第十一話 「ハレ晴レユカイ」




気乗りしないまま、ただ流されるがままに「VIP」に加わったブーンは
その日々の充実ぶりにとても驚いていた。

もともと海賊狩りという合法スレスレの仕事で有名な「VIP」は、
ブーンとツンを向かい入れた際の「トップページ」空域での戦闘でめでたくお尋ね者となり、
その後、地図にも載っていないような小さな島々を点々とする生活を送っていた。

その間に数度、「VIP」は連合軍の小艦隊と戦闘を行った。
しかし、もともと戦争の無いこの世界の、演習のみを行う連合艦隊の小隊の相手なぞ、
海賊狩りで実践を経験し、日々の訓練を怠らない「VIP」の乗組員にとっては
赤子の手をひねるも同然のことだった。

まるで教科書に書かれたかのような画一的な飛行しかしない連合艦隊。
そんな彼らに比べれば、海賊やそれから自分達の町を守る自警団の飛行機械の方がまだ手ごわい。

そんな中、海賊狩りの業務も何回か行われたわけだが、
「売られた喧嘩を買っているだけ」との艦長の弁明に違わず、
「VIP」は相手に攻撃を受けてからしか動き出さなかった。
もっとも、壊滅させた海賊船に乗り込んでちゃっかり金目のものを頂いてくるあたり、
海賊狩りの異名に恥じない行為ではあるのだが。



それらの戦闘の際に特に活躍したのが、戦艦「VIP」ご自慢の飛行機械部隊である。

どいつもこいつも常人離れした操縦技術の持ち主で、
彼らに比べはるかに未熟で荒削りなブーンとツンは一度も実戦に出ることは無く、
そんな彼らの飛行を、艦内から呆然と眺めるだけだった。

特に、赤と青。

ブーンが「ダンスしているようだ」と評した二機の単座式飛行機械の動きは、
異常を通り越してもはやこの世のものとは思えないものだった。
こんな彼らの相手になる者など、
数個師団の連合艦隊か、軍事国家メンヘラのラウンジ艦隊以外には考えられなかった。

そんな半年の間にブーン達が行ったことといえば、艦内での雑用、
そして、赤と青、二機の飛行機械のパイロットに日夜しごかれることだけ。

そして、今日も地図にも載らない小さな島に停泊した「VIP」の上空では、
赤と青、二機の飛行機械にしごかれながら空を舞う二人の姿がある。



  _
( ゚∀●)「おーし!ご苦労さん!!
     着艦だけは一流だな!お二人さん!!」


訓練を終えた二人が甲板に降り立つと、いまや日常の一部となった眼帯男の声がした。


( ^ω^)「おっおっおwww照れるお!!」

ξ#゚听)ξ「皮肉言われてんのよ!!」


そう言って、幼馴染の頭上に拳骨を落とすツン。
直後に頭を抱えてうずくまるブーン。
彼らの日常がどれだけ変わろうが、このやり取りだけはまったく変わらないようである。


('A`)「はいはい、あんた達どきなさい!赤と青が着艦するわよ!!」


毒男の声に三人は甲板の隅へと移動した。
その直後、甲高いエンジン音を響かせながら姿を現した二色の単座式飛行機械。
二機が華麗に着艦すると、そこから二人のパイロットが降りてくる。

