第三部 7章  決着、そして




最終クォーターが始まる。
両軍の選手がそれぞれ緊迫した表情でコートに入ってくる。

点差は、1点。

どちらに転んでもおかしくはない。

(,,゚Д゚)(そう、どっちに転んでもおかしくない)

(,,゚Д゚)(それはなぜだ?)

(,,゚Д゚)(簡単だ。俺が何の役にも立っていないからだ)

今北の得点は現在70点。
その内訳は、

クーが24得点。
ニダー・ダイオードがともに12得点ずつ。
今北Gが4得点。

そしてギコ、18得点。


第3クォーター終了時で18得点という数字は決して少ないものではない。
そもそもガードというポジションが彼の仕事場だ。

しかし、彼は試合中しばしばゾーンに入る。
幾度となく爆発的な得点力を見せつけてきたギコであったが、それが一切ないこの試合で、彼は気づいていた。

ゾーンに入っている、あの感覚こそが彼にとっての最大の快感であったということに。

快感を味わえない試合。
その苛つきはことのほか大きく、それに加えてラウンジ学園の一年生選手、クマーの活躍ももはや妬ましい。


――ダムッ!

クーがドライブでゾーン内に進入、そしてすぐにアウトサイドのギコへとパスを捌く。

/ ゚、。 /「……!?ギコさんっ!」

(;,,゚Д゚)「えっ?…あっ!」

――ダンッ…

クーのパスは誰の手にも触れることなくコート外へ。



<#ヽ`∀´>「ギコ!何ボーっとしてるニカ!?」

川 ゚ -゚)「よせ、試合中だ」

――ダムッ…

(・(エ)・)(何があったのかわからないけど、とにかくこの4番は今ボロボロだクマー…)

(・(エ)・)(……この機、逃すべからずーっ!クマー)

――ダムッ!

クマーの鋭いドライブ。
一瞬でギコの横に並ぶ。



(,,゚Д゚)(くっそ、これ以上俺のところから行かせるわけには…!)

だが気持ちとは裏腹に、体はうまく動いてくれない。
ただでさえクマーが有利な体勢なのだ。
そんな状態で無理なディフェンスをするということは…

――ピィッ!

審判「ファウル!白4番!」

(#,,゚Д゚)「くっ…!」



('A`)「3つめ…か」

( ^ω^)「ラウンジも明らかにギコのところから崩しにかかろうとしてるお」

(=゚ω゚)ノ「最終クォーターでファウル3つならこのまま出しておくだろうなヨウ」
  _
( ゚∀゚)「しっかしなんで交代させないんだろうな?正直、今日のギコのコンディションは悪いぞ」

( ´∀`)「彼の代わりを務められる選手がいないってことモナか…?」

(´・ω・`)「それもあるだろうね。だけどそれ以上に…みんな、ギコを信じているんだろう」

(´・ω・`)「チームメイトも、ベンチの選手も。そして…監督も。この逆境を、彼自身の力で乗り越えるんだ、と」



ファウルからラウンジボールで試合は再開。
しかし、ラウンジ学園のシュートは外れ、攻撃失敗。今北ボールとなる。
だが。

「今北…攻めきれない!」

「ラウンジの執念がやべえーー!」

「ショットクロックも残り10秒きってるぞ!」


( ´_ゝ`)(ミスの後の失点だけは絶対に避けなくてはならん!)

(´<_` )(こういうクロスゲームだとミスの後の失点が致命傷になり得る!気合だ…根性だ…!)

(・(エ)・)(ここは絶対に譲らないクマー!)


ラウンジメンバー全員が同じ意識を持ち、堅いデイフェンスを展開する。
今北は、ボールを回すことで手一杯といった様子だ。

そしてショットクロックの残りが3秒を示したところで――

川 ゚ -゚)「ダイオード、時間がない。勝負だ!」

右45度付近のクーから右ローポストのダイオードへとパスが通る。

( ´_ゝ`)(だーからっ!)

(#´_ゝ`)「そうはいかんざき!っつーの!!!」

――ビシッ

ダイオードがパスをキャッチした瞬間に兄者はダイオードの横に回りこみ、ボールをはたき落とす。
そしてそのボールはダイオードの大腿部に当たり、サイドライン方向へ。

ショットクロック、残り2秒。

/ ゚、。;/(しまった……!)


