( ^ω^)が空を行くようです





  中編:整備長、お昼寝回想日記





『鈍色の星』を飛び立って一週間弱。
これといって特別なことは無かった。

艦長、副艦長をはじめとしたブリッジの面々は、
機械の耳にてラウンジ艦隊の進路を追ってはいたものの、依然としてエデンへの道筋は不明のまま。
というのは、ラウンジ艦隊は数日前にメンヘラ本国にて停泊、しばらく動きをみせていなかったからだ。

大方、大規模な物資の搬入およびエデンへ向けた派遣部隊の編選を行っているのだろう。
それにあわせて、VIPも機械の耳の周音範囲ギリギリにある小島で停泊していた。

そういうわけで、飛行機械部隊やあたしをはじめとした整備部隊はやることもなく非番。
早朝から暇をもてあましている。

その間しばらくはクーの注文どおりに飛行機械をチューンし直したり、
磨耗部品の点検、交換を行ったりしてやり過ごしてはいたが、
さすがにもうするべきことは尽きてしまっていた。

しょうがないのであたしは、
飛行機械だけが見つめる下部甲板のど真ん中で、
自らの美しい肉体にさらに磨きをかけることにした。




('A`;)「ワンモアセッ!」

スクワット、腹筋、背筋、懸垂、ビリーズブートキャンプ。
次々とメニューをこなしていくあたし。

美しいマイフェイスからは聖水とも形容できる汗が滝のように滴る。
裸の上半身は汗でぬれそぼり、差し込む朝日の光を受けてなまめかしく輝いている。

サイド・チェスト。※1
アドミナブル・アンド・サイ。※2

躍動するあたしの筋肉。
美しい。あまりにも美しい。

最後に『目指せバスト120cm』と刻印されたハチマキを巻いて腕立て伏せをやっていると、
背後に人の気配がした。



※1 ttp://s-hasimo.pro.tok2.com/image/04.07.17%20no09.jpg
※2 ttp://s-hasimo.pro.tok2.com/image/04.07.17%20no11.jpg




ξ゚听)ξ「これ以上筋肉つけてどうするつもり?」

('A`)「よりいっそう美しくなるつもり」

聞き慣れた声に即答して、あたしは立ち上がった。
振り返ればそこには、右手で握ったスパナを左手の平の上でポンポンとたたいている小娘の姿。

ξ゚听)ξ「ばっかじゃないの? これ以上キモくなってどうすんのよ」

('A`)「……」

冷ややかな視線をよこす小娘。
反論しようと思ったけど、無駄だろうと思って止めた。

この小娘はあたしの美貌に気づいていない。
いや、気づいているはずだけど、小娘も女なのだ。
女は、自分以上に美しいものを認めたがらない。
つまり、小娘はあたしの美貌を認めたくないのだ。

しかもこの娘の性格上、何を言っても反発してくるのは容易に想像できた。
おまけにこやつ、今日は飛行を禁じられてるもんだから機嫌が悪いに違いない。

あたしはひとつ大きなため息をつく。
続けて、床に用意していたタオルで汗を拭いた。




('A`)「で、何のようかしら?」

ξ゚听)ξ「暇なら整備の基礎を教えなさい」

('A`)「……なんであたしがあんたにそんなこと教えなきゃいけないわけ?」

ξ゚听)ξ「この前約束したじゃない!」

('A`)「……ああ、そんなことも言ったわねぇ」

ξ゚ー゚)ξ「そゆこと〜♪」

そう言って腰に手を当て、無い胸をそらしてふんぞり返る小娘。
その顔には、憎らしいほどに満面の笑み。

よく見れば、彼女はいつもの飛行服ではなく薄汚れたツナギ姿で、
上半身はツナギのホックを開け黄ばんだ肌着一枚になっている。

首もとにはタオルというおまけ付きだ。




スタンバイは十分だと、彼女の全身が物語っている。
どうやらあたしは格好の暇つぶし材料にされたみたいね。

しかし、小娘の姿にはまったくもって色気が無い。
ツンといいクーといい、どうしてVIPの女どもは性というものをもっと有効利用できないのだろうか?
できないならあたしに頂戴って言いたいわ。

またひとつ大きなため息が出たけど、
やる気満々の小娘を前に観念したあたしは床に畳んでいたツナギを手に取り、
小娘とともに銀色の飛行機械の元へと向かった。




                    *

('A`;)「……ダメよ……そこはもっとこう……優しく……」

ξ;゚听)ξ「え……こう?」

('A`;)「そう……デリケートな部分だから……慎重に……」

ξ;゚听)ξ「う、うん……」

('A`;)「なめないように……注意して……」

ξ;゚听)ξ「そんなこと言われたって……これ……固くって……」

('A`;)「ああん! ダメよ! そんなに強くしたら……」

ξ;>凵)ξ「えい!!」


ズルッ!