ブーンとツンは後ずさりして二色の飛行機械を迎えた。
この二機の着艦を見れば、さっきジョルジュに言われた「着陸だけは一流」という褒め言葉も霞んで見える。




('∀`)「ぶほほほほwwww教習、お疲れ様!!」


華麗に着陸した二機に、毒男が声をかける


川 ゚ -゚)「教習か……まったくだ」

( ´∀`)「そう言うなモナー」


『赤』のパイロットの女、『青』のパイロットの男は慣れた様子で飛び降りると、
すぐさまブーンの所へと歩いてくる。


川 ゚ -゚)「ブーン、相変わらずループの軌道がなっていない。
    あれでは敵機に落としてくれといっているようなものだぞ」


ヘルメットを取りながら言ってくる女に、ブーンもツンも身を固めてしまう。


(*^ω^)「あうあう……」

川 ゚ -゚)「なんだ、その返事は?」


整った顔立ちの彼女は、細い漆黒の瞳でブーンの眼を射る。




( ´∀`)「でもクー、二人とも上達してきたモナー」

川 ゚ -゚)「モナーは黙っていろ」

( ´∀`)「……」


二人の教官として訓練をしてくれるクーとモナー。

飛行技術には自信があったブーンだが、
そんな彼のマニューバは「それらしく見せかけたもの」とクーに一蹴されてしまっている。


川 ゚ -゚)「それと、あのロールは何だ?
    あれで弾丸が避けられると思っているのか?」

(*^ω^)「おー、すんまそん……」


シュンとする少年だったが、
本質がドMな為、ストレスになることはないだろう。




川 ゚ -゚)「次は……」


そう言って、クーの視線はツンの方へ。
「そら来た!」と言わんばかりに彼女は眉をひそめた。


川 ゚ -゚)「ツン、お前は状況把握が甘すぎる。
    ナビがそんなだったら実戦で真っ先に落ちるぞ?」

ξ゚−゚)ξ「……」


随分高圧的な言い方だが、クーの言う事は核心を突いている。
ツンは何も言い返せずに、ブーン同様シュンとしていた。


川 ゚ -゚)「いいか?
    副座式飛行機械にとって、ナビとは命を握る大事な『眼』だ。
    ゆめゆめそれを忘れるな」




( ´∀`)「まあまあ、クー。
     そのくらいにしとくモナー」

川 ゚ -゚)「……」


そんな三人の間に割って入ってくるモナーと呼ばれた中年の男性。

無骨な無精ひげと不釣合いに垂れ下がった優しげな眼を持つ彼には
ナイスミドルという形容詞がジャストフィットする。




( ´∀`)「わずか半年でここまでの技術を身につけるなんて大したもんだモナー。
     二人とも、そんじょそこらのパイロットなんかよりよっぽど腕があるモナー。
     自信持っていいモナー」


語尾のモナーが気になる所だが、モナーは自覚している様子もなく笑みを見せる。
その笑みに釣られて、ブーンとツンもパッと笑顔に変化した。


( ^ω^)ξ゚∀゚)ξ「「ですよねー」」

川 ゚ -゚)「調子に乗るな」

(*^ω^)ξ゚−゚)ξ「「スイマセン…」」

( ´∀`)「でも機体の安定させることに関しては、二人は抜群だモナー」

( ^ω^)ξ゚∀゚)ξ「「ですよねー」」

川 ゚ -゚)「そんなことは、一割を切る機銃の命中率をどうにかしてから言え」

(*^ω^)ξ゚−゚)ξ「「スイマセン…」」




そんな彼らの様子を、着艦した三機をチェックしながら眺めるオカマとジョルジュ。


('∀`)「ぶほほほほほwwwwwまたやっているわ、あの子達!」
  _
( ゚∀●)「『VIP』飛行部隊名物『飴とムチ』!
     とことんけなされて、とことん褒められる!これが効くんだなー!!
     ……俺達も昔、よくやられたもんっすわ……」

('A`)「……そうだったわね」


少し悲しげな表情を見せた二人の視線の先では、
交互に浴びせられる言葉にめまぐるしく表情を一喜一憂させる少年と少女の姿があった。




やがて視線の先の少年達が「飴とムチ」から解放されたのを確認すると、
ジョルジュは作業を止めて彼らに近づいていく。

  _
( ゚∀●)「いよー!今日もこってり絞られたようだな!!」

(*^ω^)「まったくですお……クーさんには参っちゃいますお!」
  _
( ゚∀●)「そう言うなって!
     あいつもお前らの腕を評価しているからこそ、厳しいこと言うんだぜ?」