(,,゚Д゚)(くっそ、攻めきれなかったか…)


ボールは既にコート外の空中にある。
このまま落ちれば、アウトオブバウンズとなる。
ボールはダイオードの体に触れているので、アウトオブバウンズになればラウンジボールとなってしまう。

川 ゚ -゚)「ちいっ!」

クーがボールに跳びつく。

川 ゚ -゚)(届くか…?)

伸ばした右腕がボールに届く。
ショットクロック、残り1秒。



川 ゚ -゚)(ここから誰かにパスを出す時間はない…このままではヴァイオレーション…ならば、やることは一つしかない)

体は、空中。
クーの体を支えるものは何もない。
そんな状態で……


――びゅっ

('A`)「強引に…打った!?」

(=゚ω゚)ノ「いや、むしろ投げてるヨウ!」

(-_-;)「あれじゃあほとんどワンハンドパスのフォームじゃないか…!」

<_プー゚)フ「だけど…あの軌道は…!」

( ^ω^)「相変わらずの高いアーチ…狙いにいってるお…!」

( ´∀`)「まさかこれが…」
  _
( ゚∀゚)「入っちまう、なんてことは…ねーよな…?」


――ビーーーッ!

ショットクロックのブザーが鳴り、24秒の経過を知らせる。

しかしシュートは放たれた。
長い滞空時間。
クーはコート外に転げ落ちる。
そのままごろりと体が回転するが、すぐに体勢を立て直し、ボールを見上げる。


川 ゚ -゚)(どうだ…?)


自らの放ったシュートの軌道を眺め、落下地点を予測する。


川 ゚ ー゚)「………ふっ」


自然と、笑みがこぼれた。



――パシュンッ!



――ウオオオオォォォォォオオッ!!

会場が、沸く。

今北産大附今北 72-70 ラウンジ学園


(;´_ゝ`)「……………っ!」

(´<_`;)「〜〜〜〜〜っ!」

(・(エ)・;)「まじ……クマー…?」

<ヽ`∀´>(なんて奴ニダ……)

/ ゚、。 /(すごい…。ホントにすごいぞこの人は…!)



(;^ω^)「入っ…た…」

('A`)「冗談だろ!?」

(=゚ω゚)ノ「あんな投げ打ちで入るわけが…!」

<_;プー゚)フ「マ、マグレに決まってるっすよあんなの!」

(´・ω・`)「確かに今のシュートはマグレかもしれない…が」

(´・ω・`)「あの崩れた体勢の中でも、彼は点を取ろうとしてあのシュートを打った。決めようと思い、打ったんだ。
      たいしたものさ、あの状態でそんな意識を持てるなんて、ね」


川 ゚ -゚)(あれが入るとはな…随分とツイている)

川 ゚ -゚)(マグレであっても結果オーライ…いや、むしろマグレであるということの方が大きいな)

川 ゚ -゚)(「ツキはこちらにある」という印象を植え付けることができる。ラウンジにはもちろん…我々にも、だ)


(,, Д )(――――……)

(,, Д )(俺は何をしている?)


(,, Д )(クーがあそこまで体を張って…がむしゃらに得点しているのに…)


(,, Д )(何をしている…俺は…誰だ…?)

(,, Д )(俺は…)



川 ゚ -゚)「気合い入れて行けよ、エース。このディフェンスが肝心だ」


ぽん、とギコの肩を軽く叩く。


(■_■)(絶妙なノせ方だな…まったく。心でも読めているのか?)


――ダムッ…

(・(エ)・)「今のは忘れましょう!確実に一本!」

(・(エ)・)(この4番の所から仕掛けてみるか…?だけど僕の体力もちょっとそろそろきついクマー…どうする…)

(,, Д )(エース…か)

(,, Д )(ありがとよ、クー)

(,, Д )(ラウンジ学園…)

(,,゚Д゚)(俺らの…邪魔すんじゃねえっ!!!!)


――キュキュッ

(・(エ)・)(…抜きづらいクマー…ディフェンスが少し良くなってきたクマー。油断せずに…)



――ばしっ…

(,,゚Д゚)「どうした考え事かっ!?」

(・(エ)・)(んなっ…スティール!いつの間にっ!?)