(゚A゚)「アッー!!」




あたしは怒りのあまり、手にしたレンチを床に叩きつけた。
下部甲板に鉄が鉄を打つ金物音が響き渡る。

(#'A`)「あーもう! この怪力カバ娘! 
   あれほど強くするなって言ったじゃない! 
   おかげでネジ穴がなめちゃったじゃない!!」

ξ#゚听)ξ「うっさいわね! しょうがないじゃない!! 
     大体カバってなによ!! それにこのネジ締めたのあんたでしょ!? 
     固く締めすぎなのよ! この怪力オカマ!!」

(#'A`)「むきー! そんなの当然でしょ! ゆるく締めて飛行中にネジが取れたらそれこそ大問題よ!
   それにネジを回す時はゆっくりかつ力を込めてが基本なの! あんたは一気に回しすぎなのよさ!!」

ξ;>凵)ξ「あーあー! きーこーえーなーいー! あたしは悪くあっりませーんよーだ!!」

ギャーギャー叫びながら耳を両手で押さえる小娘。
聞く耳を持たないとはまさにこのことだ。

それにしてもこの怪力カバ娘は、
駆動形の大事な部分のネジを使い物にならなくしてしまいましたわ。
それを前にあたしは、ひざまずいて途方にくれる。

('A`;)「もー、どうしてくれるのよこれ。これじゃネジがはずせないわ……」

ξ゚听)ノ「どんまい!」

(#'A`)「どんまいじゃねぇよ!」




それからあたしは、なめたネジの取り外し作業に追われた。
実際のところこの作業は、手間はかかるけどそんなに難しくは無い。

テキパキとこなすあたしの後ろで小娘は、
『ほうほう』と感嘆の声を上げながら作業の一部始終を観察していた。

('A`;)「あー……やっと終わったわ」

取り外したなめネジを新品のものに取り替えて、モンキーレンチを片手に額の汗をぬぐう。
そんなあたしに向けて、小娘はいつの間に用意したのだろうか、濡れタオルを投げてよこす。

ξ゚听)ξ「ごくろうさん! それで顔拭きなさい! いつにも増してひどい顔よ?」

('A`)「何言ってんのよ。あんたの顔も汗とホコリでひどいわよ?」

ξ;゚听)ξ「やっぱり? はやくシャワー浴びたいわ〜」

('A`)「馬鹿言ってんじゃないわよ。
  これからエデンに向かうこの艦にとって、水は生命線なのよ?
  シャワーは決められた時間にだけ! わかってんわね?」

ξ;゚听)ξ「うえ〜……じゃあ、夜までこのままなの〜?」

('∀`)「ぶほほwwww ネジを使い物にならなくした罰よ!」

ξ#゚听)ξ「終わったことネチネチ言ってんじゃないわよ! ネジだけに!!
     あんたそれでも男なの!?」

(#'A`)「うっわ、つまんね! それにあたしは男じゃないわ! 女よ!!」




互いににらみあうあたしたち。
すると、小娘の怒った顔が崩れて笑顔になる。

ξ゚ー゚)ξ「……あはw あはは!!」

('A`)「……何よ? 人の顔見て笑うなんて失礼な子ね」

ξ゚ー゚)ξ「だってあんた……本当にひどい顔よ? 笑うなって言う方が無理w」

(*'A`)「……あんただって人のこと言えないわよ!」

腹を抱えて笑う小娘。天真爛漫なその笑顔に、あたしは怒りの牙をそがれた。

小娘は色気なんて皆無で、性格はがさつで、歯に衣着せぬ物言いをする男勝りな女だけど、
笑顔だけはいいものを持っている。

雲ひとつ無い青空のような、抜けるようなカラッとしたその笑顔は、
それだけで十分に貴重だ。誰もが持っているものではない。

VIPでこんな笑顔を持っているのは、
彼女とブーンちゃん、それにジョルジュくらいなものだろう。
我ながら良い人物をスカウトしたと思う。

こんなこと言ったら小娘は調子に乗るだろうから、口が裂けても言わないけど。




濡れタオルを肩にかけ、整備班の休憩室へと足を運ぶ。
後ろを、頬にえくぼを作った小娘がチョコチョコとついてくる。

ξ゚ー゚)ξ「まあいろいろあったけど、すごく参考になったわ! あんた、教えるの上手じゃない!」

('∀`)「ぶほほほほ! あたしを誰だと思ってんのよーう!
  あたしは世界最高水準のVIP飛行機械部隊、
  その整備を双肩に担う、カリスマメカニックなーのよーう!?
  それにクーみたいな口うるさいパイロットの注文を受けていれば、嫌でも技術は上がるわよーう!」

