第三部 四章  ラウンジVS今北(中編の前編)



――ダムッ…


(・(エ)・)(これまでの今北において警戒すべきはこのPGギコの局所的な大量得点。そしてそれに伴うチーム全体の
      異常なまでの士気の上昇クマー…。4番ギコを中心にモチベーションを上げていくタイプのチームだと思っていたクマー)

(・(エ)・)(でも……)

(・(エ)・)(センターの5番…それに、天才的なセンスを持つシューティングガードの10番…そして実力未知数の14番…)

(・(エ)・)(正直どこから攻めればいいのか見当もつかないクマー)


だが、やるしかない。チームを牽引していくポイントガードである自分が起点となって突破口を見出さねばならない。


(・(エ)・)「っ!」


――ダムッ!


トップ付近で1対1を仕掛け、アウトナンバーを作って優位に立とうとドライブを試みるクマー。しかし…


(,,゚Д゚)「っしゃ!」


――キュキュッッ!!


ギコの素早いディフェンスは一つのスライドステップでクマーの正面に立ちはだかり、それを許さない。


(・(エ)・)(正直なところ僕からの得点は……たぶん、ほとんど見込めないクマー)


だが、このチームのエースは自分ではない。自分は自分のすべき仕事をこなし、結果的にチームの勝利につながればそれでいい。
このチームのエースは『彼ら』だ。彼らからラウンジ学園の攻撃は始まる。彼らが協力し合って得点して、相手の気がそちらに
向けられればそこから攻めるべきポジションに的確なパスを通す。

自分は、まずは彼らにボールを渡すことさえできればそれでいい。それが本来のポイントガードの働きとは異なったものであった
としても、それこそがラウンジ学園のオフェンス、ラウンジ学園のバスケットなのだから。

ラウンジ学園のエースは、流石兄弟なのだ。


(・(エ)・)「弟者さんっ!」

(´く_` )「っしゃ」


――ビッ…ばしっ



45度へのパスはなんとか通る。単純にガードとしてのパス能力は、どうやら完全に劣っているというわけではないようだ。
それならばまだなんとかなるはずだ。パスすら出すことができないほどに二人の間に実力の開きがあればそれは試合の中での
大きな不安要素となりうる。だが、なんとかいけるはずだ。


(´く_` )「行くぞ、今北っ!」


ボールをミートした弟者は、スリーポイントライン付近で二、三の大きめのピボットを踏み、マークマンの今北Gを揺さぶる。
そして小さなシュートフェイクを一つ入れた後、弟者は鋭く一歩目を踏み出し、ドライブをする。


――ダムッ!


今北G(速い…。けど、追いつけないほどのスピードじゃ…)

<;ヽ`∀´>「スクリーンニダっ!!」


――がしっ!


今北G「うあっ!?」


アウトサイドへやや飛び出し気味にポジションを取っていた兄者による弟者へのスクリーン。しっかりと
踏ん張っていた兄者に勢いよく激突した今北Gの体は揺らぎ、隙が生まれる。
今北Gがその隙に気付いた頃には、兄者は既にその体を反転させて弟者と共にゴールへ向かう。
単純なピックアンドロール。しかし、一つ一つの動作がしっかりと行われていたならば、単純でありながらも
脅威となるプレーにほかならない。


<;ヽ`∀´>「くっ…!」


兄者のスクリーンを受けてドライブしてくる弟者にスイッチするべきか否か。アウトナンバーとは
オフェンスの人数がディフェンスの人数よりも多く、攻める側にとって有利な状況のことを指す。
そしてそれは守る側にとっては不利な状況である、ということと同義である。
パスを出してくるのか、ドリブルで突っ込んでくるのか、それともその場で即シュートを打ってくるのか…。
経験を積んだ選手であれば、ある程度そのパターンを予測したり、あるいはディフェンスのポジショニングの
位置を意図的にずらしたりして守る側にとって優位な状況を作ることができるようにするものなのだが…。


( ・∀・)「その相手は流石兄弟。全国でも十分に通用するコンビプレーを一人で止めるのは至難の業だろうね」

( ><)「流石兄弟が上手いから手が出ないってことですか!?わかんないんです!」

从'ー'从「経験測によるディフェンスが役に立たないからじゃないですかぁ?今北のニダー君も流石兄弟以上のコンビプレーを
     してくる選手にはそうそう巡り会えないでしょうしぃ〜」

( ・∀・)「うん。理解がよくて助かるよ」

(;><)「…………」


<;ヽ`∀´>(兄か弟か…どっちニダか!?そもそもどう攻めてくるニダか!?それすら予測がつかんニダ…!)