(,,゚Д゚)「おおっ!!」

――ダムッ!

「ターンオーバーだ!」

「今北の速攻ーーっ!」


――ダダムッ!

(・(エ)・)(突っ込んできた…!)

(,,゚Д゚)「お前に俺を止められるかっ!?」

(・(エ)・)(ブロックできなくても…楽には打たせんクマー!)

――びゅっ…

(・(エ)・)「えっ…(パス…?)」

視線の先には。


川 ゚ -゚)

(・(エ)・)(7番……!)



(,,゚Д゚)「突き放すならここだ、そしてお前なら決める。…そうだろ?」


――ばしっ


川 ゚ -゚)「ああ」

――しゅっ…

「速攻からスリー…!」

「まさか連続で…!?」

「有り得るって!あの7番がノーマークで外すわけねえ!」


――ぱしゅんっ!


今北産大附今北 75-70 ラウンジ学園



――ビーーーッ!

審判「タイムアウト、紫!」


(・▽・)「第4クォーターが始まって1分も経ってないのにタイムアウトか……」

(-_-)「仕方ないだろうね、ラウンジは1点リードしていた状況を1分足らずで5点ビハインドにされたんだ」

ξ゚听)ξ「それもあると思うわ、だけど…」

(*゚ー゚)「それだけじゃない、よね。たぶん…」

<_プー゚)フ「あの4番…っすか」

('A`)「だな。急にキレが戻ったように見えた」

(=゚ω゚)ノ「上から見てる俺たちでもわかったんだ…コートの上ではもっとはっきりわかっただろうヨウ…」



――ラウンジ学園ベンチ――

(・(エ)・;)「すみませんクマーっ!」

( ´_ゝ`)「なに、気にするな」

(´<_` )「このまま何事もなく終わってくれるかと思ったが…さすがにムシがよすぎたか」

武藤「エマージェンシー、ってやつだな」

ラウンジ監督(危ない流れを切るためにタイムアウトを取ったが…あの4番が‘あの‘爆発的な得点力を発揮してきたとしたら…
       一体どう指示を出せばいい!?くそ…これだけ監督をやってきておいて、何も的確なことを言ってやれないなんて…!)



( ´_ゝ`)「ディフェンスだ」

( ´_ゝ`)「相手が何をしてこようが、ギコがばしばしシュートを打ってこようが、俺たちのやることは決まっている」

(´<_` )「俺たちはラウンジ学園のプレーヤーだ。誇りを持ってディフェンスしよう。そして、誰であろうと止めてやろう」

(・(エ)・;)(残り9分間…あの4番を相手に脚が動いてくれるのか…!?)

( ´_ゝ`)「いいか!?やることは一つだ!集中していくぞ!」

( ´_ゝ`)「円陣組むぞ!ラウンジーーーーーーーーーーーッ!!」

ラウンジ一同「ディーーーーーフェンッ!!」



――今北ベンチ――

(,,゚Д゚)「ふうー……」

川 ゚ -゚)「ずいぶん遅かったな」

(,,゚Д゚)「ああ、待たせたな」

――ぱんっ

静かに、ハイタッチを交わす。

(■_■)「ギコ、いい知らせと悪い知らせがあるぞ」

(;,,゚Д゚)「……悪い知らせからお願いしますw」

(■_■)「ここまで競る試合となった原因になったのはお前だ。要するに、皆がしんどいのもヒヤヒヤさせられたおかげで
     私の血圧が上がってるような気がするのもぜんぶお前のせいだ」

(,,゚Д゚)「…はい(監督なのにこんなこと言っていいのか…?)」

(■_■)「さて、そしていい知らせのほうだが…」

(■_■)「お前はプレイヤーとして一つの壁を越えた。あえてお前を交代させなかったのもそのためだ。
      本来ならこんなことは今言うべきではないが…よく乗り切った」


川 ゚ -゚)「皆に言っておくことがある」

川 ゚ -゚)「さっきの私のシュートだが、あれはマグレだ」

(;,,゚Д゚)(そうだったの!?)