そして、休憩室の冷たい扉を開けたあたしは、


川 ゚ -゚)「口うるさいパイロットで悪かったな。整備長」

(・A・)「……あいーん」


目がテンになってしまった。




室内にいたのはクー。
部屋の真ん中、テーブルをはさみ向かい合わせになるように設えられた
ソファの片側に腰掛け、文庫本を手にしている。

川 ゚ -゚)「お前たちが二人でここに来るのは珍しいな」

'A`)ノシ「いやいや。あんたがここにいる方が珍しいから」

川 ゚ -゚)「いやなに、飛行機械部隊の休憩室はコーヒーが切れていてな」

テーブルには飲みかけのコーヒーカップがひとつ、ポツンと置かれていた。
彼女は文庫本をその隣に置くと、カップを片手に立ち上がり、棚の方へと向かう。

川 ゚ -゚)「コーヒー、飲むか?」

ξ;゚听)ξ「あばば、あたしが作りますから、クーさんは座っていてください!」

川 ゚ー゚)「そうか。すまんな」

慌てながら、クーと入れ替わるように棚へと向かう小娘。
あたしとクーは向かい合う形でソファへと腰掛けた。

川 ゚ー゚)「どうだ、頭の調子は?」

('A`)「おかげさまでなんとも無いわよ」

腰を下ろした彼女は、あたしの頭上を眺めながらニヤリと笑った。




このやり取りのもととなった出来事を、簡単に話しておこう。

先日、クーに艦長のお便所シーンを見せたあたしは、彼女と艦長の逆鱗に触れ、
『頭の上にりんごを乗せてそれを狙撃される刑』を受ける羽目になった。

この刑はVIPの懲罰では一番軽いものなんだけど、狙撃手がクーとなったら話は別だった。

彼女は空中戦での射撃はぴか一のくせに、白兵戦における銃の扱いはVIPで二番目に下手い。
(一番はブーンちゃん。小娘は意外にうまい)
彼女があたしの頭上のりんごを打ち抜ける可能性は、五分五分だった。

('A`;)「ちょっと艦長! 冗談じゃないわよ!」

(#´・ω・`)「黙れ! 貴様のせいで俺は便器と一体になりかけたんだ! その報いを受けろ!」

何でも艦長はクーに汚物として水に流されかけたらしい。
ちなみにお便器にはまって動けなくなっていた艦長は、
朝方になって吐きに来たモナーに無事救出されている。

川 ゚ -゚)y=-「それでは、撃ちます」

(;A;)「いやあああああああああああああああああああああああああああ」

そして引き金が引かれ、撃鉄が薬きょうを撃つ音がVIP内にこだました。




('A`;)「あの時は本当に死んだかと思ったわ……」

川 ゚ー゚)「ふふw 実はお前の眉間を狙ったら、たまたまりんごに当たっただけなんだがな」

('A`;)「ああ……生きているって素晴らしいわ」

大げさに天井を仰いで視線をもとに戻す。
対面のクーの視線は、すでに手にした文庫本へと移っていた。

('A`)「それにしても、あんた小説好きよね。どんな話なの?」

川 ゚ー゚)「『死』を『詩』で織り成す飛行機械乗りの物語だ」

そう言って彼女は、飛行機械発進時のような凛とした声で、小説の一節を読み上げた。

ξ゚ー゚)ξ「いい文章ですね」

三つのカップをお盆に載せた小娘が、テーブルにそれを差し出しながら答える。

('A`)「そう? あたしにはよくわかんないわ」

川 ゚ー゚)「まあ、これは飛行機械乗りにしかわからんことだろうな」




('A`)「ふーん、そういうもんなのかしらね」

カップをつまんで、濁った液体を一口含む。
それは濃くて、甘ったるくて、まるでクーが読み上げた一節のように癖のある味だった。

('A`)「で、さっきのがあんたのお気に入りの一節ってわけね?」

川 ゚ -゚)「ん? そういうわけではないぞ。いい文章だとは思うがな」

('A`)「どゆこと?」

川 ゚ -゚)「この本はジョルジュに借りたものなんだ」

('A`;)「……ジョルジュがこの本を?」

川 ゚ -゚)「ああ。それで、さっき読んだ一節には線が引かれていた。
    おそらくジョルジュが引いたんだろう。
    だから、さっきの一節はあいつのお気に入りということになるな」

そう言ったきり、テーブルの側に立つ小娘と雑談を始めたクー。

あたしはもう一度癖のあるコーヒーをすすりながら、あのときのことを思い出していた。




深夜、機械の耳を前に腰掛け、空の声を聞こうとしていたジョルジュの姿。
そして、『何も聞こえなかった』と呟き去っていった彼の背中。

あの日以来、なんら変わりないジョルジュの様子。
今日も今朝方、ブーンちゃんと食堂で騒いでいるのを見かけた。

おそらく、彼の異変を知っているのはあたしだけだろう。

上層の島々にある、手入れの行き届いた庭園の芝のような、短めの彼の髪。
その後ろ髪を引く手は、本当にワタナベのものなのだろうか?
死んだ人間の意識が、残された人間を縛り付けることなど有り得るのだろうか?

