−−−−九日目



(;゚∀゚)「内藤、内藤!」

この日の夜も寝辛くて、夜中に何度と目を覚ました。
もっともそのまま何を考える事でもなく寝直していたのだが。

そして朝、早い時にジョルジュさんに起こされる。
こんな時間に……睡眠は十分にとってあったので目はすぐに覚めた。

( ^ω^)「……」

睡眠は十分なのだろう、目覚めると一機に昨日のことが蘇った。

ニダーさん、アプー、ドクオさん……やっぱり知り合いが死んだと言うだけですごく辛い。
たとえそれが自分勝手で卑怯でも構わない、死者20人よりもこの3人の死の方が酷く重かった。

( ^ω^)「……」

目は覚めているが言葉を発する気に今一つなれずにボーっとしていた。
しかしジョルジュさんは焦った様子で繰り返す。

(;゚∀゚)「内藤、起きたんなら早くしろ!」

( ^ω^)「……どうしたんだお?」

(;゚∀゚)「ドクシンに行くぞ、早くだ!!」

それで分かった、自分が昨日で更に大きくドクシンに心動いた事が。



  
昨日の戦闘機からの進化……正直考えたくなかった。
ジョルジュさんに誘われたが、自分はドクシンに行きたくなかった。
多分……行くだけで泣いてしまうかもしれない。

良い思い出が多すぎた。

( ^ω^)「僕は……」

(;゚∀゚)「いいから早く!!」

(;^ω^)「おっ……?」

ジョルジュさんのあまりの急き様に圧倒されてドクシン国に連れられた。


行く道でのそのふいんき(何故か変換できない)はやけに物静かで気持ち悪かった。

( ^ω^)(もう、ドクシンに行っても……ドクオさんはいないんだお……)

何よりこの時はどこまで今が切羽詰った状況かなんて考えていなかった。
ただ昨日の事を考えて、その上で平生を保つ事で精一杯だったんだ。


ドクシン国に着いてからも、今まで行っていた集落とは別の集落に向かったようでもう少し歩く事となった。

そして目的地に着いた時、その時にようやく今の状況がどれほど緊迫したものかを理解した。



  
そこは知らない人ばかりだった。
もともと自分の行っていた集落の人達は一人もいないんだ、当然といえば当然かもしれない。

そしてその上で、人々は狂ったように『それ』の整備を繰り返していた。

ジョルジュさんが慌てる理由も分かった気がする。


昨日の人が今ドクシン国の中心として動いているようだった。
見つけると慌てて話し掛ける。

(;^ω^)「おっおっおっ!」

(=゚ω゚)ノ「ああ、内藤さん。来ていただけたんですね」

今自分達が何をやっているのか分かっているのか?
その人の声は清清しかった。

爽やかだった、まるで宗教のような印象を受けた。

(;^ω^)「何やっているんだお!!」

自分が叫ぶと、一瞬にして周りが静かになる。
そして自分を"心の主"だと知らない人達からは奇異の目が向けられた。

そんな事構わない、それどころじゃない。



  
(=゚ω゚)ノ「もしかして『これ』ですか?
   我々はドクシン国の兵たち複数の名前の頭文字を取って『テポドン』と名付けました。
   Dはドクオさん、Nはニダーから取ってあります」

(;^ω^)「どんな事どいうでもいいお!
   これを撃ったら……どんな事になるか分かってるんだお!?」

(=゚ω゚)ノ「相手国を完全に滅ぼします」

その言葉に感情がこもってなく恐怖した。
そうだ、むしろここの人達にとって"心の主"の存在なんて今更なのかもしれない。
そんなものに止められるほど半端な決意ではないだろう。