天性の明るい性格に、このような細やかな気配りを兼ね備えたジョルジュは、
この艦のムードメーカーと呼ぶにふさわしい存在だ。
そんな彼に、同じく天性の爛漫さを持ったムードメーカー候補が減らず口をたたく。


ξ#゚听)ξ「でかい声でしゃべらないでよジョルジュ!
     散々小言を聞かされて耳が痛いっていうのに……」
  _
( ゚∀●)「うひゃひゃひゃひゃwwwwそう言うなって、暴力少女!」

ξ#゚听)ξ「誰が暴力少女よ!!」
  _
( ゚∀●)「あんまりブーンをぶつなよ?こいつ、バカになっちゃうぜ?」

ξ゚∀゚)ξ「おほほほほwwwwこいつがこれ以上バカになるわけないでしょ!?」
  _
( ゚∀●)「おまwwww俺のかわいい弟分にあやまれwwwww」



そんな二人の傍で、話の種である少年は鼻をほじっていた。


(^ω^)「わー、これは立派な鼻くそですね」

(^ω^)「どれどれ、さっそくいただいてましょう」

(^ω^)「パクッ」


(^ω^)「うめぇwwwww」

  _
( ゚∀●) ξ#゚听)ξ「「何食ってんだ!」」

(^ω^)「ピーナッツです」
  _
( ゚∀●) ξ#゚听)ξ「「嘘付け!!」」

(^ω^)「塩味がたまりません」
  _
( ゚∀●) ξ#゚听)ξ「「黙れ!このエターナルバカ!!」」


*元ネタ:ブーンがグルメリポートをするようで




('∀`)「ぶほほほほwwww何食べたっていいじゃなーい!?」


いつの間に背後に回ったのか、
突然現れた巨大なオカマがツンを背後から羽交い絞めにする。


('A`)「それより早く飛行記録を提出なさいよーう!
   それがナビであるあんたの役割でしょーう?」

ξ#゚听)ξ「うるさいわね!わかったから離しなさいよ!!あたしはレディーだそ!!」

('∀`)「だーれがレディーよwwww小娘の分際でwwwwww」


羽交い絞めにされたツンはじたばたと抵抗するがオカマのたくましい腕はビクともせず、
少女の姿は「変なところ触るな!離せー!!」と言う叫び声とともに格納庫の奥に消えた。



  _
( ゚∀●)「あーあ、整備長に拉致されちまったな!オカマはしつこいからなぁ……
     ありゃしばらく戻ってこねーぞ!?うひゃひゃひゃひゃwwwwwwwww」


その様子を見て、腰に手を当ててゲラゲラと笑う副整備長。
彼はブーンの方に振り返ると、ニヤリと笑った。

  _
( ゚∀●)「それよりさ、いいこと教えてやるからこっちに来いよ!」

( ^ω^)「お?」


そんな彼に連れられて、少年は整備班の休憩室へと入っていった。



  _
( ゚∀●)「いいか?お前ももう一流の飛行機械乗りと言っていい腕前だ!
     そんなお前が覚えなければならないことが一つある!」

( ^ω^)「おお!!」


誰もいない休憩室で、二人はお茶を飲みながらだべっていた。
ジョルジュの言葉は口上の建前といった類のそれであるのだが、
素直と言うより愚直なブーンはそれを聞いてうれしそうに笑う。