あたしには、わからない。

道端に捨てられ、物心ついたときから機械をいじくることで何とか食いつないできたあたしは、
他者を、絡みつく死人の意識を引きちぎるようにしてここまで来たから。

捨て子で、さらに男でも女でもないあたしは、そんな薄情さを持たなければ生きてこられなかった。




だけど、ジョルジュはどうなのだろう?

彼は今、メカニックとして生きている。
しかし、本質的にはパイロット、中空を小舟で漂う雲にも似た人種だ。

彼らパイロットには、常人には理解できない繊細で複雑な一面がある。
それを、内面に隠している。歳を重ねるほど、経験を重ねるほど、その傾向は顕著になるようだ。

クーは無表情な能面の下に、
モナーは優しげな微笑みの下に、
そしてジョルジュは、皆を明るくする満面の笑みの下に。

いずれ、ブーンちゃんや小娘も、そうなっていくのだろう。
そんな必然を悲しいとは思わない。彼らはパイロットなのだから。

彼らは空を飛び続けることで、本能的に、必然と折り合いをつけることを学ぶだろう。
颯爽と切る風の中で、己の熱を冷ます術を学ぶだろう。

クーやモナーと、同じように。




だけど、ジョルジュはもう、飛べない。
今の彼は不完全だ。

エンジンにこもった熱をファンが外へ逃がす、
そんな機構が、彼の中にはもはや存在しない。

仮面の下に蓄積された熱が、いつかジョルジュを焼き尽くしそうで怖かった。

黄豹との再会、そしてあの日のジョルジュの異変は、
彼の限界を表しているとしか思えなかった。

なら、あたしは何をしてやればいい? 
パイロットでないあたしには、それがわからない。

彼の胸の奥に沈殿する苦しみを、
今口にしているコーヒーの苦味を、取ることができない。

誰か、あたしに答えを教えて。




川 ゚ -゚)「おい、毒男」

ξ゚听)ξ「ねえ、オカマ」

('A`;)「……えっ!? あ、ああ、何よ?」

不意に聞こえた声に顔を上げれば、不思議そうにこちらを見つめる二人の顔があった。

ξ゚听)ξ「どうしたのよ。ボーっとしちゃって」

('A`;)「い、いや、なんでもないわ。で、何?」

ξ゚听)ξ「あたしたちこれからお昼に行くけど、あんたも来る?」

('A`)「……ああ、もうそんな時間なの」

休憩室にかけられていた時計を見上げれば、時刻は一二三〇を指していた。
同時に盛大な腹の音が鳴って、二人に大笑いされる。思わず顔が火照ってしまった。

ξ゚ー゚)ξ「おなか空いているみたいねw 行くわよ」

('A`)「……いや、止めとくわ」




ξ゚听)ξ「なんで? どうしてよ?」

しつこく食らいついてくる小娘。
申し出はありがたかったが、今はひとりになりたかった。
そういう空気を読めないあたり、彼女もまだまだ子供だなと思う。

だけど、彼女の好意をむげに断わるわけにもいかず、
どうしようかと迷ったあげく、それがあたしの顔に苦笑いとして浮かび上がる。

小娘はそれを嘲笑か何かと勘違いしたらしく、ムッとした顔であたしをにらみつけている。

川 ゚ -゚)「ツン、いいじゃないか。毒男には何かすることがあるんだろう?」

('A`;)「え? ……あ、ええ! そうなのよ!」

ξ゚听)ξ「でも午前中は暇そうだったじゃない」

('A`;)「別に暇じゃなかったわよ。あんたが無理矢理あたしを付き合わせたんでしょうが」

川 ゚ -゚)「そういうことだ。行くぞ、ツン」




そう言って小娘の背中をポンと押すと、クーは扉の先へと消えていく。

そして去り際、締める直前の扉から覗いた彼女の顔は、
あたしに向かって軽くウインクをした。

('∀`)「……ちぇ。いい女じゃない」

『敵わないわねぇ』と呟いて、あたしはツナギのポケットから煙草とライターを取り出す。
火をつけて大きく吸い込めば、先端がチリチリと音を立てて赤く燃え上がった。

吐き出した煙の揺らめきが天井を漂い、視界を薄い紫に染め上げていく。

それはソファーに身体を預けたあたしをゆっくりと包み込み、回想の世界へといざなってくれた。




                       *

('A`)「ジョルジュ=長岡。ソウ=渡辺。……どこかで聞いたことのある名前ねぇ」

手渡された資料。
書かれていた名前には聞き覚えがあったけど、今ひとつ思い出せなかった。

七年前のある日、建造されて間もない空中戦艦『VIP』の艦長室に立ち、
あたしは疑問の声を艦長に投げかけた。

('A`)「出身はツダンニ、年齢は十九、
   こなした仕事はランクAがゼロ、Bが三ですか……。
   実力と伸びしろはそこそこ有りそうですけど、
   あたしがスカウトに回ってまで欲しい人材ですか?」

