――AM6:42 VIP高校体育館――





( ^ω^)「おおっ!」



――ダムッ!



(´・ω・`)「甘いよ」



――キュキュキュっ!




(;^ω^)「あーっもう!これだけのハンデがあるのになんで一本も決められないんだお!?」






(´・ω・`)「全てのプレーが正直すぎだよ、内藤くん。昨日も言ったばかりじゃないか」


( ^ω^)「わかってはいるんですお…だけど実際にそれを動きに組み込むとなると…」


(´・ω・`)「君にはとにかく時間がない。体で感覚をつかんでもらうしかないんだ、だからこうしてずっとワンオンワンの
     練習をしているんだよ」


( ^ω^)(そうだお…こんな朝っぱらから練習に付き合ってもらって…僕ですら眠たくて仕方ないのに
       ショボン先生は仕事もしながら…)












( ^ω^)(しかし…)








(;^ω^)「亀甲縛りだけは、なんとかなりませんかお?」


(´・ω・`)「なんで?素敵だろう」














  第8章 

       内藤ホライゾン強化週間













――数日前。


(´・ω・`)『とりあえずやってみよう。内藤くんの先攻でいいよ』


( ^ω^)『はいですお!』




数分後……。


( ;ω;)コテンパン


(´・ω・`)『うーん…だいぶ手は抜いたつもりなんだけどなあ…』


('A`;)『…………』


(;=゚ω゚)ノ『…………』

  _
(;゚∀゚)『…………』


(;´∀`)『…………』


<_;プー゚)フ『…………』


ξ;゚听)ξ(いつもなら……

ξ#゚听)ξ「ちょっとブーン!なんにもやらせてもらえてないじゃない!気合い入れて行きなさいよバカタレーっ!」

ξ;゚听)ξ …とか言っちゃってそうだけど…)


(;*゚ー゚)(うますぎ……)




――ばちんっ



(;^ω^)『おっ…』


(´・ω・`)『不用意にボールを止めない。スティールしてくれと言わんばかりの無防備さだよ』


( ^ω^)『……もう一本!ですお!』



――ダムッ!


――キュキュっ!


――どかっ!



(;^ω^)『ゲェーッ!?いつの間に前に!?』


(´・ω・`)『オフェンスファウル、だね』


(´・ω・`)『今度はボールに意識が行きすぎてるよ。ボールの扱いに意識が向いているようじゃまだまだだ』



('A`;)『レベルが…違いすぎる』


(;=゚ω゚)ノ『ショボン先生…何者なんだヨウ…』

  _
(;゚∀゚)『まるで初心者VS経験者じゃねーか…』



( ^ω^)(抜けないなら…!)


(´・ω・`)『抜けないならシュート、だろう?』



――ばちぃっ!



(;^ω^)『!!』


(´・ω・`)『我ながらナイスブロック、だね』


( ^ω^)『これじゃ力の差がありすぎて…逆に練習にならないんじゃ…』


(´・ω・`)『やれやれ、もう弱音を吐くのかい?』




(´・ω・`)『これはある意味、荒療治ともいえる』


(´・ω・`)『内藤くん、一年生のときと比べれば君は確かに上手くなった。順調に成長しているさ。
     だけど今北やラウンジに勝つためにはそれじゃ足りないんだ。もっと爆発的な何かが必要なんだよ。
     …君には、ここいらで一つの壁を超えてほしい』


(´・ω・`)『シンプルな話だけど、もっと速く。もっと強く。そして…もっと上手く。ね』


( ^ω^)(確かにショボン先生は僕なんかより何倍も上手いお…)


( ^ω^)(だけど…だからこそ!ショボン先生から少しでも技術を盗むんだお!)


( ^ω^)(スピードだけなら…負けてないはず、だお。だったら…!)



――ダムッ!



(#^ω^)『スピードで勝負っ!だおーーーー!』


(´・ω・`)『はい、またボールがお留守』



――ばしっ



( ;ω;)『おーーーーーーーん!!』







(´・ω・`)『うーん…よし、じゃあこうしよう』


(´・ω・`)『しいさん、ちょっといいかな』


(*゚ー゚)『はい、なんですか?』


(´・ω・`)『ちょっと体育倉庫についてきてくれるかな、探したいものがあるんだ』


(*゚ー゚)『あっ、はい!わかりました』










『あ、あったあった』

『探し物ってこれですか?一体何に使うんですか?』

『簡単だよ。しいさん、いいかい?僕の言う通りに…ゴソゴソ』

『はい!えっと…こうですか?ゴソゴソ』

『そうそう、そんな感じで。あ、もう少しきつめに頼むよ。ゴソゴソ』

『す、すみません!…こんな感じですか?ゴソゴソ』

『おうっ!そう!そうだ!そんな感じだ!ハァハァ…』

『先生!大丈夫ですか?んっ…苦しそうですけど…ゴソゴソ』

『んっ…はぁ、大…丈夫…だよ。ハァハァ』








( ^ω^)『一体何をしてるんだお?』


('A`)『男と女が体育倉庫で……ハッ、マサカ!』


(=゚ω゚)ノ『ショボン先生に限ってそれはないんじゃないかヨウ…?』

  _
( ゚∀゚)『……確かにwww』


(´゚ω゚`)『ふー、お待たせ』


VIP一同(なんか亀甲縛りのおっさん出てきたーーーーー!)


