第四話 「空中レジスター」






ブーン達の飛行機械は一直線にラウンジ艦隊の旗艦を目指した。
体が急激に座席に押さえつけられる中で、ブーンは冷静に相手の様子を観察した。

戦艦の上面には主砲が一丁と副砲が八丁。
上部甲板にワラワラと湧き出した無数の黒い影は、
おそらくこちらを狙撃しようとする銃兵たちの群れだろう。

上部甲板に着陸するのはあまりに無謀すぎる。
となれば、目指すべきは骨組みのみでスカスカの船底に備え付けられた下部甲板だ。

そう判断したブーンは機体を斜めに倒すと、
弧を描きながら戦艦の下部へ向けて下降した。




ξ;∀;)ξ「あははははは……ママ……
     ……あたし、今からそっちに行くね…」


後部座席ではツンが不気味な笑みを浮かべて、
うつろな瞳で空を見上げながら何やらブツブツと呟いている。
ツンが使い物にならないことをバックミラーで確認したブーンは、
全方位に向けて神経を集中させた。

最年少飛行機械乗りの称号は伊達じゃない。
これでもいくつもの空を駆け抜けてきたんだ。

もちろん駆け抜けたと言っても、こんな状況を経験したことは一度もない。
こういう日が来ることを想定して、
暇な時間に興味半分でいろんな操縦技術の練習をしただけだ。

だけど、今はそんな細かいことは言っていられない。

「絶対にやれる」と自分に言い聞かせながら戦艦の側部へと下降した彼は、
戦艦の測部から放たれる火線の洗礼を受ける羽目になった。




(;゚ω゚)「狙うライフルには……宙返りのサービスだお!」


そう叫ぶと、彼は操縦桿を一気に手前に引いた。
すると機体は上方に弧を描き、見事な宙返り(360度ロール)をして見せた。

そのまま同時にロール、ピッチアップの操作を行う。
すると高等な操縦技術(マニューバ)であるバレルロールの完成だ。
某アニメでも成されたこのマニューバは、ミサイルや機銃から避けるのに効果的な技術だ。

そのまま彼は一気に戦艦の下部甲板を目指した。

そしてついにそこへたどり着けるかと思ったそのとき、
彼の視界の端に、上方から急降下してくる一機の黄色い飛行機械の姿が飛び込んできた。




(;゚ω゚)「 こ れ は ま ず い ! !」


このまま甲板を目指せば急降下してくる黄色い飛行機械にぶつかると判断した彼は、
機首を下げ、戦艦の側面に沿って一気に下降した。

バレルロールというマニューバは、速度を一気に落としてしまうという特性を持つ。
そのため、迫りくる飛行機械から逃れるためのスピードを稼ぐには下降するしかなかった。

相手からの銃撃を避けるために機軸を中心にロールしながら、そのまま下降を続ける。

視界が回る。
強烈な圧力が、体を座席に押し付ける。

速度を稼いだところでそのまま機体を水平に戻す。
すると案の定、後方から迫り来る黄色の飛行機械も水平になりブーンに向かってきた。




(;゚ω゚)「完全に後ろを取られたお……落とされるお!」


飛行機械同士の接近戦、いわゆるドッグファイトでは、
後ろを取られれば90%以上の確率で勝ち目はないと言われている。

残された選択肢は高等なマニューバをうまく使い相手を前方にやるか、
ひたすら逃げ回るかのいずれかしか存在しない。

ここで逃げれば仕事は失敗に終わる。

それならば残された選択肢は一つしかないのだが、
実践の経験がまったくないブーンには戦艦からの射撃をよける自信はあっても
ドッグファイトで勝つ自信はまったくといってなかった。




(;゚ω゚)「ツン!生きているかお!?」

ξ;∀;)ξ「あははー……死んでるわよー……」


バックミラーに写ったツンは、冗談なのか本気なのかわからない表情で言う。
そんなツンに向かって、ブーンは叫ぶ。


(;゚ω゚)「後方の飛行機械に発光信号を送るお!相手が撃ってくる前に……早く!」

ξ;∀;)ξ「あははははー……ブーン……三途の川が見えるわー…」

(;^ω^)「ちょwwwwwいい加減にするおwwwwwwww」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったわよ」