自分にとってはそれしか無いというのに。
"心の主"という肩書きしかないというのに。

それが無い自分はただの一般人だ。

(;^ω^)「止めてくれお……それはいけないお……」

『テポドン』と呼ばれた超巨大なミサイルがそこにはそびえ立っていた。
複数の人がそれらを整備し、複数の人がコンピュータを使って管理していた。

きっとこの施設も一夜で出来上がった施設なのだろう、進化のすごさが現れていた。

でも違う、自分はこんな進化なんて望んではいなかった。
和解をして、争いを平和に終わらせて欲しかった。

これは……もう相手国が跡形も残らずに消えてしまうではないか。
今までの進化が消えるだけでない、その命も……何もかもが消えてしまうのだ。



  
(=゚ω゚)ノ「内藤さん」

(;^ω^)「……はい」

(=゚ω゚)ノ「我々は止めるつもりはありません。
   ドクオさんが……そして我々が自分の命を危険に晒してでも守り抜いてきた子供たちが……
   彼らはその全てを奪いました、もう我々の命も有って無いような物です」

そして相手は僕を鋭い目で睨んだ。
ここに来てここまで強く睨まれたのは初めてかもしれない。

納得しろと言いたいのだろう。
でも無理だ、理解は出来るけど分かるわけなんて無い。

(;^ω^)「だからって相手の子供達まで……全ての命を消す事は違う気がするお!」

(=゚ω゚)ノ「いいえ、これは主様の力です。
   昨日までの我々ではこんな力はありませんでした、だからとてもそんな事は考えられませんでした。
   主様の与えてくれた力です、主様もどこかで……望んでくれたのではないでしょうか?」

(;^ω^)「ち……違うおッ! そんな訳無いお!」

(=゚ω゚)ノ「でもこの力はあなたが与えてくれた力です。
   勝負を諦め切った我々に与えてくれた……復讐できる力です」



  
相手の言いたいことは悔しいほど良く分かった。

守るものを亡くした、戦う意味を失った。
もうドクシンの人達は昨日の時点で戦意など無いに等しかった。

実際昨日会った時、この人だってこんなにしっかりとしていなかった。

しかし今日、力を手に入れたのだ。


復讐。


もう戦う気力を失っていた、もう死ぬ気でいたのだろう。
生きる意味を失った人達をもう一度奮起させる、その力と唯一の目的。

(;^ω^)「何となく分かるけどやっぱりそれはいけないお!」

(=゚ω゚)ノ「なんとでも言って下さい。
   我々だってある程度は分かっています、それでも……理屈じゃないんです、理論じゃないんです」

(;^ω^)「……」

(=゚ω゚)ノ「帰って下さい」

どうして?
せっかく生きているのに……どうしてそんな事をしようとするのだろう?

僕とジョルジュさんは見知らぬ人達に無理矢理追い出された。



  
帰り道、ジョルジュさんと自分はずっと無言だった。
ジョルジュさんは寂しそうにしながらも強気な表情を作っていた。
自分は……ただ不安にさせるようにひたすら泣いていただけだった。

気付くとそのまま中立VIP国にまで戻ってきていた。

( ;ω;)「うう……」

泣いているだけでは迷惑だと分かっているのに。
なのに……。

( ;ω;)「ジョルジュさん……」

( ゚∀゚)「……どうした?」

( ;ω;)「バーボン国は……無くなってしまうのかお?」

何か話さないと、そう思っていたら結局こんな言葉しか出てこなかった。
余計に困らせたことだけは自分でも分かった。

(;゚∀゚)「……このままならそうだろうな」

( ;ω;)「そんなの……嫌だお」

(;゚∀゚)「……ああ」

( ;ω;)「ドクシンの知り合いが死んだだけでも僕は辛かったお、なのに……。
   こんなの変だお、絶対におかしいお!」



  
---ドクシン国


(*‘ω‘*)「いようさん、準備できたっぽ」

(=゚ω゚)ノ「……そうか」

いようは少し悩んでいた。
内藤の言葉が頭から離れないのだ。
彼の言いたいことは良く分かった、強く言い返したが、心では十分に理解していた。

強気に出て相手を言いくるめると同時、自分に言い聞かせていたはずだが……自分は分からず屋だった。

本当にいいのだろうか?
失うものをなくしてもまだ、新しく守るものを見つけれるのでは?
バーボン国の子供たちも守れなかった子達も同じ子供たちとは思えないのか?

