第二十四話 「わたしは風になる」





遠くで爆発音が響いた。
音の発信源は青い飛行機械。


ξ;゚听)ξ「間に合わなかったの!?」

( ;ω;)「くそおおおおおおおおおおお!!」


たそがれの空は二人の視力を奪い、
手を取り合うクーとモナーの姿をオレンジの幕の中に隠していた。

自分の無力さに歯噛みし、
せめて一矢報いようと、ブーンは黄色い飛行機械へと一気に下降していく。

だんだんと赤と黄色、二機の飛行機械の動きの詳細が視界に入ってくる。
視線の先では、黄色い豹の機銃が、赤い男爵へその牙を向けていた。




( ;ω;)「ギコさん!こっちだお!!」


ブーンは叫び声を上げてトリガーを引く。
火線は『黄豹』に向けて一直線に向かっていく。

間一髪、それに気づいた『黄豹』は進路を変え、いったん空域から離脱。
直後に赤い飛行機械から放たれる発光信号に、ツンは大きく喜びの声を上げた。


ξ゚ー゚)ξ「ブーン!クーさんは無事よ!!」

( ^ω^)「ばんじゃーい!……って言っている場合じゃないお!!」


一人でノリツッコミをして、ブーンは速度を上げた。
後方から追ってくるラウンジ艦隊の後発の飛行機械の姿が見えたからだ。

その飛行機械に向けて、赤いモナーの飛行機械が飛び込んでいく。
同時にそこから明滅する発光信号。




ξ゚ー゚)ξ「ここは任せろ、だって!」

( ^ω^)b「把握したお!」


そのままブーンとツンは周囲を索敵。


ξ゚听)ξ「ブーン!二時の方向!!」


目的の相手を見つけたツンが後部座席から叫ぶ。


目指すは『黄豹』。


『桃色の乳首』と『蒼風』、
故郷で伝説として語り継がれる二人を落とした男。

ブーンとツンはゴーグルをかけ直す。

そして、伝説を越えた男のもとへと進路を向けた。



  _
(#゚∀●)「馬鹿ヤロウ!無茶にも程があるぞ!!」


『VIP』の上部甲板から戦場の空を眺めていたジョルジュ。

彼は隻眼の瞳でブーンとツンの進路を見据えると、
大声で怒鳴りながら格納庫の奥へと消えていく。


('A`;)「ジョルジュ!あんた何するつもりなのよ!?」


ジュルジュの後姿を追って格納庫へと入ったオカマ。
彼の視線の先には、予備の単座式飛行機械に飛び乗ってエンジンを始動させる乳首の姿。

  _
( ゚∀●)「何をするって?決まっている!ブーンの援護に行く!!」

('A`#)「馬鹿じゃないの!?隻眼のあんたに何が出来るって言うのよ!!」


そう叫んで、ジョルジュの乗る飛行機械の前に立ちふさがる毒男。


('A`)「信じなさい!あの子達の腕なら、きっと『黄豹』を落とせるわ!!」



  _
( ゚∀●)「そいつは無理だ。あいつらはまだクーや俺を超える腕前じゃあない。
      あとニ年……いや、一年あれば話は別だがな」


自分の機体の前に仁王立ちするオカマの姿を眺めながら、静かにジョルジュは続ける。

  _
( ゚∀●)「俺はあいつらのことを過大評価も過小評価もしない。
      あいつらの才能はたいしたもんだ。だけど……まだ時間が足りない。
      俺はあいつらの才能を、こんな空で散らしたくないんだ」

('A`;)「ジョルジュ……」


毒男の視線の先で、ジョルジュは片眼を覆う眼帯をはずした。
そして、それを毒男に向かって投げてよこす。

  _
( ゚∀ナ)「腐っても俺は『桃色の乳首』!
     そして、ブーンとツンの兄貴分だ!!
     アイツのように二人を死なすわけにもいかんし、
     それよりなにより、弟は兄貴より先に死んじゃあいけないだろ?」




