第11章 後編



続いて、VIP高校の攻撃。



<_プー゚)フ「目に物見せてやる…俺だってやれんだっ!!」



――ダムッ!


(;^ω^)「エクs…」


<ヽ`∀´>「ウェーーーーハハハハッ!計画通り!」


/ ゚、。 /「パスは出させない感じで!」


<_;プー゚)フ(挟まれた!?)

  _
( ゚∀゚)「エクスト!?こっちだ!」


<_プー゚)フ「くっ…ジョルジュさんっ…!」


/ ゚、。 /「簡単にパスを出させないためのダブルチームなんだけどなあ」



――ボグッ…


<_;プー゚)フ「あっ…!」


苦し紛れのパスは、ダイオードの腕に当たり、阻まれる。
落下したボールはニダーが広い、速攻が繰り返される。



――ダムッ!



(,,゚Д゚)「おおおっ!」


('A`)(さっきのキレ…フリースローのときの『わざと外し』…このタイミングで火が付いてきたのか!?)


('A`)(逆転させるわけにはいかない。ここは意地でも…)



――びゅっ



('A`)(くっ…パスか!)



――ばしっ



川 ゚ -゚)「流れを得る絶好の好機だな」


ボールを受けたのはクー。
ハーフラインを少し越えた辺りだ。


(=゚ω゚)ノ「行かすかぁっ!」



前に回り込もうとするイヨウ。
だがクーはボールを受けると同時に急ストップ。



(=゚ω゚)ノ(まずい、ここはクーのシュートレンジ…)



速攻のタイミングでのロングスリーポイントシュート。
いくらなんでもめちゃくちゃなタイミングではあるのだが、判断を焦ったイヨウはブロックのために
跳びあがってしまう。



(;=゚ω゚)ノ「やば…」



シュートフェイクにかかり、空中にいるイヨウをドライブでかわし、何事もなかったかのようにクーはレイアップを
沈める。



今北産大附今北 47-46 VIP高校



「逆転だ―――!」

「第3クォーターは今北の猛チャージ!!」




(´・ω・`)(まずいな)



――ビーーーーーーッ!



審判「タイムアウト、緑!」



たまらずタイムアウトを申請するショボン。
各々のベンチへ戻ろうとする選手陣。



/ ゚、。 /「…まだ、勘違いしてるのかな?」


<_プー゚)フ「…なに!?」


/ ゚、。 /「自分ひとりで試合を動かせるなどと…まだ思っているのかな、って」


<_プー゚)フ「…どういう意味だ」



('A`)「エクスト!何してる!?」


/ ゚、。 /「おっと、僕も怒られる前に戻らなきゃね」



――( ^ω^)「君はいま…『自分なら今北相手でも渡り合える』、そう言ったおね?」


――( ^ω^)「高校バスケをなめちゃいけないお」


――( ^ω^)「選手としてのレベルは関係ないお。僕は君よりも長く高校バスケの世界にいるお。
       だから、わかるんだお。そういう驕りは、きっとチームにとって命取りになるお」



『そういう驕りは、きっとチームにとって命取りになるお』




<_プー゚)フ(俺は…驕ってるのってのか…?)