川 ゚ -゚)「だが、運というのも案外馬鹿にできないものさ。流れはこちらにある、ということなのだからな」

川 ゚ ー゚)「この試合、このままもらうぞ」

(■_■)「よし、何も言うことはない。今のお前たちに敵うやつなどいない。全力で蹴散らしてこい!」

今北一同「はいっ!!!!!」

――ビーーーーーーーーッ!

審判「タイムアウト終了です!」



(,,゚Д゚)「よう」

(・(エ)・)「……なんですか」

(,,゚Д゚)「敵に言うのもなんだが…ありがとよゴルァ」

(・(エ)・)「…はい?」

(,,゚Д゚)「おかげさまですげぇいい気分だ。そしてすまねえな」

(,,゚Д゚)「長い前座になっちまったが、ここからは俺の時間だ」

(,,゚Д゚)「どうか残りの2戦、全力で戦ってくれ」

(・(エ)・)「…うちは負けませんよクマー」



――びっ…

クマーからハイポストへのパスが出る。
パスを受けたのは兄者。
ダイオードに体を上手く当てられ、ポストプレーに持ち込むのは難しい。
そう判断するや否や、外角の弟者へボールを捌く。

そして自身はパスランを試みようとするクマーをフリーにすべく、ギコへとスクリーンをかける。

(,,゚Д゚)「ファイトオーバーだゴルァ!」


クマーと兄者の狭い間を強引に通過し、弟者からのパスは通させない。


( ´_ゝ`)(それだけだと、思ったか?)


すぐさまスクリーンの構えを解き、ハイポストでポストアップ。
弟者はハイポストへ高めのパスを出し、すぐにパスランをする。


しかし――

/ ゚、。 /「読まれていないとでも、思いましたか?」


ローポストから飛び出してきたダイオードがこれをインターセプト。

(;´_ゝ`)「なんだとっ!?」

「流石兄弟が……!!」

「止められた!?」

「なんだあの14番は!一年生?冗談だろ!」


/ ゚、。 ;/(正直、ヤマカンで飛び出したんだけどね…)

/ ゚、。 /(だけどさっきクーさんが言っていた通り…確かにツキがある!このまま一気に流れに乗らせてもらう!)


/ ゚、。 /「速攻!」

川 ゚ -゚)「ダイオード、出せ!」

/ ゚、。 /「はい!」


――ビッ…ばしっ


ダイオードがパスをインターセプトするや否や、ギコが一気に速攻の先頭を駆け上がる。
そしてクーはカタカナの「ノ」を逆からなぞるコースで中央へとボールサイドカット。
ダイオードからパスを受け、速攻を繋ぐ。

川 ゚ -゚)「ギコ!」

(,,゚Д゚)「おおっ!」

――びゅっ…ばしっ

そしてクーからフロントコートのギコへスピードのあるパスが通る。


――キュキュキュ!

(・(エ)・;)「行か…せるかっ!」セ゛ェセ゛ェ

(,,゚Д゚)「(これに追いついてくるか…)やるじゃねえか!だがヘバってきたんじゃねえか!?」

――ダムッ!

パスミートにより勢いのある状態からの鋭いドライブ。

(・(エ)・)(右…!動けよ僕の脚っ!!)

――がくん

(・(エ)・;)「!?」

(,,゚Д゚)「もらったぁっ!」

――どすんっ

(・(エ)・;)「痛っ…」

クマーを抜き去り、レイアップの体勢に入るギコ。
そして踏ん張れず、派手に転倒するクマー。

――ザシュッ



(・(エ)・)「く……っそ」

(,,゚Д゚)「無理はやめろ。膝、笑ってんぞ」

(・(エ)・)「…まだまだ、いけますよ」

(,,゚Д゚)「…手加減しねえからなゴルァ」


――ダムッ!


「また今北の速攻だ!」

「ラウンジにゾーンを組む時間を与えねえ!」

「あの4番、ドライブが鋭いだけじゃない、…強いっ!」

――きゅきゅっ

(・(エ)・)(ミドルシュート…!)


――ずだっ

(・(エ)・)「チェーーック!」

――がくんっ

(・(エ)・;)(跳べない…?)