かなり危険な状態だというのに、
この様子から見たところ、先ほどまでのツンの態度は冗談だったようだ。

肝が据わっているというかなんというか、まったくいい加減な女である。




ツンは後ろを向いて後方の飛行機械に発光信号を送る。


ξ゚听)ξ「よし、オッケーよ!」

( ^ω^)「なんて送ったんだお?」


何かを達成したような口ぶりの彼女に対し、
「これは期待できる!」と、ブーンは首だけを振り返らせてゴーグルの奥の瞳を覗いた。


ξ゚ー゚)ξb 「『か弱いレディーを襲うんじゃないわよ、この馬鹿ちん!!』
      って送ってやったわ」


少年は口をあんぐりと開けて、満面の笑みを浮かべる彼女を見つめた。




(;^ω^)「……mjd?」

ξ゚听)ξ「mjd」

(;^ω^)「……」

ξ゚ー゚)ξ 「……えへっ♪」

\(^ω^) /「僕の人生オワタ―――――――!!」


ブーンは操縦桿から手を離し、両手を空に広げて叫んだ。




しかし、後方の飛行機械はいつまでたっても発砲してこない。

正気に戻った彼は、バックミラーをズラしてそこに敵機の姿を映した。
するとそこから、黄色い敵機から送られてくる発光信号が見えた。


(;^ω^)「ツン!相手はなんて言ってきてるお!?」

ξ゚听)ξ「『ついてこい』だって!」

(;^ω^)「……それなんてエロゲ?」


ブーンがそう呟くと同時に敵機は進路を180度変え、
ラウンジ艦隊の旗艦の方へと戻っていく。

ブーンもあわてて進路を変え、その飛行機械の後を追った。




( ,,゚Д゚)「ギコハハハ!勘違いして悪かったなゴルァ!!」

(*゚ー゚)「本当にごめんねぇ……」


ラウンジ艦隊の旗艦『ジュウシマツ』の上部甲板に降ろされたブーンは、
ブーン達を追ってきた黄色い飛行機械のパイロットであるギコと、
そのナビとして後部座席に乗っているしぃと名乗る二人組みに艦内を案内されていた。


ξ゚听)ξ「ほんとに死ぬかと思ったわ……」

( ^ω^)「まあまあ、過ぎたことだお」

ξ#゚听)ξ「……もとはと言えばあんたのせいでしょうが!」


そう言って、ツンはブーンに向かってドロップキックを繰り出した。

そんなやり取りを交わしながら狭い艦内の通路を歩いていると、
前を歩いていたギコとしぃが突然立ち止まる。
どうやら艦長の部屋へと到着したようである。


( ,,゚Д゚)「ギコです。配達人を連れて参りましたゴルァ!」


扉に向けて一言かけて、ギコはその扉を開けた。




\               U         /
  \             U        /
             / ̄ ̄ ヽ,
            /        ',      /     _/\/\/\/|_
    \    ノ//, {0}  /¨`ヽ {0} ,ミヽ    /     \          /
     \ / く l   トエエイ   ', ゝ \     <  トエエエイ!!>
     / /⌒ リ   `ー'′   ' ⌒\ \    /          \
     (   ̄ ̄⌒          ⌒ ̄ _)    ̄|/\/\/\/ ̄
      ` ̄ ̄`ヽ           /´ ̄
           |            |
  −−− ‐   ノ           |
          /            ノ        −−−−
         /           ∠_
  −−   |    f\      ノ     ̄`丶.
        |    |  ヽ__ノー─-- 、_   )    − _
.        |  |            /  /
         | |          ,'  /
    /  /  ノ           |   ,'    \
      /   /             |  /      \
   /_ノ /              ,ノ 〈           \
    (  〈              ヽ.__ \        \
     ヽ._>              \__)




扉の先に広がっていたのは、思ったより広くないこじんまりとした部屋。

室内には窮屈そうに置かれた無駄に大きな机があり、
その先のイスに館長らしき、鳥のような顔をした男が座っていた。


住職「トエエエイ!!」

( ,,゚Д゚)「艦長が書簡を渡せとおっしゃっている」

(;^ω^)「は、ハイですお!」


ブーンは恐る恐る鳥にしか見えない艦長へと近づき、書簡を手渡した。




ξ゚听)ξ「……あれ、人間なの?」

( ^ω^)「どう見ても鳥です。本当にありがとうございました」


艦長が書簡を読んでいる間、部屋の外でそんなことを話し合っていると、
しばらくして部屋の中に残っていたギコとしぃが出てきた。


( ^ω^)「受取書に艦長さんのサインはいただけましたかお?」

( ,,゚Д゚)「ああ、ほれ」


そう言って、ギコは受取書と、
そしてもう一つ、書簡らしきものをブーンに手渡した。




(;^ω^)「あのー……なんですかお、コレ?」

( ,,゚Д゚)「届けられた書簡の返事だそうだ。折り返し、早急に届けてくれだとさ」

(*゚ー゚)「よかったね!仕事はAランク扱いにしてくれるって!」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「「………」」