――VIP高校ベンチ



(´・ω・`)「さて、見ての通りだが正直流れはよろしくない」


(´・ω・`)「うちがやりたいことを向こうにやられている…速攻の連発、だ」


(´・ω・`)「そして『起爆剤』として投入したエクスト君も、どうやら今北はしっかり研究してきたようだね」


(´・ω・`)「…となると、こちらも戦法を変える必要がある」


(´・ω・`)「ドクオ君、イヨウ君、エクスト君によるスリーガードでいこう」


(´・ω・`)「3人でのボール回しをメインにオフェンスを組み立てる。内藤くん、ジョルジュ君はガシガシ攻め立ててくれ」


(´・ω・`)「無論、隙が生まれたらガードの3人は躊躇わず攻めてくれて構わない。まずは、この状況を安静にしよう」


(´・ω・`)「そしてガード3人のうち、一人は常にセーフティーを確保しながらボールをまわして欲しい」


(´・ω・`)「カウンター速攻への対策としてはもちろんだが、できるだけ中を空けて内藤君とジョルジュ君を攻めやすくしてあげよう」



――今北ベンチ



(■_■)「いい感じだ。ターンオーバーからの速攻が続いて、向こうは間違いなく焦っている」


<ヽ`∀´>「それもこれもダイオードのおかげニダ!あの15番を上手く封じ込めてるニダ!」


(,,゚Д゚)「確かにな。いくらあの15番が正統派なポイントガードではないにしても…あの封じ込め方は完璧だった」


/ ゚、。 /「無駄がなさ過ぎるので。いい意味でも悪い意味でも」


/ ゚、。 /「彼にセンスがあるのは認めます。そのセンスゆえにゴールへの最短ルートを無意識に感じ取っているんでしょう。
      その嗅覚ばかりは天性のものとしか言いようがありません」


/ ゚、。 /「ですがそれは逆に言えばコースを予測するのは簡単だ、ということです」


/ ゚、。 /「アイシールドのパンサーみたいんもんですよ」


(;,,゚Д゚)(たとえがまたわかりにくい…ようなわかりやすいような…)


(,,゚Д゚)(…にしても、だ)


(,,゚Д゚)(あの15番の動きはまさしくセンスの塊だ…だが、それを簡単に止めちまう、ってのもまた恐ろしいもんだぜ)



――ビーーーーーーーーーーーッ!



審判「タイムアウト終了です!」


(´・ω・`)「点差はたかだか1点だ、あわてず行こう」


(■_■)「修正点は特にない。落ち着いて行け」




――ダムッ…


('A`)「っし、回していこう!」


(=゚ω゚)ノ「おうヨウ!」


<_プー゚)フ「はいっ!」


/ ゚、。 /「またずいぶん後ろにポジションを取ってくるね、ボール回しに徹するのかな?
      それとも…諦めた?」


<_#プー゚)フ「黙ってろ!」



――びっ…ばしっ びっ…ばしっ



( ^ω^)(ドクオ、イヨウ、エクスト…この3人のボール回しをメインに攻めるということは)



――きゅきゅっ



( ^ω^)(この状況を、僕とジョルジュでなんとしてでも変えなくちゃいけない、ってことだお)


( ^ω^)(細かいフェイクもきっちり入れつつ揺さぶりながらタイミングを見て…)


(^ω^ )(飛び込む!お!)



――ぎゅっ



今北G(なんつー鋭いカットだよ!?振り切らr…)


<_プー゚)フ「内藤さん!」



――びゅっ



( ^ω^)「おっ!」



――ばしっ



鋭いカットでノーマークとなり、エクストからのパスを受けるブーン。
やや振り切られた形となった今北Gは、数瞬遅れてボールマンのブーンのディフェンスにつこうとする。
しかし、今のブーンにとっては少々の遅れは大きなアドバンテージ。
ほんの僅かではあるが、遅れてディフェンスについてきたことによる今北Gの体重移動の微妙なズレを
即座に見抜き、ワンフェイクからのドライブで見事にかわす。



( ^ω^)(このままレイアップいけるかお…?)


<#ヽ`∀´>「打たせんニダーーーーッ!」


( ^ω^)(状況は2対1のアウトナンバー!冷静に対応すれば大丈夫だお)


