に今北の選手交替を告げる。

オフィシャル「メンバーチェンジ、白!!5番アウトで10番インです!!」

コートに足を踏み入れる、明らかにバスケットボールの試合とはかけ離れたふいんきのクー。
もはや一張羅と化しているのであろう、例のTシャツと例の黄色いカチューシャ。

川 ゚ -゚)


(=゚ω゚)ノ「(クー……!!!!)」
('A`)「5番と替わったってことは…ポジションは2番か…?イヨウ、とりあえずこのままあいつに
   ついてくれ。まずは様子を見る」
(=゚ω゚)ノ「わかったヨウ」
( ^ω^)「うはwwwwwwwwテラモエスwwww僕もハルヒ大好きだおwwwwww」
ξ#゚听)ξ「死んでろキモヲタ!!!!」
(;^ω^)「………」

(=゚ω゚)ノ←キモヲタ2号


静かにコート内へ歩いてくるクー。第2クォーターは今北ボールから。
ボールがコート内に入れられるまでのわずかな間に二人はわずかな会話を交わした。

(=゚ω゚)ノ「まさかプレーヤーだったとはヨウ…!!」
川 ゚ -゚)「何か誤解していたのか?…それにしても残念だ」
(=゚ω゚)ノ「何がだヨウ?」
川 ゚ -゚)「君とだけは…ここで対峙したくなかった」
(=゚ω゚)ノ「どういう意味だヨウ?」
川 ゚ -゚)「試合中だけは…手加減ができんのでな。先に謝っておこう。すまない」
(=゚ω゚)ノ「あんまなめてっと……!!」

('A`)「イヨウ、始まるぞ!!集中してこうぜ!!」
(=゚ω゚)ノ「…把握した!!」

今北Fがコート外からギコにボールを入れ、今北ボールで試合が再開される。
その瞬間にクーは素早くイヨウを振り切ってインサイドへと侵入する。

(;=゚ω゚)ノ「げっ……」
川 ゚ -゚)「ギコ、くれ!!」
( ,,゚Д゚)「っしゃ、行け、クー!!」

ドクオの頭上をギコのパスが通過する。突然の出来事にドクオの反応は遅れ、
パスを通してしまう。スリーポイントラインとハイポストの中ほどの位置で
ボールを受けたクーは一瞬の躊躇もなくドリブルを開始してペイントエリア内へと
突き進む。


( ゚∀゚)「(速い…けど、カバーは何とか間に合うはずだ!!)」

( ゚∀゚)「モナー!!リカバー任せたぞ!!」
( ´∀`)「把握したモナ!!」

ジョルジュがクーのカバーに、モナーはそのリカバーへと入る。身長差、体格差ともに
圧倒的に優位に立つであろうジョルジュがカバーに向かってきたにも拘らず、クーは
ドリブルを止めない。

( ゚∀゚)「(その身長で一人で突っ込んでくる気かよ!?上等だ!!)」
川 ゚ -゚)「……っ!!」

ジョルジュがクーの前に立ちふさがる。クーは一瞬ドリブルを中止し、それにつられて
停止したジョルジュを嘲笑うかのように再度ドライブを試み、ジョルジュを抜き去る。

(;゚∀゚)「んなっ……!!」
(;´∀`)「だ…大丈夫!!間に合うモナ!!」

自らのマークマンとジョルジュのマークマンの中間地点にポジションを取っていたモナーが
慌ててフォローに入るも、モナーの体はゴールへの進路を半身妨げるに終わる。
クーはそのままレイアップの構えで跳び上がる。モナーもそれに合わせてシュートコースを
防ぐために両手を上げる。



(;´∀`)「(…まだうたない!?パスモナか!?)」
川 ゚ -゚)「エラ張り!!」

ドライブのスピード、角度から、相手の行動はシュートだと判断したモナーだったが、
その予想は次の瞬間に裏切られる事となった。モナーが両手を上げて跳び上がった
ために生まれた空間へクーは体を回転させながらビハインドパスを送る。
その先にはハイポストからノーマークでゴールへ走りこんでくるニダーがいた。

<ヽ`∀´>「その呼び方は人権侵害ニダ!!」

そのままニダーはノーマークのゴール下でジャンプシュートを沈める。
スコアは17-14。VIP校3点リード。

(=゚ω゚)ノ「わ…悪いヨウ!!」
( ゚∀゚)「ドンマイだ!!モナーも気にするな!!取り返せばいいんだ!!」
( ´∀`)「も…モナっ!!」
('A`)「よし、一本行くぞ!!」