(*‘ω‘*)「いようさん、今更何悩んでるっぽ」

(=゚ω゚)ノ「……わかってる」

そう言って、いようはこの国を引っ張る者として声を大きく上げた。

(=゚ω゚)ノ「それでは、発射しろ!!」



  
いようの声を合図としてそれぞれの人達がスイッチを入れ、簡単なプログラムを入力する。

カウントダウンは始まった。

  『10、9、8……』

もう止められない。
いようは心の底で"心の主"とバーボン国に詫びた。

特に"心の主"には我々のとばっちりとして辛い思いをしてもらった。
どうして先ほど謝る事が出来なかったのだろうか? 後悔が沸いた。

(=゚ω゚)ノ(本当に……申し訳ない……)

無機質にカウントダウンの音は続いていく。

  『6、5、4……」

大きくため息をついた。
今更どうしようもないんだ。
こうなると後悔ばかりが押し寄せるのは人間だからか?

なぜ「発射」と言っててしまったのだろう。どうして"心の主"に謝れなかったのだろう。

  『2、1……」

最後に大きくため息をついて見せた。


  『ゼロ』



  
---中立VIP国


( ;ω;)「ドクシンの知り合いが死んだだけでも僕は辛かったお、なのに……。
   こんなの変だお、絶対におかしいお!」

どうして殺し合うのか、どうしてそんな兵器を何とも思わずに使えるのか?
間違っている、ドクシン国は間違っている。

( ;ω;)「絶対に……絶対にドクシン国は間違っているおッ!!」



   ゴォオオォォォォ......


突如に低く大きな音と、白い閃光が後ろから自分達を襲った。

恐怖を感じるほど巨大な音。
まるでこの世の終末を告げるような……強烈な音と閃光。そして激しい風圧。

後ろを見ると、漫画の様な真っ黒いキノコ雲が上に登っていった。
やけにゆっくりに感じた。

(;゚ω゚)「おっ……おおおっ……」

(;゚∀゚)(これが……"心の主"の完全否定か……)



  
どこからあれほどの煙がたち上がるのだろうか?

あの煙の中に、一体何人もの魂が詰められているのだろうか?

これが……進化の最終形態だとでも言う気だろうか?

(;゚ω゚)「おおぉ……」

体の震えが止まらなかった。
これが以前ショボンさんに言われた完全否定なのだろうか?

おそらく先のミサイルを発射しようとして、失敗して自国で爆発したのだろう。
自分のせいで失敗したのか? 自分の……"心の主"の力で失敗させたのか?

今までとは比べ物にならない程の気持ち悪さが体を突き抜けた。

器官が全て出てきそうなくらいの吐き気、腸が比喩でなく締め付けられて激痛をよんだ。
立ってられないどころじゃない、冗談抜きで気絶しそうな痛みだった。

(;゚ω゚)「あうぅぅあぁ、ああぁあぅぁぅ……」

口がカタカタと鳴った。
苦しい、呼吸するたび口の中が一気に乾いた。

人が消えた、それ以前に『国』が消えたんだ。
これが自分の出した結論だと言うのか?
これを自分が望んだのか?

バカな、そんなバカな。



  
荒れた息で呼吸しながら、瞳孔を開いて地面に頭をぶつけ続けた。
全然痛くなかった。

そうしてどれだけの時間が経ったのだろうか、ようやく落ち着いた自分にジョルジュさんは声をかけてくれる。

( ゚∀゚)「……落ち着いたか?」

何も返す気にならなかった。
ずっと無言でいた。

( ゚∀゚)「……立てるか? バーボン国へ行こう」

倒れている自分の手を取って立ち上げようとしてくれた。
立とうと力を入れた瞬間、再び吐き気が来た。

カラカラの喉を痛めつけるようにひたすらに空気を吐いた。
もう体内には何も残っていないのに何だこの吐き気は?