  _
( ゚∀●)「素直なことは良きことかな!」


ニヤニヤと笑いながらジョルジュは続ける。

  _
( ゚∀●)「いいか?これからお前に『一流の飛行機械乗り』の挨拶の作法を教える!!」

( ^ω^)「うはwwwwwktkr!!」
  _
( ゚∀●)「そんじゃ、俺様の言うことをしっかり聞くんだぞバカタレ!!」

( ^ω^)「おいすー」


かくして、ジョルジュ長岡の「一流飛行機械乗りの挨拶講座」が始まった。



  _
( ゚∀●)「いいか?まずは相手と対面してビシッと背を伸ばす!」

( ゚ω゚)「あう!」
  _
( ゚∀●)「それから回れ右をして相手に背を向ける!」

( ゚ω゚)「おk!」
  _
( ゚∀●)「そのままパンツごとズボンをズリ降ろし、尻を出す!!」

( ゚ω゚)「イエア!!」
  _
( ゚∀●)「そして尻を相手に突き出して……」

( ゚ω゚)「ボンバイエ!!」
  _
( ゚∀●)「自分の尻を両手でバンバン叩きながら白目をむき……」




      人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人
    Σ                           て
    Σ  びっくりするほどユートピア!        て人__人_
    Σ         びっくりするほどユートピア!      て
     ⌒Y⌒Y⌒Y)                          て
             Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
 _______  _
 |__      ヽ( ゚∀●)ノ 
 |\_〃´ ̄ ̄ ヽ..ヘ(   )ミ
 | |\,.-〜´ ̄ ̄   ω > (ω^ )ノ <ウェルチ!
 \|∫\   _,. - 、_,. - 、 \ ( ωヘ)
   \   \______ _\< 
    \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
      \||_______ |





   / ̄\
  | ^o^ |  なんという勇猛さ……
   \_/    まさにこれは一流の飛行機械乗りのあいさつ!!
   _| |_
  |     |
  | |   | |
  U |   |U
    | | |
    ○○

【名前】ブームくん
【種族】ようせい
【趣味】にこにこすることと、せつめい
【仕事】とつぜんあらわれて、かんどうすることだよ
【好きな物】ひらがな。たまにはかんじもつかうよ
【年齢】20さい
【主張】 o は、はなでなく くちだよ



  _
( ゚∀●)「いやー、華麗に決まったぜ!」

( ;ω;)「長岡さん!僕は今、猛烈に感動していますお!!」


股間のエレファントカシマシをブラブラさせながら、二人の男は抱き合った。
ここに今、義兄弟の契りが交わされたのだ!
そんな最中、休憩所に入ってきたモナーが一言。


(;´∀`)「お前達……何しているモナー?」

  _
( ゚∀●)「挨拶教えてたんスよ!一流の飛行機械乗りの……ね?」


そう言って、ジョルジュはモナーに目配せする。


( ´∀`)「……なるほどモナーwww」

( ゚ω゚)「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!」


ニヤニヤと笑みを浮かべるモナー。
休憩室には、教えられた挨拶をうれしそうに繰り返すブーンの声だけが響いた。



  _
( ゚∀●)「ということで、この挨拶を早速実践しようと思う!」

( ^ω^)ノ( ´∀`)ノ「「いえーい!!」」


騒がしく艦内をうろつきまわる男三人。
その先頭を行くジョルジュが誰かを探している。

そんな彼は、しばらくしてお目当ての人物を見つけたようで、
ブーンとモナーを手近な一室に連れ込むと、その扉から三人はこっそりと顔を出す。

その視線の先には、一人静かに歩くクーの姿。

  _
( ゚∀●)「よっしゃブーン!逝ってこい!
     俺とモナーさんはここで見守っていてやるからよ!」

( ;ω;)「何たる慈悲深さ……僕、逝ってきますお!」


少年は駆け出した。




川 ゚ -゚)「……ブーン、何か用か?」

(;^ω^)「……」

相変わらず冷静な眼で、クーは突然目の前まで走ってきたブーンを見た。
その眼に一瞬たじろいだ表情を見せる彼。

しかし緊張した面持ちの少年は、背筋を伸ばし、回れ右をすると、
意を決して、尻を出した。



           从
      (ω゚  )  て    びっくりするほどユートピア!
        ( ヾ) )ヾ て      びっくりするほどユートピア!
           < <