――ダムッ!


<ヽ`∀´>(そのままドライブかニダ!!)


ドリブルを止めず、そのままペイントエリア内を通ってゴールへと向かう弟者。そしてニダーはそれを守るために
弟者へと詰め寄る。




(´く_` )「兄者っ!!」


――ビッ……ダンッ


( ´_ゝ`)「おうさ!」


――ばしっ


ディフェンスのニダーがボールを持った自分へとよってきたことを確認した弟者はそれを揺さぶるかのように、自分の
やや前に位置する兄者へ短いバウンズパスを出し、兄者はそれをキャッチする。そしてそのままノードリブルで
レイアップのステップを踏み、シュート体勢へと入る。


( ´_ゝ`)「止めてみろ!」


だが、そこはニダーの予想の範疇であった。この程度の攻めならば通常の2対1の状況でも頻繁に使われるプレーであるからだ。
だが、だからこそ考える。限られたほんの一瞬にも満たないほどの時間の中、ニダーは思考を巡らせる。


ここはシュートを止めに行くべきなのだろうか、と。
自分、もとい、今北というチームにこのような単純なプレーが通用すると本気で思っているのだろうか。
答えは間違いなく否。流石兄弟ほどの選手であれば、こちらの実力も承知しているはず。
それを理解した上で愚かしくもシュートを選んでいるのか、はたまたニダーがそう考えることを読みきっていて、
この場面で止められる可能性の高いシュートをあえて打ちにきているのか…。
それとも、ただ単にニダーが挑発に乗ってシュートを止めにきたところを狙い、ノーマークの弟者へとパスを出すのか…。
しかし、考え始めればキリがない。流石兄弟のオフェンスの引き出しはまさに魔法がかけられているかのように
さまざまな場所からさまざまな方法で飛び出す。全く予想外のパターンもある。
そんな中から一つを絞りきることは不可能であった。


<ヽ`∀´>「くっ…!」


博打に出て思い切ったプレーに出るのか否か。その考えをまとめることすらできなかった。
ニダーは仕方なしに兄者へと詰め寄り、ブロックには跳ばず、手を精一杯伸ばしてシュートコースの妨害をする、という
オーソドックスな守りに入ることしかできなかった。だが、冷静に考えればこれでいいのだ。
無駄な博打を張ってそれに敗れ、相手を勢いに乗せてしまうよりはこうして堅実に守っていったほうが得策であるからだ。
時にはギャンブルに出なければならない場面もある。
しかし、それは間違っても今ではない。
ニダーのプレーで、むざむざ相手を勢いづける必要などないのだ。


――ズダッ


( ´_ゝ`)「…ふっ!」


兄者はそのままレイアップの体制に入る。地面を踏み切った際に短く息を漏らし、そしてボールをニダーの手から
守るように遠ざけながらしっかりと腕を伸ばし、ジャンプの最高到達点で柔らかくボールを手放した。


――パスッ……


ボールは兄者の腕から放たれたのと同じように静かに落下し、そして静かにネットを揺らす。


――うおおぉぉぉぉっ!いいぞいいぞサ・ス・ガ!!いいぞいいぞサ・ス・ガ!! いけいけラウンジもう一本!!


今北に先制点を許すも、ラウンジ学園はすぐさまそれを取り返す。そしてそれはチームの核である
流石兄弟からの得点。チームの士気は、嫌が応にも上がり、ラウンジ学園のディフェンスに活気が出てくる。
以前、VIP高校だけでなく今北をも苦しめた変則1-3-1ディフェンスこそ使われていないものの、基本に忠実な
ハーフコートのマンツーマンディフェンスで今北を抑え込んでいる…




かに見えた。





( ^ω^)「蟹見えたwwwwwwww」

('A`)「ファックwwwwwww」







――ダムッ!