今北のディフェンスはハーフコートのマンツーマン。この程度の点差ならば
いつもはプレスをかけて一気に逆転を狙いに来るはずであるのだが、今回の今北には
それがない。



(;=゚ω゚)ノ「っ……!!」

初めてラウンジ学園と試合をした時と同じ状況がイヨウを襲っていた。
そう、池上に徹底的に貼り付かれてボールをもらう事すらままならなかったあの状況。

('A`)「(んなっ…こいつもディフェンシブプレイヤーかよ!?)」

だが池上はディフェンスに全力を注いでいた分オフェンスにはほとんどど参加していなかった。
あの激しいディフェンスゆえにオフェンスに参加できなかった(させてもらえなかった)から
なのだろうが。試合はまだ第2クォーターの序盤。先刻のドライブを見る限り、クーは
オフェンスにおいてもチームの軸であろうことを想像するのは容易な事だった。

(=゚ω゚)ノ「(確かにきっついディフェンスだけどヨウ…!!池上ほどじゃねぇヨウ!!)」

イヨウはクーを腕で押さえつけるようにしながら大きく動いてクーを振りきりドクオからの
パスを受け取る。

(=゚ω゚)ノ「(どうだこのやろ…ってうわっ!?)」

イヨウがボールを持った瞬間にさらに激しくなるクーのディフェンス。
その激しい動きとは対照的に終始涼しげな顔でプレーを続けているのが特徴的だ。

(;´・ω・)「(あえてボールをとらせて油断させ、ボールを持った瞬間に激しいプレスを…?)」



(;^ω^)「イヨウ!!ボール止めちゃいかんお!!パス回すお!!!」
(;=゚ω゚)ノ「(したいけど…できねぇんだヨウ……!!)」


ばちっ――

(;=゚ω゚)ノ「(やべぇっ!!)」

「とった!!」
「すげぇなあの10番!!」
「いいぞー!!ハルヒー!!」

('A`;)「くそっ…戻れ!!ディフェンスだ!!」

イヨウからボールを奪ったクーはドリブルでワンマン速攻へ向かう。
VIP高校のメンバーはそれを止めるべく、クーを必死に追いかける。だが…

('A`)「(速ぇ……)」
(;´・ω・)「(ドリブルをしているにも拘らず…なんてスピードなんだ…!!)」

クーはイヨウからボールを奪った地点からわずか3回のドリブルでゴール下へ。
そのままレイアップに向かおうとする。



⊂二二二( ^ω^)二二⊃「行かせんおーっ!!」

( ・∀・)「5番!!」
( ><)「やっぱり彼はめちゃくちゃ足が速いんです!!!」
川 ゚ -゚)「(ほう)」

今北の選手すら置き去りにしてしまうほどのクーのスピードにブーンが食らいつく。
だがそれでも二人の距離は大きく離れている。そのままシュートに行けば楽々と
速攻を決める事が出来たにも拘らず、クーはわざとスピードを緩めてブーンに追いつかせる。

( ^ω^)「(お……?)」
( ,,゚Д゚)「(クー、何を……)」
('A`)「ブーン、止めてやれ!!お前が余裕こいてて勝てるようなやつじゃないって思い知らせてやれ!!」

クーが跳ぶ。ブーンもそれにあわせて跳ぶ。その瞬間、ブーンはほんの少し違和感を覚えた。

( ^ω^)「(レイアップにしては踏み切り位置が少し遠い……?)」

ブーンがそれに気付いた頃には、クーは空中で体を一回転させてブーンをかわし、レイアップを沈めていた。



(´・ω・`)「………!!」
ξ゚听)ξ「………」
(*゚ー゚)「………」

('A`;)「な……」
(;゚∀゚)「なんだよ今のは…?」
(;´∀`)「空中で一回転したモナよ…?」
(;=゚ω゚)ノ「あの野郎……」

( ^ω^)「………」
(;^ω^)「(僕は今何をされたんだお…?)」

( ,,゚Д゚)「イカすぞ、クー!!」
川 ゚ -゚)「文字だけ見ると何だかいやらしいな」

(■_■)「ふふっ…なんて性格の悪い奴なんだ、あいつは……」

クーがブーンにわざと追いつかせた理由。それは自らの持つ絶対的な実力を、互いの力を
純粋に示す1対1という状況であえて見せ付けることだった。
得点源のイヨウを完全に抑え込み、チーム1の俊足を誇るブーンに追いつかれながらも楽々と
シュートを決めて見せたことで、クーの実力をVIP高校メンバーの心に刻み付けた。
それと同時に…莫大な不安も。