川 ゚ -゚)「……」


彼女は懐から静かに銃を取り出すと、
ブーンのヒップのクレバスに向けて、二度、引き金を引いた。










    「アッ―――――――!
        アッ―――――――!!」










  _
(;゚∀●) (;´∀`)「「ブーン!?」」


一部始終を扉の影から覗き見していた二人の男は、その銃声とともに飛び出した。

彼らの目の前には、天高くお尻を突き出してうつぶせに倒れるブーンの姿。
彼の尻の割れ目には、アナルとは別の穴が二つ開いていた。


川 ゚ -゚)「……これは貴様らの差し金か?」


その声に二人が顔を上げると、目の前には無表情で自分達に銃口を向けるクーの姿。
モナーは彼女の言葉に即答で返した。


( ´∀`)「すべての黒幕はこいつだモナー」
  _
(;゚∀●)「ちょwwwwwそりゃねぇよダンナwwwwwww」

( ´∀`)「煮るなり焼くなり好きにするモナー」

川 ゚ -゚)「……では、遠慮なく」


まさにその言葉どおり、彼女は遠慮なく引き金を引いた。




その数時間後。
艦内の医務室にて……


「で、どしたの?」
  _
( ゚∀●)「参った参った!眉間に鉛玉ぶち込まれちまったよ!」

( ゚ω゚)「僕はお尻の穴が三つになっちゃったお!」
  _
( ゚∀●)「いいじゃん!通常の三倍の速度でうんこ出来るじゃん!!」

(*^ω^)「なんと!その発想はなかったですお!!」
  _
( ゚∀●)「うひゃひゃひゃひゃwwwww
     お前のアナルすげえよ!通常の三倍の性能だぜ!!」

(*^ω^)「おっおっおwwwこれからは僕のことを『赤い彗星のアナル』と呼んでくれお!」




その言葉に、今まで二人に背を向けて
机上のカルテに二人の症状を書きこんでいた医者らしき男が振り向いた。


(´・ω・`)「赤い彗星のアナル……」
  _
( ゚∀●) (;^ω^)「「艦長wwwwあんたなぜに医者の格好をwwwwwww」」

(#´・ω・`)「バカヤロウ!今大事なのはそんなことじゃねぇ!!
      今大事なのは、ブーン君のケツの穴だ!」
  _
( ゚∀●)「……艦長、あんた……まさか!?」

(´・ω・`)「艦長だけに『浣腸』……なんちゃって」


そう言うと、ショボンはあわせた両人差し指をブーンの三つのアナルに次々と突っ込んだ。


(#´・ω・`)db「イエア!!」

(*゚ω゚)「ウェルチ!!」


第十一話 おしまい




  第十二話 「ウグイス」





それからもブーンとツンは赤と青の訓練を受け続けた。

みっちりしごかれ、こってり鍛えられたブーンとツンは、
やっとこの艦で一人前と呼ばれるくらいのパイロットとナビへ成長した。


川 ゚ -゚)「よく私のしごきに耐えた。
     今のお前達にはAランクの仕事など簡単にこなせるだろう。
     もうお前達はどこに行っても通用する一人前のパイロットとナビだ」

( ´∀`)「大したもんだモナー!
     クーにここまで言わせたのはジョルジュ以来だモナー!!」


そう言われた直後、少年と少女の二人は抱き合って喜んだ。
赤と青、二人のパイロットは、そんな少年達をいとおしげな眼差しで見つめる。

一方、遠くからその様子を見ているオカマと眼帯男の表情には、
嬉しさの中に少し寂しげな色が含まれていた。


その夜、二人は興奮と感動で眠れなかった。

そして翌日、二人はショボンに呼ばれ、艦長室へと足を踏み入れた。
何でも任務があるらしいのだが……。




(´・ω・`)「いらっしゃ〜い」

ξ゚听)ξ「相変わらず軽いノリですね、艦長」

( ^ω^)「で、任務って何なんですかお!?」


ショボンの目の前に立つと、ブーンは彼の眼を覗き込むように見つめた。

「VIP」で生活するようになって初めての単独任務。
自分達だけで空を自由に飛べる久しぶりの機会。

以前より成長した自分の進む先には、どんな空が待っているのだろうか?