武藤「うっ……!?」

川 ゚ -゚)「微熱(ぬる)いな」

(´く_`;)(なっ…なんだ今のスピードは!?)


クー。
彼は45度付近であっさりと武藤を抜き去る。
そのドライブには全くもって無駄がなく、そして速い。美しさを感じると同時に背筋に寒気が走る。


(;´_ゝ`)「くっ…!カb…」


――キュッ!


兄者はクーの進入を防ぐべくカバーに出ようとするも、その足を一歩踏み出すか踏み出さないかの打ちにクーは
やや遠めのミドルレンジでストップ。そしてノーマークであるにもかかわらず、早いモーションでジャンプシュートを放つ。


――パシュ


それは美しい孤を描きながらリングのど真ん中を射抜く。
そしてボールは心地よい音と共にネットを通過し、勢いよくコートへと叩きつけられる。


武藤「くそっ……!」

( ´_ゝ`)「武藤、気にするな。試合はまだ始まったばかりだ」

武藤「あ…そ、そうだな!みんな、すまん!一本気合入れていこうぜ!」

ラウンジ一同「「おうっ!」」

( ´_ゝ`)(それにしてもあの7番…ビデオで観たドライブよりも鋭い…?映像と実物のギャップか?それとも…)

(´く_` )「おそらくあの7番はまだ本気ではないはずだ」

(;´_ゝ`)「うおっ!?びっくりした…」

(´く_` )「臆するなよ兄者。余裕ぶっていられるのも今のうちさ。本気にならざるを得ないときには試合の行方は
       もう決まっている」

( ´_ゝ`)「ふっ…その通りだな、弟者」



――ダムッ…


(,,゚Д゚)「ボールおkだゴルァ!」

(・(エ)・)(ディフェンスの一線の当たりも思っていたよりはたいしたことないクマー…なんとかして突き放して、焦って
     攻め急いできたところでしっかりターンオーバーとって速攻でカウンター…って展開が理想クマー)

(・(エ)・)(けど今の流石先輩たちのプレーを見てもディフェンスをインサイドに固めるような素振りはないクマー。
     あの二人のコンビプレーがコート全面から展開されることをわかってるってことかクマー)


それならば、とクマーは思う。


(・(エ)・)(変幻自在のコンビプレーをとことん見せつけてやるクマー。そして中盤以降からは全員を使って攻めて
     さらにかく乱…)


クマーは目の前のプレーに集中しながらも、頭の片隅で冷静に試合の展開を組み立てることができていた。
彼の出身中学は、全国大会には出場していないし、県大会で上位の結果を残したわけでもない。
が、まさに埋もれた原石とでも言うべきか。その冷静な思考能力と優れたプレーは、ドクオとどこか似通ったものを感じさせる。


――キュキュッ…


(・(エ)・)(兄者さん…!)


兄者がローポストからハイポストへフラッシュプレーを行う。
兄者がハイポストの方向へと走ってきていることを瞬時に察知したクマーは、キープドリブルをしつつサイドステップ。
そして、ギコがそれに反応する一瞬の隙を突いて45度の弟者にパスを出す振りをしてハイポストへとバウンズパスを送る。


――ばしっ


( ´_ゝ`)「ナイスパス!」


そのタイミングはベスト。兄者がハイポストに到達すると同時に、兄者が走りながら構えていた両手の位置にしっかりと
ボールが収まる。



『いいシュートはいいパスから。』


よいパスとは味方にとって次のプレーがしやすいパスのことだ。速度やコースがよかったとしても、受け手の攻めたい
タイミングやプレーの呼吸と上手く噛み合わなければ、それはただの強引なパスに過ぎない。
この中でも重要とされるのは後者。すなわちプレーの呼吸だ。
これは表立って理解できるようなものではなく、むしろ感覚による理解である場合が多い。
よいポイントガードの出すよいパスとは、味方の呼吸を無意識に汲み取り、そして次のプレーに移行しやすいパスを出すこと。
それが滑らかなチームプレーの基盤となる。そしてクマーは見事にそれをやってのけている。
本人のセンスによるものも多少はあるかもしれないが、クマーはこれまでポイントガード一筋。
色々なプレーヤーの色々な動きを理解できるようにクラブチームの練習等にも積極的に参加し、不特定多数の選手を
自らのパスによって活かすことで、その感覚を高めていったのだ。


