−−−−三日目・その3




---バーボン国


あれからどれだけ時間が経ったか、誰一人通行人の無いこの国での数十分はとても長かった。
マターリはもう泣き終わり、自分の横でずっと無言でいた。

川;´ー`)「まだ……ですかねー?」

(;^ω^)「……人が出てこないからまだだと思うお」

川;´ー`)「ですよね……」

時たまする会話もこれくらいで終わってしまう。
そんな事分かっていて相手も聞いていると言うのに、気の利く返し方が出来ない自分。
会話が続くわけなんて無かった。

それでも時間は経っていく、しばらくすると助手の人が出てきた。

(;`ハ´)「ふぅ……」



  
川;´ー`)「アルーさん、しいちゃんは……大丈夫ですか!?」

(;^ω^)「どうなったお!?」

(;`ハ´)「ああ、とりあえず……出産 は 終了したアル」

『出産 は 』、含んだ言い回しだった。

(#^ω^)「しいさんはどうなったお!?」

(;`ハ´)「落ち着いてくれ、我々も人手が足りないなりに尽くしたアルよ!」

人手が足りない?だったら自分達を呼べばよかっただろう。
その言い訳がまた気に触った。
自分たちはそこまで無力なのか?

(#^ω^)「尽くしたって……もしかしてしいさんは……!」

(;`ハ´)「言い方が悪かった、しいは大丈夫アル。これから運ぶから手伝って欲しいアルね」

川;´ー`)「主様、とりあえず言われたとおりにしましょう……」

(#^ω^)「……」

言われた事しか出来ないのだ、そこでの自分はすごく小さい存在だった。
運ぶのを手伝うといっても、やっぱりただの荷物運びに過ぎなかった。
酷く屈辱的で……酷く辛かった。



  
川´ー`)「主様、元気出しましょうー」

自分と同じく荷物運びをさせられているマターリさんが声をかけてくれた。
そう、この状況下での不要な者同士だ。

( ^ω^)「……自分は無力だお」

所詮何の突出した技能も持っていない一人がどう足掻いても無駄なのだ。
"心の主"という事で何か自分が他とは違う存在になった気になっていた。
そうだ、自分はただの人なのだ。

( ^ω^)「ごめんだお、マターリさんも辛いのに……」

川´ー`)「私は大丈夫ですよー、それよりしいちゃん大丈夫ですかねー?」

気を失っているのか熟睡しているのか、しいさんは医者のモナーさんとその助手のアルーさんに運ばれていた。
そして子供はクーさんが大事に抱えて。

自分たちは人一人も支える事が出来ない、ただの荷物持ちなのだ。



  
医者のモナーさんにしいさんを預けると、とりあえず状況を報告してくれた。

出産自体は成功したらしい、しいさんも特に問題は無く、数時間後には目覚めるだろうとのことだった。
ただ問題が子供で、随分衰弱しているらしい。
そう言われると泣き声などが全然無かった。
クーがずっと背中をさすっていたようだったが、あまり効果はなかったようだ。

(´∀`)「とりあえず赤ん坊は我々が何とかするモナ」

( `ハ´)「頑張るアルよ」

(´∀`)「だから二人はしいについてやって欲しいモナ。
   そして起きたら我々に知らせてほしいモナ」

( ^ω^)「はいだお!」

恥ずかしいが、この時すごく嬉しかった。
ただしいさんを見ているだけだ、だけど仕事を与えられた気がして……自分でも何かできるんだなって。

モナー医師と助手のアルーさん、そしてクーさんは赤ん坊の所へ行った。
僕とマターリさんは、しいさんの隣でゆっくりと見守った。

川´ー`)「なんだか……嬉しいですね」

( ^ω^)「まったくだお」

マターリさんが生命の誕生に対してそう言ったのか、
自分たちに仕事が与えられた事に対してそう言ったのかは分からない。
いずれにしても答えは同じだから返事は同意を表した。



  
川´ー`)「赤ん坊……大丈夫ですかねー?」

( ^ω^)「大丈夫だといいお」

川´ー`)「……主様」

( ^ω^)「何だお?」

川´ー`)「医療の発達も……主様の力にかかわるのですかね?」

(;^ω^)「え……」

マターリさんがそんな事を聞いてくるとは思わなかった。
こんな状況でそんな事を聞くとは……心をこちらに傾けろという気か?
まただ、すぐこうやって相手を深読みしてしまう、これはいけない。