(´・ω・`)「『桃色の乳首』といえば、わかってくれるかな?」

('A`;)「はい!? 彼らが『ニューソクカップ』を最年少で制した『桃色の乳首』なの!?」

驚いて立ち上がった。

『桃色の乳首』といえば、当時の飛行機械関係者の間では知らないものがいないほどの有名人だった。




『ニューソクカップ』とは、ニューソク国で四年に一度開かれている飛行機械レースのことだ。

といっても、規模は大きいが所詮は一国のお祭り騒ぎ、
遊びに過ぎないレースで、以前はそれに優勝しても、
ニューソク国以外では大きなステータスにはならなかった。

しかし、当時で言えば八年前、
今で言えば十五年前に起こった『ツダンニ』における飛行機械革命で、
その価値は対外的にも一気に跳ね上がることになる。

高水準のパイロットとメカニック集団を有するツダンニが参加するレース。

すでにVIPへと引き込んでいたクーでさえ制覇することが出来ないでいたそれを
最年少で制覇したのが、ピンク色の飛行機械を操る『桃色の乳首』だった。




('A`)「なるほど。艦長が欲しがるわけがわかったわ」

(´・ω・`)「そうだろう。しかしね、どうにも偏屈な人物らしいんだよ。特に長岡とか言う方がね。
     彼らは空を飛べればそれでいいらしく、ツダンニを離れる気が無いようなんだ。
     ミルナがそれとなく『エデン』を話題に出しても、鼻で笑って一蹴するだけらしい」

('A`)「それで、あたしがパーツ屋に成りすまして彼に接近しろ、と?」

(´・ω・`)「ああ。お前の整備技術・知識を『桃色の乳首』に見せ付けてやれ。
     世界は広いということを彼らに知らしめ、VIPに誘い込むんだ」

('A`)「了解しました!」

そういう経緯で、以後、あたしはツダンニでパーツ屋になりすまして
ジョルジュ達のスカウトを受け持つこととなった。




そもそも、VIPは以前からツダンニに向けて一人の人物をスカウトとして派遣していた。
それはほかでもない、あたしたちVIPの黎明期からの幹部、副艦長ミルナだ。

なぜ副艦長という重役をツダンニへ派遣していたのか。
それには、先ほども述べた飛行機械革命が大きく関与している。

今から十五年前の『ニューソクカップ』でとある二人組が大差で圧勝し、大きな話題となった。

その勝因が、彼らのチームが開発したエンジンによるもの。
それはあまりに革命的なものであり、世界の常識を一気に変えた。

言うまでもなく、この世界の陸地は空に浮く島。
そして通信の方法は、飛行機械による郵便、もしくは接触回線に限られる。
その理由は、エンジンの特性に拠っている。

この世界では、飛行機械だけでなく陸地までもが強力な磁場の力で浮いている。

その磁場を発生させるものがエンジンで、それは規模だけの違いで、
構造的には陸地に使われているものも飛行機械に使われているものもほぼ同一。

この世界では蔓延している磁場のため電波による通信は不可能で、
だからこそ飛行機械による郵便が主要な通信手段となっているのだけど、
それは革命の話からは外れるので割愛するわ。




『ニューソクカップ』を制した二人のエンジンのどこが革命的だったのか。
それは技術的にかなり高度な話になるから、掻い摘んで話をさせてもらうわ。

それまでのエンジンは磁場を下方にしか発生させられなかった。
つまり、エンジンは機体や陸地を『浮かせる』ことしかできなかったの。

だから陸地は『浮く』だけで動かせず、
飛行機械も推進力はプロペラ、もしくはブースターに頼っていた。

しかし、二人のチームが開発したエンジンは磁場を好きな方向に発生させることを可能にした。

つまり、エンジンの発生させる磁場単独による推進を実現させ、それだけでなく、
ある程度のブレーキ、旋回をも、磁場の方向性を自在に操ることによって可能にさせたの。

(もっとも、それらは通常飛行のみに限られ、依然として高度な飛行には
フラップ、エルロンなどを使った高度な操縦技術、ブースターなどの補助推進システムは必要だし、
プロペラを積んでいる飛行機械も、少数ではあるが存在している)

その威力や絶大で、それを証明したのが『ニューソクカップ』での圧勝。
その二人の出身地がツダンニ。
必然的にツダンニは、その名を知られるようになったの。

だけど、それが原因で大きな戦争が起こった。




世界の中枢たる『トップページ』はツダンニ開発のエンジン技術を危険視。
技術のすべてを開け渡すようニューソク国へと要請したのがその戦争の発端。

はじめは渋ったニューソク国だったけど、
『トップページ』が連合艦隊を派遣すると声明を出したため、態度を一変させた。

当時の連合艦隊は、エースたる『赤い男爵』モナー=マンフレートを筆頭に、
『白い弾丸』モララー=ワカマツ、『黒い悪魔』シラネーヨ=バルクホルン、
その他多くのベテランパイロットを有し、世界最強の称号を欲しいままにしていた。

