( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです


Side Story 〜絆・前編〜







季節は冬。吐く息は白く、吹く風は冷たい。日の落ちた時間帯である今は、日中よりもさらに
気温が下がり、正直しんどい。



「いらっしゃいませー」

( ´∀`)「いらっしゃいましたモナー」


部活が終わり、みんなと別れた僕は、自宅のすぐそばにあるコンビニへと寄り道をした。
アルバイトと思しき若い店員の、マニュアル通りの挨拶になんとなく返事をしてコンビニへと入った。


雑誌コーナーへ移動し、チームカラーである緑色を全体の白色にうまく差し色に使っている
エナメルバッグを床に置き、僕は立ち読みを始めた。




( ´∀`)(今日もなかなか頑張ったモナ…・・・)


立ち読みを始めてしばらくしてから、空調の効いた暖かい店内に体が適応してきたのか、マフラーの
存在が鬱陶しくなった。僕はマフラーをとり、床に置いたバッグのその上においた。


( ´∀`)(単行本も新刊はなし…モナか。)


読みたい雑誌があったわけでもなくふらりと立ち寄っただけだったから、特に読むものも見つからず。
僕はマフラーを手に持ち、バッグを肩にかけて店内を歩き回る。

しばらく考えた結果、暖かい缶コーヒー(もちろんカフェオレ)と肉まんを一つ買って店から
出ることにした。


「あざーーーすwwwwwww」


(#´∀`)(何なんだモナ、あの店員……)

((( ´∀`))))「うわ、さむっ」


暖かい店内にいたことも相まって、さらに寒さを強く感じた僕は、学ランのボタンを一番上まで閉めて
再びマフラーを巻く。ポケットに入れてある手袋もつけて歩き出した。

ボタンを全部しめてマフラーを巻くというこのスタイル。これはなかなかオススメかな。






( ´∀`)「ハフッ!ハフハフッ!あつっ!!」




(σ´∀`)σ「でもうまーい」




\( ´∀`)/「たまらなーい」


買ったばかりの肉まんを手袋をはめたままの手で危なっかしく食べる。
肉まんの湯気と、僕の吐息とで、僕の周りは白く染まった。








―――――――


小さな頃から内気だった僕。
得意なものは、どちらかと言えば勉強。そんな感じで過ごしていた。

中学生になっても、それは変わらない――




――はずだった。






(`∠´)「おー、キミいい体してるね。一年生か?」

(;´∀`)「ぼ…僕ですかモナ!?」

(`∠´)「そう、キミキミ。うん、背もかなり高いしなぁ。逸材を見つけたかもしれない」

(;´∀`)「え…?あの……」

(`∠´)「単刀直入に言おう。我がVIP第二中学のバスケットボール部へ入ってくれ」

(;´∀`)「ば…バスケですかモナ!?む、無理ですモナ!僕は体力なんて全然ないし足も遅いし…」

(`∠´)「そんなものは練習次第でいくらでも化けるものさ。俺はキミのその恵まれた体格に惹かれたんだ」

(;´∀`)「そ…そうなんですかモナ…?」

(`∠´)「ああ、そうだとも!とりあえず一回見学に来るだけでも頼まれてくれないか!?」

(;´∀`)「じゃ…じゃあ一回だけ……」






上級生からのしつこい勧誘を断りきれず、ついつい体育館へと足を向けてしまった僕。
気付いたときには、今と同じような流れで入部届けを書かされてしまっていたモナ…ww
ちなみに、僕を勧誘した (`∠´) は、バスケ部の部長さんだったモナ。



――ピーーーーーーッ!!



(`∠´;)「よーし!アップ終了!次はディフェンスフットワークだ!!」

「…は……はいっ!!!」

(;;´∀`)「ぜえ……ぜえ……」

(`∠´)「モナー!サボるな!真剣に練習に取り組め!!」

(;;´∀`)「は…はいですモナっ!」






入部してから知ったこと。
僕の入学したVIP第二中学校のバスケットボール部は、県内でも有数の強豪校だったということ。
この中学のバスケ部に入る者は、既にミニバスを経験している者が多く、僕はベンチ入りすることはおろか、
練習メニューをこなすことすら困難な状況だった。
それもそのはず。これまでまともな運動をしてこなかったのだから無理はないだろう。

そして、僕と同期で入部した部員の中で一際目立つ者がいた。



(`∠´)「よーし次!ハーフコート2対2!!」

「「はいっ!!」」


――ダムッ……


(`∠´)「よっしゃ、行けっ!!」


部長から出された、スピードのあるバウンズパスを、しっかりとポジション取りをした状態でローポストで
キャッチ。そのままパワードリブルで相手のディフェンスを容易く押しのけ、『彼』は楽々とシュートを沈めた。


(`∠´)「よーし、いいぞクックル!」

( ゚∋゚)「…………」






『彼』の名はクックル。中学入学時で既に180cm近い身長を持ち、3年生のセンタープレーヤーをも楽々と
押しのけるほどのパワーを持った『彼』。
クックルは寡黙な人間なようで、先輩に何を言われても表情ひとつ変えやしなかった。
その態度が無愛想で気に入らない、とぼやく者もいたが、そんなことは関係なく、クックルの実力が確かなもので
あるということだけは、当時の僕の素人目にもわかった。