そう言ってゲラゲラと笑うジョルジュ。

直後に表情を引き締めた彼の瞳には、
かつて『桃色の乳首』と恐れられていた頃の輝きが宿っていた。

  _
( ゚∀ナ)「どけ。お前をひき殺してでも、俺は空を行くぞ」

('A`)「……わかったわ」


呟いて、毒男は進路を開けた。
同時に中空に浮かぶジョルジュの飛行機械。

ゴーグルを下ろした彼に向かって、毒男は厳しい表情で叫んだ。


('A`)「だけど、必ず帰ってきなさい!絶対よ!!」
  _
( ゚∀ナ)「うひゃひゃひゃwwwww当たり前田のクラッカー!!
     またあの時みたいに、機体に火を吹きながらでも帰ってきてやんよ!!」


毒男の言葉に笑顔で返して、『桃色の乳首』はたそがれの空へと飛び立った。
そんな彼の姿を、毒男は渡された眼帯を握り締めながら見送った。




( ゚ω゚)「ぶおおおおおおおおおおおお!!」

( ,,゚Д゚)「ゴルァアアァァァアァアアア!!」


ブーンは『黄豹』へと進路を向け、ギコは『赤い彗星のアナル』へと進路を向けた。
機銃を乱射しながらすれ違う二機。

両者はすぐにターンすると、再び真正面から互いの方へと向かっていく。


( ,,゚Д゚)「真っ向勝負かゴルァ!若いな少年!だがそれがいい!!」

(;゚ω゚)「当たれええぇぇぇぇえぇぇええええ!!」


再びの火線の交錯。
しかし、弾丸は互いの機体をかすめるだけで直撃までにはいたらない。


( ,,゚Д゚)「クソ!らちがあかんぞゴルァ!!」

(*゚ー゚)「相手のペースに乗ってどうするの!?あなたらしくも無い!!」


後部座席から響いてくるしぃの声。
その声に「そうだったぞゴルァ!」と返事を返すと、
ギコはターンし、ブーン機の側面へと進路を向ける。




進路を変えてこちらに向かってくる『黄豹』。

このまま機銃を放てば弾薬の無駄。
そう判断したブーンは、
こちらの側面へと向けて飛んでくる黄色い飛行機械の更に側面へと進む。

やがて、両者は並走体制に入る。
高度、機体の旋回性能、最高速度はほぼ同じ。

戦況を左右するのは紛れも無くパイロットとナビの腕。

『銀』と『黄』、二色の機械の鳥は、並走体制のまま互いの後方を取り合って蛇行を始める。
いわゆる『シザース』というマニューバに両機は入った。

この技術の競い合いは、相手の旋回半径の内側に入れた方が勝利し、
その結果、ドッグファイトに圧倒的に有利な後方を取れることになる。

しばらくは両者、まったくの互角。
どちらも相手の後方を取れないままに『シザース』は続いていく。




しかし、やがて経験の差が浮き彫りになる。

徐々に旋回の半径が大きくなるブーン。
対してギコは、徐々にその旋回半径を縮めていく。

そして更に数度の『シザース』の後、ついにギコの機体がブーンの後方へと入った。


( ,,゚Д゚)「もらったぞゴルァ!!」


機銃の狙いを定めたギコは、咆哮を上げてトリガーを引いた。




ξ;゚听)ξ「ブーン!撃ってくるわ!!」

(;゚ω゚)「いや〜ん!しっかりつかまっているお!!」


ブーンはツンの合図とともに機軸を中心に機体をロールさせた。

視界がグルグルと回る。

一般人ならば嘔吐は免れないだろうが、ここは流石のブーン達。
かろうじて弾丸は避け、即座に体制を立て直す。

ここから反撃へ転じられれば……。

そんなブーンの思いとは裏腹に、後ろから響くツンの声。




ξ;゚听)ξ「ブーン!また撃ってくるわよ!!」

(;゚ω゚)「うそ〜ん!!」


ブーンが繰り出すのは再びのロール。
スピードを維持しながら機銃を避けるにはこの方法しかない。

しかし、ロールは何度も繰り返し出来るものでもない。
グルグルと回る視界の中で、体力が徐々に、だが確実に削られていくからだ。

かといって、他のマニューバだと速力が急激に失われてしまう。
そうなればいったん逃げ切れたとしても、体勢を立て直した相手に確実に落とされる。

何とかして相手を前にやりたいブーンであったが、『黄豹』はその隙を見せない。

今出来るのは、相手の弾丸を避けながら味方の援護が来るのを待つことだけ。

しかし、『蒼風』は撃墜。
頼みの綱の『レッドバロン』も展開してきた後発の飛行機械たちの相手で手一杯。

とにかく今は、体力の続くまま逃げ回るしかブーン達に生き延びるすべは無かった。




( ,,゚Д゚)「なかなかしぶといじゃないかゴルァ!!」


