−−−−七日目
今日もいつも通り重い体に鞭をうって起きた。
今日は……どこにも行かなくていいんだ、それが嬉しかったり悲しかったり……。
今までは行動しないとという圧迫があったけど、今日はそれが無い。
その代わり……行動できる先も無いのだ。
そんな事を考えながらいつも通り朝食を食べた。
ξ゚听)ξ「朝から元気ないわねぇ……低血圧?」
( 'ω`)「朝は毎日こんな感じだお……」
/ ,' 3「若いモンがそれじゃいかんのぅ」
(;゚∀゚)「というかオマエらいい加減自分の家でメシ食えよ」
朝からさも当然のようにツンと荒巻さんを加えてごはんを食べると、
やる事の無い今日という日をもてあまし始めた。
( ゚∀゚)「しっかし本当に、一日で一気にやつれた様な顔になったな」
( 'ω`)「昨日まででもかなり痩せたはずだお、だけどもう一絞り出来そうだお」
( ゚∀゚)「……ったくよ。とりあえずオレはこれからそれぞれの国に調査行って来るからな」
(;^ω^)「待って欲しいお、もし行くのならこれから言う人達が無事かどうかを聞いてきて欲しいお。
しいさんにマターリさんにニダーs……」
(;゚∀゚)「まてまて内藤」
ジョルジュさんは自分を抑制すると言葉を続けた。
( ゚∀゚)「仮にその人達が死んでいたら……どうするんだ?」
(;^ω^)「え……」
( ゚∀゚)「戦況は毎晩報告しているだろう?
それとも知っている人が死んだらその国に同情するが、知らない人ならいくら死んでもいいって言う気か?」
言われるとその通りだった。
自分の知らない人が何十人と死んでいる中で、知り合い一人だけの死を重く扱おうなどとはどれだけ横暴な主だ。
そんな事にすら今更気付くなんて、ほとほと自分のダメさに呆れた。
(;^ω^)「そ、そんなつもりは無いんだお、ただ……その……」
何を言い訳しようとしているんだ見苦しい。
結局その逃げの言葉は続かずに、無言の時が少し流れた。
やっぱり中立国の人達はすごい、ここにいると自分がただの人だと改めて思わされる。
"心の主"なんて関係ない、人対人で自分がいかに無能かを思い知らされる。
どれだけ他の人が考えて行動し、どれだけ自分の事を考えてくれているかも。
そして自分がどれだけ自分の事を考えていないか、"心の主"の責任を放棄しているかも。
ジョルジュさんは口を開いた。
( ゚∀゚)「しいにマターリにニダーにいよう、以前にオマエから聞いた4人だ。
後は昨日のジエンを足して5人、他にはいないな?」
(;^ω^)「……」
その通りだが、「知り合いが死んだ時だけ特別扱いか?」そう言われた後だけに何も言い返せなかった。
ジョルジュさんも必然的にそれをイエス返事と受け取ったのだろう、言葉を返した。
( ゚∀゚)「もう……そのうちの一人はこの世にいないよ」
(;^ω^)「!!」
( ゚∀゚)「内藤、以前にも言ったよな。『認めるところは認めて、吹っ切れ』って。
オマエが辛いのは分かる、全部が全部分かってやることは出来ないだろうが、
少なくともオマエが思っている以上にここVIP国の人達は分かっている」
ジョルジュさんの言葉が胸に響いた。
ツンの時もそうだった、色々考えてくれている事も知らずに無責任なことを言って怒らせてしまったんだ。
( ゚∀゚)「辛いからって考えを放棄してしまうのはオマエの悪い癖だな。
もう少し周りに振り回される事無く、自分と向き合って考える事をしたほうがいい」
そう言ってジョルジュさんは挨拶も無しに他国の調査に行ってしまった……。
---ドクシン国
从'ー'从「あれれぇ〜、子供が一人足りないよぉ〜?」
(;'A`) 「ちょwwwおまwww」
从'ー'从「冗談だよぉ〜」
(;'A`) 「……渡辺さんの相手は子供以上に疲れるな」
ニダーが世話をしていた子供たちを、今はドクオと渡辺さんが世話をしていた。
(;'A`) 「悪いな渡辺さん、ニダーがいなくなったばかりに……」
从'ー'从「いいですよ別にぃ〜子供好き〜」
(;'A`) (色んな意味で、渡辺さんからも目が離せないな……)
この子供たちを世話していたニダーがいなくなって分かる、その大変さ。
複数人で世話していた時が多かったとはいえ、時にはこの人数を一人で受け持っていたんだ。
今更ながらに感謝がこみ上げてきた、もう彼はいないというのに。
('A`) 「とりあえずもう少ししたらまた何人か手伝いに来てくれるから。
それまで頑張ろうか」
从'ー'从「はい〜」
('A`) 「……」
そしてドクオは頭の中で今朝のいようとの話し合いを思い出していた。
そう、いよいよ停戦状態になったと思ったのは昨日だったのに。
(;=゚ω゚)ノ『もう……戦いは止まりませんね』
諦めきった顔でそう言ったいように酷く同情した。
果たして今日の自国は相手国よりも進歩しているのか?
