第十三話 「P M A」





この世界に五つの国が存在することは前にも述べた。
五つの国々は五角形の頂点にそれぞれ存在することも前述したとおりである。

その中の一国が「ドクシン」であり、
五角形の、北から時計回りに二番目の頂点に位置するこの国のはるか東に、
今回の目的地である小島が浮かんでいる。

その小島にある新発見の遺跡に、荒巻を乗せて調査に行くこと。
これがブーンの「VIP」における初任務だ。

だけど、本当にこの任務はきつかった。

仕事自体のランクはB程度のものだったが、
ナビであるツンがいないこと、そして何より自由気ままな荒巻の存在が、
この任務の難易度を「ダブルA」に匹敵するものにしていた。




その荒巻がどのくらい自由気ままなのかというと、
ナビとパイロットの二役をこなしてすでにヘトヘトのブーンに向かって、
飛行中に急に、


/ ,' 3「小便がしたい」

( ´ω`)「……近くのコンビニエンス島までもうすぐだから待ってくださいお」

/ ,' 3「あと何分くらいかのう?」

( ´ω`)「……一時間くらいだお」

/ ,' 3「無理無理。待てんわい。ここで出すわい」

(;^ω^)「ちょwwwwwそんなことしたらツンに殺されるお!!」


こんな具合に、である。

ちなみにこの荒巻の小便騒動は、
無人島を見つけたブーンの迅速な行動により何とか事なきを得ている。

そんな最悪の状況での飛行を二日続けた彼の目の前にようやく目的の島が現れたときには、
少年は心の底から喜んだものである。

……帰りの飛行が残っているのも忘れて。




( ヽ'ω`)「……やっとついたお」

/ ,' 3「ほっほっほ。ご苦労さん」


島に降り立ったブーンの顔は、長時間の飛行と苦労で頬の肉がげっそり削げ落ちていた。
そんな少年を気にも留めず、老人は島の奥へゴロゴロ転がりながら進んでいく。

ブーンは調査用の道具やなんやらの入ったリュックを一人で背負わされ、
その後ろをフラフラした足取りで付いていった。


/ ,' 3「ほぅ!これは大したもんじゃ!!」


歩き(転がり)出して数十分。
飛行機械も着陸不可能なほどに生い茂った森の奥の遺跡に、二人は立っていた。

目の前の遺跡に眼を輝かせる荒巻。
その隣では、背中にリュックを担いで地面に死んだように仰向けに倒れこんでいるブーンの姿。

そんな少年をよそに、老人は遺跡の調査を開始した。




( ´ω`)「……」

数時間後、ブーンは背後から響くガチャガチャとした音に眼を覚ました。
振り返ると、そこには少年が背負ったリュックの中から調査用の道具か何かを取り出している荒巻の姿。
その姿は、すぐに遺跡の奥へと消えていく。