そしてクマーから兄者に出されたパスは見事に兄者の呼吸を汲み取っており、兄者の次のプレーのための呼び動作を限界まで減らす。
兄者は無駄なく次のプレーへと移る。フラッシュしてからのポストプレー。嫌というほど何度も体に叩き込んできたプレーだ。
そしてそれと同時に弟者とのコンビプレーの起点となるプレーのパターンの一つでもある。


――ダムッ!


ハイポストからニダーに背を向けながらのパワードリブル。ニダーはそれをディフェンスファウルにならないよう、
しっかりとコースに入り、両手を上げて胴で兄者の背中を受け止める。


<;ヽ`∀´>「ぐふッ…!」


前回と同レベルだろう、と思っていたよりも力強い兄者のボディコンタクト。それをまともに胸部に受けたニダーの口からは
無意識に苦しげな息が漏れる。体もほんの少しぐらつぐが、自陣のゴールを守るためにしっかりと踏みとどまる。


(´く_` )「………!」

<ヽ`∀´>(5番……!)


ニダーは兄者のディフェンスにつきながらも、兄者と同サイドからディフェンスを振り切り、その裏を走りぬけて
エンドライン沿いに走りこんでくる弟者の姿を横目ながらに視認する。


<#ヽ`∀´>(バックドアかニダ…!そう簡単に行かせると思うなニダ!っていうか今北G!弟者を自由に動き回らせすぎニダ!)


ゴール下へと走りこんでいく弟者へのパスをニダーが警戒した瞬間に兄者はその場でフロントターン。
ディフェンスにマークされている状況ではあるものの、十分シュートを決めることができる体勢だ。
弟者のバックドアの動きはニダーの注意を兄者よりもゴール下へ向けるための罠。


<ヽ`∀´>「んなっ…!連続でお前に点は取らせんニダよ!!」


わずかにゴール下に気を逸らすも、すぐに自らのマッチアップのディフェンスへと注意を引き戻すニダー。
しかし、それすらも流石兄弟の仕掛けた罠。フェイクだと思わせていた弟者のカットインこそ本命。
ニダーが兄者に寄ったことによって弟者はどフリーに。


( ´_ゝ`)「弟者ぁっ!」

(´く_` )「っしゃ!」


――ビュッ…ばしっ


シュート体勢からワンハンドパスの要領で手首のスナップを利かせて勢いよくゴール下の弟者へとパスを送る。
そして弟者は悠々とそれをキャッチしてそのままレイアップを沈める。


<#ヽ`∀´>「ムキーーーッ!!!あんな単純なプレーになんで振り回されてるニカ!?!?」


それは、彼らの攻めのパターンという名の引き出しが対処しきれないほどに多すぎるから。先ほども述べたように、
何がくるのかわからない。いつ、どこで、どのタイミングで、何をされるのか。その予測を絞ることが困難であるからだ。
ゆえに、ニダーの想定内かつ彼にとっても十分反応できるようなイージーなプレーであっても、唐突にやってくるそれに
対処することができないのだ。そして彼自身も頭のどこかでそれを理解しているからこそ、流石兄弟の実力の高さを改めて
認識し、そしてそれを止めることができない自分への苛立ちをどんどん募らせていっているのだ。


バスケットボールというのは言うまでもなくチームスポーツである。一人の不調がチーム全体に伝染するというのは多々ある事態だ。
そしてそれは選手の不調に限らず、ある選手の悪い雰囲気も同様に伝染する。意識せずともその苛立ちはチームに伝染する。
今北の選手全員のパフォーマンスに影響が出る、とまでは行かなかったが、バスケットボールというスポーツにおいての核となる
インサイド。そのインサイドプレーヤーを務めるニダーの不調は徐々に今北のインサイドを蝕んでゆく。

事実、その弱みをつくようにしてラウンジはその後インサイドでの得点を中心に自軍の得点を順調に積み重ねてゆく。
一時は最大で7点の開きができたが、それを阻止したのはもう一人のインサイドプレーヤー、新入生の鈴木ダイオードだった。


――バシッ…!


