第二部
第38章 最後まで
―VIP高校ベンチ―
(#=゚ω゚)ノ「くそっ!!!!」
ハーフタイムに入り、ベンチに戻ってきたメンバー達。イヨウはスクイズボトルの
ドリンクを一気に飲み干し、空になったボトルを強く握り潰す。
すぽっ!
ボトルのフタの締まりが緩んでいたようで、イヨウがボトルを握りしめたことにより
ボトル内の気圧が変化し、それに耐えきれなくなったフタは綺麗な回転を描きながら
ボトルからすっ飛んでいく。フタから少し突き出た飲み口はブーンのアナルに見事に
突き刺さる。
(*^ω^)「あふん」
('A`;)「ちょwwwwww」
(;=゚ω゚)ノ「あ…わりぃヨウ」
( ^ω^)「これは…新境地だお」
( ゚∀゚)「まぁまぁ、おふざけはその辺にしとこうや。どーすんだよ、あの10番の
ハルヒっ子は…」
(;´∀`)「あんなすごいのがいたなんて聞いてないモナよ…」
(=゚ω゚)ノ「………」
(´・ω・`)「うん、それが問題なんだ。あの10番…、素直クールをどうにかしない限り、
まず僕たちに逆転の目はない」
('A`)「そのいつもの口調…!さては何か対策が!?」
( ^ω^)「さすがショボン先生だお!」
(´・ω・`)「ぶっちゃけると具体案はないんだ。すまない」
ヽ(^ω^ )/ ヽ('A`)/
\(.\ ノ ズコー \(.\ ノ
クーのもつ超人的なスピード、ドリブル力、さらにブーンたちのカバーをものともしない
突破力にシュート力。池上並のディフェンスに加えてアシスト。
果てはギコとの連携まで、クーというプレーヤーには非の打ち所がない。
必死に対策を考えるショボンですらまともな策が思い浮かんでいないようだった。
メンバーに声をかけられても無言でしか返事を出来ないショボンの様子が
それをメンバー達に悟らせた。ショボンは呪った。
ブーンたちが必死にあがいているにも拘らず、まともな対抗策を思いつかない自分の無力を。
肝心な場面ではいつもそうだった。チームが絶対的な危機に陥ってもそれを打開する策を
編み出せない。結局はメンバーの能力に任せきりな漠然とした指示を出す事しか出来て
いなかった。
これまではそれでもなんとかなっていた。VIP高校のメンバーにはもともとの地力と
それにつり合うような厳しい練習を積んできていたから、そんな漠然とした指示でも
彼ら自身の持つ能力で幾度と無く不利な局面をひっくり返してきた。
だが、今は以前のような県下位レベルの戦いではない。
ほんのわずかな判断ミスが試合の行方を決定付けてしまうような、県上位レベル、
否、全国レベルの世界なのだ。
(´・ω・`)「(この子達はこんなにも頑張っているのに……!!)」
歯痒かった。どうして自分はいつもいつもこんなに大事な場面で力になってやることが
できないのだろう、と。こんな無力な自分に、夢を語る資格などあるのだろうか、と。
ショボンの沈黙とともに重苦しいムードがベンチを覆う。
その時だった。
(=゚ω゚)ノ「…まだだ」
(´・ω・`)「………」
(=゚ω゚)ノ「まだだヨウ!!」
('A`)「イヨウ……」
(=゚ω゚)ノ「終了のブザーはまだ鳴ってねぇヨウ!!それに今はまだハーフタイムだろヨウ!?
なんでウジウジしてんだヨウ!!」
( ´∀`)「イヨウ君……」
(=゚ω゚)ノ「22点のビハインドがなんだヨウ!?俺たちは勝ってるときしか元気でいれないのかヨウ?