もし相手の方が自分たちよりも進化していたとすると……どんな戦いが繰り広げられるかなんて考えられなかった。
('A`) 「戦いは、止まらないか……」
窓から見える青い空を見上げた。
戦いの舞台はどこにでもあった、それに気付いたのは今朝の進化だった。
これ以上は……犠牲が多すぎる……。
その頃、ミンナは数人の兵を連れて町外れの森にいた。
今後のために避難場所を作らなくてはいけない。
国民を守るためには相手に見つからない安全な場所が必要なんだ。
( ゚д゚ )「……」
多分この場所に作れば相手国に見つかる事は無い。
いざという時は国民をここに避難させれば安心だろう。
周りの兵が口をそろえて言う中、今ひとつミンナはそれを信用できなかった。
おそらくここなら自分だって気付くまい、自分以外なら偶然でも無い限りこの避難所を見つけることは不可能だろう。
……ただ一人を除いて。
バーボン国にいる、まだ姿を見せぬ一人の兵、そればかり考えていた。
結局昨日の戦いでもその相手を殺すことはおろか見つけることすら出来なかった。
恐ろしく見渡しがきき、最高の射撃の腕を持つその男……。
あの男からは何も隠せない気がした。
(;゚д゚ )「ちくしょぅ……」
そうぼやきながらミンナは指示した。
(;゚д゚ )「もっとだ、もっと見つかりにくい安全な場所を探すんだ!
ここではまだ見つかる可能性がある!」
誰もが信じようとしなかったが、ミンナには根拠の無い自信があった。
ここではダメだ、もっと見つかりにくく安全な場所を作らないといけない……。
---バーボン国
(´・ω・`)「さて、いよいよ完璧に勝負はつきそうだね」
そう言いながらショボンは鉄で出来た大きな筒を手に持った。
ずっしりと重量を感じる、これで狙いを定めるには相当の筋力が入りそうだ。
発射した時の衝撃などどれほどになるのか?
( ^Д^)「あんまりショボンさん無理しないで下さいよ?
俺も初めて持ったときはあまりの重さに驚きましたがね」
(・∀・)「プギャーと僕で完全に殲滅できそうですねー」
バズーカとでも呼べばいいのか、その巨大な大筒をプギャーは持って構えた。
素晴らしい筋力だ、スコープを覗いた中腰の体勢で見事に制止した。
(´・ω・`)「銃合戦の次は、いよいよ爆弾での合戦だね」
バズーカと銃、バーボン国にとうとうそれらが揃った。
これで負ける訳が無い、そう思った。
そう、これで負ける訳が……。
---中立VIP国
( ^ω^)「落ち着くお……」
昼に入ってからも、いい加減にしろと自分で突っ込みたいほどのんびりとしていた。
ここ数日はずっと何かに追われているような切迫感のもとで無理やり動いてきたんだ、
今のようにのんびりとする時間も大切だと自分で自分に言い聞かせた。
そうこうしている間に二国は戦いを始めてしまうのだろう、だが今はそれもどうでも良く思えた。
同時、無責任という考えが浮かんだ。
さっきジョルジュさんに言われて実感したのにまたすぐに無責任になっている自分。
いや違う、自分なんかが抗ってもどうしようもないんだ、何も出来ないんだ。
なるようにしかならないんだ。
行き場を失った自分は何に対してもやる気を感じなくなった。
どれだけ頑張っても進化は止まらないし、二国は和解しないんだ。
自分が一体何が出来るのだろうか?
死んだ知り合いが誰かも分からない自分。
行き場を失った自分は……どうすればいいんだろうか?
……バッバッバッバッ……
( ^ω^)「!?」
突如遠くで激しく大きな音が聞こえた。
銃を連射するような音?……いや違う。
何だこれは、どこかで聞いたことがあるような音だが……。
その時、ブーンの目線の先の空に何かが見えた。
(;^ω^)「ちょ……もしかして……」
どう見てもヘリコプターです、本当にありがとうございました。
方角的にはドクシン国領土内だ。
まさかそんな技術が?