少年は、はやる気持ちを抑えられずにいた。


(´・ω・`)「ブーン君、落ち着いて。まだ外は明るいよ?
      お楽しみは夜、暗くなってから……ね?(はぁーと)」

ξ#゚听)ξ「よし。死刑。ザキ!」

(´・ω・`)「なんの!リフレク!!」


お尋ね者の「VIP」の艦長がこんなだと、誰が想像できるだろうか?




( ゚ω゚)「そんなことより早く!」

(´・ω・`)「ハァハァ……早く……挿れてほしいのかい?」

(;゚ω゚)「あーもう!早く任務の内容を説明してくれお!!」

(´・ω・`)「ならば
     『僕のグチョグチョのあそこに艦長様のマンモスを挿れてください』
     と十回言いたまえ」

(# ゚ω゚)「うあああぁぁぁあああぁああ!!」


自分の髪の毛をかきむしり、禁断症状を起こしたかのよう叫ぶブーン。

そんな幼馴染を見て、
「こいつ、本当に空が好きなんだなぁ」なんて考えながら、ツンは軽く微笑んだ。

その視線の先では、幼馴染が八の字眉毛の男に尻を触られて鳥肌を立てている。
やがて、じゃれあっていた二人が落ち着くと、ようやく話は本題へと移った。




(´・ω・`)「それじゃ、君たちの初任務の内容を説明しよう」

( ゚ω゚)ノξ#゚听)ξノ「「バッチコーイ!!」」

(´・ω・`)「君達の任務とは、ある御方をとある島の遺跡へと運ぶことだ」

( ^ω^)「あるお方?」

ξ゚听)ξ「とある島?」

(´・ω・`)「うん。とりあえず『あるお方』の方から説明しよう。
      どうぞ、お入りになってください」



       (@盆@)  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
  -=≡  /    ヽ  | やあ、諸君! |  
.      /| |   |. |  \_   __/  
 -=≡ /. \ヽ/\\_   \/
    /    ヽ⌒)==ヽ_)=  _,,..,,,,_
-=   / /⌒\.\ ||  ||  / ,' 3  `ヽーっ 
  / /    > ) ||   l  l   ⊃ ⌒_つ
 / /     / /_||_ || `'ー---‐'''''" _.
 し'     (_つ ̄(_)) ̄ (.)) ̄ (_)) ̄(.))




ショボンの言葉の後、台車を押して入ってきた不細工な男。
彼の傍に立つと、ショボンは続ける。


(´・ω・`)「この方は、民間における古代学の権威であらせられる
     『荒巻スカトロチノフ』教授だ」


その言葉に、二人は目の前の男をまじまじと見た。
不細工な顔だが、なんだかすごそうな肩書きだ。きっとエロい人に違いない。
そう判断したブーンとツンは、姿勢を正して挨拶した。


( ゚ω゚)「びっくりするほどユートピア!
     びっくりするほどユートピア!!
     『VIP』の新米パイロット、ブーンですお!」

ξ゚听)ξ「同じく、そのナビのツンです!」


二人は不細工な男にうやうやしく頭を垂れた。
しかし、彼は困った顔をする。




(@盆@)「……」

(;^ω^)ξ;゚听)ξ「「あのー……??」」

(´・ω・`)「違う違う。この不細工じゃない」


そう言うと、ショボンは台車の荷台に乗せられた荷物を指差した。


(´・ω・`)「このヘチャムクレのぐうたらジジイが『荒巻スカトロチノフ』教授だ」

( ゚ω゚)ξ;゚听)ξ「「な、なんだってー!!」」  


ショボンの言葉に、二人は大げさに驚いて見せた。
視線の先には、台車に乗せられたヘチャムクレの、おおよそ人間の形を成していない物体。


ξ;゚听)ξ「この物体が……」

(;゚ω゚)「……人間!?」


そう呟いたブーンの頬に、熱いコブシが食い込んだ。




一瞬のうちに床へと倒れこむブーン。
そんな彼を見下ろして、八の字眉毛の艦長は熱い涙を流している。


(#´゜ω゜`)「失礼なことを言うんじゃねぇ!この大バカヤロウ!!」

(#)ω;)「痛いお……なにも殴らなくても……」

(#´゜ω゜`)「俺だって好きでお前を殴ったんじゃねぇ!
      いいか?これはお前のためを思った俺の愛のムチなんだ!!
      痛いのは俺のコブシだって同じなんだよ!!」