違うヨウ!?そうじゃないヨウ!?」
( ^ω^)「イヨウ……」
(=゚ω゚)ノ「確かに俺はクー相手に何も出来てない!!点も取れてない!!けど、ここで腐ってちゃ何も
変わらない!!そうだろう!?」
( ゚∀゚)「………」
(=゚ω゚)ノ「俺は負けたくない!諦めたくない!!最後の1秒まで…勝ちを狙いたいヨウ!!」
イヨウの叫び。心からの叫び。一度チームを離れた彼は、もう絶対に諦めない、と自らに誓った。
その叫びがブーンたちやショボンに突き刺さる。
(=゚ω゚)ノ「俺はこのチームに迷惑をかけてきたヨウ。きっと…今でも。だから…だから!!」
( ^ω^)「そうだお。その通りだお」
(=゚ω゚)ノ「…ブーン…」
( ^ω^)「みんな、思い出してほしいお。初めての公式戦でニー速と対戦したときのこと」
VIP高校の公式戦初デビューとなった県内公立高校大会。その2回戦で彼らは怪物、八頭身の
チーム、ニー速工業と対戦した。あの時は最後の最後で後一歩及ばなかったが、大きな
ビハインドをひっくり返そうとしていた。ニー速工業との時だけではない。
インターハイ予選でのラウンジ学園との再戦のときも、初めて今北と対戦した時も…。
彼らは幾度と無くピンチをチャンスに変えてきた。
そしてその全てにおいてあと一歩の所まで追い詰めた。
そのどれもが…諦めなかったからだ。
どんな逆境に置かれようとも、どれだけ苦しい状況に追い込まれようと、決して
諦めなかったからこその結果なのだ。VIP高校のメンバーはそれを再認識し始めていた。
('A`)「…そうだよな、イヨウの言うとおりだ。まだ2クォーターある。22点ならまだ返せない
点差じゃない」
( ゚∀゚)「諦めたらそこで試合終了だよ」
ξ゚听)ξ「安西先生、乙」
( ^ω^)「けどその通りだお。試合を諦めたりしてたら僕たちにはコートに立つ資格はないお」
( ´∀`)「最後まで絶対に諦めないモナ!!頑張ろうモナ!!」
(*゚ー゚)「そうだよ!まだ終わってない。みんな、ハーフタイム終わるまでまだ時間あるから
ボール出すよ!シューティングシューティング!!」
一同「よっしゃぁ―――――!!」
(-__-)「みんな、僕たちも行こう!!」
(・▽・)「俺たち全員で戦ってるんだ!一年だけボーっとしてるわけには行かない!!」
一年その他「そ…そうだな!!シューティングだ―!」
ξ゚听)ξ「あ、あんたらリバウンドしといて」
一年一同「ちょwwwww」
(´・ω・`)「(そうだ…そうじゃないか。僕たちは絶対に…諦めない!!)」
(`・ω・´)「一回だけシャキーン」
(´・ω・`)「…ふぅ」
(´・ω・`)「何見てんだよ」
ビ――――――――――ッ!!!
ハーフタイム終了を告げるブザーが鳴り響き、両チームのメンバーが戦場へと舞い戻る。
両チームとも、出場メンバーは前半終了時と変わりはない。第3クォーターはVIP高校ボール。
ゲームを再開するために審判からボールを受け取ったイヨウがハーフラインへと向かう。
川 ゚ -゚)「諦めないのか?」
(=゚ω゚)ノ「なんでだヨウ?」
川 ゚ -゚)「前半で22点差だから。加えて君は現時点まで何も出来ていない」
(=゚ω゚)ノ「…それがどうかしたか?」
川;゚ -゚)「……!」
その瞬間、クーの背筋を冷たいものが走った。その原因は、イヨウの闘気。この絶対的に
不利な状況でも諦めないイヨウの精神力。クーのであったことのない感情だった。
川 ゚ -゚)「…そうか。ならば容赦はしまい。最後まで…徹底的にやってやるさ」
(=゚ω゚)ノ「じょーとーだヨウ!!俺はこの試合…どんな結果になろうと、どんなにカッコ悪かろうと
…最後まで走り続けてやるヨウ!!」
…自分らしく。
川 ゚ -゚)「…いい度胸だな」
(=゚ω゚)ノ「言ってろヨウ!!20分後には泣かせてやるヨウ!!」
川 ゚ -゚)「…時にイヨウ君」
(=゚ω゚)ノ「…なんだヨウ、あんま盛り下げんなヨウ」
川 ゚ -゚)「君は…裏切られた事があるかい?」
(=゚ω゚)ノ「…は?」
川 ゚ -゚)「いや…なんでもない。戦いの最中に発するべき言葉ではなかったな。忘れてくれ」
(=゚ω゚)ノ「裏切った事ならある」
川 ゚ -゚)「…ほう」
(=゚ω゚)ノ「けどそれは全部自分の都合なんだ。冷静になったら…自分がいかに愚かだったのかわかる。
