( ^ω^)ブーンが高校バスケで日本一を目指すようです 第4章 月夜の公園
ドクオから無言で渡されたボールをイヨウも
同じく無言で受け取る。が、その心中は穏やかではなかった。
(=゚ω゚)ノ「(……一歩も反応できなかった…)」
(=゚ω゚)ノ「(やっぱりただもんじゃねぇヨウ、こいつ。
こうやって学校で一生懸命鍛えたやつにこそ・・・)」
――ダダダダダダダダダダダダダダダダッ
(;゚ω゚)「……おっおっ????」
高速レッグスルー。イヨウの足の間を高速で移動するボールが
どちらの手でドリブルされているのか、ブーンにはわからなかった。
('A`)「(そんなもんじゃ揺さぶられるか!
さっさと攻めて来いよ…)」
高速レッグスルーを続けながらイヨウは上半身を四方八方、
様々な方向にひねり出した。
('A`)「(こんなのでフェイクのつもりなのか…?
ひっかかるわけないだろうが…)」
ドクオがやや呆れ気味にため息をつこうと視線を下に移した瞬間だった
――タン…
イヨウの体は空中にあった。イヨウが跳んだ場所は3Pラインより
2,3歩後方だった。
('A`)「(1on1でいきなりスリーぶっ放すだと!?バカかこいつは…?)」
『入るわけが無い』。ドクオはこう思った。
ディフェンスにマークされながらその場でドリブルするだけで
相手からシュートを決めることは難しい。繊細なシュートタッチを必要とする
3Pシュートなら尚更だ。
さらに屋外ではほんの微弱な風ですらシュートコースを大きく狂わせる。
ドクオの頭の中では一瞬でこれらの情報が巡った。
ゆえにドクオは『入るわけが無い』と判断した。
――パスン…
('A`;)「!!!!」
次の瞬間にはドクオの頭の中をめぐる情報は一瞬で変わっていた。
『絶対に打たせてはならない』――と。
ξ゚听)ξ「な…なによあいつ…」
(*゚ー゚)「ドクオ君とどっちが上手いんだろう…」
( ゚ω゚)「…………」
ボールが無言でイヨウからドクオへ渡る。
ドクオを右に重心をかけた。イヨウの重心がほんのわずかに
ずれた瞬間ドクオは左ドリブルで左側へ踏み出した。
( ^ω^)「(僕が何度もやられたやつだお…)」
しかしイヨウはそれに素早く反応し左に入り込む。
( ^ω^)「(ディフェンスの反応がめちゃくちゃ早いお…)」
だがドクオはイヨウが左に寄った瞬間左手に持っていたボールを
背中の後ろを通して右側にドリブルする。
ワンバウンドしたボールを右手でキャッチし
無人の右側に突っ込みレイアップを放つ。
――ザシュッ。
それは100分の1秒単位での判断力を争うハイレベルな攻防だった。
( ゚ω゚)「あのスピードからバックチェンジ…」
ブーンは自分よりもはるかに上のレベルの戦いを
ただただ見守ることしか出来なかった。
――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダっっ!!!!
先刻よりもドリブルのリズムが激しくなった。
ブーンにはもう何がどうなっているかわからない。
それでもドクオには見えているようだ。
イヨウが何度も体をひねるが全く動じる様子が無い。
――……
ドリブルの音が止まっていた。
イヨウがボールを放り投げていたのだ。
('A`)「(ボールをリング付近にに投げてそれを空中で
キャッチしてそのままシュートか!?)」
――スカイプレイ。
イヨウの意図を理解したドクオはすでにリングへ向けて
スタートしているであろうイヨウを追おうと振り向いた。
しかしそこには誰もいない。
(=゚ω゚)ノ「後ろだヨウ」
背後からイヨウの声が聞こえた。なぜ?