今のクーのプレーはVIP高校のメンバーの脳裏に強烈に焼き付けられた。
精神的な不安からか、彼らのプレーは少しずつではあるが精彩を欠いてゆく。全員の意識が
クーにばかり向けられているが故に、自らのマークマンに対するディフェンスが少しずつ
甘くなっていってしまうのだ。それに気付いたショボンはすぐさまタイムアウトをとって
試合を中断、まず各々のディフェンスに集中するべきである旨を伝える。しかしそうなると
イヨウのディフェンスだけではクーを止める事は出来ず、普段と同じタイミングでカバーに出ても
それはクーのスピードとテクニックの前には意味を成さなかった。

今北はクーを中心としたオフェンスですぐさまスコアを逆転させ、さらに得点を伸ばす。
対するVIP高校はイヨウからの3点をほぼ見込めない状況となり、インサイドからの得点に
頼らざるを得なくなる。いつもなら相手の意識がVIP高校のインサイドに向き始めた頃に
イヨウが虚をついてアウトサイドからスリーポイントを決めるのだが、クーのディフェンスの前に
イヨウは完全に沈黙。度重なるインサイド攻めは、前回よりもパワーアップした今北のインサイド陣相手では
次第にターンオーバーの要因となっていった。


('A`;)「(まずいな…このままじゃ…)」


現在のスコアは

VIP高校 21-33 今北産大附今北

となり、今北が大きくリードを奪う。そしてさらに続く今北のオフェンス。

( ,,゚Д゚)「ニダー、中入りすぎだ!!もうちょい動き回れゴルァ!!」
<ヽ`∀´>「把握ニダ!!」

ボールをしっかりとキープしながらもコート全体を見渡し、見方に的確な指示を送るギコ。
冷静沈着な様はまさに全国レベルのそれであった。

( ,,゚Д゚)「クー!!」

ギコからスリーポイントラインの外側にミートしてきたクーへパスが出る。

('A`)「(くそっ…またあいつか…!!)」

ギコからクーへパスが渡るほんのわずかな時間であったが、ドクオはクーがこちらへドライブを
してくるような予感に駆られた。

川 ゚ -゚)「ふっ!!」
(=゚ω゚)ノ「くっ…くそっ、カバー!!(止められねぇヨウ…)」

('A`)「(来たっ!!)」


ドクオの予想は的中した。クーはイヨウを抜き去り、ドクオがいるサイドへ向かってドライブしてきた。
ドクオはクーを止めるためにカバーに入ろうとする。が、いざ相対するとその異常なスピードに
驚く。クーはドクオさえも容易に抜いたのだが、ドクオはまるでそれに熱くなりすぎて自分を
見失ったかのように対抗するようにクーを追う。その瞬間だった。クーが肩越しに後ろへパスを出した。
その直後、ドクオは自らの犯した致命的なミスを自覚した。ギコを完全なノーマークにしてクーを
深追いしていたというミスを。

( ,,゚Д゚)「しゃぁ!!」

パスはドンピシャでギコの手中に。そのまま彼はためらうことなくスリーポイントを放つ。
そのシュートは一度リングの内側に当たりながらもネットを揺らす。これで点差は15となってしまった。

('A`)「しまった……!!」

そしてその後、VIP高校に悪夢が再来する。

パシュッ――

「今北の4番の連続スリーだ――――」
「すげぇ!!ノってきたぞあいつ!!」

('A`;)「………!!」
(;^ω^)「…………」
(;´・ω・)「まずい………」

( ・∀・)「ギコ……!!」
( ><)「すごいんです!!」

川 ゚ -゚)「いかすな、ギコ。今日試合が終わったらみくるのステッカーをやろう」
(*,,゚Д゚)「……おう」


前回対戦した時よりもはるかに強力なチームとなった今北。
クーの鉄壁のディフェンスに加え、クーを中心とした新たなオフェンスシステム。
ギコ・クーの二枚看板に加えて全体的に得点力のアップした今北はVIP高校のメンバー達に
絶対的な力を見せ付けながら前半を終了。27-49と、大きなビハインドを背負って第3クォーターを
迎える事となった。

第37章 完

前のページへ] 戻る [次のページへ