(・(エ)・)(くそっ…腕だけでも!とにかくシュートコースを塞ぐんだ…)


自身のリーチの長さを活かし、跳べないまでも必死に腕を伸ばしてシュートチェックを試みる。

(,,゚Д゚)「甘ぇっ!」

――しゅっ…

(・(エ)・)(フォームがめちゃくちゃだ!リバウンドを…)

――バスッ

(・(エ)・;)「……………!?」



<_;プー゚)フ「あれが決まんのかよ…」
  _
( ゚∀゚)「左手で13番のチェックを押しのけながら右腕だけでシュート…」

( ´∀`)「僕たちインサイド陣がよくやるやつモナね…」

(=゚ω゚)ノ「そのプレーをミドルレンジで…」

('A`)「ていうか指がまともにボールにかかってなかったぞ…よくあれでまともなシュートにできたな…」

( ^ω^)「信じられんお」


(・(エ)・)「くそ…(脚が…軽い…?フワフワするぞ…)」

( ´_ゝ`)「クマー、もういい。よくがんばってくれた」

(・(エ)・)「兄者さん…!?何言ってるんです、僕はまだいけますって!」

(´<_` )「悔しいが、あいつの…ギコの言う通りだ。あと2戦ある。お前に壊れてもらうわけにはいかない」

(・(エ)・)「弟者さん…でもっ!」

( ´_ゝ`)「そんでもって、お前を下げるからといって試合を投げるわけじゃあない。
       そして俺達の目的は今北を倒すことじゃない、インターハイに行くことだ。安心して休んでくれ」

(・(エ)・)「流石先輩……」


――ビーーーーーッ!

審判「メンバーチェンジ!紫!」

(。(エ) )「あとは…頼みます。クマー」


限界を迎えたクマーに代わり、ラウンジ学園は二番手のポイントガードを投入する。
技術も体力もある選手であったが、それでも今のギコを抑えることは難しかった。

そして……

――ビーーーーーッ!

審判「試合終了!スコア通り、白!」

終わってみれば、103-84と圧倒的な点差で今北が勝利を収めた。

圧巻だったのは、やはりギコだ。
第4クォーターだけで19得点・4アシストという、怪物じみた成績を残したのが印象的だった。


――今北ベンチ――

(*,,゚Д゚)「おっしゃあ!」

<*ヽ`∀´>「初戦圧勝ニダ!」

/* ゚、。 /「このまま突っ走りましょう!」

川 ゚ -゚)「まったく…まあよしとしようか」


――ラウンジ学園ベンチ――

(・(エ);)「先輩方!監督!…すみませんでしたっ!」

( ´_ゝ`)「頭を上げてくれ、クマー。お前は悪くない」

(´<_` )「不甲斐ない3年生で本当にすまん…残りの2試合、もう少しだけ…俺達についてきてくれ!」

( ´_ゝ`)「阿凡高校にVIP高校…もう一試合も落とせない。絶対に…勝つ!」

(・(エ)・)「…はいっ!」



('A`)「強いな…今北」

( ^ω^)「あれが一週間後の僕らの対戦相手…」
  _
( ゚∀゚)「もう何遍も負けてるんだ、全国への切符はいい加減俺たちがもらうぜ」

(=゚ω゚)ノ「…帰って練習するヨウ!」

( ´∀`)「そうモナね、体が疼いて仕方ないモナ」

(´・ω・`)「そういうと思ったよ。体育館はとってある。さあみんな、学校に帰ろうか」



――VIP高校体育館――

('A`)「ふぅ。よし、そろそろ上がるか」

('A`)「ショボン先生、お願いします!」

VIP一同「お願いします!!」

(´・ω・`)「うん、お疲れさま」

(´・ω・`)「さて、決勝リーグの残り2戦は来週の土日を使って行われるわけだが」

('A`)「土曜日に今北戦、日曜日にラウンジ戦…か」

(´・ω・`)「セリフとらないでよ…」

('A`;)「スンマセン…」

( ^ω^)「やるしかない、お!」

(´・ω・`)「いい心構えだ、内藤くん」



(´・ω・`)「早速だが作戦を発表しよう」

(=゚ω゚)ノ「作戦…?」

(´・ω・`)「確実に勝つための作戦だ。まずはラウンジ対策から」

(´・ω・`)「1-3-1ゾーンの厄介さは今日見た通りだ。コーナーに不用意にボールを回すことのないようなパス回しを
     意識しよう。そしてセットオフェンスではインサイドから崩したい」
  _
( ゚∀゚)「俺らか…」

( ´∀`)「シューターの皆がやりやすいように、僕らで点を取ってゾーンを縮めさせる必要があるモナね」

<_プー゚)フ(中でひきつけて外に捌く…俺にぴったりじゃねーか!)