巧みに機銃を交わしていく前方の飛行機械に対し、ギコは感嘆の声を上げた。

しかし、ここであまり時間を取られるわけにも行かない。
ちらりと向けた視線の先で、一隻の巡洋艦が煙をふくのが見えたからだ。


( ,,゚Д゚)「相手のナビが邪魔だな……いい眼をしているぞゴルァ!!」

(*゚ー゚)「ふふふ。これ、使っちゃう?」


不適な笑い声とともにしぃが取り出したのは、発射式の閃光弾。


( ,,゚Д゚)「……いいだろう。ゴーグルをサングラスタイプに切り替えろゴルァ!!」

(*゚ー゚)「了解!」


二人は手馴れた様子でゴーグルを取り替える。

後部座席のシートに立ち上がったしぃは、
発射用の銃を構えて、閃光弾をブーン達へと向けて射出した。




\ξ(^O^) ξ/「キャ――――!!」

(;゚ω゚)「うおっ、まぶし!」

\ξ(^O^) ξ/「……眼が……眼がぁ!!」

(;^ω^)「バルス!バルス!!……って言ってる場合じゃないお!!」


突如後方で発した強烈な光に、
『黄豹』の動向を注視していたツンの目が焼かれた。

視覚を奪われたのは、ほんの数秒。

しかし、そのわずかな時間が命取りとなった。


( ,,゚Д゚)「回避運動が遅い!もらったぞゴルァ!!」


そう叫んで、トリガーを引こうとした『黄豹』。





しかし、彼は気づいていなかった。
放たれた閃光弾の光にまぎれて、上空から一気に降下してきた飛行機械の存在に。



  _
(#゚∀ナ)「『黄豹』!!これで終わりだ!!」


突如上空に現れた単座式の飛行機械。

自機に向かって火線を放ちながら急降下してくる機体の来襲に、
ギコはトリガーを引けなかった。

機体に響く金属音。

直後、遥か下方へと過ぎ去っていく謎の飛行機械。
その姿を見据えたしぃが、ギコに向かって心配そうに叫ぶ。


(;*゚ー゚)「ギコ!大丈夫なの!?機銃は当たらなかった!?」

( ,,゚Д゚)「……」




ギコは何も答えない。

しぃは前部座席と後部座席の間のわずかなスペースに、
相手から放たれた機銃による弾痕が刻み付けられているのを確認した。

突如、彼女の全身を駆け巡る不安。


(* ;ー;)「ギコ!ギコ―――!!返事をしてよ!!」

( ,,゚Д゚)「……だ、大丈夫だ……ゴルァ!!」


ギコの叫び声にしぃは安堵のため息をつく。

それと同時に『黄豹』は進路を変更。
前方の銀色の飛行機械から、下方へと降下していく謎の飛行機械へと進路を向けた。



  _
( ;゚∀ナ)「畜生!コックピットに直撃したと思ったのによ!!」


バックミラーでこちらへ向けて下降してくる『黄豹』を確認したジョルジュは舌を打った。

隻眼の瞳では、距離感がまったくと言っていいほどつかめない。
さらには、数年飛行機械に乗っていないというブランクも彼に災いした。

  _
( ;゚∀ナ)「畜生!逃げ切れるのか!?」


下降してきた『黄豹』は、いとも簡単にジョルジュの後方へとつけた。

バックミラー越し、さらに隻眼というハンデを持つ彼に、
ギコが機銃を放つタイミングなどつかめるはずが無かった。

後方の『黄豹』から放たれた弾丸はジョルジュの機体のエンジンにあっさりと命中。

あたりに響く乾いた金属音と、
機体の速力が急激に落ちたことでそれを認識すると、
ジョルジュはエンジンを切り、ゴーグルとシートベルトを外した。



  _
( ゚∀ナ)「あーあ。また負けちまったぜ」


空を音も無く静かに滑空していくジョルジュの機体。


……こんなに静かな空ははじめてだ。
まあ、エンジンを切って空を飛ぶ機会なんてほとんど無いけどな。


自分の置かれている状況をまったく気にする様子も無くそんなことを考えながら、
座席の上に立ち上がり、ジョルジュ長岡は周囲を見渡した。

視線の先には、一直線に母艦へと引き返していく黄色の飛行機械の後姿と、
何事も無かったかのように飛行を続ける銀色の飛行機械の元気な姿。

  _
( ゚∀ナ)「あいつら無事だったんか!いやー、良かった良かった」


もはや数十秒後には爆発するであろう機体の上で、
ジョルジュ長岡は朗らかに笑って見せた。




死を目の前にしているというのに、
彼には恐怖はおろか、自分を落としたギコへの憎しみさえも感じられない。


何でかな?
やっぱり、あいつらを守れたからなのかな?