(*^ー^)『上手だ、って褒められちゃった!』


ξ#゚听)ξ『教え子に何やらせとんじゃーーーーいっ!』


(´゚ω(#`)『ゴエエエエエエエエエエエエエッ!』


(´・ω(#`)『ツンさんすまない。とりあえずもちついてくれ。痛いから。ほんとに痛いから。
      得点板で殴るのだけはやめてくれ。重いでしょ、下ろしなさ…下ろしてください』



(´・ω(#`)『とりあえずハンデだ、内藤くん。第一関門ともいう』


(´・ω(#`)『ご覧の通り僕は両腕が使えない。いろんな所がこすれて満足に動けない。
      この状態でディフェンスをしよう』


<_プー゚)フ『両腕を縛られた状態でディフェンス…!?』


( ´∀`)『タマタマにも刺激がくるモナ!』


(-_-)『さすがにそれは…』


(´・ω(#`)『大丈夫さ。この状態で、たぶんようやくいい勝負だ。それに…』




(´・ω(#`)『これでも、その辺の高校生より上手い自信はあるよ』






( ^ω^)(すごい自信だお…でも全然キマってないお)






( ^ω^)(まあそれはおいといて)


( ^ω^)(ショボン先生に限ってナメている、ってことはなさそうだお…だから悔しいけど、
       これが現実なんだお)


( ^ω^)(…となったら僕のやることは一つ!まずはハンデなしで相手をしてもらえるようにする!
       それだけだお!)










( ^ω^)『ところで』


(´・ω・`)『ん?』


( ^ω^)『わざわざ亀甲縛りにする意味はあるんですかお?』


(´^ω^`)『ないよ。ただの趣味さ』



( ;ω;)『変態だーーーーーーーーーっ!!!』





―――――――――――




( ^ω^)(今日で特訓は3日目…)


(;^ω^)(だけどまだショボン先生の亀甲縛りを解くまでには至ってないお。それどころかまだ一本も決められていないお…)



――キュキュッ!



(´・ω・`)


( ^ω^)(ドライブを仕掛けても全部前に回り込まれちゃうお…)


( ^ω^)(しかも全部、胴体の正面で受け止められてるお…。つまり、まだまだ余裕を持って守られてるってことだお)


( ^ω^)(ドライブから急ストップでジャンプシュートをしようとしても…!)


(´・ω・`)「…っ!」



――きゅっ!



(;^ω^)(すぐに距離を詰められてベッタリ張り付かれるお…これじゃあ膝を曲げられないからシュートができない…!)



(´・ω・`)「だから正直すぎるんだってば、内藤くんのプレーは。とりあえず、フェイクがフェイクでしかない」


(;^ω^)「???」


(´・ω・`)「形だけのフェイクになってしまっている、ってことさ。中途半端なんだよ」


( ^ω^)「????」


(´・ω・`)「うーん、言葉で伝えるのはやっぱり難しいかな。それじゃあ例えば、だ。ボールを持ってみてくれ」


( ^ω^)「はいですお」


(´・ω・`)「その状態から、左にワンフェイク入れてから右に抜いてみてくれ」


( ^ω^))「はいですお」クイッ


(´・ω・`)「ストップ、そこだ」




(´・ω・`)「例えばだよ、内藤くん。実際に試合中、君がドライブを仕掛けるとしよう」


(´・ω・`)「そして今のように左にワンフェイクを入れるとしよう」


(´・ω・`)「だがもし、そのとき相手の左側に隙があったとしたら?隙があるなら抜くべきだよね?」


(´・ω・`)「しかし小さいフェイク…それも、今のように『攻める意志のないフェイク』ではそういった隙も突けない」


(´・ω・`)「シュートフェイクだってそうさ。形だけのシュートフェイクじゃあ意味がない。
      シュートフェイクを入れて、そのとき相手に隙があれば迷わずシュートを打てばいい」


(´・ω・`)「実際に『シュートを打たれるかもしれない』、『ドライブで抜かれるかもしれない』、そうやって相手に
     プレーの残像を刷り込ませることでフェイクは活きてくるんだ」