(´・ω・`)「そして、今日の今北が終盤でやってのけたことをうちもやりたいところだ」

ξ゚听)ξ「ターンオーバーからの速攻を狙いにいく、ということですか?」

(*゚ー゚)「確かにいくら強いゾーンでも組むことができなければ意味がないですもんね」

(´・ω・`)「その通り。いくらラウンジのゾーンが厄介であるとはいえ、やることは基本的にはいつも通りさ」



( ^ω^)「というか、なんで日曜のラウンジ戦の対策を先に…?」

(´・ω・`)9m「いい質問ですねえ!」

(´・ω・`)「池上先生じゃんか…誰かツッコんでよ」

( ^ω^)「いやいやまさかこのタイミングでふざけられるとは思ってもいませんし」

(´・ω・`)「…まあいいや、理由は簡単。僕の趣味さ」

(´・ω・`)「重要なことは最後に話したい、っていうね」


(´・ω・`)「では今北戦の作戦を発表する」

( ^ω^)ゴクリ…




(´・ω・`)「今北戦では、オフェンスの主軸を内藤くんに任せようと思う」

( ^ω^)「………………」


(  ω )゜ ゜スポーン

 

( ^ω^)「…………」


(^ω^)









ξ゚听)ξ「こっちみんな」



(#)ω^)(いやいやいやいやありえんお!無理だお!ていうかなんで殴られたのかよくわからんお!)

(´・ω・`)「そして、ファーストアタックだが…実はこれももう決めてある」


(´・ω・`)「長岡くんが必ずジャンプボールに勝つ。そして速攻を仕掛け…一発目は内藤くんのスリーだ」


( ^ω^)「………」

(;^ω^)「はいいいいいいいいいいっ!?」

('A`)「………!」

(=゚ω゚)ノ「………(なるほど…)」

(;^ω^)「な、なおさら無理ですおっ!」

(´・ω・`)「なぜだい?」

( ´ω`)「だって僕はスリーが入りませんお…」

(´・ω・`)「この1週間でマスターしてもらう」

(;^ω^)「無謀すぎですお!そんな計画で大丈夫か?」

(´・ω・`)「大丈夫だ、問題ない」

(´・ω・`)「今北戦、VIP高校のファーストアタックはD内藤が左コーナーからのスリーポイント…これで決まりだ。
     左コーナーからのスリーだけマスターしてほしい。少なくとも最初の一本を自信を持って決められる程度には、ね」

( ^ω^)「でも…」

(=゚ω゚)ノ「悪くないと思うヨウ」

(;^ω^)「い…イヨウ!?」

('A`)「俺も賛成だ」

(;^ω^)「ドクオまで!?」


('A`)「いいか、ブーン。俺らがいつも一発目に一番よく狙うのはなんだ?…イヨウのスリーだろ」

( ^ω^)「イヨウを囮に使うってことかお?」

('A`)「それもある。だけどそれだけじゃない」


('A`)「お前が強気にスリーを打ってくる選手だ、なんてデータ、うちでさえ持ってないんだぞ」


( ^ω^)「!」

('A`)「最初の一本を決めてみろ。今北の連中はどんな反応すると思う」

( ^ω^)「………」

( ^ω^)ウズウズ

('A`)「…決まり、だな」



<_プー゚)フ「苦肉の策…っすか?」

(´・ω・`)「ん?」

<_プー゚)フ「各選手一人ひとりの強さから見て、おそらく今北の方が格上――だから、
       『今北に勝つために』こうやって戦略を練っている…ってことっすか?」

(´・ω・`)「初めに言っただろう?『確実に勝つための作戦だ』、って」

(´・ω・`)「君が言いたいことはわかるよ。だけど、タレントの強さではうちは今北にも引けを取らない…
     僕はそう思っているよ」

(´・ω・`)「さあ、内藤くん。…やってみるかい?」

( ^ω^)「…やりますお。いや、やらせてくださいお!」

( ^ω^)(僕が今北戦の一発目でスリーを決めることができれば…今北の選手は試合が終わるまで
       僕のスリーを警戒せざるを得なくなるはずだお)

( ^ω^)(そうしたら、ドクオやイヨウ…それにジョルジュ、モナー。そしてエクスト、ヒッキー、トラオ…
       みんなにかかる負担を減らせられるんだお)

( ^ω^)(僕だって…みんなに頼られるような選手になりたいお!!)