涙ももう出なかった、どれだけの水分が消えているのだ?
自分はもうここで干乾びて死ぬのではないか?


バーボン国に行かなくては。
改めて立ち上がったのは、更に大分と後だった。



  
片手をジョルジュさんに支えてもらい、まるで病人のようにバーボン国へ向かった。
途中無駄に沢山の休憩を挟んでもらいながらも、ようやくバーボンについた。

バーボン国も相当に荒れていた。

昨日のダメージだろうか、崩れた家は建て直す必要を感じなかったのだろうそのまま放置されていた。

(;゚∀゚)「ったく、どこに皆いるんだか……」

そう言って、僕を引きずりながらジョルジュさんは歩いてくれた。
しばらくすると人の声が聞こえるようになる。
どうやらどこかに皆集まっているようだ。

(;゚∀゚)「よし、やっぱりカクテル広場に皆集まってるみたいだ!」

そう言いながらジョルジュさんはもう一頑張りと自分を運んでくれた。

自分はただひたすらに項垂れていた。
勝利したバーボン国の人達と何を話すればいいのだろうか?
そんな事も全然考えていなかった。

……そうか、バーボン国は勝ったのか。
改めてそんな事を考えてしまった、今更気付くなんて相当頭が回転していないようだ。



  
その広場に着くと、沢山の人々が集まっていた。
そして僕とジョルジュさんを見るや活気に溢れた。

遠くにショボンさんが見える、ショボンさんはこちらに向かって来てくれたようだが、
人並みがすごく思うように来れないみたいだ。

周りの人々は口々に質問をした。

  「ドクシン国は滅んだのか?」

  「我々は勝ったんだよな?」

  「さっきのでドクシンは消えたんだよね?」

その一つ一つの質問が自分を鋭く刺した。
そしてジョルジュさんが変わりに質問に答えてくれる。

(;゚∀゚)「ああ、ドクシン国はもう無いよ。オマエ達の勝ちだ」

その瞬間に人々は一斉に雄叫びをあげた。
そして……それが僕には酷く不快だった。

  「うをおおおおお!!」

  「祝いだ、皆ぁッ!」

  「やった、やったぞー!1」

何がやったなのか。この人達の神経が理解できない。



  
どちらの国が勝つかという話のはずだろう?
相手国自体が滅んで何が嬉しいんだ?

(  ω )「うう……」

  「ありがとうございます、"心の主"様バンザーイ!」

  「やったんだ、我々が選ばれたんだ!」

  「嬉しいです、最高です!」

ありがとう? 選んだ? 嬉しい?

(  ω )「オマエ達も……」

地面がグラグラと揺れ出した気がした。
事実かどうか分からない、ただ……今はそれどころじゃなかった。
気が高ぶって何も考えられなかった。

(;´・ω・`)「主様、違うんだ! やったとか、嬉しいとかそれは……!」

ショボンさんが走ってくるけどもういい、言い訳なんて聞きたくない。
精一杯自分は叫んだ。

(  ω )「オマエ達も間違ってるおーッ!!」

直後、激しい揺れがバーボンを襲った。



  
結局自分は何を守れたのだろう?

何を決めることが出来たのだろう?

自分勝手で終わってしまったんじゃないだろうか?

何を残せたのか?

自分はただ……

この世界を破壊しただけで終わったのではないのだろうか?

そういえば一度言われた気がする、最強の兵器は"心の主"だって。

最強の兵器はそれまでの兵器を無とする、戦闘機と同じで。

それが"心の主"だったのだろう。

それが全ての進化を……無と帰したのだろう。



  
その荒地に一人立っていた。
辺りは地割れや倒れた木々で酷い有様だった。

その場には自分しかいなかった。


自分を避けるように割れた地面、自分を避けるように倒れた木々。


今更ながらここで自分は死ぬことは無いのだと分かった。




周りを殺すことしか出来ないのだと分かった。






( ;ω;)「わああぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」




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