それを見届けた少年はリュックを地面に下ろし、近くの木陰に腰掛けた。


( ´ω`)「……荒巻さん、本当に遺跡が好きなんだお」


そう呟いて空を見上げると、そこには一台の黄色い飛行機械が飛んでいた。

「こんな辺境を飛ぶ飛行機械も珍しいお」

そんなことを考えながらしばらくボーっとしていたブーンは、
それに飽きたのか、目の前に広がる遺跡の概観を眺め始めた。


(;^ω^)「……お? これって……」


どこかで見たことのある風景。
だけど、疲れ果ててヘトヘトな彼の脳みそはそれを思い出せない。

結局、記憶の引き出しを開ける事をあきらめた彼は、荒巻の後を追って遺跡の中へと入っていった。




遺跡の奥は真っ暗だった。

ひんやりとした冷たい空気。
響くのは自分の足音だけ。

そんな中を、ブーンは壁に手を突きながらゆっくり進んだ。

やがて見えてきたランプの光。
それは遺跡の一番奥の、妙にだだっ広い部屋をこつ然と照らしていた。


( ^ω^)「……荒巻さん。なにか見つかりましたかお?」

/ ,' 3「……」


部屋の中心にたたずんでランプを持つ荒巻。
飛行中に見せていたふざけた表情はもう無かった。
今では、教授という肩書きが当然のように思える。




/ ,' 3「……残っとらん」


彼はしばらく部屋の床を見続けた後、静かに言った。


/ ,' 3「……お前達の望むものは、もう残っとらんようじゃ」

(;^ω^)「僕達の……望むもの?」

/ ,' 3「なんじゃ、なにも聞かされておらんのか?」


ランプの明かりに照らされて、少年はコクリとうなずいた。


/ ,' 3「『エデン』の地図じゃよ」




(;^ω^)「お?」


突然の一言に、少年は生返事で答えた。
そんな彼にかまわず、ランプを持つ老人は続ける。


/ ,' 3「旧世界の遺跡の中には『エデン』への地図が刻み付けられた石版が存在することがある。
   それらのすべては『トップページ』の研究者達により独占されておるのじゃが、
   稀に、新発見の遺跡でも見つかることがあるんじゃ。
   それを狙ってショボンはわしらをここへ飛ばした、というわけじゃ」

(;^ω^)「おー……」


その言葉に、ただ呆然とたたずむ少年。
老人は部屋の壁の方へと静かに歩き出し、あるところで立ち止まる。

ランプに照らされたそこには、真四角のくぼみがあった。




/ ,' 3「おそらく、ここに石版があったんじゃろう。
    しかし、それはすでに『トップページ』の研究者達に持っていかれたようじゃな」

(;^ω^)「……」


少年はそのくぼみをマジマジと見つめた。
どこかで見たことのあるそのくぼみに、彼は首をかしげる。

しばらくの間、脳内の記憶を必死にたどる少年。

そんな最中、部屋の通路の奥の暗闇からコツリコツリと足音が響いてきた。


/ ,' 3「おやおや、わしらの他にお客さんのようじゃのぅ」


その言葉に振り返ったブーンの視線の先には、男女二人の姿がランプに照らされていた。




(*゚ー゚)「あら?先客がいるみたいね」

( ,,゚Д゚)「お前達、ここで何しているんだゴルァ!!」


別に大声でもないのに凄みのある男の声。
それにまったく動じた様子を見せないで荒巻は答える。


/ ,' 3「別に〜。わしらはただ『エデン』の地図を探していただけじゃ」

( ω)゚ ゚ 「コペンハーゲーン!!」


その言葉に、ブーンの眼は飛び出した。


(;^ω^)「ちょwwwwwそれを言っちゃだめだお!!」

/ ,' 3「ありゃ?わし、なんかマズイこと言っちゃった?」


まるで漫才のような掛け合いを繰り広げる二人。
そんな二人を見て、暗闇の男は「ギコハハハハハ!!」と特徴のある笑い声を上げた。




( ,,゚Д゚)「正直で面白いやつらだゴルァ!」

(*゚ー゚)「うふふw本当ね」


二人の様子を見て、とりあえず安心するブーン。


( ,,゚Д゚)「まあ、俺達も同じ目的だったんだがな。
    お前達のその様子じゃ、『エデン』の地図は無かったようだな。
    おかげで調査の手間が省けたぞゴルァ!」

/ ,' 3「なんじゃ、そうなのか。それで、お前さんたちはどこの国のものじゃ?」

( ,,゚Д゚)「ギコハハハwwwwwwそれはさすがに言えないぞゴルァ!!」


そう言って再び笑い声を上げる男。
ランプに照らされたその顔を見て、ブーンは大声で叫んだ。


(;^ω^)「お!!あんた、ラウンジ艦隊の黄色い飛行機械のパイロットだお!?」




少年の言葉に、室内は沈黙に包まれた。

いぶかしげに彼を見つめる男女二人。
ランプを片手に何を考えているのかわからない顔の荒巻。

そんな室内の雰囲気にブーンが

「あ、僕、マズイこと言っちゃった?」

なんて思っていると、
ブーンを見つめていた男が、何かを思い出したかのように手のひらをポンと叩いた。




室内から出た三人は、遺跡の外の階段に腰掛けながら談笑していた。


( ,,゚Д゚)「ギコハハハハwwww
    まさかお前があの時の配達人だとは思わなかったぞゴルァ!」

( ^ω^)「おっおっお!あの節はお世話になりましたお!!」

(*゚ー゚)「うふふwあの時はごめんなさいね」


しぃの上品な笑い声がブーンの耳に残る。
そんな彼女を「綺麗な人だなぁ」なんて思いながら見惚れていると
ギコが言葉をつむいだ。


( ,,゚Д゚)「で、今日はなぜこんな辺境の島まで来たんだゴルァ!?」

(;^ω^)「お……」

(*゚ー゚)「やだわ、ギコ。仕事に決まっているじゃない?」

(;^ω^)「仕事……そう!仕事ですお!!」


まさか自分が海賊狩りで悪名高い「VIP」の乗組員で、
今日はその任務でここに来ているだなんて死んでも言えない。
しぃの言葉に便乗して、ブーンは事なきを得た。




( ,,゚Д゚)「……お前は確か『ツダンニ』の『飛行機械郵便業協会』所属だったな?
    となると、お前は『ニューソク国』からわざわざここまで来たわけかゴルァ!?」