しかしどうだろう、きっと質問の答えは……YESだろう。
住まいや道までが変貌するんだ、医療機器や医療技術が向上してもおかしくない。

だけど答えれなかった、答えると認めてしまうようで……少しでもその事実を否定したかった。

(;^ω^)「分かんないけど、それはないと思うお」

川´ー`)「ですよね、ごめんなさい……いじわるな質問でしたねー」

(;^ω^)「気にしないお」

川´ー`)「しいちゃん、早く目を覚ますと良いですねー」

(;^ω^)「早く目覚めて欲しいお」



  
---バーボン国、ドクシン国境界・ドクシン側


(=゚ω゚)ノ「いくぞ、オマイラ!!」

いようの掛け声と同時に十数人の剣兵が走り出した。
足を遅めてはいけない、ひたすらに走り出した。

この際隠れるつもりも無い、声をあげる。

  「うおおおぉぉぉぉっ!!!」


---バーボン国、ドクシン国境界・バーボン側


(,,゚Д゚)「とうとう来なすったぜ」

(´ー`)「シラネーヨ」

(・∀・)「とりあえず出撃して。足止めもすぐに放つから」

(,,゚Д゚)「おう、それじゃ俺達も行くぞゴルァァ!!」

応えるようにバーボン国からも十数人の剣兵が駆け出す。
遂に戦は始まった。



  
---バーボン国、ドクシン国境界


足音が幾つもこだまする、それほど力強く地を踏みしめていた。
そして向かいからも複数の足音が響き渡る。

(=゚ω゚)ノ「バーボンからもいよいよ来たか……兄者、大丈夫か?」

( ´_ゝ`)「おかげさまで平静を保てている」

(=゚ω゚)ノ「よし、足を休めずに進め……ッ!!」

   ヒュッ

そんな軍団の足元に木の矢が刺さる。
その精度の良さ、そして速さに唖然として足が止められる。

(;=゚ω゚)ノ「これは……木矢か、しかしこの精度は恐ろしいな」

今日は風がそれなりに吹いているというのに、力強くうまく風に乗っている。
相手の姿は見えない、相当離れたところから打ってきているのだろう。

(;´_ゝ`)「厄介だな、下手に近付きすぎれば相手の射程範囲だ」

(;=゚ω゚)ノ「この精度の木矢、どうするか……」



  
今程度の距離ならよほどのことが無ければ狙った箇所に命中させられることは無いだろう、
だがこれ以上近づくなら話は別だ。

(;=゚ω゚)ノ「とりあえず、狙われにくいように互いに距離をとって止まらないように、慎重に動け」

そして一変してじりじりと近づくドクシン国一団の前にバーボン国が現れた。

(´ー`)「あんまり近づくとアブネーヨ、矢の餌食ダーヨ」

(;=゚ω゚)ノ「いよう、シラネーヨに……ギコか」

(,,゚Д゚)「少しぶりだな、だが……今日は勝たせてもらうぜ?」

(#´_ゝ`)「ギコーッ!!」

(,,゚Д゚)゚ω゚)ノ「!!」



  
その時、それまで静かにしていた兄者が叫んだ。
一気に騒然となるその場、兄者は一歩前に進み出た。

(#´_ゝ`)「オマエに正々堂々と勝負を申し出る!」

(;=゚ω゚)ノ「待て、兄者……」

(#´_ゝ`)「関係ない!」

いようの言葉に耳も貸さず、飛んでくるかもしれない矢に脅えも無く兄者は仁王立ちした。
その勇ましい姿にギコが応える。
兄者の正面に、彼も堂々と仁王立ちした。

(;=゚ω゚)ノ「兄者、そのままでは矢の餌食に……」

(,,゚Д゚)「安心しろ、正々堂々を後方から狙うなんて野暮な真似するヤツはバーボンにはいない。
   して兄者とやら、オレと一対一の真剣勝負……するんだな?」

(#´_ゝ`)「ああ! だがその前に、オマエの殺した弟者について少し話を聞け!」

(,,゚Д゚)「いいだろう、どんな怨恨か……殺す前に聞いてやるぞゴルァ!」



  
---バーボン国、ドクシン国境界・バーボン側


(・∀・)「あーあー、あんなに正々堂々と……相手の人打ち抜けそうだなー打ち抜きたいなー。
   でも打ち抜くとギコさんうるさそうだしなー……代わりになりそうなエモノは……」