攻め込まれればなす術もないニューソク国は、
領土のツダンニへ向けて、技術のすべてを明け渡すよう要請したの。

しかし、ツダンニの面々は当然自らの利権を主張し、反発。
業を煮やしたトップページは連合艦隊を派遣。

ツダンニ自警部隊との全面戦争が始まった。




当初の展望では、圧倒的な物量と前記三人を有する連合艦隊の圧勝は明白だった。

けれども、『ニューソクカップ』と同一のエンジンを搭載したツダンニ自警部隊は
予想を大幅に超えた抵抗を見せ、それは短期間ではあったけれど、連合艦隊と互角以上に渡り合った。

最終的に、連合艦隊は四分の一近くの機体を失った。

『白い弾丸』と『黒い悪魔』を含む多くのベテランパイロットが空に散り、
『赤い男爵』がその後離脱したことも考慮に入れると、
戦力的には半分近くを失ったと言ってもいいかもしれない。

だけど、それ以上にツダンニ自警部隊の被害は深刻で、
ほぼ壊滅といって問題ない状況に追い詰められていた。

もともと郵便を地盤産業とし、優秀なパイロットとメカニックを数多く有していたツダンニは、
これ以上の人材の損失は土地の死活問題に関わると判断、
最後はトップページに使者を派遣し、エンジンの利権、および設計図のすべてを明け渡し、戦争は終結した。




戦後、トップページはエンジン技術を一時独占。
連合艦隊の機体すべてに最新型エンジンを配備させた。

しかし、他国の世論がそれに反発。
世界中の民間飛行機械乗りがトップページに徹底抗戦の意を表明し、
最終的には島々を越えた民間の飛行機械同盟が発足一歩手前までに発展。
あわや世界大戦にまでなりかけた。

古代の技術を背景に半ば独裁体制を敷いていたトップページは、
革命的エンジンというアドバンテージを持っていた。

けれども、ツダンニとの戦争で多くのベテランパイロットを失っており、
さらに離脱した連合艦隊のエースモナーが民間同盟のリーダーになるという情報をキャッチし、態度を軟化。
ツダンニから取り上げたエンジン技術を全世界に開放した。

これで世界中の飛行機械が脅威の性能を持つようになり、相対的に連合艦隊の戦力は激減した。

この一連の流れで利権を失ったものの、
ツダンニは飛行機械乗りのメッカとして認識され、
ひいてはツダンニが出場する『ニューソクカップ』が世界的に大きな価値を持つようになった。

そういうことで、あたしたちVIPはツダンニにてパイロットのスカウトを始めた、というわけ。




そんなこんなでツダンニでパーツ屋を始めたあたしは、
持ち前の美貌と技術、知識で飛行機械乗りたちの信頼を獲得し、店は一気に繁盛し始めた。

('∀`)「エデンから帰ったらここに住み着くのも悪くないわねぇ」

パーツ屋の仕事は楽しかった。スカウトの任務さえも忘れるほどに。

これまでの人生で一番の幸せを噛み締めている中、
うわさを聞きつけたジョルジュとワタナベが店に来てようやく、あたしは当初の任務を思い出す。
  _
( ゚∀゚)「うひゃひゃwwww なんだ? この店はオカマがやってんのか?」

从'ー'从「すご〜い! 私、オカマさんって初めて見た〜。サインくださ〜い!」

(#'A`)「てめぇらぶち殺すぞ」

二人との出会いはこんなもんだった。




それからしばらくして、二人はあたしの店に入り浸りになった。
特にジョルジュがあたしの持つ技術と知識に強い興味を持っていたことは、自惚れでは無く事実だった。

思えばその頃から、ジョルジュはメカニックとしての適性を垣間見せていたわねぇ。
  _
( ゚∀゚)ノ「たいしたもんだな、オカマさんよ!」

('∀`)「ぶほほwwww 世界は広いのよ! あんたはまだまだ井の中の乳首ってわけ♪」
  _
( ゚∀゚)「悔しいが確かにそうだな。けどさ、お前よりすげぇメカニックって他にもいんの?」

('∀`)「さーてねー。でもあんた以上のパイロットは、あたしが知る限りで二人もいるわ」
  _
(;゚∀゚)「うっそーん! そいつはすげーな! 会わせてくれよー!」

('∀`)「ぶほほのほwwww いずれ嫌でも会うことになるわよ!」

ここまでくれば、ジョルジュのスカウトは成功したも同然だった。

一方でワタナベはというと、
店に陳列してあるパーツやあたしの知識には一切興味を示さず、
いつもあたしの後ろに引っ付きまわって、

从'ー'从「ゴリラみたいな顔と筋肉ですね〜。本当に人間ですか〜?」

('A`;)(……変な子)