(;^ω^)「お……その通りですお」

( ,,゚Д゚)「まったく……大したもんだな、少年!!」


そう言ってブーンの肩をバシバシと叩くギコ。
にこやかに笑う彼を騙したことに少し罪の意識を感じていると、
隣に座るしぃがブーンに話しかける。


(*゚ー゚)「それで、今日はあの元気な女の子は一緒じゃないの」

(;^ω^)「お……それが……」


そう呟きながら、ブーンは相変わらず遺跡のあちこちを調べて回っている荒巻の方を見た。


( ^ω^)「実は、かくかくしかじか尻の穴……」


ブーンの説明を受けたギコとしぃは、今日何度目かの大笑いをした。




(*゚ー゚)「そうだったのwあなたも大変ね?」

( ´ω`)「……まったくですお。これで帰りの飛行もあるから困ったもんですお」


そう言ってうなだれるブーン。
性器の無い少年に向かい、ギコはキリリとした顔で言った。


( ,,゚Д゚)「だけどな、少年!どんな困難にぶち当たろうとも、
    俺達飛行機械乗りは黙って前を見続けなければいけないんだゴルァ!!」

(;^ω^)「お……」

( ,,゚Д゚)「どんな困難な状況でも『Positive Mental Attitude』!!
    これが俺達、飛行機械乗りの心構えだ!!わかったかゴルァ!?」

( ^ω^)「『Positive Mental Attitude』……」


その言葉を反芻するブーン。

『Positive Mental Attitude − 前向きな心』

なんだか身体に元気があふれてくる、不思議な言葉だった。




( ,,゚Д゚)「それじゃあ、俺達はもう行くぞゴルァ!!」

( ´ω`)「もうお別れなんて寂しいですお……」

(*゚ー゚)「何言っているのよwまたどこかで会えるわよ」

( ,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ!
    この広い空を飛びまわるのが俺達、飛行機械乗りだ!!
    いつかまた、どこかの空で必ず巡り合えるぞゴルァ!!」