(;´_ゝ`)「くっ……!」

/ ゚、。 /「ルーズになります!取ってください!!」


「ゴール下で双子の兄貴が止められた――!」

「今北14番のブロックショットだ――!」


――ばしっ


(,,゚Д゚)「ルーズとったぞ!カウンターだゴルァ!」

川 ゚ -゚)「ヘーイ、こっちこっち」

(,,゚Д゚)「っしゃ、走れぇ!クーっ!」


――バスッ


「今北のカウンターだ――!」

「7番のレイアップで2点差にまで詰め寄ったぞ!」

「つーかあのハルヒコスの7番足早杉wwwww」

「さすが今北は底力あるな!じわじわと追い詰めてきやがった!これでこそ今北らしいってもんだろ――!」


――ダムッ…


(・(エ)・;)(あ…焦ったらダメだクマー…こういうときこそポイントガードの僕が冷静な判断をしなくちゃ…!)

(,,゚Д゚)「どうした一年坊!ビビってんのかゴルァ!?高校バスケは甘くねぇぞゴルァ!」

(・(エ)・;)「んなっ…!?」


――ばちっ!


(・(エ)・;)「あっ……!」



(,,゚Д゚)「とったぁっ!速攻だ!」

(・(エ)・;)「くそっ…いかせるかっ!」


相手の挑発に乗せられ、ボールを楽々と奪われた。そして相手は今一人で無人のゴールへと向かっている。
そしてこれを決められれば同点にされる――
その焦りは、精神的なものよりも肉体的なものが先行して現れた。


(・(エ)・;)「い…いかせないクマーーっ!!!」


クマーの右腕が自分から遠ざかり、ゴールへ近づいていくギコの体へ伸びる――


――がしっ


そしてそれはギコの胴体に絡みつき


(;,,゚Д゚)「うおぉっ!?」


――ドサッ…


重心を完全に崩されたギコは、転倒する。


そして直後に響き渡るホイッスルと、審判のコール。


審判「アンスポーツマンライクファウル、紫13番」


故意に行われたとされる、アンスポーツマンライクファウル。この反則は、その名の通り「スポーツマンらしくない反則」のことを
指す。密集地帯や密着状態の接触とは異なり、故意の反則は通常の反則よりも罰則が重くなる。
アウンスポーツマンライクファウルが宣告された場合は、ファウルをされた選手がシュート体勢に入っていなかったとしても
フリースロー二本が与えられる。そしてこのフリースローはレーンに各チームの選手が交互に並ぶことはなく、シューターが
本当に一人でフリースローを打つこととなる。2本目のシュートのあとのリバウンドによる試合の再開もなし。
2本のフリースローが終わればファウルをされた側にボールが与えられ、ハーフライン付近のサイドラインから試合が再開される。

ファウルをされた側にとってはおいしいワンプレー、そしてファウルをしてしまった側にとっては手痛いプレー。そしてそれが、
競った展開の最中であれば尚更だ。


(・(エ)・#)「くそっ……」

(,,゚Д゚)「へへへっ、ラッキーだったぜゴルァ」




ギコは与えられたフリースローを落ち着いて2本とも決める。ここで、今北の得点はラウンジに並ぶ。
さらに、今北ボール。一方にとっては試合の流れを手繰り寄せるために、そしてもう一方にとっては試合の流れを食い止めるために。
互いに重要な意味を持つ、今北ボールから始まるワンプレー。ここで、悪夢がラウンジ学園を襲う。


