…………。

「お前は何時からそこに居たんだ」

「あなたが生まれたときからずっとよ」

「何でそんな場所にいるんだ」

「あなたをずっと見ているためよ」

「何で私を見ているんだ」

「あなたをいつか、消す為に」

…………。






■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■三日目の放課後・開始


( ^ω^)「……はぁ、はぁ、はぁ」

(´・ω・`)「……なんてことだ」

悲惨な光景だった。
信号機の柱にぶつかったトラックから漏れ出したガソリンはそのまま炎上をはじめ、辺り一面を赤い炎で焼いていた。

( ^ω^)(これがクーの家から見た光景だったんだお……)

間一髪、瞬き一回分でも行動が遅れていたら今頃ブーンは次の『今日』を迎える事になっていただろう。

( ^ω^)(僕が死んだ場所で……同じ事が起こる……の、か?)

一番最初に死んだ日を一回目と仮定した場合でも、三回連続で同じ現象が起こっている事になる。

即ち。

( ^ω^)(これはもう偶然なんかじゃないお……)


図書館前のトラック事故は『必ず起こる』のだ。
それこそ漫画みたいな話だ、洒落にならない事がまた増えてしまった。
そしてもう一つ、わかった事がある。

( ^ω^)(僕の記憶は、前の『今日』と同じ事が起こると蘇る……?)

二回目の『今日』はツンから本を渡された時。
三回目の『今日』はショボンとこの場所で会話をした時。

( ^ω^)(……でもこれも、一度死んでしまったら思い出せないんだお)

(´・ω・`)「とりあえずここを離れようか」

思考するために飛んでいた意識が、ショボンの声により引き戻される。
遠くからサイレンの音が聞こえてくる、誰かが消防署へと通報したのだろう。
辺りには野次馬も集まり始めていて、そしてこの場所も既に炎に包まれている。

(´・ω・`)「姿勢を低くして歩くんだよ」

言われたとおりに四つんばいになりながら、その場を離れる。
しかしブーンの中にはショボンと言う存在に対して、不信感が募っていた。


( ^ω^)(この人は不可解だお)

そう。
一回目の時も。

二回目の時も。

そして今回も。

ブーンの前に『不自然に現れるショボンと言う存在はあまりに不可解』なのだ。


「あの、大丈夫ですか? 救急車とか……」

一部始終を見ていたのだろう、野次馬の一人が話しかけてきた。

( ^ω^)「あ、問題ありませんお」

(´・ω・`)「僕もだ、少しすりむいただけだね」

そういうと、安心したのか、野次馬は燃え上がるトラックの方へと視線を移した。
トラックの運転手は助かるまい、炎は火元のトラックを完璧に焼き尽くしている。

(´・ω・`)「……しかし、まいったな」

( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「このままここに居たら警察の事情聴取とか喰らいそうだし……、落ち着ける場所に移動しようか」

