( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第31章 その先にあるもの
――ビーーーーーーッ!
試合終了を告げるブザーの音がブーンの頭の中で何度も響く。
( ω)「(負け…たの…か…お…?)」
どれだけ相手が強くてもこのチームでなら勝てると思っていた。
しかし、突き付けられた現実はあまりにもシビアなものだった。
――どさっ!
『負け』を認識した瞬間、脚から力が抜け、ブーンは床に崩れ落ちた。
脚が痛い。動かない。なぜかブーンの頭の中は冷静だった。ギャラリー席の
人間の話す声がやけに鮮明に聞こえる。
「やっぱこうなっちゃうんだよなー…」
「前半はよかったのにな。明らかにオーバーペースじゃん。ちょっとは
考えればいいのに…」
「でもこいつら全員1年らしいぞ…」
「は?お前冗談きついってwww……え、マジなの…?」
( ;ω;)「(こんなになるまでやったのにどうして勝てなかったんだお…?)」
( ´Д`)「わかったか雑魚ども。これが県大会上位のレベルだ。お前らみたいな屑には
縁はないだろうがな」
( ;ω;)「…………」
ばつが悪そうにそう言い捨て、八頭身は整列する。
('A`)「ブーン…あいさつだ…」
ドクオの脚も震えている。立っていることすら必死なようだ。
イヨウも、モナーも、ジョルジュまでも。ツンもしぃも、まだ負けを
信じることができていないようだ。
全てを出し切ったのに、負けた。
「ありがとうございました…」
あいさつなんてする気力もない。勝ったチームの嬉しそうなあいさつが
心に重くのしかかる。
ブーン達は無言でベンチへ戻る。ドクオがニー速のベンチにVIP高代表として
あいさつに行った。八頭身はあいさつになど来ずにベンチで騒いでいるのに…。
(´・ω・`)「…ストレッチをしたら…部室へ行こうか」
ショボンの声が少し震えているような気がした。しかし長い髪で顔が隠れて
表情が見えなかったためショボンが今何を思っているのかはわからなかった。
( ´Д`)「(ふん…まさか県大会以外でフル出場するはめになるなんてな…)」
学校へ戻るまで誰も口を利かなかった。
―部室―
――ガラガラガラ…
全員が無言のままそれぞれのお決まりの場所へ荷物を下ろし、座る。
(´・ω・`)「それじゃあ残念な結果だったが今日のビデオを…」
('A`)「ショボン先生…」
(´・ω・`)「なんだい?」
('A`)「ショボン先生は…悔しくないんですか!?どうしてそんな平然と
していられるんですか!?」
(´・ω・`)「負けは負けだ。現実は受け止めなくてはならない」
(=゚ω゚)ノ「だからってそんな態度はないんじゃないですかヨウ?あれだけ
練習したのに結果が出ないなんて…!」
(´・ω・`)「うちの結束は八頭身一人にすら及ばないものだった。それが現実だ」
ショボンはビデオをセットしながら淡々と答える。
(´・ω・`)「すまないが僕は少し用があるからあとは任せたよ」
そう言ってショボンは部室を後にした。
('A`#)「なんなんだよショボン先生は……!!自分のことを負けず嫌いだとか
言ってたくせにあんなにあっさり…!!」
(#゚ω゚)ノ「こんな時に負け試合のビデオなんて観る気になれないヨウ…。
何考えてんだヨウ、あの人は…」
モナーとジョルジュはまだ茫然としている。八頭身に全く歯が立たなかった現実を
受け入れられないのだろう。
(´・ω・)「(悔しくないわけ…ないじゃないか…この負けの原因は八頭身の実力を
見誤った僕なんだ…もっと冷静に考えていれば勝てたかもしれないんだ…)」
――ゴツッ!
ショボンは廊下のコンクリート壁を拳で殴りつける。
――ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!