(´・ω・`)「とりあえず…っと。全体練習はこれで終わりだ。各自、個人練習に入ってくれ」

VIP一同「はいっ」

('A`)「っし、じゃあ一旦締めるぞ!VIP高ーーーーーーっファイッ!」

VIP「おおおおおおおおおっ!」

――ダンッ!ダンッ!ダンッ!






そして個人練習の時間。


( ^ω^)「…とは言ったものの」

( ^ω^)(…さて、何から始めたらいいのかお…とりあえずシューティングでも…)

(´・ω・`)「内藤くん」

( ^ω^)「あ、はいですお」

(´・ω・`)「今日から1週間、練習後にスリーのシューティング300本だ。毎日やってもらうよ。
     もちろん300本決めるまで、だ。そして場所は左コーナーからだけでいい」

(;^ω^)「300…」

(=゚ω゚)ノ「海南の神は一日500本、だヨウ」

('A`)「クズ高の車谷は一日1000本、だっけか?」
  _
( ゚∀゚)「それに比べりゃ全然たいしたことないだろww」

( ´∀`)「がんばるモナ、内藤君!」

(;^ω^)「あう…」

( ^ω^)「だがしかしやってみせよう」



(´・ω・`)「あ、あとそれから内藤くん」

( ^ω^)「はいですお」

(´・ω・`)「シューティングに入る前に…と」シュルリ

( ^ω^)ブルリ(あ、なんかいやな予感)







 


(´・ω・`)「ふう」

( ^ω^)「えっ」

(´・ω・`)「この時期はやっぱ暑いね、スーツ」





(´・ω・`)「よいしょっと」

( ^ω^)「ウホッ!いい男……じゃなくて」

( ^ω^)「なぜ服を脱ぐのですかそしてなぜこっちに向かってくるのですかぎゃああああ!」








(´・ω・`)「や ら な い か」

( ^ω^)「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」

((( ^ω^)))(チーム発足当初の恐怖が……!)



(´・ω・`)「……何か勘違いしてないかい?」

( ^ω^)「え」

(´・ω・`)「ワンオンワン、だ」

( ^ω^)「僕がですかお?」

(´・ω・`)「もちろん。君にオフェンスの軸になってもらうとさっき言ったばかりじゃないか」

( ^ω^)「…相手はまさか…?」



(´・ω・`)「ああ。僕だ」






('A`)「まじか…。そういや、ショボン先生が実際にバスケするとこ見るのなんてめったにないよな」

(=゚ω゚)ノ「ときどきヒマそうにシュート打ってるくらいだもんなヨウ…」
  _
(;゚∀゚)(ウホッ!…って冗談抜きで!…なんだよあの体…!線が細いのに…太い!?つーか…なんて筋肉してんだよ!?)

(*´∀`)(僕も痩せたらあんな風になれるのかなあ…モナ)

(´・ω・`)「内藤くん、君には平面でのエースになってもらいたい」

( ^ω^)「平面でのエース?」

(´・ω・`)「そうだ。ドライブ・カットイン・ミドルシュート…。派手なプレーよりもむしろ。これらの
     堅実なオフェンスを徹底的に磨くだけで、君は今よりもっと上手く、そして強くなる」

(´・ω・`)「君の脚に敵う選手はそうそういないからね。使わにゃ損損、さ」



( ^ω^)「ところで」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「おっさん服着ろお」

(´・ω・`)「僕はまだ25だ」ムクリ…

( ^ω^)「なんで悪口言ってるのにチンコ勃ってんですか」

(´゚ω゚`)「何言ってるんだよ恥ずかしいなあ。やめてくれよ、まったく」ムクムク…

( ;ω;)「もうやだこのひとおおおおおおおおっ!!」

第7章 完


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