ジエンは他とは比べ物にならないほどに目がいい。
「千里眼」の通称で知られる彼を侮ってはいけない、後方で隠れている者も彼には一発で見つかる。
ドクシン国の知らない、バーボン国の隠れたハンターだ。

ギコはくそ真面目に相手の話を聞いている、武士道とか何とか……相変わらず敵に対しても紳士的な人だ。

その敵陣の後ろを、はるか後方を見ると……隠れるように独りの男がいた。

( ゚д゚ )



  
---バーボン国、ドクシン国境界・ドクシン側


その男は黒い、木で作られた長い棒を構えていた。
一体何をしているのか……


   パンッ


乾いた音がその場一体に響き渡った。
そして……ギコが顔面から血を噴いた。

( ゚д゚ )「ヒュー、オッケー。狙い通りだ」

次の玉を装てんして狙いを定めるミンナ。

( ゚д゚ )「火縄銃なら、これくらいの風は……もろともしないぜ?」


   パンッ


さらに乾いた音がそこに響いた。



  
---バーボン国、ドクシン国境界


突然の音と供に大将のギコが死んだ。
目では見えない何か、その何かにバーボン側は恐怖した。

バーボン兵「うわああぁぁぁあぁぁ!!」

すぐに引き返そうとするバーボン兵、だがそうはさせるか。
一人だけ近付いていた兄者は、すぐに追撃を開始する。

(=゚ω゚)ノ「よし、兄者に続け!」

そしてなだれるようなドクシンの追撃が始まった。


   パンッ


さらに乾いた音が響くと、バーボンの人間は死んだのではないかという錯覚に陥った。
そして驚きに足を止めた者は本当に死ぬ。
戦う気力なんて残っていない、ただ逃げるだけで精一杯な人たちは脆かった。

バーボン兵「なんだ、何が起きたんだぁぁ!1」

(;´ー`)「シラネーヨ!! ジエン、援護射撃はどうした!!」

叫んでも聞こえない、なぜならジエンは誰よりも早くその場から逃げ出していたのだから。
一方的な恐怖がバーボンを襲った。



  
その場は地獄絵図のようになっていた。
いや、一方的な戦況だからバーボン側にとってそう見えただけでドクシン側からすれば完全勝利なのだろう。

いようの剣が、最後の兵であるシラネーヨに向いた。
シラネーヨの手に剣は無い、逃げる時に邪魔だったから投げ捨ててしまったのだ。
そう、もう彼はとうに戦う事を放棄してしまっていた。

(=゚ω゚)ノ「バーボンでギコに次ぐ剣士が……戦いを放棄か?」

(;´ー`)「……オマエ達は、どこまでが計算どおりだったんだーヨ?」

(=゚ω゚)ノ「もちろんすべてだ。
   兄者が暴走したように見せたのも、正々堂々を言ったのも過去を話し出したのも……
   すべてギコの動きを止めるためだ」

(;´ー`)「卑怯者が……ギコさんの武士道を騙しやがって……許さなねーヨ」

(=゚ω゚)ノ「ギコが『集団から抜け出た狙い易い状況』で、『銃の発射までに必要な約3秒間動きを止める』手段……
   卑怯は承知だ、だがこれしか思いつかなくてな」