ブーンとツンの二人はしばらく無言で見つめあった。
そして頭を抱えると、もはやお決まりとなった一言を言い放つ。


( ;ω;)ξ;凵G)ξ「「 勘弁してよ――――――!!」」


ブーン達の眠れない日々はまだまだ続くようです。


第四話 おしまい


   第五話 「黄色いバカンス」





それから二日後の夕方、
ブーン達二人は職場である「飛行機械郵便業組合」へと帰ってきていた。


( ´ω`)「あうあう……」

ξ;∀;)ξ「あはははー……回る回る地球は回るわー……」


扉を開けて入ってきた二人の明らかに尋常ではない様子を見て、
受付カウンターの男は目を丸くした。
そんな彼に向かって、二人はフラフラと酔っ払いよりもひどい千鳥足で近づいてくる。


( ´ω`)「コレ……受取書ですお……」


そう言って、ブーンは二枚の受取書をカウンターの男に手渡した。
その受取書を見て、男は再び目を丸くする。




( ゚д゚ )「お前ら……Aランクの仕事を二つもこなしてきたのか!?」

( ´ω`)「そうだお……生きているのが不思議だお……」

ξ;∀;)ξ「あはははー……今ならあたし、立ったまま眠れるわよー……」

( ^ω^)「おっおっおー……僕も負けないおー……」


そう言うや否や、二人は本当に立ったまま眠り始めた。

そんな二人と手渡された受取書を交互に見ながら、
男は一言、「たいした奴らだ」と呟いた。

それと同時にバランスを失ったらしい二人は、前のめりに床へと頭から倒れこむ。

「ゴツン!」という鈍い音が建物内に響き渡ったが、
そんなことはお構い無しに二人は眠り続けた。

それから二人がどうやって自分達の家に帰ったかは、読者の想像にお任せする。




立ったまま眠るという常人離れした芸当を成し遂げたその三日後、
ようやく仕事の疲れも癒えた二人は、町にあるパーツ屋へ向けて歩いていた。

ブーンたちの住む町は飛行機械乗りだけでなく、
工場で働く人や職人といった肉体労働系の仕事に従事している人間が集まってできた町だ。
その路地は細く、またあちこちに分岐しており、
初めてこの町に来た人間ならば間違いなく迷ってしまうほどに入り組んでいる。

そんな路地を二人は慣れた調子で、確固たる足取りで進んでいく。


ξ゚听)ξ「完全にエンジン焼きついちゃったわねー」

( ´ω`)「あんなエンジンでよくAランクの仕事を引き受けたお……」

ξ゚听)ξ「あら?それはあのエンジンなら大丈夫と確信していたからよ?
    その証拠に、あたし達こうやって無事に地上を歩いているじゃない?」

( ´ω`)「……もういいお」




あっけらかんとした幼馴染の様子に呆れ果てているブーンとは対照的に、
その隣を歩くツンはすこぶるご機嫌な様子で、終始満面の笑みを浮かべて町を歩いている。

彼女の機嫌が最高なのも無理もない。

なにしろ、ランクAの仕事をニつもこなした二人の手元には、
彼らの月収の四ヶ月分…いや、半年分はある大金が転がりこんできたのだから。


ξ゚ー゚)ξ 「これだけのお金があれば、
     エンジンだけじゃなくてブースターや他のパーツだって買えちゃうわ!
     それも上質なのをね!!あーもう……あたし幸せ……」

( ^ω^)「おっおっお。それはいいお!
     ついでに操縦桿も換えたいお!すっかりヘタっていて今にも折れそうなんだお!」

ξ゚ー゚)ξ 「いいわよー!なんでも好きなものを買ってあげるわ!」

( ^ω^)「そんじゃ、とりあえずあの露店で鯛焼き買っていくお!」

ξ゚∀゚)ξ「おほほほほほほほ!!
    ブーンったら相変わらずお子様ね〜!鯛焼きでも根性焼きでもバッチコーイよ!!」


ブーン15歳、ツン16歳。
貧乏臭さに溢れた会話を交わす二人は、世界中の誰よりも幸せそうである。




(;^ω^)「……とうとう着いちゃったお」

ξ゚ー゚)ξ 「……ブーン、覚悟はいい?」


パーツ屋に到着し、その扉の前で立ち止まったブーンを見て彼女は問いかけた。

ブーンの顔には鬼気迫る表情が浮かんでいる。

一方でツンの表情はというと、一応真剣な表情ではあるのだが、
これから起こることに対してちょっと期待している様子が、
ほんの少しつりあがった彼女の口の端に見て取れる。