(*゚ω゚)「……艦長!!」

(´;ω;`)「ブーン君!!」


ここに、身をも焦がす禁断の関係が生まれた。



〜日曜洋画劇場「ブーンとショボンが禁断の花園へ行くようです」のはじまり〜




ξ゚听)ξ「で、さっさと任務の内容を説明してもらえる?」

(#)ω(#)(´;ω(#)「「はい、すみません!!」」


日曜洋画劇場「ブーンとショボンが禁断の花園へ行くようです」は日の目を見ずに終わった。
ツンに殴られボコボコにへこんだ顔で艦長は続ける。


(´;ω(#)「先月、『ドクシン』のはるか東の小さな島で、旧世界の遺跡が見つかったんだ」

ξ゚听)ξ「そこへ、このヘチャムクレを乗せて飛べと言いたいわけね?」

(´;ω(#)「ご名答。
      だけどね、もうそこはすでに『トップページ』の研究者たちが調査した後なんだよ…。
      本当はもっと早く行ってほしかったんだけど、このジジイが……」


そう言ってショボンが見下ろした先には、台車の上に転がっているヘチャムクレジジイ。


(´;ω(#)「……約束の日付を一ヶ月も間違えやがってね」

/ ,' 3「そういうわけじゃ」


ここへ来てはじめて口を開いた荒巻の声に、悪びれた様子など微塵もなかった。




(´・ω・`)「ぶち殺しますよ?」

/ ,' 3「やーん、いけず〜。ちょっと日付勘違いしていただけじゃないか」

(´・ω・`)「どの世界に一ヶ月も日付を勘違いする人間がいるんですか?」

/ ,' 3「わし」

(´・ω・`)「よし。死ね」

ξ゚听)ξ「まあまあ、艦長。これくらいで許してあげましょうよ。
    それによく見ればこのおじいちゃん、キモ可愛いじゃない?」


そんな二人の間に割って入ってきたツン。
彼女は台車から荒巻を持ち上げると、彼を赤子のように抱き上げた。

そんな少女を見て、「あーあ、やっちゃった」といいたげな表情のショボン。


(´・ω・`)「……それは君がこのジジイの性格を知らないからそう言えるんだよ」




ξ゚听)ξ「どういうこと?」


ツンがそう聞くや否や、彼女の胸に抱き上げられた荒巻が、
少女の胸に顔を押し付け始めた。


/ ,' 3「むひょひょひょwwwww
   おなごじゃwwww若いおなごの胸じゃwwwwww」

ξ////)ξ「……イヤ――――――!!」


少女は顔を真っ赤にして胸元のくそジジイを壁に向かって投げつけた。
しかし荒巻は体中の毛を逆立てて衝撃を吸収し、安全に地面の上に転がった。
そんな老人を見下ろして、ショボンが申し訳なさそうに言った。


(´・ω・`)「こんなジジイだけど研究の腕は確かでね……。
     こいつを連れて、遺跡まで飛んでくれ……もう目ぼしいものは残ってないと思うけど」




その後、移動した飛行機械の格納庫の中で、またひと悶着あった。


ξ#゚听)ξ「イヤ!絶対にイヤ!!」


そう叫ぶツンの目の前にはくそジジイこと荒巻教授の姿。
何でも、彼を飛行機械のどこに乗せるかで問題が起こっているようだ。

ツン曰く、「こんなエロジジイを自分のひざの上に乗せるなんて絶対イヤ」
荒巻曰く、「男(ブーンのこと)のひざの上に乗るなんて死んでもイヤ」
そして、ブーン曰く、「どうでもいいから早く空を飛ばせてくれ」