――パシュ


「い…今北7番のスリー――!!!」

「大事な場面のはずなのに…あっさりと決めてきやがった――!!」


川 ゚ -゚)「ナイッシュー自分」

最初の勝負どころといっても過言ではない状況で迷わずスリーポイントを放ち、それを容易に決める。そして得点後もそのクールな
表情は崩れない。クーのこの不適なプレーは、精神的にも技術的にもラウンジ学園を揺さぶるには十分なものであった。


そして、第1クォーターも残すところ10秒をきったところで――


――ばちっ


(・(エ)・;)「しまtt……」

川 ゚ -゚)「ん、とってしまった」


「ラウンジ13番のパスミス――!」

「今北のカウンターだ――!」


(,,゚Д゚)「クーーーーッ!!!前に出せ!」

川 ゚ -゚)「あいよ」


――ビュッ


今北のカウンター速攻。最前線をフリーで走るギコに向けて、クーはその華奢な腕からは想像もできないようなスピードで
パスを送る。コートを縦断する形で出されたそのパスは、レシーバーとの間にかなりの距離があったにもかかわらず、山なりのパスでは
なく、弾丸パス。最短距離を飛んでゆくそのパスは、正確にギコの手中に収まり、彼はそのままレイアップを沈める。


――うおぉぉぉぉぉっ!!いいーぞっ!いいーぞっ!ギ・コ・ちゃーん!!!!!


「また今北の得点だ――!!」

「これで今北7点リード!さっきと立場が逆になってるぞ!」


(■_■)「ラスト5秒!気を抜かずに守りきれ!ハーフライン越えさせるな!」

今北一同「「うぃっす!!」」



(・(エ)・;)「くっ……!」

(´く_` )「くそっ…急げクマー!まだ一本とれr…」


――ビーーーーーーッ!!


審判「第1クォーター終了!2分間のクォーターブレイクに入ります!」



(;´_ゝ`)(やってくれるな今北……こっちのやりたい内容をことごとく潰していきやがる…)

(;,,゚Д゚)(クーやダイオードがいなかったとしたら…去年と同じメンバーだったら…もしかしたら今負けてるのは
      俺らだったかもしれねぇなゴルァ…)



―今北産業大学附属今北高校ベンチ―


(,,゚Д゚)「お前ら、感想はどうだ?」

<ヽ`∀´>「ラウンジも前回よりは強くなってると思うニダよ。あのポイントガードはフサギコにはかなり劣るけど
      堅実なプレーが売り物っぽい感じがするニダ」

/ ゚、。 /「インサイドの4番は単体でもなかなかの実力を持っているように思います。それに5番とのコンビネーションが
      発揮されるとなると……厄介ですね。コート上を振り回されるような気がします」

(■_■)「うむ。やはり問題は流石兄弟だな。やつら本来のコンビプレーに加えてさらに磨き上げられた個人技も使い分けてきている」

<ヽ`∀´>「極論としては流石兄弟にボールが渡らないようにすればいいニカ?」

(■_■)「そういうことになるな。だが…」

川 ゚ -゚)「というかギコ。ボールに対するディフェンスだが手を抜きすぎではないか?」

(■_■)(言いたいこと取られた…)

(,,゚Д゚)「あぁ、ありゃ俺なりに考えたんだ。攻めと守りの要が抜けたラウンジ学園がどれほどの実力をもっているのか、そして
     俺たちにとってふさわしい相手なのか、を直接自分の肌で感じたかったんだゴルァ。勝手なことをしてすまんこ」