あれからしばらくして二人と別れたブーンは、
荒巻とともに自分達の飛行機械の下へと戻っていた。

素敵な出会いにニコニコ顔のブーン。
一方で、荒巻の表情はなんだか冴えない。


/ ,' 3「やれやれ、厄介なやつらに見つかったのぉ……」

( ^ω^)「お?どういうことだお?」

/ ,' 3「なんじゃ?あいつらのこと知らんのか。あいつらはのぅ……」




話を続けようとした荒巻。
その刹那、少年は突然、大声を上げて叫ぶ。


( ゚ω゚)「アッ――――!!」

/ ,' 3「いきなりなんじゃ?アナルにバナナでも刺さったのか?」


荒巻は咄嗟に耳を塞いで、怪訝な表情でブーンを見つめる。


(;^ω^)「違いますお!思い出したんですお!!」

/ ,' 3「なにがじゃ?」

(;^ω^)「この遺跡の写真が、僕の家にあるんですお!!」

/ ,' 3「な、なんじゃとぉ!?」


素っ頓狂な叫び声を上げてブーンの胸倉に飛び込んできた荒巻。
老人は、小さな眼を見開いて少年に尋ねる。


/ ,' 3「して、地図の写真はあるのか!?」

(;^ω^)「あったお!ツンの部屋の壁に貼り付けてあるお!!」




大声で叫ぶブーン。

そのときだった。
彼らの上空に、ギコたちのものと思われる黄色い飛行機械が現れた。

それを見た途端、荒巻は「しまった」という表情をしてブーンの口をふさぐ。

「モゴモゴ」となにやら口の中で言っているブーンを尻目に、
荒巻は西の空に消えていく黄色い飛行機械の姿を眼で追った。


/ ,' 3「『黄豹』に『ネコ耳』か……
   こりゃ……早急に行動を起こさんといかんのぅ」


ヤツらは最初からワシらを不審と見ていたか……。
荒巻は舌打ちをして、後部座席に乗り込んだ。


/ ,' 3「お前も乗り込め! 小僧!」

(;^ω^)「ウェ、ウェルチ!」


始めてみせる荒巻の威圧。
少年はそれに驚きつつも、操縦席に飛び乗るとエンジンを始動させた。




一方、こちらはブーン達の上空を飛ぶ黄色い飛行機械。
その前部座席に座ったギコは、後部座席のしぃを振り向いてたずねる。


( ,,゚Д゚)「で、あの二人が言ったことは聞き取れたのかゴルァ!?」

(*゚ー゚)「ばっちりよ!私を誰だと思っているの?」


ウインクをして、彼女はブーンの言ったことを復唱した。


( ,,゚Д゚)「……ギコハハハハwwww
     しぃ、これは大手柄だぞゴルァ!!」

(*゚ー゚)「うふふwwそうでしょう?」


空を舞いながら笑う二人。
先ほどまでと違った、腹黒い何かを抱えた笑い方。




( ,,゚Д゚)「さすがは『ネコ耳のしぃ』だゴルァ!!
    至急、ラウンジ艦隊と合流!
    そのまま『ニューソク国』の『ツダンニ』へと向かうぞゴルァ!!」

(*゚ー゚)「了解!」


しぃが叫ぶと、二人を乗せた黄色の飛行機械は西の空へと消えていった。


第十三話 おしまい






  第十四話 「CAUSION」





(;^ω^)「ちょwww今日中に『VIP』に戻れだなんて不可能ですお!!」

/ ,' 3「ツベコベ言わずに、お前は黙って運転に集中せんかい!!」


行きの飛行とは打って変わって協力的になった荒巻。
そんな彼にせかされて
ブーンは二日がかりでたどった道のりを一日で戻らされる羽目になっていた。

いったい、ぐうたらジジイのこの豹変振りはどういうことなんだろう?

そんなことを考えながらも、ブーンは「VIP」への道のりをただただ急いだ。




やがて東の空が茜色に染まる夜明けが来て、
ようやく少年の目の前に、見慣れた艦影が朝日に照らされて姿を現すのが見えた。

その甲板に向けて、二人を乗せた飛行機械は矢のように飛び込んでいく。

  _
( ゚∀●)「……こんな朝っぱらに帰ってくるなんて聞いてねぇぞ?」


ぼやきながらも、キッチリと着艦時の整備班の仕事をこなすジョルジュ。
そんな彼に向かって、着艦した荒巻は大声を上げて叫んだ。


/ ,' 3「艦長と副艦長をたたき起こして来い!今すぐじゃ!!」





(´・ω・`)「ぶち殺すぞ?こんな朝早くに起こしやがって……」


パジャマ姿のまま、半分眠っている様子で甲板に姿を現したショボン艦長。
その隣には、いつものようにスーツとネクタイでビシッと決めたミルナ副艦長の姿。
ミルナは朝に弱い艦長の変わりに荒巻に尋ねる。


( ゚д゚ )「遺跡で何があった?」

/ ,' 3「『エデン』の地図の在り処がわかった」
  _
( ゚∀●) ( ゚д゚ ) (´・ω・`)「「「!!」」」


その言葉に、一気に眼が覚めた様子のショボン。
待っていましたと言わんばかりの表情のジョルジュ。
そんな二人に視線を配りながら、荒巻は続けた。


/ ,' 3「どうやらそれはブーンとお嬢ちゃんの家にあるようなんじゃ」




その言葉に、周囲の視線がブーンに集まる。


( ゚д゚ )「スロウライダー……なぜそれがお前の家に?」

(;^ω^)「お……父ちゃんたちが残した写真の中にあったんだお。
     ……だけど、黙っていたわけじゃないんだお!!
     まさかそれが『エデン』の地図だなんて思わなかったんだお……」


誰も聞いていないのに弁解を繰り広げるブーン。
そんな彼の言葉をさえぎって、荒巻は話を続ける。


/ ,' 3「じゃがのぅ、悪いことにそれを『黄豹』と『ネコ耳』に聞かれたようじゃ」

  _
(#゚∀●) ( ゚д゚ ) (´・ω・`)「「「!!」」」




一瞬にして表情を変えた三人。
ミルナはすぐさま艦内の通信機の傍に駆け寄ると、それに向かって大声を上げた。


( ゚д゚ )「総員、緊急事態宣言!
    至急『ニューソク国』の『ツダンニ』へと進路を取れ!!」


ミルナの大声に艦内があわただしく動きだす。
ショボンとミルナは小走りで、そして荒巻は転がりながらブリッジへと向かっていく。
そんな喧騒の中、ただ一人甲板に残ってうつむいているジョルジュに向かってブーンは尋ねる。