終始、こんな感じだった。
本当にこの子が『桃色の乳首』のナビかと、当時は本気で疑ったものだわ。




やがてミルナがファイブAの仕事を依頼し、
二人が受諾したことで、あたしの任務は一応の終わりを見せた。

その後、あたしたちはワタナベの才能に目を見張ることになる。

ファイブAの依頼内容にかこつけた入隊テスト。
腐ってもまだ世界最強だった連合艦隊に次ぐ力を持ち始めていた
メンヘラ国のラウンジ艦隊の演習を掻い潜り、VIPへとたどり着いた二人。

その中でモナーとクーの飛行を目にしたジョルジュは、
艦長と、ツダンニから帰還していたあたしと副艦長を前にして、クソ生意気なことをのたまった。
  _
( ゚∀゚)「あの二人の飛行技術を俺に伝授してくれるってんなら、入ってやってもいいぜ?」

そしてワタナベはと言うと、

从'ー'从「ここの空、楽しそうだから好き〜」

と、わけのわからない発言をし、あたしたちの勧誘を快諾した。

当初はそんな彼女の実力に疑問を抱いていたあたしたちだったけど、
やがて嫌でも思い知らされる羽目になる。




それから一年、ジョルジュとワタナベはVIP特有の訓練を受けていた。
のちにブーンちゃんと小娘の訓練風景を見てジョルジュが呟いた、飴と鞭のしごきである。

その頃のあたしは、副艦長とともにツダンニへ戻って新たなパイロットの発掘を始めており、
たまたま近況報告のために帰還していたVIPで、信じられない光景を見ることになる。

訓練でクーと模擬戦を行っていたジョルジュとワタナベ。

蒼風が完璧に背後を取り、勝敗が決したと思った瞬間、
ピンク色のジョルジュ機は突如、トラブルを連想させるかのように機体のバランスを崩し、失速。

同時に機銃を前方に連射し、その反動で後方へと木の葉のように落下。
そして風の波に乗ったかのごとく即座に体勢を立て直し、加速。

勢い余って追い越していたクー機の背後を取り、機銃を数発命中させた。

蒼い彼女の機体に鮮血を連想させるがごとくペイント弾の赤がはじけたのが、
今でも頭の片隅に焼きついてはなれない。




('A`;)「お疲れさん。まさかあんたが負けるだなんて思いもしなかったわ」

川#゚ -゚)「ジョルジュは確かにたいしたもんだ!
    だが、私はジョルジュに負けていない! 私が負けたのはワタナベだ!」

ペイント弾の赤を機体に付着させ、下部甲板へと着陸したクー。
乱雑に甲板へと降り立った彼女は珍しく憤っており、聞いてもいないのに次々と言い訳を始める。

川#゚ -゚)「あいつは反則だ! あいつにこそ『桃色の乳首』の二つ名はふさわしい!」

('A`;)「待って待って。話が見えないわ。あたしにもわかるように説明してよ」

川#゚ -゚)「説明できんから反則なんだ! 畜生! 私の方が説明してもらいたい!!」

('A`;)「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!!」

川#゚ -゚)「頭を冷やしてくる! あとはお前とモナーに任せる!!」

自ら気持ちを落ち着けに行くあたり、さすがはクーだと感心した。
彼女は捨て台詞を残し、居住区の方へと姿を消す。

入れ違いに着艦したモナーが、相変わらずのにやけ顔で下部甲板へと降り立ち、嬉しそうに笑った。

( ´∀`)「モナモナモナwww あいつら、僕の『サーカス』を決めやがったモナー!」




('A`;)「サーカス? それってあんたの得意技でしょ? それをジョルジュが?」

( ´∀`)「そうだモナー! たいしたもんだモナー!!」

一流の飛行機械乗りといえば、それぞれひとつは得意技を持っているものである。

レッドバロンはインメルマンターンとオリジナルのサーカス、黄豹はスプリットS、
過去のパイロットにまで遡れば、
白い弾丸は遠距離射撃、黒い悪魔はオリジナルの回天、といった具合にだ。

クーは彼らほど秀でた得意技を持たないが、
すべてのマニューバを水準以上に決めるし、
あえて挙げるとしたらロールによる攻撃の回避に秀でている。

ブーンちゃんは若いし彼らと比べるというのは酷な話だが、
後の戦闘であの黄豹とシザースで競り合ったあたり、十分に得意技を持っていると言えるだろう

そして、ジョルジュが決めたレッドバロンの代名詞たるサーカス。

これはかなり特殊なマニューバ、というよりモナーのオリジナルで、
命名は連合艦隊時代のモナーの同僚によるものらしい。

サーカス=曲芸。言いえて妙だと思う。

理論上ではありえない動きをするそれは、一流のパイロットでさえ成功させるのは不可能に近いだろう。
後にも先にも、あたしの知る限りで、サーカスを成功させたのはモナーとジョルジュ以外にいない。