むしろ、そういった理由で彼への陰口を叩く先輩たちが、ひどく器の小さい人間に見えるのだということも、
幼いながらにわかっていたような気がする。


―――――――


「それでは、来週に行われる新人戦のメンバーを発表する」








僕がバスケ部に入部してから早くも数ヶ月が過ぎたときのことだった。
三年生は、県大会への出場を果たしたものの、強豪校のVIP北中学に敗れ、全中への道を絶たれたらしい。


「らしい」と言うのもなんだかおかしな話けど、うちのバスケ部ではそれは仕方のないこと。
ベンチ入りメンバー以外の人間――すなわち、観客席での応援団のメンバーですら監督の一存で決定されていたから

だ。
こんな異常なまでの絶対王政的な指導体制には明らかに問題があるはずなのだけれども、当時、他の部活の練習環

境などに
さほど精通していなかった僕らは、その指導体制に違和感を抱きつつも監督に異議を申し立てることができなかった。
いずれにせよ、体格のよく、強面でドスの効いたような声と、異様な威圧感を発する、もろ体育会系、といった感じの
あの監督に意見できるものなど、当時の中学生にはまずいないだろう。高校生、下手すれば大学生ですら、ビビって
しまってもおかしくはない。


ちなみに、僕は今でも中学の監督は恐ろしいw


さて、話を戻そうかな。

クックルは、一年生であったにもかかわらず、三年生が抜けた新チームの主軸として、二年生のセンタープレーヤー数

名を押しのけて
レギュラーの座を獲得したのだ。









そして僕はというと……。

さっき挙げた事情により、監督が選ぶ応援団メンバーにすら入ることができなかった。だけどもそのことは親に言えず、
試合がある日には親に試合の応援に行くと嘘をついて部活の用意を持って家を出て、試合が終わる頃まで適当に時間

をつぶす、
といったことを続けた。親が無駄に心配したりしてくることを避けたいがゆえの行動だったんだろうか。
恥ずかしい話だけれど、一種の厨二病のようなものだったのかもしれない。


そしてその一週間後。新人戦当日のことだった。


( ´∀`)(はぁーぁ…今日も試合のある日かモナ。今日はどこで時間をつぶそうかモナ…)

( ´∀`)(BOKKI OFFで立ち読みでもするかモナ)


悩んだ末に、僕は地元から少し遠い場所の古本屋で漫画の立ち読みをすることにした。
地元だと、知り合いに会ったりしたときに言い訳ができないし、自分が知らないだけで親は知り合い、といった人に
目撃されてしまっていたら、知らぬ間に嘘をついていることが親にバレてしまうからだ。





そんなこんなで、このBOKKI OFFという古本屋は、僕にとって馴染みの場所となっていた。
少し寂れた場所にあるし、客だけでなく店員も少なく、そしてやる気のない店員が主なため、立ち読みと称した座り読


もできてしまうからだ。



( ´∀`)「そんなわけで今日も一日が終わりそうですよ…っとモナ」


試合終了予定時間から一時間と少しが経ったあたりで僕は立ち上がり、ヒップをはたいてほこりを落とし、何も買わずに
店を出た。


その時だった。



――キキーーーッ!!



(;´∀`)「うわおぅっ!?」


歩道を走っていた自転車とぶつかりそうになりかけた。







自転車に乗っている人間には非はない。どちらかと言えば無防備に飛び出した自分責任がある。
瞬間的にそう考えた僕は自転車の持ち主の顔も確認せずに


(;´∀`)「いきなり飛び出してごめんなさいモナっ!」


…と謝った。が、返事はない。不思議に思い、下げていた頭を上げ、自転車の持ち主の顔を確認すると…


( ゚∋゚)「……………」


試合帰り、といった様子のクックルと遭遇した。


(;´∀`)(げっ…ヤバいモナ)


クックルとは特に友好関係があったわけではないし、彼の性格からして告げ口をするなんてことも考えられない。
さらに試合の応援も、サボったわけではない。まったく後ろめたいことなどないはずなのに、焦燥感が僕の中を駆け巡っ

た。








(;´∀`)「し…試合は勝ったモナか?」


なぜだろう。とりあえず、こんなことをクックルに尋ねた。


( ゚∋゚)「……………」


無言でクックルは頷いた。そういえば、これが彼と初めてとったコミュニケーションだったかもしれない。
今まで一度も喋ったことがないような人間を、彼は覚えているだろうか。いや、彼は知っているだろうか。


( ゚∋゚)「うちの、監督は、無能」

(;´∀`)「え?」






クックルが喋った。これってかなりレアなことじゃ………!?いやいや、そんなことより今の言葉の意味は一体…?
そんなことを考えている間に、彼は自転車を発進させた。僕がそれに気付いたのは数秒後で、あわてて彼の向かった

方向へ
振り向くと、そこにはちょうど交差点を右折して建物の影へと消えていくクックルが見えた。





( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです

Side Story 〜絆・前編〜  おわり



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