( ^ω^)「ほっ!ジョルジュ!」



カバーに来たニダーをしっかりと自分に引き付けてから、逆サイドのゴール下にいるジョルジュへとパスを送る。


  _
( ゚∀゚)「ナイスパァスッ!」




――ずだっ



膝を思いきり深く曲げ、びょんと跳び上がるジョルジュ。
ボールを掴んでいた両腕をぐるりと大きく一周させ、

  _
(#゚∀゚)「おおおおおりゃああああっ!」



そのまま豪快にリングへ叩き込んだ。




今北産大附今北 47-48 VIP高校



「8番も負けじとダンクだーーーー!」

「両腕でのウインドミル!超ド派手だな!」


  _
( ゚∀゚)「マッチアップ、かわらない方がよかったんじゃねーか?」

<ヽ`∀´>「ぐぬぬ」


(,,゚Д゚)「ふっ」



――しゅっ



('A`;)「(スリー…!?まずい!)リバウンドーーーーーっ!」



――バシュッ



(,,゚Д゚)「しゃああっ!」


「スリーだ!」

「マーク外れてなかったのに!強引にねじ込んできたぞ!」

「今北の4番もノってきた!」



今北産大附今北 50-48 VIP高校



('A`;)「くっそ…なんであれが入んだよ…」


(,,゚Д゚)「どうした!?やり返してこいよゴルァ!丸くなりやがって!」


('A`)「………」


――ダムッ!



「今度はVIP高の4番が抜いたーーー!」


(;,,゚Д゚)「んなっ…パス回しするんじゃねーのかよゴルァ!?」


('A`)「パス回そうと思ったんだけどな、おまえ油断してたし。行かせてもらうぜ」


――きゅっ


(,,゚Д゚)(ストップした…ミドルか!?)



――ずだっ



(,,゚Д゚)(シュートだ!振り切られてない…ブロックできる!)



――ずだっ



ドクオのジャンプに合わせて、ギコもブロックを試みようと跳ぶ。
しかし…



(;,,゚Д゚)(打たない…!?)


('A`)(ありがとな、ひっかかってくれて)


通常、ジャンプシュートはジャンプが頂点に達したときにボールをリリースする。
その理由としては、できる限り高い位置でボールをリリースすることでブロックされることを
防ぎたいから、ボールが描く放物線の起点を高くし、高いアーチでのシュートを打ちたいから、などが挙げられる。

余談ではあるが、インサイドプレーヤーがゴール下でのシュートを打つときは、主にブロックされることを
防ぐために、肘の角度を浅くし、腕を伸ばしたようなフォームになることが多い。


この場合のドクオは、そのジャンプが頂点に達しても、シュートを放たなかった。
当然のことなのだが、ジャンプの頂点というのは、上向きの運動が下向きの運動に変わる瞬間のことだ。
ジャンプが頂点に達したら、あとは重力に従って落下していくのみ。

しかし、落下を始めてもドクオは尚、シュートを打たない。
タイミングを外すために落下しながらシュートを打つ場合もあるが、ドクオの場合は違った。



('A`)(よーするに)



そう、「始めからシュートを打つつもりなどなかった」のだ。


ドクオの落下に次いで、ギコも落下を始める。

走りながらブロックの体勢に移ったギコだったため、その体は慣性のままに流れようとしていく。

しかし、ギコはドクオがシュートを打つつもりがないことに気づいていない。
そのため、ドクオが落下を始めてもなおボールを持っているのは、タイミングを外してシュートを放つため、と考えていた。

だから、ボールから意識を逸らすわけにはいかない。
慣性で流れていきそうな体を強引にその場に保つ。
だがそれは無理な体勢を強引に保つということ。

つまり――



――ピィッ!



審判「ファウル、白4番!ツースロー!」



(,,゚Д゚)「てめっ、最初から打つ気なかったな…!」


('A`)「いやあ、これもある意味シュートフェイクでしょ」


(,,゚Д゚)「言ってくれるじゃねーか…!」



そしてフリースローラインに向かう際、すれ違いざまにーー



('A`)「エクスト、2本目そっちに外すからな」


<_プー゚)フ「……!?」


('A`)「目に物見せてやるんだろ?」


('A`)「余計なこと考えちまってるみたいだしさ。集中して、この一本決めてくれよ」


<_プー゚)フ「……!」


( ^ω^)「ドクオ、きっちり!だお」


('A`)b「任せとけ、外すわけないだろ」




一本目。



――ぱしゅっ




今北産大附今北 50-49 VIP高校



('A`)「ふう」



……二本目。



('A`)(頼むぞ…!)