幾度も幾度も殴り続ける。皮膚が裂け拳から血が滴り、壁が赤黒く染まり始めても
ショボンは壁を殴ることをやめなかった。
(´・ω・)「(指導者が後ろ向きな姿勢を見せちゃダメなんだ…そんなことをしたら
チームがダメになる…彼らのためにも僕は…)」
(´;ω;)「ちくしょう……!!」
[壁]^ω^ )「(ショボン先生……)」
――ガラガラガラ…
('A`)「どこ行ってたんだ?ブーン…」
( ^ω^)「ショボン先生…泣いてたお…」
(=゚ω゚)ノ「……」
( ´∀`)「……」
( ゚∀゚)「…なぁ…ビデオ…観ようや…」
('A`#)「今はそんな気分じゃ…」
( ゚∀゚)「なら俺一人でも観る」
( ^ω^)「…僕も観るお…」
('A`)「…ブーン…?」
( ^ω^)「ショボン先生は…きっと僕達以上に悔しいはずだお。あれだけ練習させて
負けたんだから、きっとものすごく責任感じてるお」
(=゚ω゚)ノ「そりゃ…確かにそうだろうけどヨウ…」
( ^ω^)「なのにどうしてショボン先生はそんな素振りを見せないんだお?」
( ´∀`)「そんなのわかるわけないモナ…」
( ^ω^)「それはきっと僕達のためだお。ショボン先生まで落ち込んでたら
僕達はどうすればいいんだお?ショボン先生はきっとチームのために
あえて何でもない態度をとってるんだお。たとえそれが反感を買う結果に
なってもショボン先生はいつでも僕達のことを考えてくれてるんだお。
ここで落ち込んで、何が変わるんだお?何も変わらないお!変わるわけがないお!」
ξ )ξ「(…ブーン…)」
( ^ω^)「負けて何も学ばなかったら…その負けには何の価値もないお。
中学の時に言われた言葉だけど…今ならわかるお。」
('A`)「負けから…学ぶ…」
( ^ω^)「僕は今日の負けを貴重な体験だったと思うお。県ベスト8の実力を
知ったことでベスト4、さらにその先全国大会…。負けたことで
その先にあるもの、僕達の目指すものが見えたような気がするんだお」
(=゚ω゚)ノ「俺たちの目指すもの…」
( ^ω^)「だから僕は…少しも皆の力になれなかったことが死ぬほど悔しいけど
少しでも上手くなりたいからビデオ観て1個でも多くの反省点を見つけて
改善する努力をするお」
('A`)「俺も…観なきゃ」
(=゚ω゚)ノ「…俺も観なくちゃいけないヨウ」
( ´∀`)「僕も…」
(*゚ー゚)「ツンちゃん、よかったね」
ξ゚听)ξ「ほんっとに昔から人の心読むのが上手かったからね…」
・
・
・
('A`)「オフェンスの中継をモナーに任せすぎちゃってたな…もっとボールを
万遍無く散らすべきだった」
(=゚ω゚)ノ「うわっ…!こんなタイミングでスリー打っちまってたのかヨウ、俺…」
( ´∀`)「ビビらずにもっとリバウンド突っ込むべきだったモナ…」
・
・
・
メンバーはブーンの想いを汲み取り、負けから徐々に立ち直りつつあった。
その頃ショボンは職員室で酒を飲むことで悔しさを紛らわしていた。ショボンは
おもむろに携帯電話を開いた。
(´・ω・`)「着信10件……誰だろう?」
着信履歴を見るとショボンはすぐにその番号に電話をかけ直した。
3コール目で電話はつながった。
???『あ、ちょっとショボン何してたのよ!何回も電話したのにっ!!』
(´・ω・)「すまない、色々と立て込んでいてね。何か用だったかい?」
???『何か用って…大会があるからって言ってたから結果聞こうと思ってかけたの!