( ^ω^)「……僕も賛成ですお」

警戒し続けるしかない、今のブーンにできることは、それだけだった。

…………。



(  ゚Д゚) 「事故だぁ?」

「はい、トラックが信号機につっこんで、ガソリンがもれて辺りが焼けてるそうです」

(  ゚Д゚) 「おいおいおいおい、マジかよ」

ブーンたちが住むVIP市の警察署、ギコはそこに所属する刑事の一人だった。
民間人からの通報だ。交通事故の一報を受けて、彼は立ち上がる。

(  ゚Д゚) 「……何人かそっちまわせ、俺も直ぐにい」

空気が、普段の落ち着いたものから緊張感のある物へと瞬時に変貌する。
直ぐに行く、と言おうとしたところで、さらに他の警察官が叫んだ。


『死体です! 死体が見付かりました!』

(  ゚Д゚) 「あぁん!? おいおいおいおいなんて日だ! 事件が二つ! 大忙しじゃねえか!」

『場所はVIP市のニュー速マンションです! 若い女性が一人、頭から血を流して倒れていたそうです! 自殺だか突き落とされたのかはわかりませんが――』

(  ゚Д゚) 「ちぃっ、マジか、おいおいおいおい」

現場でもないのに混乱は早くも最高潮へと上り詰めていく。

(  ゚Д゚) 「しかたねぇ、俺は」

( ゚∀゚)「事故現場には俺が行く、お前はそっちの方に行け」

「俺は」、の続きは実は考えていなかったギコの肩に、無骨な手がのせられた。
声と感触に気がつき、振り向くと、サラリーマンのようなスーツをきた、程よくいい男だった。


(  ゚Д゚) 「ジョルジュ! テメェ何時帰ってきやがった!」

( ゚∀゚)「たった今だ馬鹿野郎、痴漢詐欺なんかよりよっぽど大きな事件だぜ、燃える燃える」

(  ゚Д゚) 「っち、不謹慎な野郎だ」

ジョルジュ、ギコと同じくこの街の警察署に所属する刑事。
ギコとは長年の付き合いであり、親友であり、そして。

(  ゚Д゚) 「……そっちは任せた」

( ゚∀゚)「おめーもな」

最高の相棒だった。
この二人の存在が、一人の少年を救う鍵になることは、今はまだ誰も知らなかった。

…………。


二人はファミリーレストランに居た。
人はそれなりに多いが、特に込んでいるという訳でもない。

ショボンはコーヒー、ブーンはドリンクバーからメロンソーダ。

机の上に置いて、二人は向かいあっていた。

(´・ω・`)「……まずはお礼を言っておこうか」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「君が助けてくれたから、僕はこうしてここにいる」

( ^ω^)「いや、それは……」

助けなくても、多分死んだのはブーンだけだったろう。
体が反射的に動いていただけだ、ショボンから見れば助けた形になるのだろうが。


( ^ω^)(ん?)

今の思考の中に、何かひっかかりを感じた。

なんだろう、この違和感は。

(´・ω・`)「……それは、なんだい?」

( ^ω^)「あ、いやいやいや、どういたしましてお」

……どうも考え込むと上の空になってしまうらしい。
隙を見せてはいけない相手だというのに。


(´・ω・`)「……じゃあ、本題に入ろうか」

( ^ω^)「……はいお」

メロンソーダを手に取りずるずると啜る。

(´・ω・`)「聞きたい事もあるけどまずは僕から、いいかな?」

( ^ω^)「お願いしますお」

ショボンもコーヒーを手に取り、一口飲んだ。

(´・ω・`)「信じてもらえないかも知れないけど、聞いてくれ」


ほう、と息を吐いて、その視線をブーンと交わるように固定した。

(´・ω・`)「僕は死相という物が見える。 っていうのは言ったよね」

( ^ω^)「聞きましたお」

(´・ω・`)「正確に言うとね、死にそうな人の周りに黒い靄みたいなものがまとわりついてみえるんだ」

( ^ω^)「靄……」

(´・ω・`)「うん、実際、それがある人は直ぐに死んでしまう。沢山、見てきた」

ショボンの顔は、歪んでいた。
それは悲しみと悔しさと、そして憤りが混ざった表情の変化。


(´・ω・`)「だから僕は君を学校で見たとき、驚いたんだ」

( ^ω^)「僕……ですかお?」

(´・ω・`)「うん、だって君は……、僕が見てきた今までの誰よりも」


『深い死相を持っていたから』


( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「普通の人が靄なら君にはまるで死が絡みついているようだった、黒い縄で縛られているみたいに」