そんなことをぼんやりと考えていると、彼の視線の先に
先ほど無事を確認したばかりの銀色の飛行機械がこちらに向けて急降下してくるのが見えた。

  _
( ゚∀ナ)「馬鹿だねー、あいつら。せっかく助かった命だってのによー」


そう呟くと、彼は座席から発光信号機を取り出し、
こちらに向かって猛スピードで近づいてくる銀色の飛行機械に向けて、
生涯最後の発光信号を送った。




(;゚ω゚)「ツン!長岡さんはなんて言っているんだお」

ξ;゚听)ξ「……」


猛スピードで急降下する中、あたりに響くのは必死の大声で問いかけるブーンの声。
ツンはジョルジュから送られてきた発光信号を解読して、何も言えなくなっていた。


(#゚ω゚)「ツン!答えろ!長岡さんは何て言っているんだお!!」


幼馴染の怒りの問いかけに、ツンは泣きながら答えた。


ξ;凵G)ξ「『もうすぐ爆発するから近づくな』って言っているのよ!!」


そう叫んだ後、彼女は顔を両手で覆いながら大声で泣き続けるだけ。
それでもブーンは、ジョルジュの機体に向かって急降下を続けた。

風を切り、風圧に顔をゆがめながらブーンは進む。

そんな彼の視界の先で、ジョルジュ長岡はこちらを向いて笑っていた。
彼は右手を顔の高さまで上げ、そのまま胸の方へと振り下ろすと同時に何かを口にする。

直後にジョルジュは空を見あげると、空を仰いで、何かを呟いていた。



  _
( ゚∀ナ) o彡゜「おっぱい!おっぱい!」


こちらに向かってくるブーン達に向けて笑顔でそう叫ぶと、
ジョルジュ長岡はどこまでも高く続いていく空を見上げた。

空には夜の帳が降りはじめており、
たそがれの色から暗い藍色へとその表情を変えてはじめていた。


……綺麗だな。
やっぱり俺の居場所は、この空なんだろうな。


そんなことを考えていると、ふと見た東の空には、一番星がキラリと輝いていた。

  _
( ゚∀ナ)「……やっとお前に会えるんだな」


ジョルジュが呟くと、まるでそれに答えるかのように一番星が数度瞬いた。
直後、彼の脳裏に浮かんでくる数々の風景。




若い頃、幼馴染と飛んでいた故郷『ツダンニ』の空。
『VIP』にたどり着いた先で対面した、ショボンとミルナの不敵な笑み。

下部甲板に降りてきた自分と幼馴染を怒鳴りつけるクーと、
その隣であたふたとフォローを入れるモナーの情けない笑顔。

一人前になって初めて、幼馴染と二人で飛んだ空。

上部甲板でボーっと空を眺める幼馴染の顔。
それに見惚れていた自分を冷やかす毒男のニヤニヤした表情。

空から堕ちたあの日。
魂の抜け殻と化した幼馴染の無残な姿。

眼帯をつけて初めて見上げた空の色。

『トップページ』からフラフラとやってきた銀色の飛行機械。
自分に罵声を浴びせかけるツンの怒った顔。

一人前と認められてはしゃいでいた、可愛い弟分のくしゃくしゃの笑顔。

そして今、眼前に広がる昼と夜、