――がつっ…



(,,゚Д゚)(ドクオがフリースローを外しただと…!?)


(,,゚Д゚)(…まさか!?)


(;,,゚Д゚)「ニダー!ダイオードーーー!」



<_プー゚)フ(ほんとに俺の方に外してきた…!しかも俺が一番手を伸ばしやすいとこに…!)


<_プー゚)フ(フリースローが外れて、なおかつ「自分の方に飛んでくる」って確信さえあれば、俺の方が
       一瞬だけ早く反応できる!)


<_プー゚)フ(ドクオさんがこの緊迫した状況でわざわざチャンスを与えてくれたんだ…期待には絶対に応えてみせる!)



リバウンドの際のポジション争い、スクリーンアウト。
身体能力、技術はもちろんだが、ボールの落下地点を瞬時に予測する能力、加えてそれを実行に移す瞬発力も重要となる。


落下の予測、一瞬の飛び出しというという点においては、このプレーではエクストは圧倒的有利な立場だった。
「どこにボールが飛んでくるのかがわかっていた」のだから。

しかし狙い通りにシュートを外す、という行為はシュートを決めることよりも遥かに難しい。
加えて、自分の方へシュートを外すと宣言した味方を信頼することも、だ。


ほんの、ほんの僅かなズレでさえも、外れるときには大きなイレギュラーとなる。
そこで結果的に見当違いなタイミング・方向にリバウンドを試みれば、相手と争う間もなく易々と
リバウンドを与えることになってしまうからだ。



<_プー゚)フ(左手が…届いた!)


<_プー゚)フ(このまま…!)



――ぽんっ



手中に収まったボールを、そのまま空中でタップし、丁寧にリングへと押し返す。



<_プー゚)フ(来い…!)



――ぱすっ




今北産大附今北 50-51 VIP高校



<_プー゚)フ(よし!)




「再逆転ーー!今度はVIP高の15番がダイレでねじ込んだ!…ダンクじゃなかったけど」

「タイミングどんぴしゃだったぞ!…ダンクじゃなかったけど」

「すげえ反射神経だ!…ダンクじゃなかったけど」

「ってかむしろボールがVIP高の15番の方に跳ねたようにも見えたぞ!…ダンクじゃなかったけど」

「まさか狙って外したってのかよ!?…ダンクじゃなかったけど」



<_;プД゚)フ(うるっせーーーー!そしてしつけーーーっ!!)


<_;プー゚)フ(身長あるやつがみんなダンクできると思うなよ!?)


<_;プー゚)フ(てかラスト二人!明らかに無理矢理乗っかってきてんじゃねーかああああああ!)



('A`)「狙い通りに外すのも技術のうち、なんだっけ?」


(;,,゚Д゚)「ぐっ…」


('∀`*)ニマァ「ってことは俺もなかなかにテクニシャン、ってことか」


(,,゚Д゚)(その顔でテクニシャン言うななんか腹立つ。あとニマァって笑うなほんと怖い)



('A`)









  _
( ゚∀゚)「ナイスリバン、エクスト!」


( ^ω^)「あーんど、ナイッシュー!だお!」


<_プー゚)フ「うぃっす!ディフェンスいきましょっ!」



<_プー゚)フ(……そうだ)



きっと、気づいていなかったわけではない。
自らの驕りに。自惚れに。



<_プー゚)フ(ただ…!)



認めたくなかっただけなのだ。
本当は自惚れているんじゃないか、と沸き上がってくる無意識と向き合うことを放棄し、ただただ突っぱねていた。



<_プー゚)フ(だけど……!)


(,,゚Д゚)「ダイオードっ!」



――びゅっ…ばしっ



/ ゚、。 /「ナイスパスです!」



それを他人から指摘されたとして、素直に受け入れられるわけがない。自分は、そこまで素直ではない。



<_プー゚)フ(……だけどっ…!)



――ダムッ!