きっと今もショボンの瞳には、それが映っているのだろう。

(´・ω・`)「そして死相を持っている人っていうのは、皆自覚があるんだ」

( ^ω^)「自覚……?」

(´・ω・`)「うん、自分が死ぬかもしれない、っていう自覚が」

( ^ω^)「……そうなんですかお」

(´・ω・`)「恐怖に怯えている人もいる、覚悟を決めて死を受け入れようとしている人もいる、だけど時々君みたいな人がいるんだ」


ショボンはブーンを見つめた。
縋るような、泣き出しそうな、怒り出しそうな、そして、決意を秘めた瞳で。

(´・ω・`)「自分が死ぬなんて微塵も思っていないで、笑って、今日を生きている人間が」

三回目の『今日』のブーンには死の記憶がなかった。
一回目の『今日』のブーンは自分が死ぬということすらわからなかった。

(´・ω・`)「だから食堂で君を見かけた時、思ったんだ」


「助けたいって」


(´・ω・`)「ずっと見てきた、人の死を見てきた、助けようとした事もあったけど全部無駄だった」

ブーンにはそれが彼の叫びに聞こえた。
だから何も言わない、メロンソーダは既に炭酸が抜け始めていた。

(´・ω・`)「だから、今度こそは……、自分の手で助けてあげたいと思ったんだ」

信じてくれるかい? とショボンは最後に聞いた。

ブーンは答える。

( ^ω^)「……ありがとう、ございますお」



…………。


(  ゚Д゚) 「綺麗な嬢ちゃんだなぁ」

周囲に『立ち入り禁止』のテープが張られている、その空間。
少女の死体がそこにあり、それを調べるための警察官たちが貼った物だった。
現場に到着したギコは、先に現場検証を行っていた調査員から詳しい事情を聞く。