いようの剣がシラネーヨの首を刈った。
そして、戦いはドクシン国の勝利で終わった。
バーボン国は……かけがえの無い犠牲を幾らも出すこととなった。



  
---バーボン国


相変わらずしいさんは静かに眠っていた。
マターリさんとゆっくりと話をする。

そして話題も尽きたかという時、マターリさんからこんな事を言われた。

川´ー`)「戦い……どうなったんですかね?」

(;^ω^)「……!」

ドキッとした。
自分の心は昨日までは明らかにドクシンに傾いていた、だから戦いの結果がどうなっているか……
大体の想像は出来ていたから。

川´ー`)「ギコさんも、無事だと良いですねー」

(;^ω^)「ぜひ頑張ったしいさんと子供の顔を見てあげて欲しいお」

きっとバーボン国は戦いに負けているだろうが、ドクシン国の人たちはいい人だ、
まさか殺したりなんてしていないだろう。
そもそもギコさんは強い人だ、少々の発達なら構わず打ち崩しそうだ。

……なんだろうこのいい訳は、もしかして心が今度はバーボンに傾いているのだろうか?
それが心配になった。

川´ー`)「実は……私の夫も今日戦いに出ているんです……」



  
( ^ω^)「mjd!? だから今日戦争やっているって知っていたのかお!?」

川´ー`)「そうです、あの人すごく張り切っててね、今日は絶対勝つって……。
   シラネーヨっていう人なんですが、ギコさんをすごく慕っていて……
   今日は主様が来て初めの戦いだから、幸先良く勝つぞってすごく意気込んでました」

( ^ω^)「……」

何て返せばいいのか分からなかった。
マターリさんはいい人だ、だから悪気は無いのだろうが……まるで僕に恩を売るように話する。
僕の気持ちをバーボン国に傾けようとしてくる。

川´ー`)「私たち4人は仲良しなのよー?」

( ^ω^)「それじゃあ今日はお祝いだお!」

川´ー`)「そうですね、そのためには……しいちゃんの目が覚めて……
   子供が元気になってくれれば……」

(;^ω^)「きっと大丈夫ですお、しいさんは医者のモナーさんもすぐ目覚めるって言ってたお!」

川;ー;)「でも……子供が……」

(;^ω^)「子供もきっと大丈夫だお、クーさんも見てくれているんだから大丈夫だお!」

突然崩れるマターリさんに戸惑う、どことなくヒステリックな人だと思った。



  
そうやって自分たちがやり取りしていると、しいさんが声を出した。

(* ー )「……ぅん……」

川´ー`)^ω^)「!!」

慌てて僕は医者のモナーさんに伝えに行くと、そのままモナーさんとクーさんが一緒に来た。
戻るとしいさんは完全に起きていた。

川;ー;)「良かったよしいちゃん……本当に良かったよ……」

(;*゚ー゚)「大袈裟だから、マターリちゃん。私はこの通り元気だよ?」

( ;ω;)「しいさーん、良かったお、本当に良かったお!」

(;*゚ー゚)「主様まで……二人して本当にどうしたの?」

川 ゚ -゚)「しい、元気なようで何よりだ」

(´∀`)「特に何も無かったようで、安心だモナ」

(*゚ー゚)「あ、二人とも……子供……ありがとう」

川 ゚ -゚)「覚えているのか?」

(*゚ー゚)「何となくだけどね。それで、子供は……?」



  
(;´∀`)「そうですね、お話するモナ」

医者がそう言ってしいさんの隣に座ると、クーはすぐに僕の腕を引っ張って外に出た。
そしてツカツカと歩いていく。

(;^ω^)「おっ、おっ、どうしたお?」

川 ゚ -゚)「空気嫁」

(;^ω^)「もしかして赤ん坊が……!」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ、生きている」

(;^ω^)「良かったお……」

川 ゚ -゚)「ただギリギリだ。おそらく一命は取り留めるだろうが、脳に後遺症は残るだろうとモナーが言っていた」

なるほど、それを話するからクーはあの場を後にしたのだろう。
たとえ子が生きてくれるとはいえ、後遺症が残るというのは親には辛い。
しいさんならそれでも生きてくれればと言うだろうが……涙なくしては無理だろう。
泣きたい時に自分達がいては野暮というものだ。



  
( ^ω^)「それじゃ、これからどうするお?」

川 ゚ -゚)「ショボンに会いに行くのだろう、案内する」

( ^ω^)「そういえばそうだったお、よろしくお願いするお!」

それからしばらく歩いたが、やはり誰と会うことも無かった。
もしかしてドクシン国なら、しいさんの発見も早かったんじゃないのか……そんな考えが浮かんでくる。
それにしてもこの国の係わり合いが簡素すぎるのだ。