それくらいわかってよ!……っていうかその声!またお酒飲んでるでしょ!?』
(´・ω・`)「こうでもしなくちゃやりきれなくてね…」
???『…何かあったの?もしかして…』
(´・ω・`)「あぁ、実は…」
ショボンは電話の相手の女性に今日の試合で惨敗したこと、その敗因が
自分にあるということ、自分のせいでチームがダメになるのではないかと
懸念していること…を赤裸々に話した。酒が回っていたせいもあるのか、自分への
嫌悪感がショボンの口から次々と紡がれていった。
・
・
・
???『…ショボン、色々と言いたいことはあるけどあなたは一つ、
大きな思い違いをしているわよ』
(;´・ω・)「……?はぁ…」
???『当たり前のことだけど人間は誰もかれも完璧じゃないの。間違いを
犯してもいいんだよ』
(´・ω・)「………(グリーンダヨー…)」
???『もちろんこぞって間違いを犯せばいいというわけではないわ。
大切なのは間違いを犯した後にそれを正すことができるかどうか、そうでしょ?』
(´・ω・)「間違いを…正す…」
???『そう。間違いを犯したことから何も学ばないことが一番いけないの。
そもそもチームスポーツにおいて負けの責任を個人で背負うことなんて
できないのよ。負けの裏には全員が何かしらの原因を持っているものなんだから』
(´・ω・)「しかし僕は指導者なんだ。チームの負けは指導者の…」
???『「指導者」としてならそうなってしまうかもね。でもあなたと彼らは
「仲間」でしょう?』
(´・ω・)「……(仲間…)」
???『指導者であってもそうでなくても、仲間なら一緒に泣いたり笑ったり
できるはずでしょう?違う?それを「指導者だから」だなんて自分で
壁を作って閉じこもってちゃいけないわ』
(´・ω・)「僕だってできることならそうしたい!でも…それじゃあ全国を目指すには…」
???『そうかしら?うちはそれで全国出場決めたわよ?』
(´・ω・)「………!!…ついに行けたのかい?たいしたものだよ…」
???『みんなが一生懸命ついてきてくれたからね。初出場だけど全力で行ってくるわ』
(´・ω・)「そうか…ははっ、僕は一体何やってるんだろうな…」
???『何言ってるの!1年目でしかも全員1年生なら当然でしょ!?私だって
5年かかったのよ?』
(´・ω・)「一から建て直して5年でインターハイなんて充分異例じゃないかい?」
???『一般的に見たらそうかもね。でもショボン、あなたなら3年でインターハイへ
行けるわ。断言する』
(´・ω・)「うちのメンバーは確かに高い潜在能力がある。しかし3年なんて無理に…」
???『呆れたわ……あなたが生徒を信じてあげなくてどうするの!?それにその
潜在能力を発揮させてあげるのがあなたの仕事なんじゃないの!?』
(´・ω・)「(そういえば前用務員さんにも同じようなこと言われたっけ…)」
???『何も言わないってことは認めるのね?だったらあなたのするべきことは一つ。
わかるわね?』
(´・ω・)「…今すぐ彼らの所に戻らなくちゃね」
???『わかってるじゃないの。それでいいのよ、それじゃあ…』
(´・ω・)「あ、待ってくれ。最後に一つ聞きたいことがあるんだが」
???『「アイツ」のことでしょ?最近連絡がないけど元気みたいだわ。「アイツ」も
全国大会出場を決めたんだって』
(´・ω・)「そうか…随分と置いてけぼりをくらってしまったね」
???『大事なのはこれからでしょ?それじゃあ無駄話はこの辺で。
全国大会で…会いましょう、ショボン』
(´・ω・)「あぁ…ありがとう、ヘリカル」
ショボンは携帯電話の通話終了ボタンを押す。
(´・ω・`)「(部室にはまだ明かりがついてる…。よかった…)」
――ガラガラガラ…
( ^ω^)「ショボン先生、遅いですお!!」
('A`)「ショボン先生、ここのプレーについて質問が…」
(=゚ω゚)ノ「ショボン先生、この時のヘルプディフェンスは…」
( ´∀`)「ショボン先生、ここのスクリーンアウトは…」
( ゚∀゚)「ショボン先生!ファウルにならないディフェンスを…」
(´・ω・`)「(……そうだ。僕がこの学校に勤める事になったのも、この子達と
出会ったのも…きっと偶然じゃなかったんだ…だったら…やれるところまで
やってやろうじゃないか。いつか追い越して見せるよ。ヘリカル、シャキン…)」
敗北というものは恐ろしい。しかし敗北を経験し、受け入れ、乗り越えることで
初めて見えるものがある。それをしっかりと受け止めて今後の糧とするのか、目を逸らして
現実逃避をするのか。それはチームの未来を左右する重要な要素である。
ブーンたちは11月に開催されるウィンターカップ予選に向け、再びチーム一丸となって練習を
開始した。
第31章 完
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