その狭間のわずかな時間にだけ垣間見ることのできる、たそがれの空の色。




美しすぎる世界、美しすぎる言葉、美しすぎる日々。

これまで生きてきた世界のすべてが、今の彼にはたまらなくいとおしく感じられた。
そして今、自分は大好きなこの空で一生を終えようとしている。


ああ、俺は……果てしなく続くこの空へと還るのだ。


再び空を仰いだジョルジュ長岡。
美しいその空間に向かい、彼は最後に、こう呟いた。

  _
( ゚∀ナ)「……空へ……」


そして、彼の機体から閃光が発せられた。

闇が暖かい光で溢れ、遠い昔に死に別れた幼馴染の「おかえり」という声が、
ジョルジュ長岡の耳には確かに届いていた。

直後に響いた巨大な爆発音とともに、
最期まで空を駆け抜けた『桃色の乳首』の魂は、天高くへと上っていった。




一方、謎の飛行機械の来襲により被弾した黄色い飛行機械は
母艦『ジュウシマツ』へと戻っていた。

上部甲板は機銃でボコボコ。
とても着陸できない状況であったため、黄色は下部甲板へと進路を取った。

いつもより乱暴に着陸した下部甲板の上。

機体にくすぶる煙を整備班が消火器を片手に消す中で、
しぃは後部座席から飛び降りると、前部座席のギコのもとへとよじ登る。


(;*゚ー゚)「ギコ!大丈……」


彼女は、よじ登った座席の先の惨状に愕然とした。

メーター、操縦桿の飛び散っている血痕。
ぐったりと首を垂れているギコの座席の足元には、おびただしい量の血の海。
よく見ると彼の左太ももは大きくえぐれ、ズボンは真っ赤に染まっていた。

こんな状態でどうやってここまで操縦してきたのだろう?

悲壮感が彼女の全身を貫く最中、どこか冷静な脳の一部がそう知覚していた。




(;* ;ー;)「ギコ!しっかりしてよ!!
     整備班!!早く医療班を呼んで――――!!」


悲痛な叫びを上げながら、しぃはギコの身体を抱き上げた。
しかし、彼の眼はもはや何も見えていないようで、その焦点はうつろだ。


(;* ;ー;)「ギコ!ギコ―――!!」


虚空をさまよう瞳のままで、ギコは静かに笑った。


( ,,゚Д゚)「……しぃ……しぃ……」


彼は震えるその右手を、しぃの名を何度も呟きながらわずかに上げる。
その手を取り、自分の頬へと引き寄せるしぃ。

血が付いた手が触れることにより、彼女の頬が真っ赤に染まる。

ギコは彼女の頬を軽くなでると、最期に、下部甲板の鉄の天井を見上げ、呟いた。





( ,,゚Д゚)「……空へ……」


そのまま、彼の右手はしぃの頬からだらりと垂れ落ちた。

途端、彼の頭を支えるしぃの腕にズシリと重みが伝わってくる。
血で真っ赤に染まった頬をそのままに、しぃは座席の上で泣き叫んだ。



『黄豹』の愛した空には、漆黒の帳が降りていた。



第二十四話 おしまい




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