/ ゚、。 /「それで、わかったのですか?ラウンジ学園の実力は…」

(,,゚Д゚)「相手の4番のプレーを見てわかったぞゴルァ。下手すりゃやつらは去年よりも強いかもしれないってな」



/ ゚、。 /「…なぜ、4番なのですか?」

(,,゚Д゚)「なんだろうな、言葉じゃ上手くいえないんだが…。プレーだけじゃない、何か鬼気迫るものを感じた。ってとこだ」

川 ゚ -゚)「玄人ぶるなwwwwwwwwwww」

(,,;Д;)「…………」

川 ゚ -゚)「だが、その意見には概ね賛成だ」

(*,,゚Д゚)「………!」

川 ゚ -゚)「私はこのチームと戦った経験はないが、あの4番を中心にまとまったいいチームだと思うぞ」

<ヽ`∀´>「クーが敵をほめるなんて珍しいニダね…」

川 ゚ -゚)「勘違いするな。あくまで精神的な面で、だ。技術的な面ではたいしたことはない」

/ ゚、。 /「ですが、あの4番…いや、あの兄弟のプレーは……」

川 ゚ -゚)「お前は何のためにずっとニダーとインサイドでの連携を練習してきたんだ?ダイオード」

/ ゚、。 /「………!」


川 ゚ -゚)「これまで今北はインサイド陣が弱いといわれてきた。そして試合でもインサイドを中心に攻められてきた。地区では
     なんとでもなるさ。だだ全国ではどうなんだ?欠点のあるチームが日本一を獲れると思うか?」

/ ゚、。 /「…いいえ」

川 ゚ -゚)「私は優勝を獲るために日本へきた。今北へ来た。このメンバーは強い。私が保証する。だから…」

/ ゚、。 /「………?」

川 ゚ ー゚)「相手に遠慮などするな。叩きのめせ」

/ ゚、。 /「…バレてました?」

川 ゚ -゚)「大体だがな。大方、一年生の自分が引退していく三年生の夢を壊してしまうのが可哀想だとか、そんなところだろう?」

/ ゚、。 /「…アタリ、ですよ」

川 ゚ -゚)「勝負とは非情なものだ。ここは戦場だと思え。強い者のみが生き残れるんだ」

/ ゚、。 /「…わかりました」



(■_■)「話はまとまったか?」

/ ゚、。 /「監督…」

(■_■)「今しがたクーの言ったとおりだ。最後の大会を迎えた三年生と言えども、相手は敵だ。
     遠慮はいらん。つぶして来い!」

/ ゚、。 /「……はい!」




―ラウンジ学園ベンチ―


(´く_` )「ふぅ…やはり流石に強いな、今北は。アウトサイドとインサイドにそれぞれ強力な駒を追加してきやがった…」

( ´_ゝ`)「……………」

(´く_` )「どうした兄者?うんこでももらしたのか?」

( ´_ゝ`)「違う。今北のことを考えていた」

(´く_` )「珍しくまじめだな」

( ´_ゝ`)「うむ」



( ´_ゝ`)「様子見…と思っていたが、そう甘くは行かないな」

(´く_` )「間違いないな、兄者」

( ´_ゝ`)「使っていくか?あれを」

(´く_` )「あぁ、あれか」

( ´_ゝ`)「みんあ、聞いてくれ」


(#´_ゝ`)「ニュー1-3-1ゾーン解禁でごじゃる!!!!!今北ぶっ潰していくんでよろしくっっ!!!」

ラウンジ一同「「よろしくーーーーーっ!!!!!!!」」




――ビーーーーッ!


審判「インターバル終了!第2クォーターを開始します!」

( ´_ゝ`)「ラウンジボールからだ。行くぞ、クマー」

(・(エ)・)「………」

( ´_ゝ`)「どうした?クマー。さっきのミスを引きずっているのか?」

(・(エ)・)「……はい…クマー」

( ´_ゝ`)「忘れろ。気にするな。ハジけろ」

(・(エ)・)「……へ?」

( ´_ゝ`)「マイナスのメンタルはプレーにもマイナスになる。難しいかもしれんが切り替えていくぞ。
       第2クォーターは0-0から始まると思え」


(・(エ)・)「…善処しますクマー」

( ´_ゝ`)「新しい1-3-1ゾーンはお前にかかる負担も大きいからな。すまんが踏ん張ってくれ」

(・(エ)・)「絶対に…勝ってやりましょうクマー」

( ´_ゝ`)「愚問を。無論だ」

(・(エ)・)「っていうか、兄者さん?」

( ´_ゝ`)「ん?」

(・(エ)・)「全力で挑戦、みたいなこと言ってたのに第2クォーターから全力になるってどうなんです?」

( ´_ゝ`)「いや、だってあれしんどいもん」

(・(エ)・)「………w」






今北産大附今北 23-16 ラウンジ学園



第2クォーター、開始――。






第四章 おしまい

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