<_;プー゚)フ「うぐっ…(パワー勝負かよ…!)」


/ ゚、。 /「せあぁっ!」



――ガコンッッ!



「また今北14番のダンクーー!?」

「すげぇ!すげぇよ!すごすぎる!なんなんだよあいつ!?」

「無双モード突入か!?」




今北産大附今北 52-51 VIP高校



言葉よりも。


/ ゚、。 /「……ふん」


<_プー゚)フ「……へへっ」



こうして行動で見せつけられてしまうと、嫌でも納得せざるを得ない。



<_プー゚)フ(俺は天才なんかじゃ…ない)



だが。
もしかしたら本当は。
少しだけ、わかっていたのかもしれない。
そして。
そんな自分を変えたかったのかもしれない



<_プー゚)フ(だってーー)



自分自身で、VIP高校バスケットボール部を選んだのだから。



<_プー゚)フ「あっさりやられちまいました、すんません!さーっドンマイドンマイ!、切り替えましょ!」


('A`)(…ったく。…けど)


(=゚ω゚)ノ(…なんかスッキリした顔になってるなヨウ)


(=゚ω゚)ノ(俺も…ぼーっとしてなんていられねーヨウ!)



――ダムッ…



( ・∀・)「展開がかなり速くなってきたね。そのくせ、どちらもなかなかシュートを外さない」


从'ー'从「お互いに、成功率の高い堅実なプレーを選択していますね」


( ・∀・)(だがそれだけでは道は開けない…ただ時間が過ぎていくだけだ)


( ・∀・)(さあ、どうする)



(=゚ω゚)ノ「ドクオ!くれっ!」


('A`)「ああ!イヨウっ!」



――びゅっ…ばしっ



川 ゚ -゚)「パス回しに徹するなんて…君らしくないな。少々失望した」


(=゚ω゚)ノ「安心しろ、すぐに引き戻してやるヨウ」


(=゚ω゚)ノ「おもしれーのは…こっからなんだからなヨウ!」



――ダムッダムダムダムッ…ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!



「すっ…げぇドリブ…ル…か…?あれ…?」

「ドリブルが…早すぎて、低すぎて、細かすぎて…」

「ああ…コートの上をボールが転がってるみたいだ…」




(=゚ω゚)ノ(ギコが『剛』?クーが『柔』?)


(=゚ω゚)ノ(知ったことかヨウ)


(=゚ω゚)ノ(俺にはギコみたいな強さもない。クーみたいなズバ抜けたスピードもない)


(=゚ω゚)ノ(だけど俺は俺なんだヨウ。他の誰でもねーんだヨウ!)


(=゚ω゚)ノ(俺は…『変』でいい!)



( ^ω^)(『変』なガード…?)


(;=゚ω゚)ノ「ちがう!」


(=゚ω゚)ノ「ジョルジュ!」



――ぴっ



早く、低く、細かいドリブルから一転。
コートの床スレスレから手首だけでボールを弾く。


川 ゚ -゚)「ちっ…(反応できなかった…)」



咄嗟にパスが出たであろうジョルジュの方向へ振り向くクー。
しかし――

  _,,_
(;゚∀゚)?


川 ゚ -゚)「!?」



クーの視線の先には、尋常でないほどにきょとんとした顔のジョルジュ。ボールは、見当たらない。


 _
(*゚∀゚)!



そして、きょとんとしていたジョルジュの表情がすぐに輝く。



川 ゚ -゚)(まさか!?)