裏切った側はきっと…裏切られた側よりも重い枷を背負わなきゃならないと俺は思うヨウ」
川 ゚ -゚)「…そうか。それが聞けただけでも聞いてみた甲斐があったというものだ」
(=゚ω゚)ノ「……?」
川 ゚ -゚)「(奴も……そうなのだろうか?)」
('A`#)「しまって行くぞコラァーーーーー!!」
VIP高校一同「野球部乙」
('A`)「……ウツダシノウ」
( ^ω^)「ちょwwwマジでやりかねんからやめろおwwww」
審判「あの…始めていいかな?」
( ゚∀゚)「ドーゾドーゾドーゾ」
( ,,゚Д゚)「全力でかかって来いやゴルァ!!」
('A`)「そのつもりだ!!!」
<ヽ`∀´>「うちは最強ニダ!!負けないニダよ!!」
( ´∀`)「息臭ぇモナ」
<ヽ`∀´>「じ…人権侵g…」
( ゚∀゚)「黙れやチョン。ミサイルぶっぱなすぞ」
<ヽ`∀´>「せ…宣戦布告ニダ!!国連呼んでやるニダ!!」
(#゚∀゚)「あぁそうだ、これは俺たちからお前らへの宣戦布告だ。覚悟しとけ!」
<#ヽ`∀´>「んなっ……」
(=゚ω゚)ノ「ドクオ、いくヨウ!!」
('A`)「よっしゃあ!!」
ボールがコート内へ入れられ、試合が再開された。
( ><)「……」
( ・∀・)「……」
天気は晴天。冷えた風が吹く中、わかんないですとモララーの記者コンビは遊歩道を並んで歩いていた。
( ・∀・)「まだまだ寒いね…春が早く来ないかな」
( ><)「この前の経験を教訓に、今日はポロシャツなんです!!」
( ・∀・)「いや、ありえないから」
( ><)「寒いんです!!」
( ・∀・)「当たり前」
( ><)「気温の変化にも対応できるようにちゃんと重ね着してきたのに何で寒いんですか!!
わかんないんです!!」
( ・∀・)「そりゃポロシャツ二枚重ねじゃ何も変わらないさ」
( ><)「へぷちん!!」←くしゃみ
( ・∀・)「はぁー…なんで男二人でこんな所を歩かなきゃならないんだ…」
( ><)「仕事の合間に休憩は必要なんです!!」
( ・∀・)「まぁそうなんだけどね…あー、女性社員と歩いていたかったな。しかもここ
カップル御用達の場所じゃないか。周りのカップルが憎い憎い」
( ><)「嫉妬カコワルイんです!!」
( ・∀・)「前から思ってたんだけど一回死ぬ?」
( ><)「わかんないんです!!」
( ・∀・)「あーまじうぜぇ」
この二人は今、編集室での作業の合間の気晴らしに散歩に来ていた。
遊歩道は静かで、自然と無言になる二人。そんな状態に我慢できなくなったのか、わかんないですが
口を開く。
( ><)「この前の新人戦の決勝、すごかったんです!!」
( ・∀・)「ん?あぁ、今北VSラウンジね…王座奪還、ってとこかな、今北も」
( ><)「あの10番、初のスターティング出場だったけど序盤から圧倒的だったんです!!」
( ・∀・)「ラウンジはフサギコも池上も抜けた状態で挑んでいたからね…。いや、その二人がいても
結果は揺るがなかっただろうね」
( ><)「VIP高校も点差は開いちゃったけど頑張ってたんです!!」
( ・∀・)「最後の最後まで諦めていなかったね、彼らは。いい勉強になったんじゃないかな」
( ><)「次のインターハイ予選が楽しみなんです!!」
( ・∀・)「…そうだね。現段階では今北はかなり高みにいる。あと数ヶ月でどこまで強くなれるか…」
( ><)「けど僕は今北に50円賭けるんです!!」
( ・∀・)「お、それじゃあ僕は…」
「VIP高校に…5万円」
「モララーさんギャンブラーなんです!!」
「ふふふ…僕はハルウララに単勝で20万賭けたこともあるからね」
「バカなんです!!僕はディープの単勝に5000円賭ける派なんです!!」
「保守的だね、君は…ギャンブルには向いてない」
「わかんないんです!!」
「ふふ、いずれわかる時が来るさ。周囲の人間とかけ離れたベットをして彼らを出し抜いた時の
快感がさ」
「そうなんですか?」
「そうさ。…おっとそろそろ休憩おしまい。仕事に戻ろうか」
「実は僕もそう思っていたとなんです!!めっちゃ寒いんです!!」
「あーうぜぇ」
第38章 完
第2部 THE ENDオオォォォ!!!
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