('A`;)「ほえ〜。やっぱりジョルジュの操縦技術はたいしたもんなのね〜」

( ´∀`)「それはもちろんだモナー。だけどあれはワタナベのナビが大きいモナー」

開発者のモナーが言うには、
サーカスを成功させるには高度な操縦技術はもちろん必要なのだが、
それ以上に風を読む技術、いや、才能が必要なのだそうだ。

彼の評価では、ジョルジュの操縦技術はクーにわずかに劣るそうで、
今回の模擬戦で明暗を分けたのはワタナベのナビだったのだそうな。
あたしには良くわからない世界の話だった。

( ´∀`)「ワタナベはまるで風の流れが読めているかのように的確な指示しているモナ!」

('A`;)「……あの間の抜けた子がねぇ」

ジョルジュ機の降り立った上部甲板に向けて、
艦内通路を歩きながら、モナーはこれまで見せたことが無いほどに興奮した調子で話を続ける。

( ´∀`)「ワタナベの指示にジョルジュの技術が追いつけば、
     間違いなくあいつらは僕を越えるモナー! 僕もうかうかしていられないモナー!!」

普通越えられるというのなら、先ほどのクーのようにあせるか憤るだろうに、
むしろモナーはワクワクしている様子。

かつて世界最強と恐れられた連合艦隊のエース。天才とはよくわからない。




上部甲板では、あたしの部下の整備班員たちがジョルジュを囲んでなにやら騒いでいた。

もっとも、一番騒いでいたのは当のジョルジュ本人で、
彼は人の輪の真ん中で興奮しながら、ギャーギャーと何かをまくし立てている。

同じく興奮していたモナーがあたしの脇をすり抜けて、ジョルジュの元へと走っていく。

('A`;)「これは本当に掘り出し物だわね……」

ジョルジュに飛びついて自分のことのように喜ぶモナーを眺めた後、
何気なく視線をはずしてみれば、今回の快挙の一番の功労者であるワタナベが
人の輪から少し離れた場所に立ち、ボーっと空を眺めているのが見えた。

飛行服のまま、ヘルメットを脇に抱えた彼女は、
肩まで伸ばした茶色の髪を風になびかせながら、
まぶしそうに目を細め、彼女の名前と同じ色の空に向けて微笑んでいた。




('A`)「おめでとう。モナーとクーがあんたのこと褒めてたわよ」

歩み寄ったあたしは素直に賛辞の言葉を投げかけた。
ワタナベはいつもどおりのニコニコした顔に少しはにかみの色を宿し、答える。

从'ー'从「そんな〜。今日は空の機嫌が良かったから〜、たまたまだよ〜」

('A`;)「空の機嫌? そんなことがわかるの?」

从'ー'从「うん! ほら〜! あそこを見て〜!」

そう言って中空を指差す彼女。

从'ー'从「あそこの空の風、すごく楽しそうに踊ってるでしょ〜?
    ああいう場所では〜、飛行機械も風に乗って踊れるんだよ〜!」

('A`;)「……全然わかんないんですけど?」

从'ー'从「嘘だ〜! 『空の声』が聞こえないの〜?」

('A`;)ノシ「いやいやいや。そんなの、あんた以外に聞こえないから」

从'ー'从「え〜? 変なの〜」




『変なのはあんただから』 

そう言ってやろうと思ったけど、
いきなり走りこんでワタナベに抱きついたジョルジュに邪魔されて、
結局何も言えなかった。

続けてジョルジュに抱き上げられた彼女は、そのまま両手を大きく広げ、
青空の下、まるでダンスを踊っているかのようにクルクルと回った。

('A`)「……『空の声』ねぇ」

ワタナベが指差した方角に目をやり、ぼんやりと呟いてみた。
メカニックとしてだけど、あたしも一応は空に生きる人間。
空の声というものを、出来ることなら耳にしてみたかった。

だけど、空にあるのはやっぱり空で、声など欠片も聞こえない。

『どうすれば声が聞こえるのか』

方法を尋ねようと振り返った先では、目を回したワタナベがジョルジュに向かって吐いていた。

从;◎ー◎从「う〜ん……き〜も〜ち〜わ〜る〜い〜……」
  _
(;゚∀゚)「ちょwwwww おまwwwwwwwwwww」

上下左右に揺れる飛行機械では酔わないのに、なぜ?
あたしはそれを見なかったことにして、その場を立ち去った。

今になって振り返ってみれば、彼女と過ごしたのは、それが最後の事だった。




ジョルジュとワタナベがクーを破って一年後。

ツダンニで相変わらずパーツ屋兼スカウトの任務をこなしていたあたしのもとに、
飛行機械郵便業組合の方に潜入していた副艦長が、血相を変えて駆け込んできた。

(;゚д゚ )「……桃色の乳首が墜ちた」

('A`;)「う、嘘でしょ!?」

彼の携えていた書簡をひったくって、中身を読み上げた。


ジョルジュ=長岡、重態。

ソウ=渡辺、死亡。


書かれていた文字を前に、あたしは呆然とした。

                                        <続く>

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