そして悟る。
すぐさま、イヨウへと視線を戻す。

その時クーが見たものは、空中で既にシュートを放とうとしているイヨウの姿であった。



――ぱしゅっ



今北産大附今北 52-54 VIP高校







「VIP高の6番に久しぶりのスリーだ!」

「ストリートの技だよなあれ!?すげーーー!」

「あんなの試合中にやる度胸なんてねーよ普通!」



川 ゚ -゚)(騙された…ボールを真上に投げ上げて、ディフェンスにはパスが出たと錯覚させるプレー…)


川 ゚ -゚)(そういうプレーがあるということは知っていたが…実際にやられたのは初めてかもしれないな)


川 ゚ -゚)(ましてや公式戦、しかも決勝リーグでそれをやってくるなんて、な。まんまと一杯食わされたよ)


川 ゚ -゚)「完全に騙された。君の仕事はパスだと思っていたからね。てっきりパスかと…」


(=゚ω゚)ノ「いいや」


(=゚ω゚)ノ「俺はパスを出しただけだヨウ」


川 ゚ -゚)「?」


(=゚ω゚)ノ「『0,5秒後の自分に』、な」


川 ゚ -゚)「…………」


( ^ω^)「おっおっwwwかっこいいおイヨウwww」


(=゚ω゚)ノ「イケメンなのは生まれつきだヨウwww」


( ^ω^)「うっせ殺すぞリア充wwwそれにしても決め台詞が厨二すぎだおwwww」






(=゚ω゚)ノ「てめえwwww」



('A`)(あいつ…!)


('A`)(あの技は、俺たちが初めて出会った日に俺がやられたプレーだ)


('A`)(俺だって、ストリートにああいう技がある、ってことくらいは知ってた)


('A`)(だけど、知っているのと実際に体験するのじゃあ、大違いだ)


('A`)(あの技を初見で見切るのはちときついだろうな)


('A`)(でもそれだけじゃない)


('A`;)(あいつ…あの時よりもスキルに磨きをかけてやがる!)



('A`)(ストリートのスキルってのは『魅せる』ことを重視することが多い)


('A`)(だから、カッコイイけどムダな動きも多い、ってのも事実だ)


('A`)(今のプレー…あれは余韻のようなものを味わうために、投げ上げたボールが落ちてくるのを待っている場合が多い)


('A`)(騙されたと気づいた相手がちょうど振り向くころにボールが落ちてきて、「どうだ、ざまぁみろ」っていう
   絶好のタイミングでボールをキャッチできるからだ)


('A`)(だけどイヨウのは違った!)



('A`)(投げ上げたボールが落ちてくる原因、それは当然重力だ。そしてすぐにボールが落ちてくるわけじゃない、僅かだが
   時間がかかる)


('A`)(普通のやつなら騙されたことに気づかないことだってある、だけどイヨウの相手は素直クールだ!すぐに
   騙されたと気づかれても不思議ではない)


('A`)(だが素直クールの反応速度を考えれば、落ちてきたボールをキャッチした瞬間を狙われる可能性があった!
   いや、あるいはボールの落下中に反応される可能性だってあった!)


('A`)(だからイヨウは、投げ上げたボールをそのまま空中でキャッチして、スリーを打った!コンマ数秒の時間を稼ぐために!!)


('A`)(いわば『その場で一人スカイプレイ』!!クーの反応速度を計算に入れていたのかそれとも無意識か…
   いずれにせよあのスタイルは…)



(´・ω・`)(『部活バスケ』と『ストリートバスケ』の融合…!)


(´・ω・`)(実際に、このスタイルでバスケをするのはとても難しい)


(´・ω・`)(プレイがどちらかに偏りがちだし、環境的にも、だ)


(´・ω・`)(バスケは反復練習のスポーツだ。そして、数えきれないくらいの失敗をした、という経験は間違いなく選手を成長させる)


(´・ω・`)(だが部活での試合や練習中にストリートのスキルを織り交ぜたとして…)


(´・ω・`)(成功すればまあいい。「よくあんなことができたなあ」、「危なっかしいなあもう」程度で済むからだ)


(´・ω・`)(だが失敗すれば「派手なプレーで目立とうとしてミスをしては意味がない」、「一体何をやるつもりだったんだ」と
     批判を受けることがあるというのもまた事実だ)


(´・ω・`)(チームメイトや指導者から怒鳴り散らされることもあるだろう)


(´゚ω゚`)(だけどうちは基本的には自由な部風。それはつまり僕の指導力の賜物ってことさ!!)