(´・ω・`)「常に攻め気を忘れないようにしよう。君はフォワードなんだからね」


( ^ω^)「はいですお!」




――ガラガラ…



('A`)「はよーーっす」


( ´∀`)「おはようモナー」


( ^ω^)「おっ!ドクオ、モナー!おはようだお!」


('A`)「おう、しっかし早いな…まだ7時だぞ?」


( ´∀`)「すごい汗モナ…一体何時からやってるモナ?」


( ^ω^)「最近は4時起きだお!ランニングして、VIP公園でハンドリング練習とドライブ練習、シュート練習してから
       ショボン先生に挑んでるんだお!」


(´・ω・`)(どおりで…)


――ガラガラ…


(=゚ω゚)ノ「うーーす」

  _
( ゚∀゚)「おうブーン!今日もショボン先生を縛ったのか!?ww」


( ^ω^)「ちょwwwww」


( ^ω^)(他に縛る人がいないから仕方ないんだお…さすがのショボン先生も自分で自分を縛るのは無理だし…)


(´゚ω゚`)「だいぶ短時間で縛れるようになってきたよね」ムクムク…


( ^ω^)「やめてください」





('A`)「っし、俺らは俺らで練習すっぞー」


(=゚ω゚)ノ「おう!」












(´・ω・`)「早いところ亀甲縛りを解けるような状況にしてほしいところだね。これじゃあずっと内藤くんのオフェンスだから
      いつまで経ってもディフェンスの練習ができないよ?」


( ^ω^)「はいですお!」


( ^ω^)(冷静に考えるんだお…!)



現状、ショボンは両腕を使うことができない。
よって、ブーンを止めるには真正面に回りこみ、胴体を使って止めるほかに手段はない。



――ダムッ、ダムッ!



(´・ω・`)(……おっ、テンポを変えてきたな)


( ^ω^)(クロスオーバーの左右への振り幅を速く、大きく…)


( ^ω^)(かつ、ドリブルは強く、低く…)


( ^ω^)(隙が左右のどちらに生まれてもすぐに反応できるように集中!)


( ^ω^)(目線も一箇所に集中させないお。隙あらばシュートにいけるように…)




( ^ω^)(そして…!)


( ^ω^)「勝負っ!だおっ!」



――ダムッ!



(´・ω・`)「右!だから甘いってb…」



――ぎゅっ



( ^ω^)「かーらーのぉっ!」



――しゅっ



(´・ω・`)「…フェイドアウェイ…!」



――がつんっ



(;^ω^)「あう…入らんお…」


(´・ω・`)「内藤くん」


(;^ω^)「おっ…すみません、入りませんでしたお…」


(´・ω・`)「これ。ほどいてくれるかい?」


( ^ω^)「……え?」


(´・ω・`)「今のでいいんだよ。ワンオンワンで大切なのは、相手を抜き去ることじゃあない」


(´・ω・`)「一発で置き去りにできるならそれが一番さ。ノーマークでゴール下まで行くことができれば
     シュートも簡単だ」


(´・ω・`)「だけど試合ではそうは行かない。簡単に相手を置き去りにするなんてよほどの実力差がなければ出来ない。
      そして抜いたとしてもヘルプが来るのが自然だ」


(´・ω・`)「大切なことは、少しでも高い確率で決められるような状況でシュートを打つことだよ」


(´・ω・`)「それに気づくのに3日かかるとは…」


(;^ω^)「あう…すみませんお」





<_プー゚)フ(…つーか、なんで誰もアドバイスしてしてあげなかったんすか?)ヒソヒソ


(=゚ω゚)ノ(ばっか、俺らが教えてもなんも意味がねーだろーがヨウ)ヒソヒソ


('A`)(あいつが、自分自身で感覚を掴むしかないんだよ)ヒソヒソ


<_プー゚)フ(ア、ナルほど)ヒソヒソ




( ^ω^)「おっし、こっからが…」


(´・ω・`)「続きは放課後、だね」


( ^ω^)「え?」


(´・ω・`)「時間、時間」



――ちーんぽーんかーんとーん…



(;^ω^)「ハッ!これは間違いなく予鈴!」


( ^ω^)「てか、え?みんなは?」


(;^ω^)「えっ!いねえし!」




(´・ω・`)「もうみんな切り上げて教室に向かったよ?」


( ^ω^)「あんの薄情者どもがあああああっ!」


(´・ω・`)「ちゃんと声かけてくれてたよ、君は気づいていないようだったけど」


( ^ω^)「気づいてたなら教えてくださいおwwwwww」


(´・ω・`)「ほらほらしゃべってる暇があったら急ぐ」


(´゚ω゚`)「遅刻するようなことがあったらおしおk…(;^ω^)「お疲れさまでしたおおおおおおおおおお!」



(´・ω・`)「やれやれ、まったく」



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