「ガイシャは十六歳の高校生、名前はクー、一人暮らしのようです」

(  ゚Д゚) 「あぁん? おいおいおいおいこれで高校生かよ、世も末だな」

それはあんまり関係ない。

(  ゚Д゚) 「自殺か? 他殺か?」

「自殺の説が濃厚ですが……わかりませんね、靴は履いてませんが、室内から突き落とされたのなら……」

(  ゚Д゚) 「徹底的に洗え、手ぇ抜いたら根性焼きだ」

ギコは言い放ち、死体の顔をのぞき見る。
他の捜査員たちも、口には出さないが、大半が同じ疑問を抱いていたはずだ。

(  ゚Д゚) 「しかしなんでこいつ、こんなにも満足そうな表情をしてるんだ……?」

…………。


( ^ω^)「……今度は僕が話しますお、信じてくれるかどうかわかりませんがお」

(´・ω・`)「……聞くよ」

ショボンはコーヒーを口に運ぶ。
その様子を眺めながら、ブーンはメロンソーダを置いた。

( ^ω^)「僕は今『殺されている最中』なんですお」

(´・ω・`)「それはまた……物騒だね」

( ^ω^)「ショボン先輩の言う死相っていうのも、多分それに関連している事だと思いますお」

そしてブーンは語る。

自分が今、『十回の死の中にいる』事。

ついさっき、『今まで過ごしてきた『今日』の記憶を取り戻した』事を。

そして既に、記憶にある限りでは二回、『死んでしまっている』事を。


(´・ω・`)「成る程ね……だからか」

( ^ω^)「信じてくれるんですかお?」

ショボンは苦笑しながら言う。

(´・ω・`)「……あんな事態を見た後、ていうか、体験した後ならね。自分の事もあるし」

( ^ω^)「…………だからって……なんですかお」

あえて何も言わず、ショボンの発言の、気になったところを聞いてみる。

(´・ω・`)「さっきのトラック……、命中したら間違いなく死んでたよね」

( ^ω^)「ですお、実際僕は一回死んでますお」

(´・ω・`)「でも君は今生きている、つまり一回死を回避した、と言い換えてもいいわけだよね」

( ^ω^)「……確かにそうですお」

(´・ω・`)「でも君の死相はまったく変化がない」


……それは、どういう意味で?
ブーンが口に出す前に、ショボンはその疑問に答える。

(´・ω・`)「普通は『死』を回避できたならその死相は消える、君の場合はせめて薄くなってもいいはずなんだけど……」

( ^ω^)「それはつまり、僕は……」

(´・ω・`)「たった今、死んでもおかしくない」

空気が冷たくなった。
自覚していた事だが、しかし口に出して言われると、恐怖が先立ってくる。
そしてそれと同時に蘇る言葉が、一つ。

『君は今、あらゆる死の危険性に直面してると言える』

『全て物事に警戒し、全ての人間を警戒するべき事態だ』

二回目の『今日』で、自分自身を殺したか弱く強い少女の台詞。


そうだ。

僕はショボンという人間を。

信じてもいいのだろうか。

さっきの言葉だけを信じるなら、二回目の『今日』、あの場所にショボンと言う存在が居た説明は、つかないのだ。

だけど彼の言葉はすべてが真実で、訴えかけているような響きが確かにあった。

( ^ω^)「…………ショボン先輩」

(´・ω・`)「なんだい?」

コーヒーは空になった様で、ことりとテーブルにカップを置く。
その仕草は、やけに様になっていた。
学食で見たときと同じように、綺麗だった。


( ^ω^)「僕はどうすれば……いいと思いますお」

(´・ω・`)「それは……」

( ^ω^)「どうすれば自分が助かるのか、僕にはわからないですお」

(´・ω・`)「…………」

( ^ω^)「信頼してた友人に殺されて、何を信じて良いか僕にはわからないですお」

ショボンは何も言わず、ブーンを見つめていた。

( ^ω^)「もしかしたら『今日』が最後かもしれないと思うと、今でも怖くて振るえあがりますお……」

もしも全ての死を回避できたとして。

例えば心臓が止まったり。

例えば空から隕石が落ちてきたり。

絶対に逃げられない死が襲ってくるかもしれない。


( ^ω^)「僕は、一体……」

(´・ω・`)「……あれ? ちょっと待ってくれ、ブーン君」

( ^ω^)「へ?」

叫びだしそうなぐらいに、心のどこかが爆発しそうになったその瞬間、ショボンが流れを断ち切った。

(´・ω・`)「一つ確認なんだけどね、気になった事がある」

それは物凄い『ひらめいた!』という顔だった。
頭の上に電球が浮かんでいてもおかしくない顔。
ただそれは正の方向ではなく、まるで。

(´・ω・`)「君が一回目『死んだ』時、トラックの運転手さんはどうだった?」

気がついてはいけない事を気がついてしまったような。



( ^ω^)「どうって……」

その時にはもう意識がほとんど途切れていたが、しかし自分を突き飛ばした存在から人が出てきて、叫んでいた事をなんとなく覚えている。

(´・ω・`)「でも、君が言う三回目の『今日』では、あのトラックの運転手は……」

( ^ω^)「……死んでます、お」

その場にいたから良くわかる。
炎に包まれて、そこから出てくることがなかった。

(´・ω・`)「これは仮説なんだけどね……、聞いて欲しい。 その場所で同じ様に君を殺すための現象が起こるんだとしたら」

そうだとしたら。


(´・ω・`)「君が一度死んで、だからこそ助かった。だけどトラックがあの場所で事故を起こす事はもう決まっている」

それは、考えたくも無い。
自分だけが逃げることを、許してくれない真実。

(´・ω・`)「そしてそれと誰かの『死』がセットになっているとしたら」


「君が死なない代わりに、誰かが死ぬんじゃないのか?」


( ^ω^)「そんな……まさか」

そんなはずがない、そうあってほしい。
しかし、その考えがあっているとしたらなら――

( ^ω^)「クーは……」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「僕はあのマンションから突き落とされて『死んだ』んだおっ!」

立ち上がる。
周りの人間が何事かと視線をこちらに向けるが、気がつかない。

( ^ω^)「僕の代わりに誰か死ぬって言うならあの場所で! 誰かが落ちて死ぬとしたら! それは!」

カラン、と、ファミレスのドアが開いた。


そこには一人の男が居た。

サラリーマン風のスーツに、しかし鋭い眼光と、物腰。

その男はブーンを見ると、胸元から一枚の紙を取り出した。
この立ち位置からは見えないが、それの質感は写真のようだった。

ゆっくりと近づいてくる。

カツ、カツ、カツ、と、かかとの音を鳴らしながら。

「すげぇな俺たち所轄は。エリート共にゃ負けない情報力だ。」

その男はにやりと笑って、言った。

( ゚∀゚)「警察だ、話を聞きたい」

あまりのその唐突な登場に、二人はまだ現状を把握できなかった。

( ゚∀゚)「拒否権は無しだ、泣こうが喚こうが、ちぃっと顔借りる事になるぜ?」

:( ^ω^)は十回死ぬようです、続く。



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