(´・ω・`)(…冗談はさておき)


(´・ω・`)(部活でも、ストリートでも。どちらの場所でも必死に努力し続けたイヨウ君らしいプレイだ。見事だよ)



('A`)「よォ、腕上げたな」


(=゚ω゚)ノ「へっ、ストリートボーラーの生き甲斐はスキルを磨くことだからな」



――ぱんっ



('A`)「さぁディフェンスだ!!」(=゚ω゚)ノ



静かにハイタッチを済ませ、今北の攻撃に備える。




――がつっ



川 ゚ -゚)「ちっ」



「今北の7番が外したーーー!!?」



('A`)(少なからず動揺してるな)

  _
( ゚∀゚)「ルィィヴァアアウンドオオオ(裏声)!!」



――ばしっ



('A`)(戻りが早い…!速攻は無理か)


('A`)「ナイスリバン、ジョルジュ!一本いこう!」

  _
( ゚∀゚)「おう!」



――ダムッ…



('∀`*)「エクスト!イヨウだ、イヨウでいくぞ!」



<_;プー゚)フ「えっ、なんで言っちゃうんすか…」



――キュキュキュキュ!



川 ゚ -゚)「その通りだな。なぜあえてわざわざ」


(;=゚ω゚)ノ(めちゃくちゃディフェンス厳しくなったじゃねーかヨウ、ドクオのアホッ!)


('∀`*)「くっそ…つい言っちまった!エクスト!仕切り直してくれ!」



――びゅっ



<_プー゚)フ(あのキモい笑顔…あれは何か企んでる顔だ…)


<_プー゚)フ(でも何を…?)



<_プー゚)フ(ドクオさんは熱いけど冷静な人だ。いくらテンションが上がってても、わざわざ口を滑らせて
       攻め方を明かすようなミスをするとは思えない)


<_プー゚)フ(ってことは何か考えがあるってことだ。一体?)



――('∀`*)「エクスト!イヨウだ、イヨウでいくぞ!」

――('∀`*)「くっそ…つい言っちまった!エクスト!仕切り直してくれ!」



<_プー゚)フ(あの顔をしてたってことは…その中にヒントがあるはず!)


<_プー゚)フ(『イヨウさんで行く』ということか?)


<_プー゚)フ(『つい言っちまった』…か?)


<_プー゚)フ(それとも『仕切り直してくれ』…か?)



<_プー゚)フ(!!いや……)



<_プー゚)フ( 全 部 か ! )



<_プー゚)フ(あえて訳すとするなら…『('∀`*)「イヨウでいくぞ!ほんとにいくからな!だからあと任せた」』…ってとこか?)


<_プー゚)フ(…………)


<_;プД゚)フ(伝わりづれえーーーーーっ!)


<_;プД゚)フ(っていうか普通に無茶ブリだしーーーーーーーっ!!!!!)



――ばしっ



<_プー゚)フ(でも確かにそうだ!イヨウさんのストリートのスキルに相手の7番は動揺してるはず!
       シュートも外してたし…)


<_プー゚)フ(つまりなんとかしてもう一度イヨウさんから得点したいってこと!できるなら連続で!)


<_プー゚)フく(となりゃあ、俺の役目は一つ……!)



――ダムッ!



/ ゚、。;/「くっそ…!」



「今度は抜いたーーーー!」

「ちょっと待て、VIP高は3人がけっこう後ろの方でボール回しをしているから…」

「トップオブザキーのエリアががら空きだーーー!!」



川 ゚ -゚)「むっ…」


<_プー゚)フ(素直クール!あんたの意識をこっちに引き付けることさァァァ〜〜〜〜〜!!)



――びゅっ…ばしっ



(=゚ω゚)ノ「うっし」


<_プー゚)フ(よっし、通った!あとはイヨウさんがなんとかしてくれるはず…!タブン)


川 ゚ -゚)(結局宣言通りにイヨウ君に…)


(=゚ω゚)ノ(今回はボールさえ持てりゃあ、問題ないヨウ。なんつったって…)



――ダダダダダダダダダムッ!ダダムッ!