(;^ω^)「長岡さん……緊急事態ってどういうことなんだお?」


その言葉に顔を上げたジョルジュの表情に、ブーンは思わず後ずさる。

  _
(#゚∀●)「わりぃ……他の奴に聞いてくれ」


そう呟いてどこかへ消えていくジョルジュの表情は、
いつもの彼からはとても考えられないような凶悪な顔をしていた。




数十分後。
ブリッジでは緊急の幹部会が開かれていた。
  
艦長のショボンに副艦長のミルナ。
整備長の毒男に副整備長のジョルジュ。
飛行機械部隊隊長のモナーに副隊長のクー。
その他、荒巻や艦内の重要部分を任される者達。

そんなそうそうたるメンバーの中に呼ばれた、
場違いに階級の低い新米パイロットであるブーンとツン。

しばらく二人がブリッジの隅っこで小さくなっていると、副艦長のミルナが口を開いた。


( ゚д゚ ) 「諸君、緊急事態宣言を発令したのは他でもない。
     我々の目標である『エデン』の地図が見つかった」

一同「「「……」」」


そんな朗報にもかかわらず、幹部達はうれしそうな表情を見せない。
彼らの関心は、そんな朗報をも超える緊急事態宣言の方にあった。




( ゚д゚ )「本来ならばこれは宴会を開くほどに喜ばしい出来事だ。
    しかし、それ以上にマズイことが起こった。荒巻教授……」

/ ,' 3「うむ」


ミルナの言葉に地面に転がっていた荒巻が起き上がる。


/ ,' 3「『エデン』の地図の写しは『ツダンニ』のブーンとお嬢ちゃんの家にある。
   そのためこの艦は現在『ニューソク国』へと向かっているわけじゃが、緊急事態じゃ。
   この話を、同じく遺跡に調査に来ていた『黄豹』と『ネコ耳』に聞かれた」

一同「「「!!」」」


その言葉にあたりが騒然となる。


川 ゚ -゚)「『黄豹』か……メンヘラのラウンジ艦隊が動き出すな」




呟いたクーの声で、周囲の喧騒が一気に静まりかえる。
室内がしんとした空気に包まれる中、ブーンはおずおずと手を上げた。


( ゚д゚ )「どうした、スロウライダー?」

(;^ω^)「『黄豹』と『ネコ耳』って、ギコさんとしぃさんのことですかお?」

( ゚д゚ )「そうだが?」
  _
(#゚∀●)「てめぇ!!奴らと知り合いなのか!?」


怒鳴り声を上げてブーンをにらみつけるジョルジュ。
そんな彼を、隣に座る毒男が静かに制した。
いつもと明らかに違うジョルジュに怯えながらも、ブーンは続ける。


(;^ω^)「あうあう……
     そ、それより、荒巻さんは話を聞かれたって言ったけど、そんなこと無いんですお!
     僕達が話をしている上空をギコさんたちの飛行機械が飛んで行っただけで……
     エンジン音や飛行音にまぎれて、僕達の話はギコさんたちには聞こえてないはずなんですお!!」




一見もっともな彼の言葉に、幹部達は一斉にため息をついた。


(;^ω^)「お……なんでみんな呆れているんだお?」

('A`;)「ブーンちゃん……『ネコ耳のしぃ』って名前、聞いたこと無い?」

(;^ω^)「……ないですお」


少年の言葉に、彼の教官であるクーとモナーは再びのため息をつく。


('A`)「いい?『ネコ耳のしぃ』ってね、超人的な聴覚の持ち主なのよ。
   聞こうと思えば、どんな雑音の中の小さな声でも聞き分けられるらしいわ」

(;^ω^)「……」

('A`)「さらに『黄豹』ギコ。
   黄色の飛行機械を華麗に駆るその姿が、
   空を駆ける豹のように見えたことからその名がつけられたわ。
   あたし達のメンバーの中にも、彼に落とされた者が……」



  _
(#゚∀●)「黙れ!!」


途端、毒男の隣に座るジョルジュがテーブルを叩いて立ち上がった。
そんな彼を悲しそうな顔で見上げて、毒男は続けた。


('A`)「そんな実力者である『黄豹』に聞かれたってことは、
   間違いなく彼は動き出すだろうし、
   あなたの家にある『エデン』の地図を回収することはかなり厳しいことになるわ。
   もちろん、彼の所属するラウンジ艦隊も動き出すでしょうし……」