ドクオが振り向くとそこにはすでにシュートを放ち地面に着地した瞬間の
イヨウがいた。イヨウが放ったのはまたもや3Pシュートだった。
――パシュッ
('A`)「(…はめられた…)」
( ^ω^)「な…なんだお今のプレーは…」
二人の対決を離れて観ていたブーン達にはイヨウの行った全てが見えていた。
イヨウは本当にボールをただ「上に投げただけ」だったのだ。
ドクオはそれを「シュートにつなげる為のイヨウ自身へのパス」と錯覚した。
ボールがイヨウとドクオの間の上空にあるにもかかわらず
全く見当違いな方向を見るドクオをよそに
イヨウは落下してきたボールをキャッチし、その場で
ノーマークで3Pを放ったのだ。
イヨウの思惑通りだった。
('A`)「…やるじゃねぇの」
(=゚ω゚)ノ「そっちこそやるじゃねーのかヨウ」
('A`)「まだ6対4でそっちのリードだな。続けようか。」
(=゚ω゚)ノ「把握した」
先ほどまでの険悪なムードはほんの2,3分で消え、
そこには純粋にバスケットを楽しむ二人がいた。
('A`)「おりゃっ」
――ザシュッ
(=゚ω゚)ノ「ほいっ」
――パシュッ
まだ2人ともシュートを外していない。
2点と3点の差の累積で勝っているのはイヨウだが
内容はほぼ互角だ。
( ^ω^)「(すごすぎるお…ていうかドクオはさっきあんなに走るメニュー
こなしたのにまだ動けるなんてすごいお…僕は…)」
二人の対決はまだ続いていた。
――ザシュッ!
('A`)「あー、ダメだ…もうやめようぜ」
そういってドクオは仰向けに寝転んだ。
(=゚ω゚)ノ「実は俺も限界だったヨウ」
二人は並んで寝転んだ。
('A`)「なぁイヨウ」
(=゚ω゚)ノ「なんだヨウ?」
('A`)「……やらないか?」
(=゚ω゚)ノ「だが断る」
('A`;)「…そういう意味じゃなくて一緒にバスケを
やらないかってことだ」
(=゚ω゚)ノ「………」
('A`)「何を迷ってるんだ?」
(=゚ω゚)ノ「(ドクオは今日体育館で俺が1ヶ月近くかけて出来るように
なったドリブルを1時間でできるようになった…)」
(=゚ω゚)ノ「(わかった…さっきのイライラの正体は…嫉妬…だ。
自分より才能のある人間への嫉妬…ガキだな俺…)」
(=゚ω゚)ノ「ドクオ」
('A`)「んあ?」
(=゚ω゚)ノ「ドクオは『才能』って必要だと思うか?」
('A`)「なんだよ、急に。欲しいと思って手に入るなら今すぐ欲しいさ」
(=゚ω゚)ノ「…才能に溢れた人間が何を言ってるんだヨウ」
('A`)「俺に才能があるだって…はははっ」
(=゚ω゚)ノ「何笑ってるんだヨウ、こっちは真剣に…」
('A`)「俺ほど才能の無い選手はいないさ」
(=゚ω゚)ノ「?」
('A`)「中学に入ってすぐ身長が低いわバスケは下手だわで
部内でいじめられてたよ、俺」
(=゚ω゚)ノ「…!!」
('A`)「すげぇムカついて、やり返したかった。でも
俺は力が無かったし、何も出来なかったよ」
(=゚ω゚)ノ「……」
('A`)「だから毎日ぶっ倒れるまで練習しまくった。
せめてフロアに立ってる間だけでも一番になりたい、ってね」
('A`)「俺のスキルは10年間のバスケ人生の集大成だ」
(=゚ω゚)ノ「……!!」
('A`)「イヨウはどうなんだ?才能って必要だと思うのか?」
(=゚ω゚)ノ「俺は…」
(=゚ω゚)ノ「(なんだ、そうだったのか…コイツも俺と同じで
バスケでしか自分を表現できないバスケ馬鹿…)」
(=゚ω゚)ノ「俺も同意見だな。才能なんて壁は…
努力で越えられる」
('A`)「だろうよ。あのフリースタイルドリブルはちょっと
練習したくらいで出来るわけないもんな、
相当練習したんだろうよ。俺今日インチキして
何とかできたんだぜ?」
(=゚ω゚)ノ「(俺の本当の気持ちはなんなんだ…?これからもずっと
一人でスキルを磨くことなのか…?)」
('A`)「あんなドリブルできたら女の子は失神ものだろw」
(=゚ω゚)ノ「一緒に…やってもいいかヨウ?」
('A`)「とーぜん。明日は部室の掃除からだ。ちゃんと来いよ」
(=゚ω゚)ノ「お前w掃除やらせたかっただけか?ww」
('A`)「あるあr…あるあるwwwww」
(=゚ω゚)ノ「おまwwwwwww」
ほんの数十分前まで険悪だった2人がいつしか笑い転げている。
新しい部員の誕生を祝福するかのように、かげりの無い満月が
2人の上で輝いていた。
( ^ω^)「何話してたんだお…?さっきまで喧嘩しそうだったのに
いつの間にか仲良くなっちゃったお…」
ξ゚听)ξ「あぁー汗くさ。しぃ、行こ」
( ^ω^)「ちょwww」
第4章 完
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