ブーンとツンの乗る飛行機械は複座式で席が二つしかなく、
まさか仮にも人間である荒巻を積み荷用のスペースに乗せるわけにもいかず、
結局、どちらかのひざの上に荒巻を乗せるしか飛ぶ方法はなかった。

しかし、少女とエロジジイはどちらも自分の意見を譲らない。

そして最終的に、予想だにしないメンバーとブーンは飛び立つことになる。




空は快晴。
機体の調子は最高。

機体から響くエンジンの振動、そして風を切る感覚が最高に気持ちいい。

久しぶりの、誰にも縛られない単独飛行。
自由な空。

少年は駆け出した世界に心を奪われている……予定だった。


(;^ω^)「あのー、荒巻さん?」

/ ,' 3「……zzZ」

(;^ω^)「荒巻さん!!」


ブーンは後部座席に座った荒巻の方を振り返った。
そこでは、くそジジイが狭い座席の上に器用に寝転んで寝息を立てていた。

後部座席にツンの姿は、無い。




(;^ω^)「起きてくれお!荒巻さん!!」

/ ,' 3「……なんじゃ、騒々しい」


我慢しきれず大声を上げたブーンを歯牙にもかけない様子で答える荒巻。
そんな彼にため息をつきながらも、少年は続ける。


(;^ω^)「進路を見てほしいお。僕達はちゃんと東に進んでいますかお?」

/ ,' 3「……東って、お茶碗持つほうだっけ?」

(;^ω^)「……もういいですお。
     それより、今どのあたりを飛行しているか地図で確認してくださいお」

/ ,' 3「わしゃ地図なんて読めん!」

(;^ω^)「……」

( ;ω;)「……これが学者バカっていうやつかお」


荒巻の言葉にうなだれるブーン。
本当ならば今頃、ツンと談笑しながら楽しい飛行を満喫しているはず。
しかし、後部座席にいるのは人形のようなジジイ荒巻。

……何で、こんなことになったのだろう?




ξ#゚听)ξ「絶対に嫌だからね! 
     あたしのかわりに、このエロジジイにナビしてもらいなさいよ!」


そんなツンの言葉が決め手となり、格納庫での言い争いは結局、
荒巻がナビとして後部座席に乗り込むことで決着が付いた。

あんなに楽しみにしていた単独飛行をあきらめてまで荒巻との乗船を拒否したツン。

そんな彼女の決断を不審に思っていたブーンであったが、
後部座席で自由気ままに行動する荒巻の姿を見てすぐにそのわけを理解した。

彼女が今回の飛行をあきらめたわけはきっと、
逃げることの出来ない空で荒巻と同じ座席に縛り付けられれば、
何をされるかわかったもんじゃないからに違いない。

だが、「地図を読めない」「方角もわからない」「すぐに寝る」の三拍子……
いや、三重苦を所持していた荒巻には、ナビの役目なんてとても期待できない。




( ´ω`)「ハァ……ツンの存在がここまで大きいだなんて、思いもしなかったお……」


結局、この任務の間中、
少年は一人でパイロットとナビの二役をこなすしかなかった。

久しぶりの空の旅は最悪。

再びため息が出そうだったが、
そんな自分に、見上げた空が語りかけてきている気がする。


『おかえり。また来たね』


そう言ってくれる空は、雲一つ無い一面の蒼。
再び顔を上げれば、それは少年の視界一杯に飛び込んでくる。


( ^ω^)「……荒巻さん、飛ばすお!」

/ ,' 3「へ? のわあああぁぁぁぁあああぁあ!!」


グッとペダルを踏んで、ブーンは青空に向けて「ただいま」と呟いた。


第十二話 おしまい



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