誰が一日でヘリコプターが出来るような技術が出来上がると思うんだ。
誰が一日でヘリコプターを作り上げれると考えるんだ。
バーボン国はどうなんだろうか?
もしバーボン国にヘリコプターがなければ……この勝負は一方的になるだろう。
むしろ一般人にまで被害が及ぶだろう、空の行く手を阻む方法は無いだろうから。
もしバーボンにヘリコプターがあれば……どうなってしまうんだろうこの世界は?
寒気がした。
ヘリコプターは今までテレビなどで何度と見たことがあったが……今回の物は特別に恐ろしかった。
恐怖の象徴ともいえた。
そして大きなプロペラ音を響かせて、ヘリコプターはバーボン方面へと飛んでいった。
---バーボン国側
『それ』は唖然とするバーボン国の兵士達の上を飛んでいた。
かつてないほどの騒音がバーボン国の兵を圧倒した。
(;・∀・)「……」
(;^Д^)「……」
手も足もでない、空中からそれは自分たちを見下ろしていた。
銃とバズーカ、確実に陸戦は制したと思っていたのに……。
改めて人は無力だと思い知らされた。
『それ』から手榴弾が投下され、すぐさま周りは叫び声が響き渡る。
「うわぁぁぁぁぁあ!」
「逃げろおお!」
(;^Д^)「ちくしょう、このやろう降りてきやがれ!」
辺りが叫び続ける中、二人の男達が上と下から睨み合っていた。
( ゚д゚ )
(・∀・)
---ドクシン国側
( ´_ゝ`)「どうした、ミンナ?」
( ゚д゚ )「ヤツが……いた……」
ミンナは本能で察知した、自分を超えるそのスナイパーの存在に。
安定しないヘリコプターの脇に、銃を持って構える。
対して相手も下から銃を構えていた。
パンパンッ
上からと下からの発砲音、銃弾は互いの体を打ち抜くことは無かった。
(・∀・)
相手はまだこちらをずっと見据えていた。
ミンナは舌打ちした。
( ゚д゚ )「悪いが……これで死んでもらえるか?」
そして上空から相手目掛けて手榴弾を投下した。
ボォォンッ
大きな音を立ててそれは爆発した。
相手が死んだかどうかは分からない、確認代わりにもう一発手榴弾を投下した。
---中立VIP国
(;^ω^)「なんで……なんで……」
体が異常に震えた。
まったく想定外の進化だった。
地対空なら空に分がある、一方的に決まっている。
耳をすますと爆発音が何度も響いた。
今すぐ止めに走るべきか?
いや、きっと自分なんかがどう頑張っても止まるわけなんて無い。
しいさん……女性一人止められなかった自分が頑張っても無駄だ。
これが……進化なのか?
この進化はいつ止まるんだ?
このまま止まらなければ……数日後には……。
(;^ω^)「うわああぁぁあぁぁぁ!!!11」
その進化の速さが怖くなった。
数日中に自分が結論を出さなくてはいけないんだ。
絶対に近い内に勝負が決まる。
そういったことを考えるのが嫌になり、ただひたすらに叫んだ。
−−−−七日目・夜
その日は夕食もとらずに逃げるように床に就いた。
残り限られた数日、一時でも無駄に使ってはいけないと思う反面、残りをもう何も考えずに過ごしたいと思った。
なんだろうこの気持ちは、焦る気持ちと諦めの気持ちが交錯している。
もうこのまま寝続けて……目が覚めたら全てが終わっていてほしい。
( 'ω`)「……」
そういえば今日はジョルジュさんの戦いの報告を聞かなかった。
勝負はどう考えてもドクシン国が勝ったのだろう。
一般人は被害にあったのだろうか?
でもドクシン国のほうが人材は少ないし負け越していたからちょうど良かったんじゃないのか?
ちょうど良かったなんて不謹慎だ、本気でバランスが取れたことに嬉しく思っている自分に嫌悪した。
そういえば知り合いが既に一人死んでいるとジョルジュさんに言われたっけ。
誰だろう、一体誰が死んだんだろう……。
( ;ω;)「ウッ……」
それを知る術すらないなんて……あまりに悲しい現状だった。
もういい。自分はこの束縛から逃れたいんだ……もうずっと寝続けて……それでいいんだ。
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