集落が近付いてきた頃、ようやく一人の男に出会った。

(―_― )「あれ、クーさんじゃないですか。それでは隣にいるのは"心の主"様ですか?」

川 ゚ -゚)「ヒッキーか。そうだ、彼が"心の主"だ」

( ^ω^)「はじめましてだお」

(―_― )「主様はじめまして、ヒッキーです。それで、お二人でどこへ?」

( ^ω^)「これからショボンさんの所へ行くお」

(;―_― )「え、今は止めた方が……」

今まで無関心そうにしていたヒッキーさんの顔が一気に蒼白になった。
目に見えて動揺している。



  
( ^ω^)「どうかしたのかお?」

(;―_― )「戦いで……剣兵が全滅し、ショボン様はお怒りです」

その言葉を聞いた時、一気に頭が真っ白になった。
言いたい事が良く分からない、理解しようという意志が働かない。
人事のように聞いていた気がする。

( ^ω^)「剣兵が全滅って……どういう事だお?」

(;―_― )「我々は……負けたんです」

(#^ω^)「そんな事聞いてないお、その剣兵たちは生きてるよなって聞いてんだおッ!!」

思わず声を大きくして詰め寄った自分に、ヒッキーさんは首を横に振った。
一瞬相手を殴ってしまいたい感情に駆られた。
「嘘言うな」と殴ってしまいたい、でもそれが無意味な事も分かっていた。

(;―_― )「弓兵のジエン他4名が……唯一の帰還者でした……」

川;゚ -゚)「……」

クーも顔面蒼白だった。
そうだ、いくらドクシン国出身の人間でも今彼女はバーボン国の人間なのだ。
バーボン国の暖かさに触れてきたのだろう、それがしいさんやマターリさんなのだろう。

川;゚ -゚)「主様……」

(  ω )「帰るお……」



  
中立のVIP国に帰るともう日は落ちていた。
朝からずっと食事していない事に気付いてジョルジュさんに料理を作ってもらったが、
喉を通り抜けるたび激しい嘔吐に苛まれて結局全て吐き出してしまった。
吐いても吐いても足りない、それほどに気持ち悪かった。

( ;ω;)(僕のせいかお? 僕のせいかお? 僕がドクシン国に揺れたからかお?)

ムカついて自分のお腹を力任せに叩いたが胃には何も入っていないのか、胃液が出るだけだった。
それでも吐いてる時は少し楽になれた気がした。
気持ち悪いのだが、罪滅ぼしが出来ている気になっていたのだろう。
全てを吐くと悔しさでいっぱいだった。

自分の無力感、そして自分の重大さ、その双方から押しつぶされそうだった。

昨日まで辛い辛いと思っていたが、全然大した事無かった。
昨日までは……"心の主"という存在をどれだけ甘く見ていたのか?

この大切さに気付かなかったなんて、酷くバカみたいな話だ。

( ;ω;)「うっ……うっ……!」

頭を殴りつけた、指が痛かったがそれ以上に心が痛いのだ。

自分を殴るからもう許してくれ。
泣くから、恥ずかしい程に泣きわめくからもう許してくれ……。



  
−−−−三日目・夜

二つの気持ちが交錯していた。
もう寝て全てを忘れたいという気持ち、そして寝なければ世界が変化する事は無いのではないかという気持ち。

だが体はひどく疲労していた。
眠い、だが寝ていいのかと自問すると気持ちが高揚して胸が締め付けられ、苦しくて寝るどころではなかった。

( ;ω;)「うぅ……」

自分は卑怯者だ、自分のせいで苦しむのは自分で無く他なのだから。
だから他は自分にあたれない。
戦いの結果のことを、しいさんやマターリさんは知っているのだろうか?
しいさんは自分にどういう対応をするのだろうか?
マターリさんは自分をどう思うのだろうか?

苦しかった、逃げ出したかった。

一度動いた天秤を傾ける事は簡単だが、再び釣り合せる事は難しい、そんな事を思った。

同じ事を何度も輪廻するように考えていると、気付いたら寝ていた。
ああ、明日はどんな進化が国に起こっているのだろう?




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