その言葉を、副艦長のミルナが引き継いだ。


( ゚д゚ )「というわけだ。
    残念だが、スロウライダーにツン、お前達には危険な任務についてもらう。
    これは『ファイブA』どころの騒ぎではないぞ。
    お前達には、おそらく展開しているであろうラウンジ艦隊の包囲網をかいくぐり
    自宅からエデンの地図を回収してもらう」

(;^ω^)ξ;゚听)ξ「「……」」

( ゚д゚ )「彼らの援護役には……」



  _
(#゚∀●)「俺が行く」


そう叫んで立ち上がったのは眼帯の男、ジョルジュ長岡。
何かに煮えたぎっているような瞳の彼を見て、ミルナは続けた。


( ゚д゚ )「いいだろう。
    あとは毒男、お前達二人に援護役を頼む。
    お前達二人はカーゴに乗ってスロウライダー達とともに二人の家へと潜入し、
    二人が『エデン』の地図を回収する援護をしてくれ」
  _
(#゚∀●) ('A`)「「了解!!」」

( ゚д゚ )「おそらく、ラウンジ艦隊の連中も他国である『ニューソク』の領島内で
    大規模な戦闘行為はしないとは思うが……
    一応、飛行機械部隊はいつでも飛べるように待機していてくれ」

( ´∀`) 川 ゚ -゚)「「了解」」

(´・ω・`)「作戦は以上だよ。総員、全力を尽くしてね」


ショボンの言葉に、幹部達は一斉に立ち上がり敬礼した。
そんな荘厳な雰囲気に、あっけに取られていたブーンとツンもあわてて同じ動作を繰り返した。




やがて、「VIP」は『ニューソク国』の『ツダンニ』上空へ到達した。

下部甲板では、カーゴ(荷物運搬用の中型の飛行機械)の扉から
顔を出すジョルジュとオカマ、そしていつもの飛行機械に乗ったブーンとツンの姿。

彼らの目の前には、『ツダンニ』の町の様子と、
その上空にそびえ立つ様にして浮かぶラウンジ艦隊の旗艦「ジュウシマツ」の艦影。

  _
( ゚∀●)「妙だな……」


目の前の光景を見つめて呟くジョルジュ。




('A`;)「……そうね。ラウンジ艦隊の飛行機械の姿が一機も見当たらないわ」


不安げに呟くオカマの視線の先には、
彼らが長年親しんだ、いつもと変わらない静かな『ツダンニ』の空が広がっている。

  _
( ゚∀●)「大方、ブーン達の家がわからないから手の出しようが無いんだろう。
     ……ということは……」

('A`;)「あたしたちが出たら、ラウンジの飛行機械部隊も一気に出てくるでしょうね。
   それもエースクラスの飛行機械が……」


オカマの言葉に眼を細めたジョルジュ長岡。
彼は、カーゴの前に待機するブーンに向かって叫んだ。



  _
( ゚∀●)「いいか、ブーン!俺達が出たら、奴らは一気に飛行機械で攻めてくるぞ!」

(;^ω^)「おおおおおお、おk!!」
  _
( ゚∀●)「だけど、お前たちはそいつらのことは気にせずに一直線に自宅へと向かえ!
     一瞬でも躊躇したら、即、落とされるものと思えよ!!」

(;^ω^)「うぇうぇうぇうぇ、ウェルチ!!」
  _
( ゚∀●)b「自宅に着陸したらすぐにエデンの地図を取りに走れ!
      俺達もすぐに後を追うから安心しろ!!」

('A`)b「ぶほほほほwwwwwそういうことよブーンちゃん!!」


怯えるブーンの視線の席で、二人は親指を立ててニコッと笑った。
その笑みに安心したブーンの身体から緊張が嘘のように引いていく。

少年は後ろを見た。

後部座席のツンもまったく同じ気持ちのようで、彼女はブーンに向かってコクリと頷いた。


頼れる仲間と幼馴染。


少年は前を向くと、飛行用のゴーグルを下ろして言った。






( ^ω^)「赤い彗星のアナル、いっきまーす!!」



もはや突っ込むものは誰も無く、
一機の飛行機械とカーゴは、彼らを乗せて『ツダンニ』上空へと飛び立った。


第十四話 おしまい




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