(=゚ω゚)ノ(リズムを整えてから…)




(=゚ω゚)ノ「投げるだけなんだからな!」



――びゅっ…



ξ;゚听)ξ「ボールを……!?」


(;*゚ー゚)「放り投げた!?」


( ´∀`)「いや……!」


(;,,゚Д゚)(…違う!)



(;,,゚Д゚)(目線はしっかりリングの方を向いている…それに投げているようには見えるが…手首のスナップが
     しっかり利いてる!それにフォロースルーもちゃんとある…!)


<;ヽ`∀´>(あれは…)


/ ゚、。;/(まさかシュートのつもりなのか!?あれで!?)



川;゚ -゚)(馬鹿な!)





――バスッ



川; ゚ -゚)「んなっ…!」


('A`)「うおぉ…」


( ^ω^)「ナンテコッタイ」


<_プー゚)フ「ていうかなんでちゃんと伝わってんだ…エスパーかよこの人ら…」

  _
( ゚∀゚)「リバウンドするべきなのかアリウープ狙いなのか普通にわかんなかったじゃねーかww」



今北産大附今北 52-57 VIP高校



「は……入ったァーーー!?」

「VIP高の6番に連続スリーーーー!!」

「なんだ今の!?投げたのが入っちまった!」

「さすがにこれはマグレだろ!?バンクショットだったし!」

「だ…だよな!パスミスかなんかがたまたまボードに当たって入っただけだよな!?」

「マグレだろうがなんだろうが関係ねぇ!また点差が開き始めたぞ!」

「スリーがあるのとないのとでは点の動きが全然ちげえ!!」




川 ゚ -゚)「…狙ったのか」


(=゚ω゚)ノ「シュートは決めるために打つもんだろうヨウ?」


川 ゚ -゚)「…まさか投げ打ちとはな」


(=゚ω゚)ノ「お前も同じようなもんじゃねーかヨウ」



(=゚ω゚)ノ「あえてコツを言うとだ、ヨウ」


(=゚ω゚)ノ「普段のシュートと同じように高いアーチを心掛けることだヨウ」


(=゚ω゚)ノ「そんでもって、上から落ちてくるときにボードの四角、まあ普段バンクショットやるときに
     狙う場所をかすめるような軌道を意識すること、だヨウ」


(=゚ω゚)ノ「普通に投げたら、大概弾き飛ばされちまうからな」


川 ゚ -゚)「…なぜ大切なテクニックをわざわざ教えてくれるのだ?」


川 ゚ -゚)「私が真似をするかもしれないではないか」


(=゚ω゚)ノ「だって無理だろ」


川;゚ -゚)「っ!」


(=゚ω゚)ノ「…お前のそのスキルは、お前だけのもんだヨウ。誰にも真似できねえ」


(=゚ω゚)ノ「だけどそれお同じように、俺のこのスキルは、俺だけのもんなんだ。
     誰にも真似させない…いや、できないヨウ」


(=゚ω゚)ノ「…これで、ようやく土俵の上に立てた、ってとこか?」


川 ゚ -゚)「……おもしろい」




(,,゚Д゚)「クー、大丈夫か?まさかお前が連続でやられるとは…」


<ヽ`∀´>「そ…そうニダよ!前回戦ったときには完封した相手に…」


/ ゚、。 /「何かできることがあれば…」



川 ゚ -゚)「すまん、今は話しかけないでくれ」






川 ゚ー゚)「…楽しくなってきた!!」







――数分後、VIP高校の攻撃…



――ダムッ…ダムッ…



(=゚ω゚)ノ「さあ一本!おめーらしまっていけヨウ!」


( ^ω^)(イヨウかっこいいお!ボール運びのときのドリブルまでストリートっぽく…)



――ピィッ!



審判「ダブルドリブル!白ボール!」


(;=゚ω゚)ノ「しまったあああああ!」


( ^ω^)「ちょwwwwバーローwwwww」





第11章 完



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