ブーンは扉の前で大げさに二度深呼吸をすると、
覚悟を決めた表情で「おk」とつぶやいた。


ξ゚听)ξ「それじゃあ、開けるわよ〜!」


そう言って、ツンはパーツ屋の扉を一気に開けた。




扉を開けた先には、アンティーク調に彩られた木造の部屋が広がっていた。

白熱電球による淡いイエローの明かりに照らされたその下では、
さまざまな機械の部品と思われるものが種類別、大きさ別にきれいに陳列されている。

その部品一つ一つに整った文字で書かれた値札が丁寧に張られており、
床や商品が陳列された棚にはチリひとつ落ちていない。
店を含めたそれらすべてが、店主の几帳面な性格を表していた。

そして肝心の店主はというと、
店の奥に設けられたカウンターに化粧品やらなにやらを広げて、
鏡と向き合いながら眉毛の手入れをしている。


ξ゚听)ξ「すみませーん!エンジン見たいんですけどー」

「ごめんなさいね〜。今ちょっと手が離せないのよ〜」


店主は鏡とにらめっこをしたままの態勢で、野太い声を出して答えた。




( ^ω^)「んじゃ、勝手に見てますお」

「そうしてちょうだ……」


そこまで言うと、店主は首がつるのではないかと心配してしまうほどの勢いで
鏡の方からブーンの方へと振り向いた。

少年の姿を確認した店主はカウンターから飛び出すと、
彼に向かって獲物を発見したライオンのように一直線に走り出す。


('∀`)「ブーンちゃん!アタシ、待ってたのよ〜う!」

( ;ω;)「いやああああああああああああ!!こないでくれおおおおおおおお!!」


ブーンはその場から逃れようとしたのだが、
カウンターから猛烈な勢いで飛び出してきた店主にあっという間に捕獲されてしまった。




('∀`)「ブーンちゃんか〜わ〜い〜い〜!!」

( ;ω;)「あうあうあう〜……」


ブーンをたくましい両腕で抱きしめた店主は、
何度剃っても生えてくる濃い不精髭の生えた頬をブーンの頬にこすりつけた。

可愛そうなブーンは、人生もはやこれまでといった表情で店主の成すがままになっている。

その様子を顔に笑みを浮かべながら眺めていたツンが、
幼馴染の助けを求めるまなざしに気づいて店主に話しかける。


ξ゚听)ξ「いい加減にしなさいよ毒男。ブーンが嫌がっているでしょ?」

('A`)「あら?いたの小娘」


ブーンの頬に自分の頬を密着させたまま、
毒男と呼ばれた店主はあからさまに不機嫌な顔で彼女の顔を見た。



ξ#゚听)ξ「誰が小娘よ!」

('∀`)「ぶほほほほwwwww乳臭い娘に小娘と言って何が悪いのよ?
   それともう一つ、あたしの名前は毒男じゃなくてローズよ?ローズ!!」

ξ#゚听)ξ「少なくともオカマには言われたくないわね。
     大体ローズって何よ?あんたの名前は毒男でしょ!?」

('∀`)「ぶほほほほwwwwwその名前はもう捨てたのよ!
    それとね、オカマは女よりも女を知っているものなのよ?  
    ねぇ?ブーンちゃん!!」


ブーンの顔を見つめてそう言うと、
オカマは無精髭をブーンの頬にさらに強く擦り付ける。


( ;ω;)「のわあああああああ!!ほっぺが熱いおおおおおおおお!!」

('∀`)「あらやだ!ブーンちゃんったら興奮しちゃったの〜!?」

( ;ω;)「ツン!ツ――――ン!!助けてくれおおおおおおおおおお!!」




ξ゚−゚)ξ「………ハァ」


仲むつまじい二人の様子を一瞥してため息をつくと、
ツンは店内に陳列されたパーツを物色し始めた。

しばらくの間彼女は店内を歩き回り、
いろんなパーツを手に取っては真剣な眼差しで吟味するということを繰り返していた。
一方ブーンは、毒男の厚い胸に抱かれぐったりとしている。

やがて目ぼしいものが見つかったのか、
ツンは数点のパーツとエンジンを指差して毒男にいろいろ質問を始める。

オカマは彼の腕の中で息絶えたブーンをゆっくりと床に横たわらせると、
真剣な表情で彼女の質問に淀みなく答えていく。

やがて息を吹き返したブーンも二人の会話に参加し、
三人の間では、出力があーだとか、レスポンスがこうだとか、冷却性がどうだなどと、
先程とは打って変わって専門的なやり取りが繰り広げられた。




('A`)「あんた達、ずいぶん買ったわね〜。
   全部で百諭吉よ?お金足りるんでしょうね?」

ξ゚听)ξ「当たり前じゃない!ほれほれ〜♪」


ツンはつなぎのポケットから分厚い札束を取り出すと、
それを扇状に広げてパタパタと仰ぎだす。

貧乏人が大金を持つと、かなりの確率でこんな行動を取るものである。

毒男は札束を受け取ると、
ペロリと指を舐めて一枚一枚丁寧にめくりながらその枚数を数えていく。

そして、ツンに渡された札束がちゃんと百枚あることを確認すると、
満面の笑みで「毎度あり〜」と喜びの声を上げた。

彼のその笑顔は、海よりも深く山よりも高く気持ちが悪かった。




それから数時間後。
あたりにはすっかり夜の帳が降りていた。


ξ#゚听)ξ「遅い!」


自宅の玄関の前に仁王立ちしたツンは、苛立ちを全面に押し出した表情で叫ぶ。


(;^ω^)「まあまあ、毒男さんも仕事で忙しいんだお」

ξ#゚听)ξ「店の中で眉毛いじっていたオカマのどこが忙しいっていうのよ!
     こっちはすぐにでも飛行機械のビルドアップをしたいっていうのにぃ!
     早く配達しやがれっていうのよ!」


数時間前、代金を支払い終えた彼女はオカマに購入したパーツの運搬を頼んでいた。

細かいパーツ等はともかく、
重量のあるエンジンやブースターはとてもじゃないが人力で運べるものではないからである。




それから数十分の間、
ブーンはツン主催の『毒男悪口演説』を聞かされる羽目になった。

何も悪いことをしていない自分に、なぜツンの怒りの矛先が向けられているのだろうか?

ブーンがこの世の理不尽さを肌で感じていると、
まばゆいヘッドライトの光とともに、毒男の乗ったトラックが彼らの前へとやってきた。


('A`)「お待たせ〜!」

ξ#゚听)ξ「遅い!この腐れオカマ!!」


トラックから降りてきたオカマに向かって、ツンは開口一番に悪態をつく。

そんな彼女の言葉をものともせず、
毒男は荷台の方に回るとテキパキと積み荷を降ろし始める。

作業を始めた毒男にブーンはいち早く手を貸し、
毒男に向かってマシンガンのごとく悪態をつきまくったツンも
何の悪びれた様子を見せないオカマに参ったのか、黙って積み荷の運搬を手伝い始める。




それから更に数十分後。

ようやく積み荷であるエンジンやらブースターやらを地下の作業場に運び終え、
ブーンとツンはヘナヘナと地面にへたり込んだ。

一方でオカマの方はというと、たくましいその肉体に汗一つかいた様子もなく
地面に腰掛けるブーンとツンに向かって「ぶほほほほほ」と笑いかけた。


ξ゚听)ξ「何がおかしいのよ……筋肉オカマ」

('∀`)「ぶほほほほwwwwだいぶお疲れのようね?」

ξ゚听)ξ「おかげさまでね……もう夕食を作る気力も無いわ……」


そう呟いたツンに向かって、ブーンがブーブーと非難の声を上げる。

そんなブーンを拳骨一発で黙らせたツンの様子を確認したオカマは、
トラックの助手席に向かうと、そこからパンパンに膨らんだ紙袋を取り出した。




('∀`)「ジャ――――ン!これ、なーんだ!?」

ξ゚听)ξ「ほんとに元気なオカマね……」


呆れた様子で毒男を眺めるツンとは対照的に、
ブーンは口から涎を垂らしながら毒男の抱える紙袋の中身を見た。


( ^ω^)「もしかして夜ご飯かお!?」

('∀`)「ブーンちゃん大正解!という訳で、あんた達の台所借りるわよ?
   今日はあたしがあんた達にご飯を作ってあ・げ・る(はぁーと)」


そんなオカマを、ツンは恨めしそうににらみつけた。


ξ゚听)ξ「……運搬が遅れたのは、その食材の買い出しのせいだったのね?」

('∀`)「ぶほほほほwwwwwwww」


豪快な笑い声を上げて自分達の家の中へと入っていくオカマの後姿を、
ブーンとツンはうれしさ半分、不安半分な表情で見送った。


第五話 おしまい



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